辺境伯のお嫁様

cyaru

文字の大きさ
34 / 87

90度を取るやつ、水平を取るやつ

土工事をするという3班の元に行くキャンティ。
その前に屋敷の中に入って、戸棚に置いておいた紙を持ち出します。

職人さんの元にいき、その用紙を広げるキャンティ。

「皆様、よろしくお願いいたしますわ」
「こっちこそ、よろしく頼むわ!で?姉ちゃん、それは?」
「図面ですわ。とりあえず今日は基礎を作るためにこの深さに掘って頂きたいの」

図面を見る職人さん達。
「なるほどね。でも小屋程度なのに大げさじゃないか?」
「いいえ、何事も基礎、足元はしっかりするべきなのですわ」
「そりゃそうだ。上屋が立派でもグラグラじゃ話になんねぇからな」

すたすたと歩いて、井戸の周りを囲んでいる石積みの元に来ます。
「本当なら、もっとしっかりした物に取りたいのですが、こちらに
 第一ベンチマークをお願いいたしますわ!
 第二ベンチマークは建物の南東角に取ってくださいませ」

職人さんたちは言われるがままにベンチマークを取っていますね。

え?ベンチマークって何なの?・・・
ベンチマークというのはですね、建物を建てる時、正確な位置に
建てるためにほぼ動かないと思われるものに点を取って、
そこからの距離や高さを基準とするものですのよ。
道具がない時代なのでキャンティは2カ所をとっていますね。

「お姉ちゃんよぉ!深さはこのくらいでいいか?」
「んー膝くらいの高さまで仮堀をしてくださいませ。
 その間にまずは基準となる高さを取りましょう」

そういうと木の棒をトントンと数カ所に打ち込みます。
木の棒と棒の間に解体現場から持ってきてもらった軒樋を渡します。

「ここに水を張ってくださいませ!」

何をしているんだ?っと職人さんが集まってきます。
よく見ると外壁を洗浄している班の職人さんもいますよ。あれ?モートンさんも。

「傾いていると、水は下の方に流れますから水面が水平になるよう
 低い方に平らな石などを敷いて調整をしてくださいませ。
 そして・・このように水平になると次の棒まで・・同じように繰り返し
 棒を立てて水平を取って、水面面の位置にこうやって木に印をつけてくださいませ」

「ほぉ・・なるほど」

「で、井戸に付けたマークからこの木までの距離は7mですから、
 糸の長さを7mにして先端を持ってこうやって動くと・・・
 先程のマークが円の中心となって、
 糸の端は円弧、7mの半径の円弧が出来ますから(ガンガンっ)
 こうやって1本、円弧上に木の棒を打ち込みます(はぁっはぁっ)」

「ほぉお~」

「次に、別邸の南東角から11mですから、同じように・・します」
「へぇぇ」
「そうすると、先に井戸から取った7mの円弧とこの別邸からの
 11mの円弧が交差する交点が出ます。ここが柱の位置です。
 ここに棒を打ち込んでくださいませ!」

ガンガン!

「小屋は真四角ですから、角は90度となります。
 角度の取り方は簡単ですわ。サンシゴの三角形を作りますの」

両手の親指と人差し指で三角形を作るキャンティ。

「直角三角形の、一番短い辺を3、垂直に下りる辺を4
 斜辺を5とする三角形を作れば、直角三角形が出来ますの。
 4の辺をぐいっと伸ばして妻側方向、家の短い面ですわね。
 3.5mを取ったら
 次はその点に同じようにサンシゴの三角形を取って、
 桁行方向、家の長い面ですわ。5mを取り、また4の辺を伸ばす。
 また同じようにサンシゴで最初のこの木の棒にあえば、
 1つの角が90度の長方形の位置取りが出来ますわ!
 角になる部分が柱が立つ部分ですわ」

「へぇぇ・・おぉぉ~本当だ!3、4、5でピッタリ合う!!」
「でしょう?そしたら先程の水平面を決めたマーク。
 このマークから・・そうですわね基礎の底は50cmとしましょう。
 そのままにすると意味がないので砕石分で・・えーっと・・
 10cm深く掘るので、この棒の先端のほうにマークを付けて
 60cmの位置をマークしてくださいませ!」

職人さんが先端のほうに付けたマークから60cmの位置にマークをします。
キャンティは水平を取った木に付けたマークに、さっき60cmを取った
木の棒のマークの片方を合わせます。

「ここは下の60cmのマークまであと少し掘ってくださいませ。
 それをこの柱と柱の間。そうですわね幅は40cmで掘ってください。
 中央部分はそのままで。
 掘りすぎたら、土を戻してくださいね」

「掘れたらどうするんですか?私はこういうの初めてです」
「掘れたら、川から持ってきてもらった石を敷き詰めて、
 この大きな木の杭でトントンと叩いて押し込んでくださいませ」

「砕石を敷いて、叩いて均すんですか?」
「そうですよ。それが終わったら、この川砂、残った砕石、
 そしてこの石灰岩を砕いて粉にしたもの、水を混ぜて、
石が隠れるくらいに敷きならして、1晩放置をしますの」

「だけど、穴を掘ったら柱の位置を折角取ったのにわからなくなりますよ!」
「では。先程の柱の位置の外側になるよう木の棒を打ち込んで
 それぞれをこの水糸で結んでくださいませ」

「それも直角にとりますか?」
「いいえ?適当でいいですが、柱4本で作った長方形の外側に・・です
 糸を張ったら、最初の4本の柱の2本に長い棒を当てて、
 延長線を取り、その延長線上と外に作った四角の糸の交点に木の棒を立てます。
 それを結べば、中で交点となる部分は柱の位置の木の棒になりますわ」

「なるほど・・その糸の交点に本当の柱を立てれば良いと」
「そうですわ。そうなるとやっと基礎工事に着手できますわ!
 あっ!ダメですよ!掘った土はちゃんと盛って、おいてくださいねー
 捨てたり、どっか持っていくのはダメですよー。埋め戻しますからねー」

「奥様・・・」

モートンは憧れの眼差しでキャンティを見ています。

「何でしょう?」
「あんな朝帰りを堂々とするトンチキ野郎と別れて、現場監督しませんか?」
「ウフフ・・面白そうですが、トンチキにはトンチキなりに
 そのうち役に立ってもらいますわ」
「使い道はあるんですか?アスベスト並みの産業廃棄物ですよ?」
「まぁ!面白い事を仰るのね。ですがわたくしにとって伯爵様はPCB。
 安定器として使えるうちは役に立ってもらいますわ。
 不要になれば特別産廃ですからきちんと処理も致しますわ。オホホ」

ちょっと背筋が寒くなったモートン監督。
キャンティの作る小屋って、何をするんでしょうかね?






感想 166

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……