魅了の対価

cyaru

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第18話   伝書鳩の知らせ

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ホーホーホッホゥ。

「お食べ~。美味しい?」

ホーホーッホッホッホ。
クルルクルックゥ。


ポルク侯爵家に飛んできたポルク伝書鳩は粒を乾燥させたトウモロコシの実がご褒美。

「遠いところをありがとう。疲れたわよね」

ホーホーホッホゥ

手の平に粒を乗せて食べさせると嘴が鋭いので出窓に並べた鉢植えを寄せて皿を置きシスティアーナは鳩にトウモロコシの粒を与える。

その隣にはカイザーがいて「はい」と次に追加する粒をシスティアーナに渡した。

「ありがとう。カイザー」

「どういたしまして。でもこいつら満腹になるまでとなると…明日になるぞ?」

「そんなに食いしん坊なの?!」

ポルク侯爵家に厄介になって間もなく1か月。
カイザーとシスティアーナの距離は縮まった。

まだカイザーは気持ちを打ち明けるまでには至っていないが、湯あみと着替えはエミリアの侍女が行ってもそれ以外はシスティアーナから離れようとしないカイザーにシスティアーナが根負けしたとも言える。

ああっつ!真夏の炎天下よりアツいわぁ」

エミリアが手を扇代わりにして自分の顔に風を送りながら、ポルク侯爵が読み終わったと鳩が届けてくれた短い手紙を持ってきた。

手紙と言っても鳩の足に括りつけられる小さな紙に書かれただけのもの。
しかし、その文面はシスティアーナを心から安心させる文面が書かれていた。

「お父様もお母様も無事に到着したって。お兄様も間もなく合流って」

「良かったな。これで一安心だ」

カイザーはシスティアーナの肩を抱いたが、直ぐにべりべりとエミリアに手が剥がされた。

「兄さま?ちょっとどさくさに紛れてないかしら?」

「お、俺はそんなつもりは…」

「はい、退いて。ティアをギュッと抱きしめて喜びを分かち合うのはわ・た・しなの!はい、退いて退いて」

「お、おい」

「エミーったら。でもほら、見て。お父様とお母様、元気だってここに書いてあるの」

「良かったわね。ティアッ!」

ギュッと抱き合うエミリアとシスティアーナだったが、エミリアは「えいっ」くるりと半回転し、カイザーにシスティアーナの背中を、抱き合う自分顔を向けた。

「むふぅ~」

カイザーに向かって「してやってり」と笑うとカイザーが拳骨を落とす素振りをした。

「あ、そうだ。お父様がティアに話があるんだって」

「そうなの?何時がいいかしら。侯爵様はお忙しいでしょう?」

「暇・ひま・ヒマ~。行こっ。私が連れて行ってあげる」

「いいの?お約束もないのに」

「お父様が呼んでるの。だからいいの~。ね?私も一緒に話を聞いてもいい?」

「エミリア、お前はダメだ。父上はエミリアに話があるんじゃないだろう?」

カイザーが口を挟んできたが、エミリアは聞く耳を持たずカイザーを置いてシスティアーナの背を押しポルク侯爵の執務室まで案内をした。

ポルク侯爵の執務室は片付いている筈なのに何故か山積みになった書籍に開いたままの報告書。調べ物でもしていたのだろうか。うっかり躓いてしまうと大惨事を招きそうな状況になっていた。


「すまないね。散らかっているんだが…全て関係しているものばかりなんだ」

「え?これ、何処から引っ張り出してきたの?え?え?これって何時の時代のもの?黴臭ぁい!」

広げられている書類や本の中にはかなりの年代物もあるようでエミリアが触れるだけで紙が粉々になりそうな色も変わったページを捲る。

「実はこれは4つある侯爵家に代々伝わる報告書だったり書籍なんだが…まぁ座ってくれ」

ソファを勧められシスティアーナが腰を下ろすとその隣に当たり前のように座りそうになったカイザーを突き飛ばしエミリアが隣に陣取った。

「お前なぁ…」

「ふっふーん。ティアの隣はわ・た・し♡ねぇティア~♡」

「それは良いけど…大丈夫?」

「何が?」

「本食い虫、いるわよ?」

「え?嘘。マジ?」

「ほら、ここ…。ここにも」

「いやぁん!!虫嫌いっ!なぁんか痒くなってき――(ばしっ)痛ったぁい!」

騒ぐエミリアの頭を軽くぺちっとはたいたカイザーにエミリアは場所を譲った。

兄妹を細い目になりながら見ていたポルク侯爵はシスティアーナの両親が無事だと書かれた紙と同じ大きさの紙をシスティアーナに差し出した。

伝書鳩は運べる手紙の量が限られるため、両足に括りつける事がある。
その片方の紙片だった。

「ジルス侯とは幼馴染でね。お互い侯爵家という重い責務を担わねばならず励まし合ったものだよ」

「お父様と?そうだったのですか」

「小さい頃は泣き虫でね。私たちが幼い頃でもこんな話をすると頭がおかしいと言われたものだが、今回の事であながちお伽噺もバカには出来ない、いや戒めとしてマイルドになって伝えられてきたのだなと実感しているところだ」

渡された紙には「魔女ロージェリア」と書かれていた。

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