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アブレド国王の裁決②
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☆彡☆彡
以下 「陛下」『ベルファン』【ベッカリー】の区分です
☆彡☆彡
「では、ベルファン。お前はどうしてその女と一緒に居ないのだ。儂を謀ってまで添い遂げたかったのであろう?」
『あの女は酷い女でした。ワードルに渡った後は私に酷い事ばかり。利用価値がないと見るや私を馬車に乗せて追放したのです。馬車が付いた先がアブレド国だったのが不幸中の幸いでした』
「不用品を返品する。流石は商人の娘だな。聞けばワードルで散々に豪遊しその娘以外にも愛人、恋人となのる娼婦を娘の屋敷に引き入れて朝から酒を飲んで騒いでいたとあるが」
『それは誤解です。私は社交辞令として誘いの言葉を掛けただけなのに女たちは勝手に来たのです。本当についてくるなど教育のなっていない者。私に罪はありません。それに金を渡せば女たちは帰っていきました』
「それはそうだろう。娼婦は金と引き換えに楽しい時間を売るのが商売。ただ、無一文のお前が売ったのはその娘の家財道具。お前は偶々アブレド国行の馬車に乗せられたのではなく、アブレド国行の馬車だから乗せられたのだ。お前が使った金は手切れ金でくれてやると書状が届いている」
『ならばもういいでしょう?反省をしたのです。父上っ』
また側近達と何やら話をしているが、次に名前を呼ばれたのは私だった。
ベルファン殿下に罪を言い渡す流れかと思ったのに何故私だ?小さな違和感を感じた。
「では、ベッカリー。ブランセ侯爵令嬢が息子のルシオンに嫁いだ後の事だ」
【はい】
心臓がドキリと跳ねた。
まさか街での襲撃と街道で破落戸にやらせた事を知っているのか?
嫌な汗が頬を伝って、白い珊瑚の亡骸にポトリと落ちた。
「レオパス子爵を探していたと聞いた気がするが、何故私兵を使い襲わせたのだ」
【ご、誤解です。あの男は確かに昔、伯爵家だった頃に雇っておりましたが素行が悪く暇を出したのです。やめさせた人間があんな貧民窟のような場で人を襲い、ケガをさせて家探しした事まで責任は負えません】
「ベッカリー。儂は ”何故私兵に襲わせた” かと聞いただけでその場所や家探しについては何も聞いては居らんが、知っていたのか」
【い、いえ、存じません。人づてに聞いたものですから。ですが襲わせたのは私ではありません】
「正確には、私だけではありません だろうな」
私はゴクリと生唾を飲んだが、数日水すら飲めていない。
砂混じりの息を飲み込んだ私は咳き込んでしまった。
「だが、お前は見つけていたのだろう?そうでなければトマフィー国の王弟クリストファー殿下の馬車を野盗に襲わせたりもしないだろう。金を払ったのは嫁のシャーロットだがご丁寧に保証人になっておるではないか」
【そ、それはブランセ侯爵家が絡んでおりまして…その…こっ断るに断れなかったのです。何よりトマフィー国の王弟殿下の馬車だなんて知りませんでした!】
「何を戯けた事を。その貧民窟で負傷をした男性はクリストファー殿下の従者。そして街道で襲ったのはトマフィー国王弟クリストファー殿下ご本人だ。同乗していたのはレオパス子爵とその娘。襲ったのは共にお前が昔雇っていたという私兵。知りませんでした、偶々でしたとするには重複する部分が多い。何より金もないのにその金を工面させてまでとなれば見苦しい言い逃れは止める事だ」
【シャーロットなのです!全て絵図を描いたのはシャーロットなのです。あの女は私の息子ルシオンの看病もせずにブランセ侯爵家の力を使って私を嵌めたのです。きっとシャーロットに入れ知恵をしたのはブランセ侯爵に間違い御座いませんッ。伯爵家からの成り上がりである私は嵌められたのですっ】
「今度は責任転嫁か。そのシャーロットがブランセ侯爵家から盗み出した宝飾品を売って得た金で豪遊していたお前の言葉は信用に値しない。ブランセ侯爵家は一族郎党、それぞれ遠戚の姻族までが私財を売り払い、ブランセ侯爵は爵位を返上したぞ。お前とは腹の括り方が違うようだな。尤も孫を使用人に財産の一部と共に預けてのんびり隠居生活をしようとしたようだが、うまい話は早々に転がってはいないものだ」
【なっ…ではシャーロットは‥】
「既に捕えてある。ついでにお前の息子ルシオンは…お前は人の親か?成人したとはいえ子には変わりないというに惨いものよ。投薬が利いて、ここ3日で容体は安定したが失う物が多かったようだな。離縁した夫人が孫と共に引き取るそうだが、ルシオンにも罪がないとは言えない。賠償金は屋敷を売ってでも工面するそうだ」
そんなバカな。シャーロットが使えないのであれば釈放をされた後、遊ぶ金がないじゃないか。離縁した妻の元に転がり込む事も出来ないではないか。
なにより私がこんな目に合っているというのにルシオンは至れり尽くせりで看病されているだと?!私はこの3日間水すら飲めていない空腹なのに!
