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王国を帝国に。レオポルドの野望
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「うぅぅ~寒っ」
ステファニアにファミル王国に連れて行って欲しいと頼まれたヴァレリオ。
季節は冬。山の中腹まではもう真っ白で吐く息も当然白い。
一行の中にステファニアの姿はない。
「もうちょっとで麓の村だ。あと一息。リオ、行けるか」
「勿論。次の村まででも全然いける」
「バカ野郎。ちゃんと休憩を取ってそれからだ」
「あーい(棒)」
ヴァレリオとバルトロ。バルトロの選抜した5名の兵士。
7名は道なき道を歩き、雪を利用できる場所は滑り降り、街道を通れば2か月かかる行程を15日間でファミル王国の王都が晴れた日にはうっすら見える麓の村までやってきた。
最後のひと山を超えれば景色が変わる。背後の山は真っ白だが、進む先は土の色が見える。村まで下れば今羽織っているクマや鹿の毛皮も不要になるだろう。
山を越えるだけで気温も全く違う国。それがファミル王国だった。
☆★☆
ステファニアは「雪道は始めだが、頑張る」と言い張ったのだが、雪国で育った者ならいざ知らず、ファミル王国の王都に雪が舞うのは数十年に1度あるかないか。海に面した温暖な地の出身なのだ。
地面の水溜まりも日中になってもまだ凍っている部分もあり、本格的な冬が辺境にやってくる時期である事から、移動は無理とステファニアは留守番になった。
「お前…雪を見た事ないんだろう」
「失礼ですわね。ありますわよ。ちゃんとスノーマンも作りました」
「本当か?」
「えぇ。茶色くなってしまいましたが、頭も体もギュッギュと手で丸めたんですよ」
「・・・・・」
両手のひらで泥だんごを握るような仕草にヴァレリオは生まれて初めて貧血を起こすかと思ってしまった。
ヴァレリオは「ステファニアには無理」と判断をしたのだ。
ほぼ雪を見た事がない人間に、1晩で成人男性の身の丈以上に積もる雪の中、同行させるのは無理である。馬車ではなく、基本は徒歩で街道ではなく山を越え、谷を渡って行くのだ。
「どうしても無理ですの?」
「中級者の崖攻略も出来てないのに無理無理。留守番だ」
「ぶぅぅ~ぶぅぅ~」
「ブーイングしても無駄だ。雪山は遊び場じゃない」
「そうですよ!お嬢様。徒歩でなんて絶対にダメです。山猿と一緒はもっとダメ!」
「俺は関係ないだろう!どっちかってぇと保護者だ!」
「お嬢様を襲いかねない猛獣です。お嬢様は猛獣使いではないんですっ!」
ヴァレリオとベルタはステファニアが行くことに反対をしているのだ。
こればかりはステファニアも命の危険が自分だけではない事にバルトロから説明をされてしまった。「行くのであればこの地に慣れて5年目以降」と釘をさされてしまったのである。
「わかりました(しゅん)」
☆★☆
ファミル王国からは何通か書簡が届いていた事もヴァレリオの重い腰を上げさせた原因でもある。ハルメル王国はもう地図の上からは名前を消し、ハルメル地方となった。
それでもファッジン辺境伯という立場と名前は変わらなかった。
ファミル王国の国王レオポルドはレアンドロと違ってバカではない。
元々ハルメル王国でも民衆からの絶大な支持を得ており、ファミル王国の中にもファッジン辺境伯を称賛する声は少なくない。
30年戦争でファッジン辺境伯の率いる部隊を撃破するのは至難の業でファミル王国が天然痘を克服し、盛り返した後も10年以上拮抗した戦いになったのはファッジン辺境伯その人がいたからである。
