18 / 31
第18話 伝書鳩の知らせ
しおりを挟む
ホーホーホッホゥ。
「お食べ~。美味しい?」
ホーホーッホッホッホ。
クルルクルックゥ。
ポルク侯爵家に飛んできたポルク伝書鳩は粒を乾燥させたトウモロコシの実がご褒美。
「遠いところをありがとう。疲れたわよね」
ホーホーホッホゥ
手の平に粒を乗せて食べさせると嘴が鋭いので出窓に並べた鉢植えを寄せて皿を置きシスティアーナは鳩にトウモロコシの粒を与える。
その隣にはカイザーがいて「はい」と次に追加する粒をシスティアーナに渡した。
「ありがとう。カイザー」
「どういたしまして。でもこいつら満腹になるまでとなると…明日になるぞ?」
「そんなに食いしん坊なの?!」
ポルク侯爵家に厄介になって間もなく1か月。
カイザーとシスティアーナの距離は縮まった。
まだカイザーは気持ちを打ち明けるまでには至っていないが、湯あみと着替えはエミリアの侍女が行ってもそれ以外はシスティアーナから離れようとしないカイザーにシスティアーナが根負けしたとも言える。
「熱っつ!真夏の炎天下よりアツいわぁ」
エミリアが手を扇代わりにして自分の顔に風を送りながら、ポルク侯爵が読み終わったと鳩が届けてくれた短い手紙を持ってきた。
手紙と言っても鳩の足に括りつけられる小さな紙に書かれただけのもの。
しかし、その文面はシスティアーナを心から安心させる文面が書かれていた。
「お父様もお母様も無事に到着したって。お兄様も間もなく合流って」
「良かったな。これで一安心だ」
カイザーはシスティアーナの肩を抱いたが、直ぐにべりべりとエミリアに手が剥がされた。
「兄さま?ちょっとどさくさに紛れてないかしら?」
「お、俺はそんなつもりは…」
「はい、退いて。ティアをギュッと抱きしめて喜びを分かち合うのはわ・た・しなの!はい、退いて退いて」
「お、おい」
「エミーったら。でもほら、見て。お父様とお母様、元気だってここに書いてあるの」
「良かったわね。ティアッ!」
ギュッと抱き合うエミリアとシスティアーナだったが、エミリアは「えいっ」くるりと半回転し、カイザーにシスティアーナの背中を、抱き合う自分顔を向けた。
「むふぅ~」
カイザーに向かって「してやってり」と笑うとカイザーが拳骨を落とす素振りをした。
「あ、そうだ。お父様がティアに話があるんだって」
「そうなの?何時がいいかしら。侯爵様はお忙しいでしょう?」
「暇・ひま・ヒマ~。行こっ。私が連れて行ってあげる」
「いいの?お約束もないのに」
「お父様が呼んでるの。だからいいの~。ね?私も一緒に話を聞いてもいい?」
「エミリア、お前はダメだ。父上はエミリアに話があるんじゃないだろう?」
カイザーが口を挟んできたが、エミリアは聞く耳を持たずカイザーを置いてシスティアーナの背を押しポルク侯爵の執務室まで案内をした。
ポルク侯爵の執務室は片付いている筈なのに何故か山積みになった書籍に開いたままの報告書。調べ物でもしていたのだろうか。うっかり躓いてしまうと大惨事を招きそうな状況になっていた。
「すまないね。散らかっているんだが…全て関係しているものばかりなんだ」
「え?これ、何処から引っ張り出してきたの?え?え?これって何時の時代のもの?黴臭ぁい!」
広げられている書類や本の中にはかなりの年代物もあるようでエミリアが触れるだけで紙が粉々になりそうな色も変わったページを捲る。
「実はこれは4つある侯爵家に代々伝わる報告書だったり書籍なんだが…まぁ座ってくれ」
ソファを勧められシスティアーナが腰を下ろすとその隣に当たり前のように座りそうになったカイザーを突き飛ばしエミリアが隣に陣取った。
「お前なぁ…」
「ふっふーん。ティアの隣はわ・た・し♡ねぇティア~♡」
「それは良いけど…大丈夫?」
「何が?」
「本食い虫、いるわよ?」
「え?嘘。マジ?」
「ほら、ここ…。ここにも」
「いやぁん!!虫嫌いっ!なぁんか痒くなってき――(ばしっ)痛ったぁい!」
騒ぐエミリアの頭を軽くぺちっと叩いたカイザーにエミリアは場所を譲った。
兄妹を細い目になりながら見ていたポルク侯爵はシスティアーナの両親が無事だと書かれた紙と同じ大きさの紙をシスティアーナに差し出した。
伝書鳩は運べる手紙の量が限られるため、両足に括りつける事がある。
その片方の紙片だった。
「ジルス侯とは幼馴染でね。お互い侯爵家という重い責務を担わねばならず励まし合ったものだよ」
「お父様と?そうだったのですか」
「小さい頃は泣き虫でね。私たちが幼い頃でもこんな話をすると頭がおかしいと言われたものだが、今回の事であながちお伽噺もバカには出来ない、いや戒めとしてマイルドになって伝えられてきたのだなと実感しているところだ」
渡された紙には「魔女ロージェリア」と書かれていた。
「お食べ~。美味しい?」
ホーホーッホッホッホ。
クルルクルックゥ。
ポルク侯爵家に飛んできたポルク伝書鳩は粒を乾燥させたトウモロコシの実がご褒美。
「遠いところをありがとう。疲れたわよね」
ホーホーホッホゥ
手の平に粒を乗せて食べさせると嘴が鋭いので出窓に並べた鉢植えを寄せて皿を置きシスティアーナは鳩にトウモロコシの粒を与える。
その隣にはカイザーがいて「はい」と次に追加する粒をシスティアーナに渡した。
