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第48話 本当の目的はなんだ?
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距離を詰めてきたフェルマン伯爵に咎められるかな?とライアンは思ったのだが違った。
スッと差し出してきたのは封書。
宛名はフェルマン伯爵だったので封は切られているが「読め」と差し出された封筒を手に取るとライアンは中の便せんを取り出して目を走らせた。
「エリザベス殿下が…隣国に?」
「あぁ。アルマンド殿下は隣国との関係強化を望んでいるようだ。陛下の蟄居も決まっている。第13直轄領だ」
「第13って!!あそこは人が住めるような場所じゃないですよ。水だって結構な濃度で硫化水素に――」
「それだけ子供には嫌われているという事だろう。これ以上使う金も無いと引導を渡されたんだ。で、ルマン殿下が王弟となり…エルドール殿下なのだが…」
言いにくそうなフェルマン伯爵の表情に「粛清されるのかな」と思ったライアンだったが少しだけ違った。
「視察に失敗をしてな。放逐も止む無しだったんだが近いうちに環境保全庁という省庁が新設される。そこの調査員として汗を流すことになった」
「と、いう事は…やはり放逐ですか?」
「似たようなものだろう。旧王族となるが扱いは平民だ。自ら望んだとこちらには聞かされたが放蕩王子と呼ばれていたからその生活に馴染めるかどうか。本人の気概だけでは乗り越えられない壁もあるだろうな」
「そうなんですか」
「それでエルドール殿下からは夜会の日に少し時間を取ってくれと言われていてな」
「ティ…アリスティアに会いたいという事ですか」
ライアンは複雑な心境になった。
アリスティアはエルドールを毛嫌いしているので会わせたくはないし、以前にフェルマン伯爵家にやってきたのもアリスティアに会うためであろう事は容易に想像がつく。
その後も手紙を送ってきたり、ソゥス伯爵領が火災に見舞われ、早馬を送ったが王都に到着した日、アリスティアは登城をしていた。そうさせたのもエルドール。
第2王子の立太子を発表する祝いの場とは言え、何を仕掛けてくるつもりなのか。
ライアンは険しい顔をした。
――2人きりは許可できないな――
そうは思っても一介の伯爵に過ぎないライアンが許可を与えるものでもない。王子の権限を使われたら手も足も出ない。
――王都に来たのは間違いだったんだろうか――
生涯に何度もない立太子や即位の出来事。それも理由にはしたけれどライアンとしてはフェルマン伯爵家にきちんと挨拶をするのと、行きっぱなしになったアリスティアを両親に会わせてやりたい。それが本当の理由だった。
王都に行くなら十分に考えられた危険を解っていただけにライアンは悔やんだ。
「アリスに会いたい。その気持ちはあるだろうが、ソゥス伯爵。貴方にも同席して欲しいとの事だ」
「え?俺…私ですか?!」
「それと…目録だ。もう一枚封書には入っていただろう?」
「もう一枚?目録って…」
ライアンは重なっていた便せんを捲ると2枚目は紙質も違う紙。
そこには「イチョウの木300本を贈る」と書かれていた。
「イチョウですか…」
「植物にはいろいろと後付けではあるが人間が言葉を添えていてね。イチョウの木には 長寿 という言葉が充てられているそうだ。長くソゥス伯爵家の繁栄を望んでいる、そうともとれる。その上木の特性として――」
「知っています。防火ですよね。山火事が多いので父の代で斜面に植えようかと考えたことがあります。縦に並べて配置をして延焼を防ぐのと実は食べることが出来、殻で覆われていますから保存がききます。ですが予算がなくて諦めたんです」
「どうする。受けるかね?断るのなら私から――」
「ティアと話し合います。私は当主ですが妻の意向を無視して何かを決めようとは思っていません。どんな事でも話し合って決める。お互いの意見が食い違っても話し合って落としどころを決めよう。そう決めてるんです」
「アリスをそこまで思ってくれているのか…ありがとう」
「いいえ。ティアだからです。イチョウの木はありがたい話で他の領にも配布するのなら受けようとティアも言うでしょう。でもそうではないのならティアありきの面会の要望ですから決めるのはティアです。返事次第で義父上にも骨を折って貰わねばならないかも知れませんが」
「解った。私は今、無性に嬉しいよ。婚約破棄が正式に決まった時アリスの次の相手は君の様な男が良いと思ったんだ。見立てに間違いはなかった。アリスをよろしく頼む」
「勿論です」
「時々無茶な事をしたり、世話を焼くのにもういい!となれば見向きもしなかったりと両極端な一面もある子なんだ。令嬢らしからぬ薬作りに没頭して、薬草が見えたら平気で地べたもはい回るし、高いところに登るしと手を焼いてきたが…今思えばアリスのおかげで売り上げもある。何時までも世話が焼ける子だと思っていたが世話を焼かれていたのは私だったよ」
涙ぐむフェルマン伯爵の背に手を回し、ハグをしていただけなのだがそこに採寸を終えたアリスティアとナンシー夫人が戻ってきた。
「何をしていらっしゃるの!破廉恥な!やるならこっそりやって頂戴!」