ハルメル王国を吸収した際に、ファッジン辺境伯から身分や兵力を奪うべきと言う声は確かにあった。だが、それをしてしまえば、沈静化した民衆にまた火種を落としかねない。しかも特大の火種だ。
国王、いや王家以上に扱いの難しかったファッジン辺境伯は触らぬ神に祟りなしと現状維持となったのだ。
ヴァレリオは終戦直後に爵位を継いだが、バルトロが「己よりも辺境伯を名乗るにふさわしい」と直々に名指しした男。ファミル王国の騎士団を率いる各団長も、将軍もバルトロよりヴァレリオに注意しろと常に動向を伺い、警戒をしていた。
「バルトロがこちらに向かっていると?」
「はい、国境…いえ領の境は超えたとの知らせが御座います」
「エド。なんだと思う?」
「そうですね。今更陛下へのご機嫌伺い…ではないでしょう」
「手厚く迎えてやってくれ。始末するには惜しい男だからな」
「よろしいので?妹の婿も同行しているとありますが」
「ヴァレリオも?クックック…面白いな。アレに知らせてやれ」
「アベラルド殿下で御座いますか?趣味が悪いですよ」
レオポルドはファッジン辺境伯一行が間も無く王都に入るという知らせにほくそ笑んだ。
私的には同行しているヴァレリオはステファニアの夫である。
ヴァレリオを見てアベラルドがどのように顔を歪めるか。楽しみでならなかった。
公的にはハルメル王国は無血で手に入れたに等しい。
血を流した戦争は先代の歴史である。
労せず1つを手に入れるとレオポルドには野望が芽生えた。
【王国を帝国に】
やって来る2人の男は今や家臣となった。
机上の理論が現実になる事に全身が歓喜で震える。
帝国となり、ファッジン辺境伯が治める領地の山を1つ削る。
その為の労働力はハルメルの民衆、そしてこれから攻め入る国の民である。
問題は一筋縄ではいかない狡猾な2人を従えさせるか。
レオポルドの手腕は多くの貴族も注目していた。
「エド、卿が到着した日は宴にしろ。盛大にな。この機を逃すな」
「派兵するのですか?」
「2人が留守なのならお前の妹も帰りやすいだろう?今、迎えを出せば動きを悟られる。駒は手中に入れてから行動だ。特に狂犬のように戦慣れしている奴には気付かれぬよう動かねばならん」
「ですが、妹は帰らないかも知れません。そんな気がしました」
「エド。丸くなったな。今更妹可愛さを出しても遅いと思わないか?」
ファッジン辺境伯一行を持て成している間に、その屋敷を占拠するための兵を出す。
レアンドロと異なり、ステファニアが大事にされているのは把握しており、ヴァレリオとバルトロがステファニアに領地経営も任せるための引継ぎをしているという情報も手に入れている。
従わねば、ステファニアの身柄を押さえる。
従うなら、帰りつくまでに帰還させればよいのだ。
レオポルドに名を覚えてもらうため、気に行ってもらうため、エドガルドは何でもしてきた。痴情の縺れか?と首を傾げながらもステファニアを通してアベラルドの動向を報告した。ステファニアが婚約者だという立場を利用しアベラルドの領地から鉛を入手し、レオポルドに渡した。
エドガルドはその鉛で何をするのかを知っていた。
良心の呵責に悩んだのはもう何年も前の話だ。1度が2度、2度が3度となり、国王が倒れた時は何も感じなくなっていた。レオポルドと共に骨の髄まで抜けられない泥沼に嵌った。
それでも、ステファニアには申し訳ないという気持ちが心のどこかにあった。
エドガルドの心がファッジン辺境伯到着の知らせに揺れ動いた。
目を閉じ、ゆっくり息を吐いてエドガルドは手のひらを強く握り閉めた。
そして、一歩前に出る。目を開ければいつもりレオポルドが近く見える。
「なんだ?」
執務机の前に立つエドガルドをレオポルドは見上げた。
「陛下。もうやめませんか。玉座も手に入れたではありませんか。先王は隣国で臨床試験に入った治療法なら現状維持が可能かも知れません。このままなら‥‥貴方は父を手にかけ――」
