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動き出す闇
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「なんだって?もう一度言ってみろ!」
王子の執務室ではレイザード第一王子が従者の胸元を捩じりあげておりますよ。
「は、はいっ。チェ、チェルシー家では明日王都を出立するよう届けが夕刻出ております」
従者を放り投げるように突き放すとレイザード第一王子は爪を噛みます。
ギリっと噛んだ爪…と思ったら血が出てますけど?大丈夫?爪は痛いよ??
恐る恐る従者はゆっくりと後ろずさり、礼をして退室をしていきます。
その様子が第一王子が見ている窓に映ります。
「逃がさないと言ったはずだよ。クリスティナ。お仕置きが必要だね」
引き出しを開け、ハンカチを手に取り胸ポケットに入れます。
そして剣を腰に帯剣し、フードを身に纏うと王子は厩舎に向かいます。
ブルルっ
愛馬の鼻先を撫でると、柵を外し手綱を引いて厩舎から出ると馬に跨り闇に消えていきました。
☆~☆~☆~☆
同時刻、チェルシー家の動きが公爵家にも伝わります。
「如何いたしましょう」
「面白いわね。久しぶりにわたくしも楽しめるショーが見られそうだわ」
「お嬢様、襲撃するとすればアマダの街の近くのここ…この街道は昼間でも野党が出没します。難所と言われている深い渓谷に面しております。落ちればまず…助かりません」
「まぁ面白い!お前もなかなかに愉しませてくれるポイントを掴んでいるわね」
「お褒めにあずかり光栄です」
「その街にはどれくらいかかるのかしら」
「早馬なら2日、馬車ですと4日ないし5日。ですがチェルシー家の荷馬車の数からしますと1週間というところでしょうか」
「なら明日出立すれば先回りはどう?」
「おそらく途中でホワライ伯爵家(※ケイティの実家)に寄ると思われます。祖父が同じですので挨拶はしていくかと。となると少し遠回りのこちらの街道から大街道に合流すると思いますので、大街道のほうを我らが先に進み待ち受ける事が出来ると」
「ウフフ。面白い。上手くいけば我が家でずっと雇ってあげるわ」
「ありがとうございます」
「良い知らせを待っているわ」
「はい。必ずや」
公爵家から怪しげな男が出ていきます。
「クックック…あぁゾクゾクする。目障りなクリスティナちゃん。最後はお空が飛べるなんて幸せね。オーッホッホッホ」
あぁ~知らせたい!クリスティナに知らせてあげたい!
レジーナの悪だくみもだけど、レイザードがどっかに行ったって教えてあげたいよ~!!
☆~☆~☆~☆
その頃、チェルシー家では娘、妹としての最期となる夕食が始まっておりますが、しんみりした雰囲気なんて何処にある?というくらい笑いに包まれております。
「でな!こいつはこんなデカいヤマメを釣り上げたんだよ」
「だけど、引き上げるのに苦労してな。川に嵌りこんでしまって30分動けなくなったんだ」
「川の水は冷たいだろう?大丈夫だったのか?」
「大丈夫も何も、コイツ大声で叫んでワイバーン呼びやがった」
「ワ、ワイバーン???」
「あぁ、上空から次々に突っ込んでるワイバーンを叩き落して流れを変えやがったんだ」
<<マジか!!>>
「あっ!ワイバーンで思い出した!!」
「どうされたの?シンザン様」
「ちょっと待ってて。すぐ戻る」
そう言って自分の部屋に戻っていくシンザン。
「でも、本当にいいのかい?兄の俺がこういうのもなんだけど、傭兵団で功績はあげてても平民だし結構体は女の子がみたらビックリするほど傷もあるし…なにより顔が…10人男がいれば8番目、9番目くらいの残念な出来だぜ?」
「そうよ。クリスティナ。従姉妹の私から見てもお世辞にも美丈夫とは程遠いわ。目や鼻のパーツの数が他の人と同じってくらいしか取り柄のない顔よ?顔面偏差値は低いわよ?」
「で、でも‥‥わたくしはシンザン様をお慕いして…おりますので…」
