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サバイバーな嫁
ここはヴィヴィアンの執務室。
良い香りのお茶を家令のスチュワートが淹れています。
「どうだ、あれから買い物だの夜会だのと言っていないか?」
「どなたがです?」
「決まっているだろう。あのご令嬢だ」
ヴィヴィアンにお茶を差し出しながらスチュワートは
あらかさまにガッカリした表情になります。
「どこぞの子爵家の、たかり屋令嬢の事かと思いました」
「リンダではない、押しかけ女房殿のほうだ」
「押しかけね・・キャンティ様のご意思はなかったと思いますよ」
「それでも貴族の娘なんだ。噂かて火のない所には立たぬ」
はぁ・・っと大きくため息をつくスチュワート。
(その噂・・子爵令嬢は聞くに堪えないものばかりなんだけどなぁ。)
「キャンティ様ですが、別邸に移られてから今日で3か月目で6回目の・・」
「もうそんなにドレスやらを作ったのか、あの女は!」
「最後までお聞きくださいませ。途中でございます」
「あぁ、すまん」
「6回目と言いますのは、別邸に移ってから食材を受け取った回数です。
そして、この箱が2週間分の食材が入っていた箱の現物です」
底に少し土のついた箱。閉じられてはいるけれど
箱のサイズとしては、ゆう●ックでいう80サイズかと思うほど小さい箱を
スチュワートはヴィヴィアンに見せます。
「2週間分?それにしては小さいな・・食事はこちらで取っているのか?
別邸で取るのではなかったのか?」
「話は!最後まで!お聞きください!」
「あ、あぁ、わかった。すまない」
「キャンティ様には初日、困った事があれば言ってくださいと
お願いをしておりましたが、何も仰られないので問題ないと思っておりました」
「言わないのなら問題ないという事だな」
「えぇ。わたくしも問題がないと思いましたので初日以降今日まで
別邸に出向くことはございませんでしたが、
季節も冬の終わりから春、そして初夏になりますのに
何一つ困りごとがない事が変だと思い、
今朝別邸に行きましたところ、この野菜箱と遭遇いたしました」
ヴィヴィアンは野菜箱に視線を向けて、またすぐスチュワートを見ます。
「キャンティ様はご自分で作られた野菜などをお食事中でございましたが
そこにガンズがこの野菜を届けに参りまして、
2週間分というには箱が小さい事や軽そうであることを疑問に思い、
中を改めましたら箱の中には野菜くずが入っておりました。
旦那様のお食事の材料としては到底使わないほどのものです」
「なんだと?」
「見てわかる通り、この箱には野菜を少々入れれば、とても小麦は入りません」
「だが、食事をしていたのであろう?」
「えぇ。奥様は自分で育てたライムギでパンを作り食べられておりました」
「育てる?ライムギを?」
「それだけではありません。今まで届けた野菜は全て本来は破棄する野菜。
しかし、それを使って土を耕し育てた野菜を食されていたようです。
犯人は女中頭のアンネでした。調理長が市場で買ってきた野菜を
女性使用人の間で、使わずに傷んだ野菜と入れ替えていたそうです。
大麦、砂糖、ワインもキャンティ様が受け取った事は一度もなく
事も有ろうか、虫が湧いたもの、床に落ちた塩などを
キャンティ様に持って行っていたそうです」
「アンネを呼べ!」
「呼べません、実はキャンティ様から旦那様には言わないように
言付かっております」
野菜箱を足元に置いたスチュワートは続けます。
「自分は感謝をしている、困った事など何もない。
今日運ばれた野菜は暖かい日だからしなびたのだと仰られました」
「そうか・・」
「しばらくは様子見をお願いしたいのですが、困った事が起きましたので
報告をしているところです」
「困った事とはなんだ?」
「今日の野菜箱を最後に、冬になるまで一切の食材は不要との事です」
「はぁ?何も食わぬと言うのか?」
「いえ、おそらく完全自給自足に入られるのだと思います。
自分のために食材を運ぶから過ちが起きたのだと思われたのでしょう」
腕組をして少し考えるヴィヴィアンにスチュワートが紙を差し出します。
「なんだこれは?」
「今月の請求書でございますね」
「こんなに買い物はしていないぞ。なんだ・・この額は!」
「どうやら、どこぞのご令嬢が旦那様のツケで色々と買われているようです。
帝都の高級娼婦でも1か月囲ったところで、ここまで使いませんよ」
「ふむ・・ツケ払いは断らんといかんな」
「既に断りを入れております。今後はいつもにこにこ現金払いのみと!