「エドガルド。何を言い出すんだ」
「ですから…もうやめましょう。やっと戦争も終わった。戦勝国とは言え民は疲弊しています。ファッジン辺境伯領に兵を送れば間違いなくまた戦になります。その上、辺境伯を王都に呼び出している間の派兵。諸外国も今度は傍観者となってくれるとは限らないのです。何より私は…陛下、貴方を殺人者にしたくない」
「己が関与しているからだろう?今更怖くなりました。逃げ出したくなりましたなどと言うなよ」
「怖く等ありません。いずれこの身に罰を受けるのは承知で行ないました。今の時点でも処罰は必須です。逃げも隠れもしません。ですがっ!今ならまだ陛下は殺人者ではないんです」
「妹に会って、心が揺れたか?年頃の娘でもあるまいに。妹思いの兄だと褒めてもらえると思ったか」
「妹には会っておりません。ファミル王国を出た日から一度も。私は幼き頃、陛下を見てお側に仕えたいと思って参りました。国王となられ、この件が伏せられたままなら賢王として後世に名を残すでしょう。だからこそ!先王がまだ生きている今、これ以上の罪を犯して欲しくないのです」
カツカツと立ち上がったレオポルドの靴音だけが部屋に響く。
エドガルドの肩に軽く手を置いたレオポルド。
「お前は…お前だけは私の気持ちが判ると思ったんだが、買い被りすぎたようだな」
肩に置かれた手は鉛のように重い手にエドガルドはその手を重ねた。
レオポルドの深海を思わせる瞳のようにひんやりとした手は心の温度だろうか。
「陛下、陛下のお心が判るのは陛下だけです。何を言われようと私は――」
「残念だ」
肩から手が離れ、レオポルドは扉の前を守る兵士を呼び入れた。
「地下牢に入れておけ」
レオポルドの声に兵士は一旦躊躇する。エドガルドは「案内を頼む」とレオポルドを振り返ることなく部屋を退出していった。
ステファニアにファミル王国に連れて行って欲しいと頼まれたヴァレリオ。
季節は冬。山の中腹まではもう真っ白で吐く息も当然白い。
一行の中にステファニアの姿はない。
「もうちょっとで麓の村だ。あと一息。リオ、行けるか」
「勿論。次の村まででも全然いける」
「バカ野郎。ちゃんと休憩を取ってそれからだ」
「あーい(棒)」
ヴァレリオとバルトロ。バルトロの選抜した5名の兵士。
7名は道なき道を歩き、雪を利用できる場所は滑り降り、街道を通れば2か月かかる行程を15日間でファミル王国の王都が晴れた日にはうっすら見える麓の村までやってきた。
最後のひと山を超えれば景色が変わる。背後の山は真っ白だが、進む先は土の色が見える。村まで下れば今羽織っているクマや鹿の毛皮も不要になるだろう。
山を越えるだけで気温も全く違う国。それがファミル王国だった。
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ステファニアは「雪道は始めだが、頑張る」と言い張ったのだが、雪国で育った者ならいざ知らず、ファミル王国の王都に雪が舞うのは数十年に1度あるかないか。海に面した温暖な地の出身なのだ。
地面の水溜まりも日中になってもまだ凍っている部分もあり、本格的な冬が辺境にやってくる時期である事から、移動は無理とステファニアは留守番になった。
「お前…雪を見た事ないんだろう」
「失礼ですわね。ありますわよ。ちゃんとスノーマンも作りました」
「本当か?」
「えぇ。茶色くなってしまいましたが、頭も体もギュッギュと手で丸めたんですよ」
「・・・・・」
両手のひらで泥だんごを握るような仕草にヴァレリオは生まれて初めて貧血を起こすかと思ってしまった。
ヴァレリオは「ステファニアには無理」と判断をしたのだ。