ポっと赤くなるクリスティナに一同憐みの目を送ります。
「まぁ、俺もジルドもそうだが、美女と野獣系だって事だよ」
「あら?わたくしはヨハン様は世界一の美大夫と思っておりますわ」
「えぇわたくしもジルの隣に並ぶほどの男は見た事ありませんわ。イケメンですわ」
「ほ、褒めるな…恥ずかしいだろう」
「そうやって赤くなるクマさんだから素敵なのよ(ちゅっ)」
そこにシンザンが戻ってきましたよ。
「何をしに行ってたんだ?」
エドワードがシンザンに問いかけるとシンザンは箱から指輪を取り出します。
「皆に見ててもらいたいんだ。ティナ!」
「なんですの?」
きょとんとしてシンザンの元に席を立ち近寄っていくクリスティナ。
「指輪だ!隣国では結婚してますって証に左手の薬指に指輪をするんだ」
そういって両親である前伯爵夫妻、そして兄3人(エドワードも入ってる!)、姉2人の前でシンザンはクリスティナの指に指輪をはめます。
「うわぁすごい。ピッタリだわ」
「だろう?サイズが判らなくて俺の小指の4分の1にしてもらったんだ」
どんだけデカいんですか!!って・・確かにシンザンの二の腕よりクリスティナのウェストの方が細いですからねぇ。
「お前、いつ指輪なんか買ったんだ?」
「買ったのはリングだけ。石は取ってきた」
「え?シンザン??取って来たってどこから??」
「何処って…クリスティナをもらいに行くって決めたからドラゴンの巣に行ってきた」
<<ドラゴン??>>
「そうだよ?7匹いたから。その中でコレだけがオレンジの魔石だった!」
え~っと…それはとりあえずドラゴン7匹仕留めたって事ですよね?
色々規格外だとは思っていましたが…みんな口が開きっぱなしになりましたよ?どうすんの?
チェルシー家の夜が更けていきました。
王子の執務室ではレイザード第一王子が従者の胸元を捩じりあげておりますよ。
「は、はいっ。チェ、チェルシー家では明日王都を出立するよう届けが夕刻出ております」
従者を放り投げるように突き放すとレイザード第一王子は爪を噛みます。
ギリっと噛んだ爪…と思ったら血が出てますけど?大丈夫?爪は痛いよ??
恐る恐る従者はゆっくりと後ろずさり、礼をして退室をしていきます。
その様子が第一王子が見ている窓に映ります。
「逃がさないと言ったはずだよ。クリスティナ。お仕置きが必要だね」
引き出しを開け、ハンカチを手に取り胸ポケットに入れます。
そして剣を腰に帯剣し、フードを身に纏うと王子は厩舎に向かいます。
ブルルっ
愛馬の鼻先を撫でると、柵を外し手綱を引いて厩舎から出ると馬に跨り闇に消えていきました。
☆~☆~☆~☆
同時刻、チェルシー家の動きが公爵家にも伝わります。
「如何いたしましょう」
「面白いわね。久しぶりにわたくしも楽しめるショーが見られそうだわ」
「お嬢様、襲撃するとすればアマダの街の近くのここ…この街道は昼間でも野党が出没します。難所と言われている深い渓谷に面しております。落ちればまず…助かりません」
「まぁ面白い!お前もなかなかに愉しませてくれるポイントを掴んでいるわね」
「お褒めにあずかり光栄です」
「その街にはどれくらいかかるのかしら」
「早馬なら2日、馬車ですと4日ないし5日。ですがチェルシー家の荷馬車の数からしますと1週間というところでしょうか」
「なら明日出立すれば先回りはどう?」
「おそらく途中でホワライ伯爵家(※ケイティの実家)に寄ると思われます。祖父が同じですので挨拶はしていくかと。となると少し遠回りのこちらの街道から大街道に合流すると思いますので、大街道のほうを我らが先に進み待ち受ける事が出来ると」
「ウフフ。面白い。上手くいけば我が家でずっと雇ってあげるわ」
「ありがとうございます」
「良い知らせを待っているわ」
「はい。必ずや」
公爵家から怪しげな男が出ていきます。
「クックック…あぁゾクゾクする。目障りなクリスティナちゃん。最後はお空が飛べるなんて幸せね。オーッホッホッホ」
あぁ~知らせたい!クリスティナに知らせてあげたい!
