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第04話 この世界の事情
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本当に転生しちゃったのかな?
まだ確証も得られないまま日数だけが過ぎていく。
だけど、なんとも不思議な感覚。
私の魂が吹き込まれるまでは絵本にも挿絵ですら描かれても居らず、原作にもいないキャラなので台本を読んでそのキャラになりきる女優の感覚に近い。
尤も演劇は小学生の時に桃太郎の劇で「木」の役をした事がある程度だが。
この体の持ち主・・・自分はシャルロット・アベルジェ。年齢は22歳。アベルジェ公爵家の長女だが第3子。
家族構成は両親と兄2人。
長兄は隣国の王族が結婚するというので王太子の名代で現在は不在。
飛行機や新幹線は勿論、鉄道というものもないし、車もない。
それらのワードを出して、愛想笑いしか返さない両親やメイドさん達に「あ、通じない」と違和感がさらに強まった。
「お兄様はここよ。この国に向かっているの」と示して貰った地図を見て真っ先に思ったのは・・・。
――大航海時代の地図ですかぁ!!――
陸路を馬車でゆっくりと走る旅。隣国までは1000kmほどあるそうだ。
東京から山口県の防府市までの距離に匹敵する。
1年前に出発をしたそうで、まだ目的地には到着していないのだとか。
――シルクロード経由ガンダーラ直行便ですかっ?!――
戻ってくるのは2年半後・・・どんだけ長い旅なの?と思えば、進む距離は1日に20kmもないくらい。
隣国の王族の結婚式に招かれているので、祝いの品を載せた荷馬車も何台もあって馬も1、2km進んだら休ませてとしていたらそれくらいはかかるのだろう。
宿泊はどうしているのかと問えば、行く先々にある貴族の家にお邪魔しているか、野宿だそうだ。公爵家ともなると紹介状1枚に黄門さまの印籠と同等の効力があるらしい。
時代劇の黄門さまは宿屋を利用してたけど、長兄の一行が宿屋を利用する事は防犯の観点からは先ずないらしい。宿屋を利用する時は丸ごと買い取ってしまうそうだから金持ちはする事がエグい。
次兄は騎士だが、3年前に結婚して独立して暮らしている。次兄の情報が少ないのは「もう家を出た子だから」との事だが、なんとなくわかる。
兄弟姉妹に財産分与なんて近代、現代の世界の概念。
日本だってせいぜい次男にスペアとして扱うくらいで、長男が家督を継いだら用無しで放り出される。下手に平等に扱うばかりにお家騒動、下手すれば国家の基幹が揺らいだなんて歴史は腐るほどある。
シャルロットは自身はと言えば、両親の他になんと50人を超える住み込み使用人、同じ数の通いの使用人と同居していたのだ。
――公爵家って凄いわね!!――
それが率直な感想だった。
【もしかしたら本当に転生? VS 長編スペクタクルな長い夢?】毎日のように葛藤している。
夢にしては見る時間が長い。そう思うけれど、夢って覚えてる所が部分的短いだけでかなり長い夢を見た気もする事もあったから、やっぱり夢??と思ってみるのだけれど。
「御髪を梳きますね」
そう言ってゴスロリ着用メイドさんは私の長い髪を梳く。それはもう丁寧に梳く。
その時手鏡に映る私は・・・。
――なにこれ、超絶可愛いじゃないの!――
奮発して美容院に行き「軽めのカラーします?似合いますよ」と太陽の光に当たれば角度によって青っぽく見えるカラーリングはしてもらったことはあるけれど、両親の若かりし頃に流行っていた「金髪ヤンキー」を彷彿させる髪。
――毛根から金髪?!プリンになっちゃう!?――
そして気が付く。
――夢って凄い。1カ月以上お風呂も入ってないし髪も洗ってないのに――
手鏡には清潔感溢れる金髪の美人が映っていたのだが、臭うものは臭うし、痒いものは痒い。
夢の中で「臭い!」「痒い!」なんていうリアル感溢れる五感の刺激ってここまで感じたこともない。
――本当に転生しちゃったのかな――
こんな時、小説なんかだったら神様が「どうですかぁ?」とか様子見に来たりするものだが、一向に来ない。
「やっぱり自分の事を ”神です” と自己紹介したり、 ”神” って自分の名前を自分で呼称する奴に碌なのいないわ」
だが、神様はいつも見ているのである。