ほぼ雪を見た事がない人間に、1晩で成人男性の身の丈以上に積もる雪の中、同行させるのは無理である。馬車ではなく、基本は徒歩で街道ではなく山を越え、谷を渡って行くのだ。
「どうしても無理ですの?」
「中級者の崖攻略も出来てないのに無理無理。留守番だ」
「ぶぅぅ~ぶぅぅ~」
「ブーイングしても無駄だ。雪山は遊び場じゃない」
「そうですよ!お嬢様。徒歩でなんて絶対にダメです。山猿と一緒はもっとダメ!」
「俺は関係ないだろう!どっちかってぇと保護者だ!」
「お嬢様を襲いかねない猛獣です。お嬢様は猛獣使いではないんですっ!」
ヴァレリオとベルタはステファニアが行くことに反対をしているのだ。
こればかりはステファニアも命の危険が自分だけではない事にバルトロから説明をされてしまった。「行くのであればこの地に慣れて5年目以降」と釘をさされてしまったのである。
「わかりました(しゅん)」
☆★☆
ファミル王国からは何通か書簡が届いていた事もヴァレリオの重い腰を上げさせた原因でもある。ハルメル王国はもう地図の上からは名前を消し、ハルメル地方となった。
それでもファッジン辺境伯という立場と名前は変わらなかった。
ファミル王国の国王レオポルドはレアンドロと違ってバカではない。
元々ハルメル王国でも民衆からの絶大な支持を得ており、ファミル王国の中にもファッジン辺境伯を称賛する声は少なくない。
30年戦争でファッジン辺境伯の率いる部隊を撃破するのは至難の業でファミル王国が天然痘を克服し、盛り返した後も10年以上拮抗した戦いになったのはファッジン辺境伯その人がいたからである。
ハルメル王国を吸収した際に、ファッジン辺境伯から身分や兵力を奪うべきと言う声は確かにあった。だが、それをしてしまえば、沈静化した民衆にまた火種を落としかねない。しかも特大の火種だ。
国王、いや王家以上に扱いの難しかったファッジン辺境伯は触らぬ神に祟りなしと現状維持となったのだ。
ヴァレリオは終戦直後に爵位を継いだが、バルトロが「己よりも辺境伯を名乗るにふさわしい」と直々に名指しした男。ファミル王国の騎士団を率いる各団長も、将軍もバルトロよりヴァレリオに注意しろと常に動向を伺い、警戒をしていた。
「バルトロがこちらに向かっていると?」
「はい、国境…いえ領の境は超えたとの知らせが御座います」
「エド。なんだと思う?」
「そうですね。今更陛下へのご機嫌伺い…ではないでしょう」
「手厚く迎えてやってくれ。始末するには惜しい男だからな」
「よろしいので?妹の婿も同行しているとありますが」
「ヴァレリオも?クックック…面白いな。アレに知らせてやれ」
「アベラルド殿下で御座いますか?趣味が悪いですよ」
レオポルドはファッジン辺境伯一行が間も無く王都に入るという知らせにほくそ笑んだ。
私的には同行しているヴァレリオはステファニアの夫である。
ヴァレリオを見てアベラルドがどのように顔を歪めるか。楽しみでならなかった。
公的にはハルメル王国は無血で手に入れたに等しい。
血を流した戦争は先代の歴史である。
労せず1つを手に入れるとレオポルドには野望が芽生えた。
【王国を帝国に】
やって来る2人の男は今や家臣となった。
机上の理論が現実になる事に全身が歓喜で震える。
帝国となり、ファッジン辺境伯が治める領地の山を1つ削る。
その為の労働力はハルメルの民衆、そしてこれから攻め入る国の民である。
問題は一筋縄ではいかない狡猾な2人を従えさせるか。
レオポルドの手腕は多くの貴族も注目していた。
「エド、卿が到着した日は宴にしろ。盛大にな。この機を逃すな」
「派兵するのですか?」
「2人が留守なのならお前の妹も帰りやすいだろう?今、迎えを出せば動きを悟られる。駒は手中に入れてから行動だ。特に狂犬のように戦慣れしている奴には気付かれぬよう動かねばならん」