で、気が付かれませんか?」
「何をだ?」
「先程まで決済されておりましたのはキャンティ様がここに来てからの
この伯爵家の請求書全てです」
「そのようだな」
「キャンティ様に届けられていた野菜は廃棄処分するレベルですので
キャンティ様が使った金額はゼロ。何も支出はございません。
しかし、リンダ嬢の使った金額はこの屋敷に使える者全員の給金を
足した額よりも多い・・という事に気が付きませんか?」
「大げさだろう、食材はそうだとしてもドレスや宝石もだし、
茶を飲む食器や、ランプの油など細かいものはあるだろう」
「いいえ、キャンティ様にこの伯爵家から渡したものは
恥ずかしながら、その野菜くずのみ!でございます。
清掃道具もご自分で修繕され、掃除もお一人でされ
夜もご自分で油や蝋燭を作られて使用されておられますね。
衣服やリネンを洗う石鹸ですら自家製でございます」
「恐ろしくサバイバル精神に富んでいるな」
「このままでよろしいのですか?」
ヴィヴィアンに詰め寄るスチュワート・・目がすわってます。
「これからは野菜くずですら不要と仰られています。
わたくしが思うに、おそらく冬も受け取りはされないでしょう」
「しかし、冬になればドレスやらをねだるやも知れんぞ」
「それもないと思われます。ですが週に1日もしくは月に数回、
街に行きたいと仰られるかもしれません」
「ハッ!それ見た事か!男漁り、パトロン探しか!恥さらしが!」
スチュワートの目が、軽蔑を隠そうともしない目つきになります。
「いえ、ご自分で作られている野菜や茶葉などを売るための
販路探しと、売買のために!でございますよ」
「素人の作ったものなど、売れんだろう」
「それがですね、わたくしタンポポ茶を言うものを頂きましたが
なかなか美味しく、商品としても問題ないレベルですね。
他にも色々あるようですし・・ふと思ったのですが・・・」
「なんだ?」
「キャンティ様は魔法が使えるのかも知れません」
「魔法?ないない、使えるのであれば皇帝陛下から下賜されるわけがない」
「いえ、外観だけですがとても女一人では出来ない修繕も
されておりましたし・・魔道具も作れるのではないかと感じました。
いえ、まだ確証はありません。ですがわたくしの中には確信もあります」
「調べられるか?」
「はい、既に帝都には向かわせております。別邸も見張らせたいと思います」
「魔法か・・・うむ、よろしく頼む」
執務室から出る間際、スチュワートは今日一番の低音ボイスを出します。
「それと!請求書。子爵令嬢の費用は旦那様の小遣いから天引きです。
足らない分は翌月以降を当てがいます」
「まっ、待て!それでは小遣いがないではないか!」
「フッ・・旦那様。世間ではそれを自業自得というのです。
ツケ払いの怖さはリボ払いと同じでございますよ。では・・」
ガチャリ。
マズイ・・明後日リンダにお泊りをやっとOKもらったのに
街に買い物にも行けないとなると・・・また癇癪を起すな・・参ったな・・。
良い香りのお茶を家令のスチュワートが淹れています。
「どうだ、あれから買い物だの夜会だのと言っていないか?」
「どなたがです?」
「決まっているだろう。あのご令嬢だ」
ヴィヴィアンにお茶を差し出しながらスチュワートは
あらかさまにガッカリした表情になります。
「どこぞの子爵家の、たかり屋令嬢の事かと思いました」
「リンダではない、押しかけ女房殿のほうだ」
「押しかけね・・キャンティ様のご意思はなかったと思いますよ」
「それでも貴族の娘なんだ。噂かて火のない所には立たぬ」
はぁ・・っと大きくため息をつくスチュワート。
(その噂・・子爵令嬢は聞くに堪えないものばかりなんだけどなぁ。)
「キャンティ様ですが、別邸に移られてから今日で3か月目で6回目の・・」
「もうそんなにドレスやらを作ったのか、あの女は!」
「最後までお聞きくださいませ。途中でございます」
「あぁ、すまん」
「6回目と言いますのは、別邸に移ってから食材を受け取った回数です。
そして、この箱が2週間分の食材が入っていた箱の現物です」
底に少し土のついた箱。閉じられてはいるけれど
箱のサイズとしては、ゆう●ックでいう80サイズかと思うほど小さい箱を
スチュワートはヴィヴィアンに見せます。
「2週間分?それにしては小さいな・・食事はこちらで取っているのか?