レジーナの悪だくみもだけど、レイザードがどっかに行ったって教えてあげたいよ~!!
☆~☆~☆~☆
その頃、チェルシー家では娘、妹としての最期となる夕食が始まっておりますが、しんみりした雰囲気なんて何処にある?というくらい笑いに包まれております。
「でな!こいつはこんなデカいヤマメを釣り上げたんだよ」
「だけど、引き上げるのに苦労してな。川に嵌りこんでしまって30分動けなくなったんだ」
「川の水は冷たいだろう?大丈夫だったのか?」
「大丈夫も何も、コイツ大声で叫んでワイバーン呼びやがった」
「ワ、ワイバーン???」
「あぁ、上空から次々に突っ込んでるワイバーンを叩き落して流れを変えやがったんだ」
<<マジか!!>>
「あっ!ワイバーンで思い出した!!」
「どうされたの?シンザン様」
「ちょっと待ってて。すぐ戻る」
そう言って自分の部屋に戻っていくシンザン。
「でも、本当にいいのかい?兄の俺がこういうのもなんだけど、傭兵団で功績はあげてても平民だし結構体は女の子がみたらビックリするほど傷もあるし…なにより顔が…10人男がいれば8番目、9番目くらいの残念な出来だぜ?」
「そうよ。クリスティナ。従姉妹の私から見てもお世辞にも美丈夫とは程遠いわ。目や鼻のパーツの数が他の人と同じってくらいしか取り柄のない顔よ?顔面偏差値は低いわよ?」
「で、でも‥‥わたくしはシンザン様をお慕いして…おりますので…」
ポっと赤くなるクリスティナに一同憐みの目を送ります。
「まぁ、俺もジルドもそうだが、美女と野獣系だって事だよ」
「あら?わたくしはヨハン様は世界一の美大夫と思っておりますわ」
「えぇわたくしもジルの隣に並ぶほどの男は見た事ありませんわ。イケメンですわ」
「ほ、褒めるな…恥ずかしいだろう」
「そうやって赤くなるクマさんだから素敵なのよ(ちゅっ)」
そこにシンザンが戻ってきましたよ。
「何をしに行ってたんだ?」
エドワードがシンザンに問いかけるとシンザンは箱から指輪を取り出します。
「皆に見ててもらいたいんだ。ティナ!」
「なんですの?」
きょとんとしてシンザンの元に席を立ち近寄っていくクリスティナ。
「指輪だ!隣国では結婚してますって証に左手の薬指に指輪をするんだ」
そういって両親である前伯爵夫妻、そして兄3人(エドワードも入ってる!)、姉2人の前でシンザンはクリスティナの指に指輪をはめます。
「うわぁすごい。ピッタリだわ」
「だろう?サイズが判らなくて俺の小指の4分の1にしてもらったんだ」
どんだけデカいんですか!!って・・確かにシンザンの二の腕よりクリスティナのウェストの方が細いですからねぇ。
「お前、いつ指輪なんか買ったんだ?」
「買ったのはリングだけ。石は取ってきた」
「え?シンザン??取って来たってどこから??」
「何処って…クリスティナをもらいに行くって決めたからドラゴンの巣に行ってきた」
<<ドラゴン??>>
「そうだよ?7匹いたから。その中でコレだけがオレンジの魔石だった!」
え~っと…それはとりあえずドラゴン7匹仕留めたって事ですよね?
色々規格外だとは思っていましたが…みんな口が開きっぱなしになりましたよ?どうすんの?
チェルシー家の夜が更けていきました。
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