手を組んだのがシャーロットだから足が付いたのか。
いや、シャーロットに工面させた金を使いまくったベルファン殿下が悪いのだ。あの金があれば他国に逃げて大人しくしていれば暮らせたはずだ。
どうして私の周りには能無ししかいないのだ!!
『ち、父上、私はどうなるのです?こいつらがした事に私は関与していませんっ』
「ベルファン。お前のくだらない茶番劇から始まった事だ。シャーロットから毟り取った金はお前の私財からブランセ侯爵家を経てトマフィー国にいるレオパス子爵家に支払われる。いや、もう子爵家ではないな。この件には王家とて瑕疵がない訳ではない。時があるとのんびりしていた儂にも罪がある。事の重大さを明日の事と思っていれば少なくとも5年前、レオパス子爵家に迷惑はかけなかっただろう。焼け石に水だろうが没収した財は全てトマフィー国にいるレオパス子爵家に回される」
『私の私財を?!何故回りまわってレオパス子爵家に?!どういうことなのですかっ!』
私は食い下がるベルファン殿下と同じ思いだった。
何故レオパス子爵家に全てが支払われるのだ?
いや、待て。ならばあの令嬢はルシオンの事が好きだったはずだ。ルシオンの言う事なら何でも聞いていた。ルシオンの病状を盾にすればもう一度婚約を結び・・・いやそのまま結婚をさせればいい。
確か令嬢は足を悪くしていたと報告もあった。結婚相手にも苦労している事だろう。
なにより、トマフィー国はこのアブレド国よりも住みやすいと聞く。今まですまなかったと土下座の1つでもすれば、レオパス子爵はバカだから私を許すだろう。
その後は、巨額の資産を管理する手伝いをしながらのんびりと過ごせばいい。
それならば懲役で4、5年くらい臭い飯を食うのも笑い話の種に出来ると言うものだ。
しかし陛下の言葉は私の全てを打ち砕くものだった。
「レオパス子爵令嬢、いやエルシー様は替えの利かないお人だ」
――なんだ?どうして陛下があんな小娘に ”様” をつけるのだ?――
「トマフィー国、王弟クリストファー殿下の完全な庇護下でこの先三か国の水源を管理する水の神となられる。現在のニレイナ様の後を継げる唯一のお人だ。ベルファン、お前も名だけは聞いた事があっただろう。家系図を遡らなければ儂も気が付かなかった。王家の大きな失態だ。きちんと保護していればアブレド国は他国より優位に立てたと言うに」
『あの小娘が?そんなバカな!!』
――水の神ってなんだ?ベルファンは知っていて何故私は知らないのだ?――
「今のアブレド国は分水の交渉テーブルにつけるかどうかも微妙。ブランセ侯爵家、王家、そしてベッカリー。全ての私財を投げ打った慰謝料で末席でも用意してもらえるかどうか。ルレイザ国王もトマフィー国王も儂らの首など置き場所にも困るし、臭いから要らないと言われてしまった。意味が判るか?」
『属国に…なれと言う事ですか』
「そこは判っていたようだな。それさえ解らぬ王子ならこの場で首を刎ねる所だった」
【陛下!なんなのです?水の神など聞いた事もないっ】
「陞爵の際に説明があったはずだ。公爵、侯爵家には伝えているからな」
なんだ?知らないぞ?もしかして陞爵の時に7時間あった説明の中にあったのか?あまりに長すぎて途中居眠りをしてしまったあの時間に説明があったなんて私は聞いていない!
