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第30話♡計画書はお早めに
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いつもと変わりないように見えて、ラウールが遠征に出ているため朝の鍛錬での声は少しだけ小さいし、団長室も少しだけ広く見える。
「リー。この書類なんだが武具の予算計画書が入っていない」
書類を2枚手に取り、デスクの上の書類と合計3枚に交互に目を走らせながらガウルテリオが秘書官のマリーに問いかけた。
ハッと気が付いたのはファルコン。
慌てて引き出しを開ければ、出す筈だった予算計画書がご丁寧に入っている。
ファルコンの押印待ちだったのだ。
「団長!すみません。俺のところで止まってます」
「そうだったのか。じゃぁラウールの押印も必要だから‥‥来月に回すか」
「あ~。すみません。バイザー4人分ですよね。やっちまった~」
椅子の背もたれに大きくもたれかかってファルコンが天井を見上げる。
その様子を見ていたマリーが静かに席を立った。
「団長様、よろしいでしょうか」
「ん?リー。どうした?」
「リーでは御座いません。ここではウェルバーム。若しくは秘書官とお呼びください。先程も「うっかり」が出ておりました。必要でしたらペナルティもご用意致しますが如何しますか?」
――ペナルティ?!ただのご褒美なんじゃね?――
イグナシオとファルコンがそう思うのも無理はない。
途端にデレる気持ち悪い男が爆誕したのだから。
「あはっ♡そうだったかな?」
ギロリとマリーに見下ろされるガウルテリオ。
「ぁぃ…すみません」姿勢を正した。
「先程の武具ですが拾得物など持ち主が現れない物のうち、買取価格が付いた物があります。合わせて第3騎士団を通して購入した隊服などのマージンを合わせますとバイザー4人分でしたらその売り上げで新品が購入できる額となります」
マリーが差し出した売り上げなどの金額が入った書類を見ると意外に多い。
隊服などは何処で買っても「定価」だが騎士団を通せば税の分だけ安い事を周知すれば騎士の妻たちが購入先を一気に変更し、コツコツと積み上がったマージンだけで相当な額。
「これなら予算計画書に入れなくても大丈夫だが、どうせならその積み立てた分は皆でパーッと――」
バンッ! ビックゥ!! ガウルテリオの腰が浮く。
「団長様、パーっとする予算。士気を高めるには必要であると認めますが、毎回予算を超えております。その上、アルコールが苦手な騎士はソフトドリンクのみ。これでは不公平感が生まれてしまいます。そちらはパーッとされる前にしっかりと見直し。お願いいたします」
「それから…」っと一旦デスクに数歩歩いて別の書類を手にしたマリー。
ガウルテリオにススっと差し出した。
「これは何だ?」
「騎士団再編成についての陳述書です。こちらが秘書官等女性従事者に対して新たに設ける規則案。共に意見があれば来週明けまでに総務課に提出するようにとの事です」
騎士団の再編成と聞いてイグナシオとファルコンがガウルテリオのデスクに集まった。
共に初めて聞く言葉で今まで団員を融通したり、他の騎士団への異動願いが出れば団長など役職で話し合いをしてトレードなりでやりくりしてきた問題。
★ガ=ガウルテリオ、イ=イグナシオ、フ=ファルコン
ガ「再編成って…これじゃ近衛騎士なんて無理じゃないですか?」
イ「どれどれ‥‥志願の際に公爵又は侯爵家当主の推薦状?!」
フ「これも無理だ。近衛と第1に志願の際は供託金200万ポポ前納?!」
イ「おまけに警護団と第4、第5騎士団は閉鎖でその中から選抜で王都護衛団を新設って…人数が今の4分の1以下で3つがやってた業務を回せるわけないじゃないですか!」
もう一枚、マリーが関係する書類に目を通したファルコンはデスクの天板に思い切り叩きつけた。
フ「これ、明らかに改悪でしょ?女性従事者がそのまま勤務を継続したい場合は、妊娠および出産は諦めろって事ですよね。ってか子供がいる場合は志願するなって…陛下は何を考えてんですかねっ!」
憤るファルコン。
ファルコンの妻も子供が3人、学院などの初等科に通う年齢になれば働いてみたいと試験の勉強を始めたばかり。子供が発熱などになれば抜けなくてはならなくなるから志願するなとは横暴だと息まく。
そんな中、マリーは静かに声を上げた。