「ですが、妹は帰らないかも知れません。そんな気がしました」
「エド。丸くなったな。今更妹可愛さを出しても遅いと思わないか?」
ファッジン辺境伯一行を持て成している間に、その屋敷を占拠するための兵を出す。
レアンドロと異なり、ステファニアが大事にされているのは把握しており、ヴァレリオとバルトロがステファニアに領地経営も任せるための引継ぎをしているという情報も手に入れている。
従わねば、ステファニアの身柄を押さえる。
従うなら、帰りつくまでに帰還させればよいのだ。
レオポルドに名を覚えてもらうため、気に行ってもらうため、エドガルドは何でもしてきた。痴情の縺れか?と首を傾げながらもステファニアを通してアベラルドの動向を報告した。ステファニアが婚約者だという立場を利用しアベラルドの領地から鉛を入手し、レオポルドに渡した。
エドガルドはその鉛で何をするのかを知っていた。
良心の呵責に悩んだのはもう何年も前の話だ。1度が2度、2度が3度となり、国王が倒れた時は何も感じなくなっていた。レオポルドと共に骨の髄まで抜けられない泥沼に嵌った。
それでも、ステファニアには申し訳ないという気持ちが心のどこかにあった。
エドガルドの心がファッジン辺境伯到着の知らせに揺れ動いた。
目を閉じ、ゆっくり息を吐いてエドガルドは手のひらを強く握り閉めた。
そして、一歩前に出る。目を開ければいつもりレオポルドが近く見える。
「なんだ?」
執務机の前に立つエドガルドをレオポルドは見上げた。
「陛下。もうやめませんか。玉座も手に入れたではありませんか。先王は隣国で臨床試験に入った治療法なら現状維持が可能かも知れません。このままなら‥‥貴方は父を手にかけ――」
「エドガルド。何を言い出すんだ」
「ですから…もうやめましょう。やっと戦争も終わった。戦勝国とは言え民は疲弊しています。ファッジン辺境伯領に兵を送れば間違いなくまた戦になります。その上、辺境伯を王都に呼び出している間の派兵。諸外国も今度は傍観者となってくれるとは限らないのです。何より私は…陛下、貴方を殺人者にしたくない」
「己が関与しているからだろう?今更怖くなりました。逃げ出したくなりましたなどと言うなよ」
「怖く等ありません。いずれこの身に罰を受けるのは承知で行ないました。今の時点でも処罰は必須です。逃げも隠れもしません。ですがっ!今ならまだ陛下は殺人者ではないんです」
「妹に会って、心が揺れたか?年頃の娘でもあるまいに。妹思いの兄だと褒めてもらえると思ったか」
「妹には会っておりません。ファミル王国を出た日から一度も。私は幼き頃、陛下を見てお側に仕えたいと思って参りました。国王となられ、この件が伏せられたままなら賢王として後世に名を残すでしょう。だからこそ!先王がまだ生きている今、これ以上の罪を犯して欲しくないのです」
カツカツと立ち上がったレオポルドの靴音だけが部屋に響く。
エドガルドの肩に軽く手を置いたレオポルド。
「お前は…お前だけは私の気持ちが判ると思ったんだが、買い被りすぎたようだな」
肩に置かれた手は鉛のように重い手にエドガルドはその手を重ねた。
レオポルドの深海を思わせる瞳のようにひんやりとした手は心の温度だろうか。
「陛下、陛下のお心が判るのは陛下だけです。何を言われようと私は――」
「残念だ」
肩から手が離れ、レオポルドは扉の前を守る兵士を呼び入れた。
「地下牢に入れておけ」
レオポルドの声に兵士は一旦躊躇する。エドガルドは「案内を頼む」とレオポルドを振り返ることなく部屋を退出していった。
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