「ベッカリー。何事もなく、真面目に融資の金をコツコツと返済し息子と令嬢が結ばれていれば、お前は三か国の王の私財を足したよりも多くの財に囲まれておっただろうな。安心しろ。クリストファー殿下からお前とベルファンの新しい仕事も幾つか提示されている。溶岩の噴きだす火口を掃除するのか、氷藻で覆われた湖の底を掃除するか。誰もやる者がおらんで、好きな方を選ばせてくれるそうだし出来高次第で賃は弾むそうだ。羨ましい事だ」
嘘だろう…。溶岩が吹き出すような火口なんて掃除する前にこっちが蒸発してしまう。氷藻で覆われた湖なんか水深100トルメ以上あるぞ。水圧で潰されるじゃないか!いや潰される前に凍死するぞ。
「特にベッカリー。お前には息子の分も働くようにと就寝、休憩時間を業務に当てて良いと書簡で通達もあった。倍働けばその分、今まで通り豪遊が出来るな。来月まで地下牢でゆっくり体を休めるがよい」
どんなに叫んでも陛下は振り返ることなく立ち去ってしまった。
そして、ゆっくり体を休めればいいと地下牢に戻された私とベルファン殿下は、手足の拘束も口枷も外されたが、温かい湯気の出るスープはどんなに手を伸ばしても指先も届かない場所に置かれた。
向かいの牢のベルファン殿下は足を格子の間から出した。
初めてベルファン殿下は賢いなと思い、同じように私も足を伸ばした。つま先が器に届いたベルファン殿下は器用に手繰り寄せ食事にありつけた。
だが、私の足は短く器に届かなかった。
以下 「陛下」『ベルファン』【ベッカリー】の区分です
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「では、ベルファン。お前はどうしてその女と一緒に居ないのだ。儂を謀ってまで添い遂げたかったのであろう?」
『あの女は酷い女でした。ワードルに渡った後は私に酷い事ばかり。利用価値がないと見るや私を馬車に乗せて追放したのです。馬車が付いた先がアブレド国だったのが不幸中の幸いでした』
「不用品を返品する。流石は商人の娘だな。聞けばワードルで散々に豪遊しその娘以外にも愛人、恋人となのる娼婦を娘の屋敷に引き入れて朝から酒を飲んで騒いでいたとあるが」
『それは誤解です。私は社交辞令として誘いの言葉を掛けただけなのに女たちは勝手に来たのです。本当についてくるなど教育のなっていない者。私に罪はありません。それに金を渡せば女たちは帰っていきました』
「それはそうだろう。娼婦は金と引き換えに楽しい時間を売るのが商売。ただ、無一文のお前が売ったのはその娘の家財道具。お前は偶々アブレド国行の馬車に乗せられたのではなく、アブレド国行の馬車だから乗せられたのだ。お前が使った金は手切れ金でくれてやると書状が届いている」
『ならばもういいでしょう?反省をしたのです。父上っ』
また側近達と何やら話をしているが、次に名前を呼ばれたのは私だった。
ベルファン殿下に罪を言い渡す流れかと思ったのに何故私だ?小さな違和感を感じた。
「では、ベッカリー。ブランセ侯爵令嬢が息子のルシオンに嫁いだ後の事だ」
【はい】
心臓がドキリと跳ねた。
まさか街での襲撃と街道で破落戸にやらせた事を知っているのか?
嫌な汗が頬を伝って、白い珊瑚の亡骸にポトリと落ちた。
「レオパス子爵を探していたと聞いた気がするが、何故私兵を使い襲わせたのだ」
【ご、誤解です。あの男は確かに昔、伯爵家だった頃に雇っておりましたが素行が悪く暇を出したのです。やめさせた人間があんな貧民窟のような場で人を襲い、ケガをさせて家探しした事まで責任は負えません】
「ベッカリー。儂は ”何故私兵に襲わせた” かと聞いただけでその場所や家探しについては何も聞いては居らんが、知っていたのか」
【い、いえ、存じません。人づてに聞いたものですから。ですが襲わせたのは私ではありません】
「正確には、私だけではありません だろうな」
私はゴクリと生唾を飲んだが、数日水すら飲めていない。
砂混じりの息を飲み込んだ私は咳き込んでしまった。
「だが、お前は見つけていたのだろう?そうでなければトマフィー国の王弟クリストファー殿下の馬車を野盗に襲わせたりもしないだろう。金を払ったのは嫁のシャーロットだがご丁寧に保証人になっておるではないか」
【そ、それはブランセ侯爵家が絡んでおりまして…その…こっ断るに断れなかったのです。何よりトマフィー国の王弟殿下の馬車だなんて知りませんでした!】
「何を戯けた事を。その貧民窟で負傷をした男性はクリストファー殿下の従者。そして街道で襲ったのはトマフィー国王弟クリストファー殿下ご本人だ。同乗していたのはレオパス子爵とその娘。襲ったのは共にお前が昔雇っていたという私兵。知りませんでした、偶々でしたとするには重複する部分が多い。何より金もないのにその金を工面させてまでとなれば見苦しい言い逃れは止める事だ」
【シャーロットなのです!全て絵図を描いたのはシャーロットなのです。あの女は私の息子ルシオンの看病もせずにブランセ侯爵家の力を使って私を嵌めたのです。きっとシャーロットに入れ知恵をしたのはブランセ侯爵に間違い御座いませんッ。伯爵家からの成り上がりである私は嵌められたのですっ】
「今度は責任転嫁か。そのシャーロットがブランセ侯爵家から盗み出した宝飾品を売って得た金で豪遊していたお前の言葉は信用に値しない。ブランセ侯爵家は一族郎党、それぞれ遠戚の姻族までが私財を売り払い、ブランセ侯爵は爵位を返上したぞ。お前とは腹の括り方が違うようだな。尤も孫を使用人に財産の一部と共に預けてのんびり隠居生活をしようとしたようだが、うまい話は早々に転がってはいないものだ」
【なっ…ではシャーロットは‥】
「既に捕えてある。ついでにお前の息子ルシオンは…お前は人の親か?成人したとはいえ子には変わりないというに惨いものよ。投薬が利いて、ここ3日で容体は安定したが失う物が多かったようだな。離縁した夫人が孫と共に引き取るそうだが、ルシオンにも罪がないとは言えない。賠償金は屋敷を売ってでも工面するそうだ」
そんなバカな。シャーロットが使えないのであれば釈放をされた後、遊ぶ金がないじゃないか。離縁した妻の元に転がり込む事も出来ないではないか。
なにより私がこんな目に合っているというのにルシオンは至れり尽くせりで看病されているだと?!私はこの3日間水すら飲めていない空腹なのに!
手を組んだのがシャーロットだから足が付いたのか。
いや、シャーロットに工面させた金を使いまくったベルファン殿下が悪いのだ。あの金があれば他国に逃げて大人しくしていれば暮らせたはずだ。
どうして私の周りには能無ししかいないのだ!!
『ち、父上、私はどうなるのです?こいつらがした事に私は関与していませんっ』
「ベルファン。お前のくだらない茶番劇から始まった事だ。シャーロットから毟り取った金はお前の私財からブランセ侯爵家を経てトマフィー国にいるレオパス子爵家に支払われる。いや、もう子爵家ではないな。この件には王家とて瑕疵がない訳ではない。時があるとのんびりしていた儂にも罪がある。事の重大さを明日の事と思っていれば少なくとも5年前、レオパス子爵家に迷惑はかけなかっただろう。焼け石に水だろうが没収した財は全てトマフィー国にいるレオパス子爵家に回される」
『私の私財を?!何故回りまわってレオパス子爵家に?!どういうことなのですかっ!』
私は食い下がるベルファン殿下と同じ思いだった。
何故レオパス子爵家に全てが支払われるのだ?
