辺境伯のお嫁様

cyaru

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家令は部下に引かれてしまう

ストラドリンさんは、さらさらと簡単な図形を描いて説明をします。

「本邸の工事は全て、改修に置いて全撤去をして新品の材料を使いました。
 なので、工事中は撤去した廃材と使用する建材などの管理も置場も
 必要だったわけです。一番高額なのは廃材を処分する費用です」
「なるほど。で?」

「別邸はですね、まず玄関のある東面は最後です。先に逆の西面からです。
 午前中に西面の外壁材を剥いで、午後に使えない材のみを廃棄して
 使える物は再利用します。その間に北面の外壁材も撤去を始めますから
 北面より面積の狭い西面に、北面から撤去して使える材が転用されます。
 その要領で最後、東面ですがそこにだけ足らない分の建材を納入するわけです。
 一番来客が目にする玄関の東面のみに新しい建材を使う訳です」

「では、捨てる材が少ないので、
 比例して新たに使う新品の材料が少ない・・というわけですね?」
「そういう事です。そして屋根については今の屋根材の上に
 覆うように葺きますので撤去費用が不要なんです」

「でも、重くなるのではないですか?」
「元々が、板の上にスレート瓦を葺いているので重さはあまりないんです。
 そして今度は解体された家の鋼板を再利用しますので
 最後に色合わせに塗る防水塗料を含めても新たに葺き替えるより
 半額以上安くなります」
「なるほど・・」

ストラドリンさんは見積書のページをめくりながら
「そして、今まで伯爵家ではなかった項目がここです!」

指さされた項目を凝視するスチュワート。
「廃材処理後、売却費用・・・おや?これはバックされる金額ですね」
「えぇそうです。これはランバートさんに、逆有償取引ではない事を確認してます」
「逆有償取引??」
「・・・・・・・・マジで・・言ってんの?」(ジト目)

しーんっとした音のない時間が過ぎていきます。

「あの?ストラドリン??」
「うわー、引くわぁ、マジで引くわ~。ガチで言ってるんですよね?」
「申し訳ない、教えてくれないか」
「くれないか?・・くれな・い・か??と聞こえましたが??」
「いえ!教えてください!お願いします」

フフンっとちょっと鼻がひくひく動くストラドリン。

「そこまで言うなら仕方ありませんね。
 逆有償取引というのは、ハッキリいいましてトテポロ帝国では違法取引です。
 先程も申しましたが、本邸で一番高額だったのが廃棄物の処理費用なんです。
 これはきちんとした手順で廃棄をしてもらうためなので、仕方ない事なんですね。
 ですが、逆有償取引というのは廃棄物を廃棄物としてではなく商品として
 別会社に売り渡し、その運搬費も売る方が負担する事です」

「うーん。なんだか難しい話ですね」
「ま、簡単に言えば、ゴミを処分するのに100万かかるから
 A商会に100万で買い取ってもらって、
 A商会に運搬費として200万を支払う・・という感じです」
「なるほど。。という事はトータルで出費は100万で済むと・・」

「そういう事です。ですが、きちんとした処分をされたか不明。いい例が
 トテポロ帝国を挟んで反対側のミノイグ皇国で横行した逆有償取引での
 廃棄物を山奥に捨てたという事件です。
 汚染された土地となってしまい、再生不可能の死の渓谷が出来たわけです」
「で、ギルド商会は逆有償取引ではないと回答したのだろう?」

「廃材処理後、売却費用というのはですね、
 外壁材はどうやっても廃材が出るわけです。そこで建材が木材でしたので
 工事中に廃材をチップ化して、ペットのトイレとか、
 暖炉にくべる圧縮した燃焼材としてギルドに買い取ってもらうって事です。
 その売り上げが工事費から引かれている・・って事ですね」

「と、いう事は別邸の工事では廃材が出ないって事ですか?」
「えぇ、そういう事です。もうねぇ・・私!感動しているんですよ!
 奥様って14歳なんですよね??それでこんな見事な3R!
 是非、お会いして弟子入りさせて頂きたい気分なんですよ!」

「では工事費については了解を致しました。
 見積もりは今日旦那様に回しますので納品書、請求書の手続きを
 今後お願いしますね」
「えぇ、それが私のいっきっるぅ道~ですからね」

ストラドリンが退室した後、スチュワートは別邸での事を思い出します。

チャッコ商会もギルド商会もともに交渉は成立・・。
いや、チャッコ商会に至っては試作品もなく独占販売を持ちかけていた。
そしてギルド商会の満額回答のような態度。
もしかすると、14歳という年齢や、侯爵令嬢の箱入り娘という
考えは捨てて、奥様は老獪な策士として考えないといけないのかも知れない。

どちらにしても、子爵家を探らせた結果が来れば
伯爵様にも、どんぶりでセンブリ茶を飲んでスッキリして頂く必要があるでしょうね

急ぎの決済要件となった別邸の改修工事見積書を
トントンと揃えて、スチュワートは伯爵の執務室に向かう途中で思い出しました。

「あ!おまけって何だったんだ?聞くの忘れた~!!」

多分、いつもならあまり気にもならなかったんでしょうけど
キャンティ絡みだと思うと、おまけが滅茶滅茶気になるスチュワートでした。

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