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第09話 家令の叱責
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時間も無かったし、自分ではどんなドレスが流行っているのかも判らない。カタログをソフィアに渡し良さげなものを注文しておいてほしいと頼んだのだが、7着も発注した事になっていて簡単なスケッチでドレスの形が描かれていたが、オルバンシェ伯爵家に贈ったドレスは一番品が無く、肌の露出も多いもの。
「ビオレッタ様はお背中を負傷されたと聞きます。このようなドレスが届いたらどう思われるか。お考えになった事は御座いますか?」
「こんなドレスだったなんて!」
「他人任せにするからです。それから・・・花屋の請求書で御座いますが‥」
「あぁ、時間が取れなかったからソフィアに見舞いの花を選んで贈ってくれと頼んだんだ。先日持って行った花も何がいいだろうと悩んでいたらソフィアが――」
「旦那様、先程からソフィア、ソフィアと。ご注意くださいと申し上げたばかりです。それから見舞いに鉢植え。しかも水仙は大旦那様がお怒りになってこちらに来られておりました」
「水仙?!鉢植え?まさか!」
家令は請求書をトントンと指で指し示す。時間がたっておりこちらはもう清算済みとなっていたが花屋がオルバンシェ伯爵家に届けたのは間違いなく水仙の鉢植えだった。
隊長職を務めるライネルもその花を、しかも鉢植えで贈る意味は言われずとも判る。
冷や汗がぐっしょりと背中を濡らした。
「先日悩んだと仰る花。まさかとは思いますが紫のクロッカスでは御座いますまいな?」
また請求書をトントンと指で軽く叩いて家令が問う。
ライネルは花に花言葉があるのは知っていたが、求婚の時に赤いバラを差し出す程度の知識しかない。まさかと思いつつ家令に問うてみれば衝撃の答えが返ってきた。
「愛した事を後悔していると言うのが紫のクロッカスの意味で御座います」
家令の言葉に、何度誘いの手紙を送っても反応が悪い、いや…断られてばかりだと言う事がやっとここで繋がった。
「道理で門前払いされたりすることが多かったはずだ」
しかし、ソフィアを叱り飛ばす事は出来ない。無知ゆえに己が知らずに頼んだのだ。
花屋にいき、店頭で一番目を引いた花をソフィアが選んだ可能性もあるし、自分も知らなかったのだからソフィアも意味を知らなかったという事も考えられる。
問題はそれもだが、あまりにも金を使い過ぎていることも問題だった。
公爵家、侯爵家の当主夫人ならこのくらいの金額は毎月使っているかも知れないが、ライネルは実家が伯爵家と言えど、ライネル自身は男爵に過ぎない。
こんな金の使われ方をしていれば破産まっしぐらで、なんとか支払いが出来たのも過去の武功があり金銭での褒賞があったから払えているだけで通常ならとっくに破産している。
ライネルはビオレッタと結婚するために武功をあげ、ビオレッタに不自由なく暮らして欲しいから危険な地へも赴いているのだ。決してソフィアを養うためではない。
「ソフィアには早く屋敷を出てもらう事にする。オルバンシェ伯爵家は結婚式もしないと言ってきたが、ビオレッタがやって来るまであと1カ月も無い」
「では、部隊の支援制度をご利用されては?兵士の家族であれば格安で利用できますし、お子様はせいぜい1歳。家賃などの支払いは子供が7歳になるまで免除という措置も御座います。ミールクーポンも配布されますので食う寝るに困る事もありますまい」
「しかし、まだ結婚をしていないんだ。婚約状態だそうだが・・・」
「お子様がいらっしゃいますので、部下の方のご両親やご兄弟に確認を取られては如何でしょう。戦況も一進一退。現在は婚姻の事実がなくとも婚約者まで枠を広げているはずです」
家令の言葉に救いを見出した気がしたライネルだったが、ソフィアはそう簡単に納得をしてくれる女ではなかった。
「ビオレッタ様はお背中を負傷されたと聞きます。このようなドレスが届いたらどう思われるか。お考えになった事は御座いますか?」
「こんなドレスだったなんて!」
「他人任せにするからです。それから・・・花屋の請求書で御座いますが‥」
「あぁ、時間が取れなかったからソフィアに見舞いの花を選んで贈ってくれと頼んだんだ。先日持って行った花も何がいいだろうと悩んでいたらソフィアが――」
「旦那様、先程からソフィア、ソフィアと。ご注意くださいと申し上げたばかりです。それから見舞いに鉢植え。しかも水仙は大旦那様がお怒りになってこちらに来られておりました」
「水仙?!鉢植え?まさか!」
家令は請求書をトントンと指で指し示す。時間がたっておりこちらはもう清算済みとなっていたが花屋がオルバンシェ伯爵家に届けたのは間違いなく水仙の鉢植えだった。
隊長職を務めるライネルもその花を、しかも鉢植えで贈る意味は言われずとも判る。
冷や汗がぐっしょりと背中を濡らした。
「先日悩んだと仰る花。まさかとは思いますが紫のクロッカスでは御座いますまいな?」
また請求書をトントンと指で軽く叩いて家令が問う。
ライネルは花に花言葉があるのは知っていたが、求婚の時に赤いバラを差し出す程度の知識しかない。まさかと思いつつ家令に問うてみれば衝撃の答えが返ってきた。
「愛した事を後悔していると言うのが紫のクロッカスの意味で御座います」
家令の言葉に、何度誘いの手紙を送っても反応が悪い、いや…断られてばかりだと言う事がやっとここで繋がった。
「道理で門前払いされたりすることが多かったはずだ」
しかし、ソフィアを叱り飛ばす事は出来ない。無知ゆえに己が知らずに頼んだのだ。
花屋にいき、店頭で一番目を引いた花をソフィアが選んだ可能性もあるし、自分も知らなかったのだからソフィアも意味を知らなかったという事も考えられる。
問題はそれもだが、あまりにも金を使い過ぎていることも問題だった。
公爵家、侯爵家の当主夫人ならこのくらいの金額は毎月使っているかも知れないが、ライネルは実家が伯爵家と言えど、ライネル自身は男爵に過ぎない。
こんな金の使われ方をしていれば破産まっしぐらで、なんとか支払いが出来たのも過去の武功があり金銭での褒賞があったから払えているだけで通常ならとっくに破産している。
ライネルはビオレッタと結婚するために武功をあげ、ビオレッタに不自由なく暮らして欲しいから危険な地へも赴いているのだ。決してソフィアを養うためではない。
「ソフィアには早く屋敷を出てもらう事にする。オルバンシェ伯爵家は結婚式もしないと言ってきたが、ビオレッタがやって来るまであと1カ月も無い」
「では、部隊の支援制度をご利用されては?兵士の家族であれば格安で利用できますし、お子様はせいぜい1歳。家賃などの支払いは子供が7歳になるまで免除という措置も御座います。ミールクーポンも配布されますので食う寝るに困る事もありますまい」
「しかし、まだ結婚をしていないんだ。婚約状態だそうだが・・・」
「お子様がいらっしゃいますので、部下の方のご両親やご兄弟に確認を取られては如何でしょう。戦況も一進一退。現在は婚姻の事実がなくとも婚約者まで枠を広げているはずです」
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