聖女じゃなくて残念でしたね

cyaru

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第20話  お薬製造致します

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「聖女じゃないです!聖女じゃないんです!!」

しかし、目の前で瀕死の母親がピンピンシャッキになってしまったのを見てしまうとその場にいる者にはウェンディは聖女にしか見えない。

「ホンットに違うんです!きっとそろそろ起きられるって時に私が来ただけですってば!」

騒ぎになるのはウェンディも困る。
力が発現したのは事実なので、騒ぎを聞きつければ国王がどう出るか判らない。明らかに今の力は王都で聞いたサラの力よりも聖女らしい、いや聖女そのものの力なのだ。

ウェンディが強く否定をすると全員が空気を読む。
決して自分たちの為に、報奨金欲しさなどでどうにかしようと言う訳ではなく社会の底辺も底辺な貧民窟で暮らしていれば黙っていてほしい事の1つや2つは誰にでもある。

そこに触れずに無関心を装いながら助け合って生きていくのが貧民窟に住む者たちの掟ようのなもの。

「判った。じゃ聖女じゃないって事で」
「ふぇっ?判って頂けました?」
「アンタも若いのに大変だね。でもイイモノを見たからその駄賃を受け取っておくれ。と言っても金はないから何か探し物してれば安く売ってくれる店を教えるとかその程度だけどね」

疑ってかからないといけないのだろうが、不思議とウェンディの気持ちの中に目の前の人たちを見て負の感情は生まれなかった。

――信用して‥‥いいのかな?――

迷ったが、騙されたところで初回なのだし、騙された!と思ったらもうこの街に薬を売らなければいいだけ。そもそもで小麦が買えればいいかなと思っていたので大きく儲けたい訳じゃない。

ウェンディは覚悟を決めた。

「では、お薬を買い取ってくれるお店を教えてください。3軒あると聞いたのですが、中規模なお店は除いて」

そう言って兄妹にパチンとウィンクをするとあんなにフーシャーと威嚇していた兄が「いいよ!」と声をあげた。

「薬を買い取ってくれる店は3軒じゃないよ。4軒。セッターさんの店が一番だよ」
「セッターさん?」
「そう。耄碌爺だけど薬はよく効くんだ。でも母ちゃんには売ってる薬じゃ効かないって言われて」


薬屋だけでなく医者もここに来た時の母親の状態を見れば匙を投げるだろう。放っておけば今夜が越えられるかどうか。明日の朝は迎える事が出来ない状態だったのだから。

「僕、ホーネストって言うんだ。妹はベル」
「あら?お名前を教えてくれるの?私はウェンディよ」
「へ、へぇ…名前だけは可愛いじゃん」
「ふふっ。良く言われるの。じゃぁセッターさんのお店に案内をしてくれる?ホー君?」
「お・・・おぅ!ついてきなよ!」

耳まで真っ赤になったホーネストは先に飛び出して行ったが、まだ追いかけて来ないウェンディを「行くって言ってるだろ!」と舞い戻って呼びに来た。

「おやおや。マセガキが」
「うるせぇ!そんなんじゃねぇよ!」

隣人に揶揄われたホーネストは照れなのか、怒りなのか。顔を真っ赤にして反論する。
ウェンディはホーネストとベルの母親に「では。お大事に」と声を掛けて粗末な家を出た。


★~★

「ほぅ…こりゃ上物だね」
「はい。ゴマカそうの割合はかなり多いんですけども、元がキキスなので」
「なんと!キキス?!幻の木じゃないか!」
「えぇ。でも効能はあると思います。この他には…腹痛と痒み止め、それと試作品なんですけど痛風に効くのも作ってみました」
「こりゃたまげた…腹痛の薬もだかこの痒み止め!かなり伸びる」
「そうですねぇ…あ!成分をかなり抑えめにして王都では赤ちゃん用の保湿に使っているクリームも作ってみました」

セッターはウェンディの持ち込んだ薬を買い取ってはくれたが、全部は買い取れないという。
何故かと言えば買い取るだけの金が店を売っても用意出来ないと言うのだ。

欲をかいても仕方がないとウェンディは通常セッターが買い取っている量だけを買い取ってもらい、残りは「委託販売」の形を取れないかと提案した。

買い取りなら薬を客が買い取れば既にウェンディには金を払っているのでセッターの売り上げになる。しかし売れ残ればセッターは損をする事になる。

委託販売にすればセッターは買い取る必要が無くなるので売れなくても捨てなくて良くなるし、委託料を買い取り価格と同じにすれば、買取分が売れた後は買う人が多ければ多いほど利益になる。

「いいよ。それで手を打とう」
「ありがとうございます。持って帰るのも大変で」
「何処から来たんだい?」
「あ~…えぇっと‥ファムリ村の方向から」
「エェーッ?!あんな遠くから?」
「だ、大丈夫です!効能の期限は長くなるように作ってますので」
「そう言う事じゃない。女の子の足であの山を・・・大変だっただろう」

――えぇ。1週間かかりました――

「よし、こうしようじゃないか。中間地点で薬を受け取るようにすれば日数も半分になる。人はウチで用意するよ」
「そんな事もして頂けるんですか?」
「こんないい薬を作るんだ。1日だって腐らしちゃ勿体ない」
「わぁ。良かった!じゃぁ日を決めましょう。その日に合わせて運びます」

――やった!丸太運びしなくて良くなっちゃった――

街から中間点まで行くのはホーネストが手を挙げた。
聞けばホーネストは背は低いが11歳。食べ物が無いので栄養失調のようなものだ。幼くても家族の為に働くと言い張るホーネストとは週に1度山の中腹で落ち合い、薬を手渡す。代金もその時に受け取る事が決まったのだった。

★~★

今日はここまで~\(^▽^)/

明日は最終日。クリストファーはあの部屋から抜け出せるのか?
そしてサラは一体何のためにやって来たのか?

ウェンディのヒーローは誰だ?!誰だ?!誰だ~白い翼のガッチャ●ンなのか?!

楽しんで頂けると嬉しいです(*^-^*)
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