転生先は王子様の元婚約者候補というifモブでした

cyaru

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第10話   アタオカも厭わず!

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あまりよろしくない噂はどうしてこうも聞こえてきてしまうのだろうか。

聞きたくなくても「我らがお嬢様!」を蔑ろにした第2王子については屋敷の使用人達は少なからず腹を立てているので聞きこんできた噂をシャルロットに聞かせてくれる。

――私・・・女性セ〇ンとか女〇自身はあまり読まない方なんだけど――

メイドたちの話によれば…。


サンドリヨンことシンデレラを妃に!と選んだ元婚約者もどきの第2王子。

世紀の大恋愛と言われ、商店街は未だにお祝いのセールを開催中。
サンドリヨンの養母と義姉は何処かに追放されたらしいが、その第2王子とサンドリヨンの仲が宜しくないらしいのだ。

――まだ3カ月なのに?!――


時系列で整理しよう。

シャルロットたち婚約者候補と第2王子の婚約関係が無くなったのが5カ月前。

シャルロットは婚約者候補だった令嬢の中で一番最後に婚約が無くなったのだが、その帰り道で襲撃を受けた。

2週間後に予定通り夜会が開かれた。
この夜会は昏睡中なので欠席である。

元々この夜会は予定されていたので中止は出来ず内容が変わった。

夜会の開催を決定した時は、婚約者候補の中から第2王子の妃が選ばれる予定だった。
初日に婚約者候補のそれまでの経歴などを発表し、2日目はいよいよ決定。そんな予定だったのだ。

第2王子の我儘で婚約者候補はいなくなったので急遽集まった令嬢の中から好みの令嬢がいれば選ぶ選抜会になった。1日では全ての令嬢が参加するのは不可能なので2日連続で行なわれたわけだ。

勿論令嬢側はどちらか1日でも良いし、2日とも参加しても良い。


そこでサンドリヨンと第2王子は目出度く恋に落ちたのだが、サンドリヨンが「帰らなきゃ」とガラスの靴を片方置いて帰ってしまい、第2王子は捜索を開始。

シャルロットが目覚めて1カ月目。襲撃された時から言えば2カ月目で第2王子はサンドリヨンを見つけてサンドリヨンは王宮暮らしを始めた。

つまりサンドリヨンは王宮で暮らし始めて3カ月目と言う事だ。

3カ月と言えば告白してカレカノになってもラブラブな期間。
結婚したての新婚さんなら毎晩「いらっしゃーい!」な時間だ。

――シンデレラって王子様と幸せに暮らしましたって事じゃなかったの?――




悩んでも他人の事だ。今は目の前の自分の事を考えなきゃ!
化粧鏡に映るシャルロットはいつもよりもお嬢様度合が増し増しになっている。

何故かと言えば今日はボードリエ公爵家の嫡男テオドールと顔合わせの日だからである。

この日の為に僅かな時間しかなかったがシャルロットは屋敷の書庫にある本で「円満離婚」について調べた。

知識としてはリアルな現代にもマリアージュ・ブランがある。
フランス国籍を取得したい、それだけの理由で数年夫婦となるが実態は1つ屋根の下で暮らす同居人。フランスはフランス人じゃない限り永住権はないので国籍を取得するために偽装結婚をする者がいるのだ。

なので偽装結婚にしようと思ったのだが、どうもよろしくない。
よく小説で「白い結婚で離縁!」とあるが簡単ではないのが判明した。


政略結婚100%の世界なので、その夫婦には夫婦になって貰う必要がはあるのだ。

なので初夜には見届け人がいたというのも事実だし、王妃の出産などはまさに見世物で見学者がぞろぞろなんてのも事実。

体の関係を持ったのを確認するために、行為後の女性の体に「残骸」があるかを確認したってのも事実なのだ。

しかし例外もある。離縁は出来ない訳ではない。再婚する人はちゃんといた。
相手が死亡し寡婦や寡夫となったら再婚は出来た。殆どが超年齢差のある結婚だったし、関係を持てる年齢になるまでは教会から性交渉を禁止されていた。

平均寿命も現代ほど長くなかったのでかなりのあるあるなのだが…。
テオドールは27歳。早世を願うのは余りにも酷だ。

――私、まだ死なないと思うし――

身勝手と言われても構わない。
神様は言ったのだ。「寿命を全うできる」と。


白い結婚は「性的不能」であれば結婚をした事にならないとある。
結婚してしまったら関係を持たない状況を常に作る事で理由になる。
ただ、残念なことに期間は何年とか設けられていないので実質は不可能。

ならば!!結婚になる前に婚約を無かった事にしてもらう!
この際だ、婚約解消ではなく明らかに不適格と烙印を押して貰う婚約破棄でも構わない。

幸いなことに、父親のクロードや母親のベランジェールですらシャルロットの言動には理解が出来ないと思わせる事が多々ある。そう!現代の感覚である。

時代が違えば「異端児」「問題児」として認定される事がある。

向こうの世界の祖母が「キャー♡ポールぅ♡」とビート〇ズ来日で歓声を上げると周囲の大人たちには「はしたない」「不良の聞く音楽」だと言われてポスターもレコードも捨てられた事があると言っていた。

母親の世代ではアルバイトをするのも新聞配達か牛乳配達、年賀状の仕分けは認めてもらえたが、ファミレスでバイトすると言えば怪訝な顔をされたという。小学生でも酒やたばこは買えるのに居酒屋のバイトなどもってのほか。よく判らない基準があったようだ。

つ・ま・り。現代の生活様式にすれば「こいつ危なくね?」と望んでもないアタオカ認定はされるだろうが、婚約は無くなるだろう。

「フフフ・・・フフフ・・・」
「お嬢様、楽しそうですね」
「判るぅ?」
「判りますよ~。テオドール様と言えば二度見、三度見する美丈夫ですものね。私も御尊顔を拝見する事が出来るので楽しみですよ~。お嬢様の側付になってこれ以上の役得はないですぅ♡」

メイドとは楽しみの基準、いや次元が違うようだがまぁいいだろう。
シャルロットは支度を整えるとテオドールの待つサロンに向かったのだった。
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