いや、待て。ならばあの令嬢はルシオンの事が好きだったはずだ。ルシオンの言う事なら何でも聞いていた。ルシオンの病状を盾にすればもう一度婚約を結び・・・いやそのまま結婚をさせればいい。
確か令嬢は足を悪くしていたと報告もあった。結婚相手にも苦労している事だろう。
なにより、トマフィー国はこのアブレド国よりも住みやすいと聞く。今まですまなかったと土下座の1つでもすれば、レオパス子爵はバカだから私を許すだろう。
その後は、巨額の資産を管理する手伝いをしながらのんびりと過ごせばいい。
それならば懲役で4、5年くらい臭い飯を食うのも笑い話の種に出来ると言うものだ。
しかし陛下の言葉は私の全てを打ち砕くものだった。
「レオパス子爵令嬢、いやエルシー様は替えの利かないお人だ」
――なんだ?どうして陛下があんな小娘に ”様” をつけるのだ?――
「トマフィー国、王弟クリストファー殿下の完全な庇護下でこの先三か国の水源を管理する水の神となられる。現在のニレイナ様の後を継げる唯一のお人だ。ベルファン、お前も名だけは聞いた事があっただろう。家系図を遡らなければ儂も気が付かなかった。王家の大きな失態だ。きちんと保護していればアブレド国は他国より優位に立てたと言うに」
『あの小娘が?そんなバカな!!』
――水の神ってなんだ?ベルファンは知っていて何故私は知らないのだ?――
「今のアブレド国は分水の交渉テーブルにつけるかどうかも微妙。ブランセ侯爵家、王家、そしてベッカリー。全ての私財を投げ打った慰謝料で末席でも用意してもらえるかどうか。ルレイザ国王もトマフィー国王も儂らの首など置き場所にも困るし、臭いから要らないと言われてしまった。意味が判るか?」
『属国に…なれと言う事ですか』
「そこは判っていたようだな。それさえ解らぬ王子ならこの場で首を刎ねる所だった」
【陛下!なんなのです?水の神など聞いた事もないっ】
「陞爵の際に説明があったはずだ。公爵、侯爵家には伝えているからな」
なんだ?知らないぞ?もしかして陞爵の時に7時間あった説明の中にあったのか?あまりに長すぎて途中居眠りをしてしまったあの時間に説明があったなんて私は聞いていない!
「ベッカリー。何事もなく、真面目に融資の金をコツコツと返済し息子と令嬢が結ばれていれば、お前は三か国の王の私財を足したよりも多くの財に囲まれておっただろうな。安心しろ。クリストファー殿下からお前とベルファンの新しい仕事も幾つか提示されている。溶岩の噴きだす火口を掃除するのか、氷藻で覆われた湖の底を掃除するか。誰もやる者がおらんで、好きな方を選ばせてくれるそうだし出来高次第で賃は弾むそうだ。羨ましい事だ」
嘘だろう…。溶岩が吹き出すような火口なんて掃除する前にこっちが蒸発してしまう。氷藻で覆われた湖なんか水深100トルメ以上あるぞ。水圧で潰されるじゃないか!いや潰される前に凍死するぞ。
「特にベッカリー。お前には息子の分も働くようにと就寝、休憩時間を業務に当てて良いと書簡で通達もあった。倍働けばその分、今まで通り豪遊が出来るな。来月まで地下牢でゆっくり体を休めるがよい」
どんなに叫んでも陛下は振り返ることなく立ち去ってしまった。
そして、ゆっくり体を休めればいいと地下牢に戻された私とベルファン殿下は、手足の拘束も口枷も外されたが、温かい湯気の出るスープはどんなに手を伸ばしても指先も届かない場所に置かれた。
向かいの牢のベルファン殿下は足を格子の間から出した。
初めてベルファン殿下は賢いなと思い、同じように私も足を伸ばした。つま先が器に届いたベルファン殿下は器用に手繰り寄せ食事にありつけた。
だが、私の足は短く器に届かなかった。
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