1番じゃない方が幸せですから

cyaru

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続編

VOL.26

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「だぁかぁらぁ。私は悪くないって言ってるじゃない」

「罪の意識はないってことか?」

「罪の意識も何も、誰も彼もが喜ぶことをしただけ。また頼むよって言った客もいたし、客を回してって言ってきた子もいるのよ?なんでそれが罪?まさか官吏さんってぇ…君が美しいのが罪だとか言っちゃうタイプ?」

アジメストは自分のしたことが悪い事だという意識が全くない。
善意でした事でもない。対価を貰っているのでビジネス。ただ形の残らないビジネスだっただけと言い張る。

違法売春についてアジメストほどあっけらかんと自白した者は過去に1人もいない。
なのにアジメストには「過去の成功ビジネス」としか思ってない節があった。


「官吏殿…訴状が届きました」

部下が持ってきたのは平民だが過去にルワード公爵夫人と名乗る女に恐喝されたという告訴状の束だった。

アジメストは学業成績は最下位だったが文字が読めない訳ではない。
向かい合わせに座る官吏がテーブルに置いた告訴状を幾つか手に取って、「ふーん」まるで他人事のように文字に目を走らせた。

「へぇ。続きが書けない作家のくせにこういうの早いんだ?」

「覚えがあるのか?」

「あるっていうか…週刊誌って毎週連載でしょう?3、4か月先まで原稿は出来てるって聞いたことがあったから読ませてってお願いしただけー。でも出来てなかったから3時間?4時間だったかな?作家として、この在り方ってどうなの?って質問攻めにしちゃった。文句じゃないわよ?質問ね。泣いてたけどさぁ…泣くより書けって話よね。でね?帰ってくれとか言うの~。あんたの詰まんない話を読んでやるって言ってるのに失礼過ぎない?」

「ならこっちはどうだ。髪結師だが?」

「あぁこれ?偉そうに予約客のみとか看板あげてるから営業の仕方をレクチャーしたの。だって考えてみて?客なんて飛び入りも受け入れた方が売り上げになるでしょう?予約客なんてちゃっちゃと済ませて回転数あげなきゃ。そんな技術もないのに看板あげて営業するってどうなのって話。腕もないのにね~。判ったかと思ったけど解ってなかったかぁ。バカそうな顔してたし」

「覚えがあるんだな?ならこの公演の興行券は覚えているか?」

「あーこれね。覚えてる。田舎者のくせに観劇したいとか、俳優のおっかけしてるとか馬鹿だから現実を教えてあげようと一肌脱いだのよ。俳優なんて結局自分の男にならないのになけなしの金出して。社会勉強ってのを身をもって知れてよかったね~って思ったけど…こんな訴え起こすなんて田舎者は困るわよね。警護隊だって暇じゃないのにご苦労様だわ。同情しちゃう」


官吏も今までいろいろな犯罪者を取り調べしてきたがアジメストのようなタイプは初めてで精神診療学の研究所に送ろうかとも考えたが違法売春の経営となればそれも出来ない。

アジメストには再度違法売春の確認をしたが供述が変わる事もなかった。
念のため、1日空けて再度の聴取も5回行ったが「同じこと何度も言わせないで。馬鹿なの?」と5回目に聴取に立ち会った第3王子に唾を吐いた事で刑の執行が決まった。

目隠しをされて断頭台に据え付けらえたが最期まで「どんなプレイなの?」と終始楽し気な声をあげていたが、刃が落ちた後は静かになった。


★~★

エクセは静かになった牢で牢番が食事を持ってくる度に「ルビーに会わせてくれ」と懇願した。

「いい加減にしなって。アンタの知ってるルビーと会頭さんのルビーさんは別人だって」

「いいや、違う。何かの間違いなんだ。頼む会わせてくれ。それではっきりするだろう?」

「そんなの牢番の俺が決める事じゃないしさ。それに今、公爵家が廃家になってるから売春とかさ、俺がこんな事言っちゃいけないんだけど、知らなかったで通せば懲役で済むかも知れないしさ。大人しくしときなって」

牢番の人の子。
あまりにもエクセが縋るのでつい情が出てしまったがルビーに会わせるかどうかなど決められることでもない。「諦めろ」「別人だよ」というのが精一杯だった。

そんなある日。

「エクセ。出ろ」

官吏の言葉にエクセの肩はビクンと跳ねて顔をようよう向けたが力が抜けて立ち上がる事も出来なかった。

牢の中にいつもの牢番ではない牢番が2人入ってきてエクセの腕を掴み、立ち上がらせると引きずるように牢の外に出された。

「良かったな。公爵家が廃家になったことで懲役で済むそうだぞ?」

「え?懲役…」

「お前がルビーエッグ商会の会頭の愛人みたいなことを言うから無駄に審理が長引いたが、会頭は終始一貫、お前の事は知らないので雇えず恨みに思ったんだろうと言ってな。自分の件で侮辱罪など罪が加えられるのは望まないそうだ。懲役の場所も選べるぞ?塹壕処理の10年か、離島の40年。良かったな」

――何が良かっただよ!!どっちも地獄じゃないか――

離島は刑期が長いが看守もいない地。ただし看守がいないのは食べ物も飲料水も自給自足。完全なる弱肉強食の世界で今まで流刑されたもので戻ってきた罪人はいない。

塹壕の処理は未だに領土を奪われた亡国の兵士たちが奇襲を仕掛けてくるし、塹壕の深さは4,5mだが長さが250kmあって戦後20年以上経っているのに埋めて平地になったのは僅かに3km。
埋めるための土を30km離れた山を切り崩すのも囚人の仕事で、それを運ぶのも囚人の仕事。逃げだせば見張りの兵士に斬られるか、亡国の兵士の恨みの私刑を受けるか。

「行きたくない…行きたくないーっ」

「そうは言っても仕方ないだろう。あの女を止められなかったのもあるし幇助、共助も罰せられるんだから」

「お願いです。なら最後に!最後にルビーに会わせてください。ルビーならもっと刑が軽くなるように保釈金、いえ保証金も出してくれます」

「無理だろ。お前の言うルビーは何処を探したっていないんだから」

「います!ルビーエッグ商会の会頭のルビーに会わせてくれたら全て解決するんです!」

「しつこいなぁ。会頭本人がお前を知らないと言ってるんだぞ」

「僕が罪人だからですよ!知らんぷりをしようとしてるんです」

「なら保証金を出して更なる減刑もないだろう。お前、言ってることが矛盾してるぞ」

「だとしてもです!お願いです!流刑でも塹壕でも合わせてくれるならどっちでもいいから!会わせてくれよぅ」


泣き叫ぶエクセだったが、願いは叶わず連行されたのは判決場。
そこで「流刑でも塹壕でも」と先に「流刑」と言ったので、40年の懲役刑が確定した。

ぐすぐすと泣きながら判決場を出たエクセだったが、流刑後に送られる当日、その切なる願いが叶うとは思ってもみなかった。
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