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第02話 チャンス到来?!
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ここ半年はサリアの我慢の限界を試す日々が続いていた。
幼馴染だというスーメル伯爵家の娘レーナが何故か同席してサリアはデリックとレーナのダブル口撃を連射で受けていた。
「本当に君は何度言われても出来ないね。猿でも学習するよ?」
「リック。そんな言い方しちゃ可哀想よ。生まれが残念なんだもの。多くを望まれてもサリアも困るわよね?」
「そうやってレーナが甘やかすから付けあがるんだよ。先日の夜会のダンスなんか最悪だよ。踊れないならケガをした振りをするとか機転を利かせられないのか?周りが迷惑をするって事も考えて欲しいよ」
ムッとしても言い返したり、表情に出せば何倍にもなって返って来るので、バカな子のふりをして笑みを浮かべ、謝罪の言葉を吐いて心の中では「こんにゃろぉぉ!!」と大絶叫。
婚約を解消できないものかと父親に相談をした事は数知れず。
相談の数と「我儘を言うんじゃない」と返された数が同じ回数だ。
家出も考えたけれど、20歳未満の貴族子女が行方知れずになると騎士団も駆り出しての大掛かりな捜索が行われるし、友人の所に身を隠しているのが見つかったら誘拐として友人の家が処罰されてしまうのでうっかり家出も出来ない。
それとなく目の前の2人。デリックとレーナが一線を越えてくれないかなぁと僅かな期待をしてみるも、超えている気配はなし。がっかりだ。
憂鬱な日々を送っていたが、神は見放していなかった!
いつもなら「終わりの時間まだかなぁ」と気を遠くに飛ばしてデリックの言葉も右から左に流していたサリアだったけれど、今日はデリックの言葉に反応してしまった。
「全く。レーナになれとは言わないが、10分の1、いやいや100分の1でもレーナを見習って欲しいものだ。今のままじゃ婚約も解消するしかないね。公爵家が恥を敢えて抱え込むなんて勘弁してほしいよ」
――婚約…解消…するしかない!デスッテ?!――
サリアは突然立ち上がった。
間、髪を入れずパンパンパン!!
手を打ち鳴らすとシリカ伯爵家から同行してきたメイドのルダが駆け寄って来る。
「な、なんだぁ?」
「なんなの?!」
驚いて背凭れに仰け反るデリックとレーナにサリアは食い気味にルダの肩を掴んだ。
「ルダ!あの書類!カバンに入れてたわよね」
「ファウッ?!遂に出番が?!」
「そう!やっとよ!出して!出して!」
メイドのルダは「遂にこの日が来ようとは!」涙に咽びそうになったが破顔してカバンから書類を取り出しサリアに手渡した。
確認をせずとも、穴が開くほど見た書類。ずっとカバンの中で結婚の日まで温存し最後は暖炉にくべて証拠隠滅するしかないと思っていたけれど、使う日が来るなんて。
――よし!私の埋める欄はキッチリ埋まってるッ!――
サリアは突然訪れた千載一遇の大チャンスに体がプルプルと震えた。
「デリック様、御署名を!」
「なんだ、それは」
「婚約解消の協議書です。さ、さ、こちらとこちら…3枚目にも御署名を!」
グイグイと書類、そしてペンまで用意周到に持ち歩いていたサリアはデリックに「早よ、書けや!」とばかりに差し出した。
いきなりの婚約解消は出来ないけれど、婚約解消に至るまでの間に名前を付けるなら「泣きのもう1回」だろうか。こういう点は改善をするのでと歩み寄りを見せたり、確認したりと言う期間が設けられてしまったのだ。
サリアとしては面倒だけれど、折角なら利用させてもらう事にした。
協議書を早速作成し、日頃からデリックに言われている言葉をつらつらと書き連ねただけだが、デリックの署名さえもらえればあと1年もしないうちにサリアは20歳となる。
20歳になれば家を飛び出しても捜索されることはないし「やっぱり私にはダメでした」と協議書を置手紙に添えて家を出ればいいだけだ。