「予算の削減ではありませんか?制度が始まって5年です。今年になって3、4カ月で異動だった配属先が短期で半年、長期は無期限と陛下がお認めになりましたが、王妃殿下は「慣れ合い」となり、職場結婚により突然の欠員が出る恐れがあると反対をされたそうです。陛下が押し切ったようですが、わたくしがここに配属になる頃にそんな話が御座いましたので」
うーん。とガウルテリオは腕を組んで考え込んだ。
男と違って女性の場合はどうしても結婚をすれば妊娠や出産の可能性はある。
第3騎士団に配属されたのはマリーだが、団長会議で第2騎士団と第5騎士団では配属になった女性秘書官と騎士が結婚し、妊娠。悪阻などで早退の他に時間調整が必要となり、数か月後の出産では出勤できないのでその間をどうするか。新たに秘書官を迎え入れれば産休を与えても復帰する場がなくなるし、応急に来てもらった者も復帰すれば仕事を失う。1つの騎士団に2人も秘書官は必要がないと愚痴をこぼしていた。
「女性の雇用については秘書官。後で意見を聞かせてくれ」
「承知致しました」
おや?とファルコンとイグナシオがガウルテリオを見る。
「なんだ?」と聞けばファルコンがガウルテリオに耳打ちをした。
【家族計画ですか?】
ガウルテリオ。ジュボっと赤くなる顔、湯気の出る頭部。
マリーは「ファルコン副団長様っ!」っと呼んでギロリと睨む。
「家族計画の前に、予算計画書を纏めるのが先です」
「あ、いや、でも大事な事かな~なぁんて・・・」
「ファルコン副団長様」
「は、はい」
「家族計画は業務に入っておりません」
「はぃ…」
「それから‥‥3人目のお子様が来年度初等科に御入学されるそうですが、3人目は学費免除若しくは半額補助が御座います。パンフレットを差し上げますので奥様とご検討ください。申請期限は再来月の末です」
ぱぁぁ!っと明るい顔になるファルコン。
学費は仕方がないにしても3人分はキツイよな~と思っていた所だった。
マリーから手渡されたパンフレットに舞い上がり結局、不要分を省いた予算計画書の提出は明日以降になってしまったのだった。
翌朝、マリーに「午後まで待って!」と頼んだファルコン。
「計画書だけでも計画的に。予算計画書は遅れれば始末書、学費申請は遅れたら全額自費と言うペナルティが御座います」
「き、気をつけます」
鍛錬のあとは剣をペンに持ち替えて必死に書類を仕上げる。
武術では様々な技を繰り出すファルコン・マイノシー。
デスクワークでは初歩的な技も出せない男だった。
「リー。この書類なんだが武具の予算計画書が入っていない」
書類を2枚手に取り、デスクの上の書類と合計3枚に交互に目を走らせながらガウルテリオが秘書官のマリーに問いかけた。
ハッと気が付いたのはファルコン。
慌てて引き出しを開ければ、出す筈だった予算計画書がご丁寧に入っている。
ファルコンの押印待ちだったのだ。
「団長!すみません。俺のところで止まってます」
「そうだったのか。じゃぁラウールの押印も必要だから‥‥来月に回すか」
「あ~。すみません。バイザー4人分ですよね。やっちまった~」
椅子の背もたれに大きくもたれかかってファルコンが天井を見上げる。
その様子を見ていたマリーが静かに席を立った。
「団長様、よろしいでしょうか」
「ん?リー。どうした?」
「リーでは御座いません。ここではウェルバーム。若しくは秘書官とお呼びください。先程も「うっかり」が出ておりました。必要でしたらペナルティもご用意致しますが如何しますか?」
――ペナルティ?!ただのご褒美なんじゃね?――
イグナシオとファルコンがそう思うのも無理はない。
途端にデレる気持ち悪い男が爆誕したのだから。
「あはっ♡そうだったかな?」
ギロリとマリーに見下ろされるガウルテリオ。
「ぁぃ…すみません」姿勢を正した。
「先程の武具ですが拾得物など持ち主が現れない物のうち、買取価格が付いた物があります。合わせて第3騎士団を通して購入した隊服などのマージンを合わせますとバイザー4人分でしたらその売り上げで新品が購入できる額となります」
マリーが差し出した売り上げなどの金額が入った書類を見ると意外に多い。
隊服などは何処で買っても「定価」だが騎士団を通せば税の分だけ安い事を周知すれば騎士の妻たちが購入先を一気に変更し、コツコツと積み上がったマージンだけで相当な額。
「これなら予算計画書に入れなくても大丈夫だが、どうせならその積み立てた分は皆でパーッと――」
バンッ! ビックゥ!! ガウルテリオの腰が浮く。