未だに迷っているのを見かねて遂に「気づき」を与える日がやって来たのだった。
まだ確証も得られないまま日数だけが過ぎていく。
だけど、なんとも不思議な感覚。
私の魂が吹き込まれるまでは絵本にも挿絵ですら描かれても居らず、原作にもいないキャラなので台本を読んでそのキャラになりきる女優の感覚に近い。
尤も演劇は小学生の時に桃太郎の劇で「木」の役をした事がある程度だが。
この体の持ち主・・・自分はシャルロット・アベルジェ。年齢は22歳。アベルジェ公爵家の長女だが第3子。
家族構成は両親と兄2人。
長兄は隣国の王族が結婚するというので王太子の名代で現在は不在。
飛行機や新幹線は勿論、鉄道というものもないし、車もない。
それらのワードを出して、愛想笑いしか返さない両親やメイドさん達に「あ、通じない」と違和感がさらに強まった。
「お兄様はここよ。この国に向かっているの」と示して貰った地図を見て真っ先に思ったのは・・・。
――大航海時代の地図ですかぁ!!――
陸路を馬車でゆっくりと走る旅。隣国までは1000kmほどあるそうだ。
東京から山口県の防府市までの距離に匹敵する。
1年前に出発をしたそうで、まだ目的地には到着していないのだとか。
――シルクロード経由ガンダーラ直行便ですかっ?!――
戻ってくるのは2年半後・・・どんだけ長い旅なの?と思えば、進む距離は1日に20kmもないくらい。
隣国の王族の結婚式に招かれているので、祝いの品を載せた荷馬車も何台もあって馬も1、2km進んだら休ませてとしていたらそれくらいはかかるのだろう。
宿泊はどうしているのかと問えば、行く先々にある貴族の家にお邪魔しているか、野宿だそうだ。公爵家ともなると紹介状1枚に黄門さまの印籠と同等の効力があるらしい。
時代劇の黄門さまは宿屋を利用してたけど、長兄の一行が宿屋を利用する事は防犯の観点からは先ずないらしい。宿屋を利用する時は丸ごと買い取ってしまうそうだから金持ちはする事がエグい。
次兄は騎士だが、3年前に結婚して独立して暮らしている。次兄の情報が少ないのは「もう家を出た子だから」との事だが、なんとなくわかる。
兄弟姉妹に財産分与なんて近代、現代の世界の概念。
日本だってせいぜい次男にスペアとして扱うくらいで、長男が家督を継いだら用無しで放り出される。下手に平等に扱うばかりにお家騒動、下手すれば国家の基幹が揺らいだなんて歴史は腐るほどある。
シャルロットは自身はと言えば、両親の他になんと50人を超える住み込み使用人、同じ数の通いの使用人と同居していたのだ。
――公爵家って凄いわね!!――
それが率直な感想だった。
【もしかしたら本当に転生? VS 長編スペクタクルな長い夢?】毎日のように葛藤している。
夢にしては見る時間が長い。そう思うけれど、夢って覚えてる所が部分的短いだけでかなり長い夢を見た気もする事もあったから、やっぱり夢??と思ってみるのだけれど。
「御髪を梳きますね」
そう言ってゴスロリ着用メイドさんは私の長い髪を梳く。それはもう丁寧に梳く。
その時手鏡に映る私は・・・。
――なにこれ、超絶可愛いじゃないの!――
奮発して美容院に行き「軽めのカラーします?似合いますよ」と太陽の光に当たれば角度によって青っぽく見えるカラーリングはしてもらったことはあるけれど、両親の若かりし頃に流行っていた「金髪ヤンキー」を彷彿させる髪。
――毛根から金髪?!プリンになっちゃう!?――
そして気が付く。
――夢って凄い。1カ月以上お風呂も入ってないし髪も洗ってないのに――
手鏡には清潔感溢れる金髪の美人が映っていたのだが、臭うものは臭うし、痒いものは痒い。
夢の中で「臭い!」「痒い!」なんていうリアル感溢れる五感の刺激ってここまで感じたこともない。
――本当に転生しちゃったのかな――
こんな時、小説なんかだったら神様が「どうですかぁ?」とか様子見に来たりするものだが、一向に来ない。
「やっぱり自分の事を ”神です” と自己紹介したり、 ”神” って自分の名前を自分で呼称する奴に碌なのいないわ」
だが、神様はいつも見ているのである。
未だに迷っているのを見かねて遂に「気づき」を与える日がやって来たのだった。
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