意気揚々とデリックに考えに考えた文言を書き連ねた婚約解消協議書を差し出した。
幼馴染だというスーメル伯爵家の娘レーナが何故か同席してサリアはデリックとレーナのダブル口撃を連射で受けていた。
「本当に君は何度言われても出来ないね。猿でも学習するよ?」
「リック。そんな言い方しちゃ可哀想よ。生まれが残念なんだもの。多くを望まれてもサリアも困るわよね?」
「そうやってレーナが甘やかすから付けあがるんだよ。先日の夜会のダンスなんか最悪だよ。踊れないならケガをした振りをするとか機転を利かせられないのか?周りが迷惑をするって事も考えて欲しいよ」
ムッとしても言い返したり、表情に出せば何倍にもなって返って来るので、バカな子のふりをして笑みを浮かべ、謝罪の言葉を吐いて心の中では「こんにゃろぉぉ!!」と大絶叫。
婚約を解消できないものかと父親に相談をした事は数知れず。
相談の数と「我儘を言うんじゃない」と返された数が同じ回数だ。
家出も考えたけれど、20歳未満の貴族子女が行方知れずになると騎士団も駆り出しての大掛かりな捜索が行われるし、友人の所に身を隠しているのが見つかったら誘拐として友人の家が処罰されてしまうのでうっかり家出も出来ない。
それとなく目の前の2人。デリックとレーナが一線を越えてくれないかなぁと僅かな期待をしてみるも、超えている気配はなし。がっかりだ。
憂鬱な日々を送っていたが、神は見放していなかった!
いつもなら「終わりの時間まだかなぁ」と気を遠くに飛ばしてデリックの言葉も右から左に流していたサリアだったけれど、今日はデリックの言葉に反応してしまった。
「全く。レーナになれとは言わないが、10分の1、いやいや100分の1でもレーナを見習って欲しいものだ。今のままじゃ婚約も解消するしかないね。公爵家が恥を敢えて抱え込むなんて勘弁してほしいよ」
――婚約…解消…するしかない!デスッテ?!――
サリアは突然立ち上がった。
間、髪を入れずパンパンパン!!
手を打ち鳴らすとシリカ伯爵家から同行してきたメイドのルダが駆け寄って来る。
「な、なんだぁ?」
「なんなの?!」
驚いて背凭れに仰け反るデリックとレーナにサリアは食い気味にルダの肩を掴んだ。
「ルダ!あの書類!カバンに入れてたわよね」
「ファウッ?!遂に出番が?!」
「そう!やっとよ!出して!出して!」
メイドのルダは「遂にこの日が来ようとは!」涙に咽びそうになったが破顔してカバンから書類を取り出しサリアに手渡した。
確認をせずとも、穴が開くほど見た書類。ずっとカバンの中で結婚の日まで温存し最後は暖炉にくべて証拠隠滅するしかないと思っていたけれど、使う日が来るなんて。
――よし!私の埋める欄はキッチリ埋まってるッ!――
サリアは突然訪れた千載一遇の大チャンスに体がプルプルと震えた。
「デリック様、御署名を!」
「なんだ、それは」
「婚約解消の協議書です。さ、さ、こちらとこちら…3枚目にも御署名を!」
グイグイと書類、そしてペンまで用意周到に持ち歩いていたサリアはデリックに「早よ、書けや!」とばかりに差し出した。
いきなりの婚約解消は出来ないけれど、婚約解消に至るまでの間に名前を付けるなら「泣きのもう1回」だろうか。こういう点は改善をするのでと歩み寄りを見せたり、確認したりと言う期間が設けられてしまったのだ。
サリアとしては面倒だけれど、折角なら利用させてもらう事にした。
協議書を早速作成し、日頃からデリックに言われている言葉をつらつらと書き連ねただけだが、デリックの署名さえもらえればあと1年もしないうちにサリアは20歳となる。
20歳になれば家を飛び出しても捜索されることはないし「やっぱり私にはダメでした」と協議書を置手紙に添えて家を出ればいいだけだ。
意気揚々とデリックに考えに考えた文言を書き連ねた婚約解消協議書を差し出した。
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