「ありがとう。カイザー」
「どういたしまして。でもこいつら満腹になるまでとなると…明日になるぞ?」
「そんなに食いしん坊なの?!」
ポルク侯爵家に厄介になって間もなく1か月。
カイザーとシスティアーナの距離は縮まった。
まだカイザーは気持ちを打ち明けるまでには至っていないが、湯あみと着替えはエミリアの侍女が行ってもそれ以外はシスティアーナから離れようとしないカイザーにシスティアーナが根負けしたとも言える。
「熱っつ!真夏の炎天下よりアツいわぁ」
エミリアが手を扇代わりにして自分の顔に風を送りながら、ポルク侯爵が読み終わったと鳩が届けてくれた短い手紙を持ってきた。
手紙と言っても鳩の足に括りつけられる小さな紙に書かれただけのもの。
しかし、その文面はシスティアーナを心から安心させる文面が書かれていた。
「お父様もお母様も無事に到着したって。お兄様も間もなく合流って」
「良かったな。これで一安心だ」
カイザーはシスティアーナの肩を抱いたが、直ぐにべりべりとエミリアに手が剥がされた。
「兄さま?ちょっとどさくさに紛れてないかしら?」
「お、俺はそんなつもりは…」
「はい、退いて。ティアをギュッと抱きしめて喜びを分かち合うのはわ・た・しなの!はい、退いて退いて」
「お、おい」
「エミーったら。でもほら、見て。お父様とお母様、元気だってここに書いてあるの」
「良かったわね。ティアッ!」
ギュッと抱き合うエミリアとシスティアーナだったが、エミリアは「えいっ」くるりと半回転し、カイザーにシスティアーナの背中を、抱き合う自分顔を向けた。
「むふぅ~」
カイザーに向かって「してやってり」と笑うとカイザーが拳骨を落とす素振りをした。
「あ、そうだ。お父様がティアに話があるんだって」
「そうなの?何時がいいかしら。侯爵様はお忙しいでしょう?」
「暇・ひま・ヒマ~。行こっ。私が連れて行ってあげる」
「いいの?お約束もないのに」
「お父様が呼んでるの。だからいいの~。ね?私も一緒に話を聞いてもいい?」
「エミリア、お前はダメだ。父上はエミリアに話があるんじゃないだろう?」
カイザーが口を挟んできたが、エミリアは聞く耳を持たずカイザーを置いてシスティアーナの背を押しポルク侯爵の執務室まで案内をした。
ポルク侯爵の執務室は片付いている筈なのに何故か山積みになった書籍に開いたままの報告書。調べ物でもしていたのだろうか。うっかり躓いてしまうと大惨事を招きそうな状況になっていた。
「すまないね。散らかっているんだが…全て関係しているものばかりなんだ」
「え?これ、何処から引っ張り出してきたの?え?え?これって何時の時代のもの?黴臭ぁい!」
広げられている書類や本の中にはかなりの年代物もあるようでエミリアが触れるだけで紙が粉々になりそうな色も変わったページを捲る。
「実はこれは4つある侯爵家に代々伝わる報告書だったり書籍なんだが…まぁ座ってくれ」
ソファを勧められシスティアーナが腰を下ろすとその隣に当たり前のように座りそうになったカイザーを突き飛ばしエミリアが隣に陣取った。
「お前なぁ…」
「ふっふーん。ティアの隣はわ・た・し♡ねぇティア~♡」
「それは良いけど…大丈夫?」
「何が?」
「本食い虫、いるわよ?」
「え?嘘。マジ?」
「ほら、ここ…。ここにも」
「いやぁん!!虫嫌いっ!なぁんか痒くなってき――(ばしっ)痛ったぁい!」
騒ぐエミリアの頭を軽くぺちっと叩いたカイザーにエミリアは場所を譲った。
兄妹を細い目になりながら見ていたポルク侯爵はシスティアーナの両親が無事だと書かれた紙と同じ大きさの紙をシスティアーナに差し出した。
伝書鳩は運べる手紙の量が限られるため、両足に括りつける事がある。
その片方の紙片だった。
「ジルス侯とは幼馴染でね。お互い侯爵家という重い責務を担わねばならず励まし合ったものだよ」
「お父様と?そうだったのですか」
「小さい頃は泣き虫でね。私たちが幼い頃でもこんな話をすると頭がおかしいと言われたものだが、今回の事であながちお伽噺もバカには出来ない、いや戒めとしてマイルドになって伝えられてきたのだなと実感しているところだ」
渡された紙には「魔女ロージェリア」と書かれていた。
420
あなたにおすすめの小説
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
顔がタイプじゃないからと、結婚を引き延ばされた本当の理由
翠月るるな
恋愛
「顔が……好みじゃないんだ!!」
婚約して早一年が経とうとしている。いい加減、周りからの期待もあって結婚式はいつにするのかと聞いたら、この回答。
セシリアは唖然としてしまう。
トドメのように彼は続けた。
「結婚はもう少し考えさせてくれないかな? ほら、まだ他の選択肢が出てくるかもしれないし」
この上なく失礼なその言葉に彼女はその場から身を翻し、駆け出した。
そのまま婚約解消になるものと覚悟し、新しい相手を探すために舞踏会に行くことに。
しかし、そこでの出会いから思いもよらない方向へ進み────。
顔が気に入らないのに、無為に結婚を引き延ばした本当の理由を知ることになる。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる