聖女じゃなくて残念でしたね

cyaru

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第21話  重大な失敗に気が付く

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大急ぎで家に戻ったウェンディは帰りの道中で大変な事に気が付いた。

初回の納品は2週間後なのだが、行くのに1週間かかった。
と、言う事は帰るのも1週間かかる。

帰りついたら残りは1週間しかない。中間地点にホーネストが来てくれているとしても急いで3日。

薬草を摘んで洗って干して煮だして煎じてとしていれば3、4日はあっという間に過ぎる。

――これ、間に合わないんじゃない?――

かと言ってもう山の稜線まで来てしまったので引き返すにも時間がかかる。

――月に1回でもかなりハードになりそうね――

しかし、約束をしてしまったので「月に1度にしてくれ」と手紙を添えることにして、初回は約束をした分を急いで作って兎に角納品は済ませねばならない。

急いで下山し帰宅するなり食事もそっちのけで薬作りに没頭した。

初回はホーネストと落ち合う地点まで3日かかったので4日目はほぼ徹夜。
せっせと葉っぱで薬を包んで用途ごとに仕分けをしてリュックに入れるとまだ空には星が瞬いている頃に出発。

2回目となる山登りはゼェハァ言いながら到着すればホーネストは既に到着して待っていた。

「遅ぇよ!もう帰ろうかと思ったよ」
「ごめんなさい・・・はぁはぁ・・・これでも急いできたのよ」
「仕方ないなぁ。これくらいでヘバんなよ」
「ホー君とは体力が違うのよぉ」
「もう!仕方ないな。セッターの爺さんに次は10日後って言っとくか?」
「と、10日?‥‥あのね、考えたんだけど月に1回が丁度かも。すっかり忘れてたけど下山する日数入れたら1週間はキツイわ」
「月に1回?」
「あ。そうか…ホー君の稼ぎが減っちゃうわね」


簡単に約束をしてしまったが、納品の回数を減らせばホーネストの稼ぎが減ってしまう。
うーん。悩んでいるとホーネストが提案をした。

「ウェンディは家に居ろ。僕が行くよ」
「え?家まで?」
「そうだよ。だったら月に2回でも大丈夫そうだろ?そしたら山の半分まではセッター爺さん、残りの半分はウェンディから駄賃を貰えば週に1回と変わらないからさ」
「ホー君、頭良い!!…って疲れるわよ?」
「疲れないよ。ここまで1日じゃん」
「い、1日?!どんな体力してるの!」

まさかポールとピエールのように鬼の行軍で体力作りをしているんじゃ??と思ったが単に山登りなどに慣れているだけだった。

「判ったわ。ここから見えるの。あの青い屋根の家が私の住んでるところ」
「住んでる?ウェンディの家じゃないの?」
「うーん…まぁ色々あって。じゃぁ次は月に2回になるけどいいかを聞いておいて」
「いいんじゃね?セッター爺さんも大丈夫かなって心配してたし。あ、これ、売り上げ」

じゃらっと音のする袋を出してきたホーネスト。ウェンディは受け取ると「こんなに?!」と目を丸くした。

セッターの店は薄利多売。他の3軒の薬屋よりは安価で薬を売っているのでウェンディの卸値も安いのだが、前回1週間かけて持って行った薬はセッターが買い取ってくれたのは3分の1。残りの3分の2は委託にしたのだが全部売れたのだという。

「全部売れたんだ…凄いわね」
「爺さんの所は安いからな。僕が抓み出された薬屋の5分の1の値段だし」
「そんなに安いの?!」
「そうじゃ無いと平民は薬なんか買えないよ。だけどウェンディの薬。すっごく評判良かったんだよ」
「ほんと?!良かった」

ホーネストの言葉は営業トークではなく本当にあっという間に売り切れた。
歯痛や打撲は平民たちは早くなんとかしたいとセッターの店を訪れる。今回痛み止めなども大量に持って行ったのだが、歯痛は原因を取り除かないと薬の効き目が切れれば痛み出す。

ウェンディの持って行った薬は1週間目で客が開店待ちをして買い求めたのだ。

「隣のおばさんが聖女様の作った薬だから効き目が倍以上って言ってたよ」
「それは買いかぶり過ぎよ」
「そんな事ないよ。火傷だって2、3回塗ったら傷跡も無いんだぜ」
「え…マジで?」

確かに良くなりますようにと祈りながら作ったけれど、直接祈りを捧げて部位の治癒に当たらなくても薬にも力は効果があるのだろうか?ウェンディは考えた。
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