「団長様、パーっとする予算。士気を高めるには必要であると認めますが、毎回予算を超えております。その上、アルコールが苦手な騎士はソフトドリンクのみ。これでは不公平感が生まれてしまいます。そちらはパーッとされる前にしっかりと見直し。お願いいたします」
「それから…」っと一旦デスクに数歩歩いて別の書類を手にしたマリー。
ガウルテリオにススっと差し出した。
「これは何だ?」
「騎士団再編成についての陳述書です。こちらが秘書官等女性従事者に対して新たに設ける規則案。共に意見があれば来週明けまでに総務課に提出するようにとの事です」
騎士団の再編成と聞いてイグナシオとファルコンがガウルテリオのデスクに集まった。
共に初めて聞く言葉で今まで団員を融通したり、他の騎士団への異動願いが出れば団長など役職で話し合いをしてトレードなりでやりくりしてきた問題。
★ガ=ガウルテリオ、イ=イグナシオ、フ=ファルコン
ガ「再編成って…これじゃ近衛騎士なんて無理じゃないですか?」
イ「どれどれ‥‥志願の際に公爵又は侯爵家当主の推薦状?!」
フ「これも無理だ。近衛と第1に志願の際は供託金200万ポポ前納?!」
イ「おまけに警護団と第4、第5騎士団は閉鎖でその中から選抜で王都護衛団を新設って…人数が今の4分の1以下で3つがやってた業務を回せるわけないじゃないですか!」
もう一枚、マリーが関係する書類に目を通したファルコンはデスクの天板に思い切り叩きつけた。
フ「これ、明らかに改悪でしょ?女性従事者がそのまま勤務を継続したい場合は、妊娠および出産は諦めろって事ですよね。ってか子供がいる場合は志願するなって…陛下は何を考えてんですかねっ!」
憤るファルコン。
ファルコンの妻も子供が3人、学院などの初等科に通う年齢になれば働いてみたいと試験の勉強を始めたばかり。子供が発熱などになれば抜けなくてはならなくなるから志願するなとは横暴だと息まく。
そんな中、マリーは静かに声を上げた。
「予算の削減ではありませんか?制度が始まって5年です。今年になって3、4カ月で異動だった配属先が短期で半年、長期は無期限と陛下がお認めになりましたが、王妃殿下は「慣れ合い」となり、職場結婚により突然の欠員が出る恐れがあると反対をされたそうです。陛下が押し切ったようですが、わたくしがここに配属になる頃にそんな話が御座いましたので」
うーん。とガウルテリオは腕を組んで考え込んだ。
男と違って女性の場合はどうしても結婚をすれば妊娠や出産の可能性はある。
第3騎士団に配属されたのはマリーだが、団長会議で第2騎士団と第5騎士団では配属になった女性秘書官と騎士が結婚し、妊娠。悪阻などで早退の他に時間調整が必要となり、数か月後の出産では出勤できないのでその間をどうするか。新たに秘書官を迎え入れれば産休を与えても復帰する場がなくなるし、応急に来てもらった者も復帰すれば仕事を失う。1つの騎士団に2人も秘書官は必要がないと愚痴をこぼしていた。
「女性の雇用については秘書官。後で意見を聞かせてくれ」
「承知致しました」
おや?とファルコンとイグナシオがガウルテリオを見る。
「なんだ?」と聞けばファルコンがガウルテリオに耳打ちをした。
【家族計画ですか?】
ガウルテリオ。ジュボっと赤くなる顔、湯気の出る頭部。
マリーは「ファルコン副団長様っ!」っと呼んでギロリと睨む。
「家族計画の前に、予算計画書を纏めるのが先です」
「あ、いや、でも大事な事かな~なぁんて・・・」
「ファルコン副団長様」
「は、はい」
「家族計画は業務に入っておりません」
「はぃ…」
「それから‥‥3人目のお子様が来年度初等科に御入学されるそうですが、3人目は学費免除若しくは半額補助が御座います。パンフレットを差し上げますので奥様とご検討ください。申請期限は再来月の末です」
ぱぁぁ!っと明るい顔になるファルコン。
学費は仕方がないにしても3人分はキツイよな~と思っていた所だった。
マリーから手渡されたパンフレットに舞い上がり結局、不要分を省いた予算計画書の提出は明日以降になってしまったのだった。
翌朝、マリーに「午後まで待って!」と頼んだファルコン。
「計画書だけでも計画的に。予算計画書は遅れれば始末書、学費申請は遅れたら全額自費と言うペナルティが御座います」
「き、気をつけます」
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