別邸で取るのではなかったのか?」
「話は!最後まで!お聞きください!」
「あ、あぁ、わかった。すまない」
「キャンティ様には初日、困った事があれば言ってくださいと
お願いをしておりましたが、何も仰られないので問題ないと思っておりました」
「言わないのなら問題ないという事だな」
「えぇ。わたくしも問題がないと思いましたので初日以降今日まで
別邸に出向くことはございませんでしたが、
季節も冬の終わりから春、そして初夏になりますのに
何一つ困りごとがない事が変だと思い、
今朝別邸に行きましたところ、この野菜箱と遭遇いたしました」
ヴィヴィアンは野菜箱に視線を向けて、またすぐスチュワートを見ます。
「キャンティ様はご自分で作られた野菜などをお食事中でございましたが
そこにガンズがこの野菜を届けに参りまして、
2週間分というには箱が小さい事や軽そうであることを疑問に思い、
中を改めましたら箱の中には野菜くずが入っておりました。
旦那様のお食事の材料としては到底使わないほどのものです」
「なんだと?」
「見てわかる通り、この箱には野菜を少々入れれば、とても小麦は入りません」
「だが、食事をしていたのであろう?」
「えぇ。奥様は自分で育てたライムギでパンを作り食べられておりました」
「育てる?ライムギを?」
「それだけではありません。今まで届けた野菜は全て本来は破棄する野菜。
しかし、それを使って土を耕し育てた野菜を食されていたようです。
犯人は女中頭のアンネでした。調理長が市場で買ってきた野菜を
女性使用人の間で、使わずに傷んだ野菜と入れ替えていたそうです。
大麦、砂糖、ワインもキャンティ様が受け取った事は一度もなく
事も有ろうか、虫が湧いたもの、床に落ちた塩などを
キャンティ様に持って行っていたそうです」
「アンネを呼べ!」
「呼べません、実はキャンティ様から旦那様には言わないように
言付かっております」
野菜箱を足元に置いたスチュワートは続けます。
「自分は感謝をしている、困った事など何もない。
今日運ばれた野菜は暖かい日だからしなびたのだと仰られました」
「そうか・・」
「しばらくは様子見をお願いしたいのですが、困った事が起きましたので
報告をしているところです」
「困った事とはなんだ?」
「今日の野菜箱を最後に、冬になるまで一切の食材は不要との事です」
「はぁ?何も食わぬと言うのか?」
「いえ、おそらく完全自給自足に入られるのだと思います。
自分のために食材を運ぶから過ちが起きたのだと思われたのでしょう」
腕組をして少し考えるヴィヴィアンにスチュワートが紙を差し出します。
「なんだこれは?」
「今月の請求書でございますね」
「こんなに買い物はしていないぞ。なんだ・・この額は!」
「どうやら、どこぞのご令嬢が旦那様のツケで色々と買われているようです。
帝都の高級娼婦でも1か月囲ったところで、ここまで使いませんよ」
「ふむ・・ツケ払いは断らんといかんな」
「既に断りを入れております。今後はいつもにこにこ現金払いのみと!
で、気が付かれませんか?」
「何をだ?」
「先程まで決済されておりましたのはキャンティ様がここに来てからの
この伯爵家の請求書全てです」
「そのようだな」
「キャンティ様に届けられていた野菜は廃棄処分するレベルですので
キャンティ様が使った金額はゼロ。何も支出はございません。
しかし、リンダ嬢の使った金額はこの屋敷に使える者全員の給金を
足した額よりも多い・・という事に気が付きませんか?」
「大げさだろう、食材はそうだとしてもドレスや宝石もだし、
茶を飲む食器や、ランプの油など細かいものはあるだろう」
「いいえ、キャンティ様にこの伯爵家から渡したものは
恥ずかしながら、その野菜くずのみ!でございます。
清掃道具もご自分で修繕され、掃除もお一人でされ
夜もご自分で油や蝋燭を作られて使用されておられますね。
衣服やリネンを洗う石鹸ですら自家製でございます」
「恐ろしくサバイバル精神に富んでいるな」
「このままでよろしいのですか?」
ヴィヴィアンに詰め寄るスチュワート・・目がすわってます。
「これからは野菜くずですら不要と仰られています。
わたくしが思うに、おそらく冬も受け取りはされないでしょう」
「しかし、冬になればドレスやらをねだるやも知れんぞ」
「それもないと思われます。ですが週に1日もしくは月に数回、
街に行きたいと仰られるかもしれません」
「ハッ!それ見た事か!男漁り、パトロン探しか!恥さらしが!」
スチュワートの目が、軽蔑を隠そうともしない目つきになります。
「いえ、ご自分で作られている野菜や茶葉などを売るための
販路探しと、売買のために!でございますよ」
「素人の作ったものなど、売れんだろう」
「それがですね、わたくしタンポポ茶を言うものを頂きましたが
なかなか美味しく、商品としても問題ないレベルですね。
他にも色々あるようですし・・ふと思ったのですが・・・」
「なんだ?」
「キャンティ様は魔法が使えるのかも知れません」
「魔法?ないない、使えるのであれば皇帝陛下から下賜されるわけがない」
「いえ、外観だけですがとても女一人では出来ない修繕も
されておりましたし・・魔道具も作れるのではないかと感じました。
いえ、まだ確証はありません。ですがわたくしの中には確信もあります」
「調べられるか?」
「はい、既に帝都には向かわせております。別邸も見張らせたいと思います」
「魔法か・・・うむ、よろしく頼む」
執務室から出る間際、スチュワートは今日一番の低音ボイスを出します。
「それと!請求書。子爵令嬢の費用は旦那様の小遣いから天引きです。
足らない分は翌月以降を当てがいます」
「まっ、待て!それでは小遣いがないではないか!」
「フッ・・旦那様。世間ではそれを自業自得というのです。
ツケ払いの怖さはリボ払いと同じでございますよ。では・・」
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