ナンシー夫人の悲鳴にも似た叫びにフェルマン伯爵は「こっそりやれ」と逃げ場を残したのは何故だろう?どうでもいい疑惑を抱えてしまった。
スッと差し出してきたのは封書。
宛名はフェルマン伯爵だったので封は切られているが「読め」と差し出された封筒を手に取るとライアンは中の便せんを取り出して目を走らせた。
「エリザベス殿下が…隣国に?」
「あぁ。アルマンド殿下は隣国との関係強化を望んでいるようだ。陛下の蟄居も決まっている。第13直轄領だ」
「第13って!!あそこは人が住めるような場所じゃないですよ。水だって結構な濃度で硫化水素に――」
「それだけ子供には嫌われているという事だろう。これ以上使う金も無いと引導を渡されたんだ。で、ルマン殿下が王弟となり…エルドール殿下なのだが…」
言いにくそうなフェルマン伯爵の表情に「粛清されるのかな」と思ったライアンだったが少しだけ違った。
「視察に失敗をしてな。放逐も止む無しだったんだが近いうちに環境保全庁という省庁が新設される。そこの調査員として汗を流すことになった」
「と、いう事は…やはり放逐ですか?」
「似たようなものだろう。旧王族となるが扱いは平民だ。自ら望んだとこちらには聞かされたが放蕩王子と呼ばれていたからその生活に馴染めるかどうか。本人の気概だけでは乗り越えられない壁もあるだろうな」
「そうなんですか」
「それでエルドール殿下からは夜会の日に少し時間を取ってくれと言われていてな」
「ティ…アリスティアに会いたいという事ですか」
ライアンは複雑な心境になった。
アリスティアはエルドールを毛嫌いしているので会わせたくはないし、以前にフェルマン伯爵家にやってきたのもアリスティアに会うためであろう事は容易に想像がつく。
その後も手紙を送ってきたり、ソゥス伯爵領が火災に見舞われ、早馬を送ったが王都に到着した日、アリスティアは登城をしていた。そうさせたのもエルドール。
第2王子の立太子を発表する祝いの場とは言え、何を仕掛けてくるつもりなのか。
ライアンは険しい顔をした。
――2人きりは許可できないな――
そうは思っても一介の伯爵に過ぎないライアンが許可を与えるものでもない。王子の権限を使われたら手も足も出ない。
――王都に来たのは間違いだったんだろうか――
生涯に何度もない立太子や即位の出来事。それも理由にはしたけれどライアンとしてはフェルマン伯爵家にきちんと挨拶をするのと、行きっぱなしになったアリスティアを両親に会わせてやりたい。それが本当の理由だった。
王都に行くなら十分に考えられた危険を解っていただけにライアンは悔やんだ。
「アリスに会いたい。その気持ちはあるだろうが、ソゥス伯爵。貴方にも同席して欲しいとの事だ」
「え?俺…私ですか?!」
「それと…目録だ。もう一枚封書には入っていただろう?」
「もう一枚?目録って…」
ライアンは重なっていた便せんを捲ると2枚目は紙質も違う紙。
そこには「イチョウの木300本を贈る」と書かれていた。
「イチョウですか…」
「植物にはいろいろと後付けではあるが人間が言葉を添えていてね。イチョウの木には 長寿 という言葉が充てられているそうだ。長くソゥス伯爵家の繁栄を望んでいる、そうともとれる。その上木の特性として――」
「知っています。防火ですよね。山火事が多いので父の代で斜面に植えようかと考えたことがあります。縦に並べて配置をして延焼を防ぐのと実は食べることが出来、殻で覆われていますから保存がききます。ですが予算がなくて諦めたんです」
「どうする。受けるかね?断るのなら私から――」
「ティアと話し合います。私は当主ですが妻の意向を無視して何かを決めようとは思っていません。どんな事でも話し合って決める。お互いの意見が食い違っても話し合って落としどころを決めよう。そう決めてるんです」
「アリスをそこまで思ってくれているのか…ありがとう」
「いいえ。ティアだからです。イチョウの木はありがたい話で他の領にも配布するのなら受けようとティアも言うでしょう。でもそうではないのならティアありきの面会の要望ですから決めるのはティアです。返事次第で義父上にも骨を折って貰わねばならないかも知れませんが」
「解った。私は今、無性に嬉しいよ。婚約破棄が正式に決まった時アリスの次の相手は君の様な男が良いと思ったんだ。見立てに間違いはなかった。アリスをよろしく頼む」
「勿論です」
「時々無茶な事をしたり、世話を焼くのにもういい!となれば見向きもしなかったりと両極端な一面もある子なんだ。令嬢らしからぬ薬作りに没頭して、薬草が見えたら平気で地べたもはい回るし、高いところに登るしと手を焼いてきたが…今思えばアリスのおかげで売り上げもある。何時までも世話が焼ける子だと思っていたが世話を焼かれていたのは私だったよ」
涙ぐむフェルマン伯爵の背に手を回し、ハグをしていただけなのだがそこに採寸を終えたアリスティアとナンシー夫人が戻ってきた。
「何をしていらっしゃるの!破廉恥な!やるならこっそりやって頂戴!」
ナンシー夫人の悲鳴にも似た叫びにフェルマン伯爵は「こっそりやれ」と逃げ場を残したのは何故だろう?どうでもいい疑惑を抱えてしまった。
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