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第24話 目先の事しか考えられない
屋敷に戻ってきたロバートだが、やはりティニャに会う方法が無い。
かなりの資産があるのなら夫婦なんだ。半分とは言わなくても困窮するこの現状を打破するのに3分の1、いや4分の1は自由にさせてくれたって当然と考え、何とかコンタクトを取ろうとした。
「もう一度行ってみるしかないか」
そうは思うけれど、ハリスンの鞭は恐ろしいし、テラスまでの庭に仕掛けられたトラバサミも怖い。
「はぁ、この壁が無ければなぁ」
玄関ホールから客間のあるスペースには行けないように現在は壁がある。
試しににノックのように叩いてみたけれど、音がおかしい。
試しにロバートは自分の部屋の壁も叩いてみたが明らかに音が違っていた。
「なんでかな?どうしてこうも低い音なんだ?」
壁を撫でたり叩いたりしているロバートにクリーンメイドがいない事で掃除もせねばならない下男が「何してるんです?」と話しかけた。
「いや、この壁が音が違うなと思って」
「あぁ、構造合板の24mmだからでしょうね」
「他のとはどう違うんだ?」
「強度が全然違いますよ。机の天板くらい厚さがあるんで、穴をあけようと思っても簡単には開きませんし、斧で叩き壊そうと思っても、ただの板じゃなく圧縮をした角材を強固にしてる?ってな感じでしてね。下手すりゃ斧の方が壊れちまう。体当たりなんかしようものなら肩と腰、やっちまいますよ」
そして下男はくんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。
「モエニク草の香りがしますね。板そのものも厚いので火がつくまで時間が掛かりますけど、モエニク草使ってるとなると更に燃えにくいでしょうね」
「そうなのか」
「えぇ。実際に見た訳じゃないし、モエニク草使った構造合板なんて1枚が目の玉飛び出る値段なんで、俺らみたいな薄給じゃお目に掛かる事もないんですけど、先日工事してた大工の話を小耳に挟んだだけですが、奥様は天井裏なんかも細工したそうなので間者も忍び込むのは難しそうですね。誰かそう言う仕事をしてたやつでもいるんですかね。前に勤めてた公爵家よりよっぽど手の込んだ対策してますよ」
下男の話を全面的に信用した訳ではないが、屋根や壁の補修はさせているし必要な材料も修復する箇所に見合ったものを選ばせているので厚さのある合板が高価であるのは間違いない。
(って事は、くそっ!ここに来た時から金はたんまり持ってたんじゃねぇかよ!さらに増やしたんならこっちに分け前寄越すのも当たり前だろ)
持参金を使ったかも?なんていう考えはロバートには微塵も浮かばなかった。
金は人を狂わせる。
腐りはしないが、あり過ぎると防犯も必要だし金の匂いに群がってくる羽虫も多い。
しかし現在のロバートのように今、突発的な事があって現金が必要なのに手持ちがない、自由に動かせる金が無いとなると目先の事しか考えられなくなるのだ。
正面からは無理そうだと考えたロバートはステールス伯爵家に先触れを送り、ステールス伯爵を屋敷に招いてそこにティニャを呼ぶ方法を考えた。
「先触れを出さないと!!」
急ぎ部屋に戻り、先触れを書くロバートに暇を持て余したアリッサが後ろからじゃれついて来た。
「ロバートぉ。暇ぁ。お買い物に行こうよぉ」
「離れてくれないか」
「やだぁ。昨日もドキドキしたのに全然慰めてくれないしっ!怒ってるんだから!」
「勝手に怒ってろ」
「酷ぉい!ホントに怒ってるんだからね?ちょっとくらい優しくしてくれても許してあげないんだから!」
「五月蝿いな!喋るなよ。息が臭いんだよ」
アリッサは驚いて手で口を覆ったが、今までそんな事は誰にも言われた事が無い。
バシバシとロバートの背を叩いていて、肩越しにロバートが書いている先触れを覗き込んだ。
「手紙?誰に書いてるの?」
「誰だっていいだろう!なんでいちいちお前に教えなきゃいけないんだよ」
「そんな言い方ないでしょう?」
言い合いになりアリッサは書きかけの先触れをぐしゃっと手で掴んだ。
「何するんだ!」言葉と同時に振り上げられたロバートの手を見て頭を庇い、しゃがんだ。
「わ、悪い。女を殴る趣味はないんだ」
そう言って新しい紙を取り出してまたペンを走らせるロバートの背中を見たが、アリッサは嫌な感じがした。気になって掴んだ紙の皴を伸ばし、書いている文字を読むが何と書いてあるのか全く分からない。
判るのは自分の名前、アリッサに共通するアルファベット、そして見慣れた文字だ。
アリッサはクワっと目を見開いた。
かなりの資産があるのなら夫婦なんだ。半分とは言わなくても困窮するこの現状を打破するのに3分の1、いや4分の1は自由にさせてくれたって当然と考え、何とかコンタクトを取ろうとした。
「もう一度行ってみるしかないか」
そうは思うけれど、ハリスンの鞭は恐ろしいし、テラスまでの庭に仕掛けられたトラバサミも怖い。
「はぁ、この壁が無ければなぁ」
玄関ホールから客間のあるスペースには行けないように現在は壁がある。
試しににノックのように叩いてみたけれど、音がおかしい。
試しにロバートは自分の部屋の壁も叩いてみたが明らかに音が違っていた。
「なんでかな?どうしてこうも低い音なんだ?」
壁を撫でたり叩いたりしているロバートにクリーンメイドがいない事で掃除もせねばならない下男が「何してるんです?」と話しかけた。
「いや、この壁が音が違うなと思って」
「あぁ、構造合板の24mmだからでしょうね」
「他のとはどう違うんだ?」
「強度が全然違いますよ。机の天板くらい厚さがあるんで、穴をあけようと思っても簡単には開きませんし、斧で叩き壊そうと思っても、ただの板じゃなく圧縮をした角材を強固にしてる?ってな感じでしてね。下手すりゃ斧の方が壊れちまう。体当たりなんかしようものなら肩と腰、やっちまいますよ」
そして下男はくんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。
「モエニク草の香りがしますね。板そのものも厚いので火がつくまで時間が掛かりますけど、モエニク草使ってるとなると更に燃えにくいでしょうね」
「そうなのか」
「えぇ。実際に見た訳じゃないし、モエニク草使った構造合板なんて1枚が目の玉飛び出る値段なんで、俺らみたいな薄給じゃお目に掛かる事もないんですけど、先日工事してた大工の話を小耳に挟んだだけですが、奥様は天井裏なんかも細工したそうなので間者も忍び込むのは難しそうですね。誰かそう言う仕事をしてたやつでもいるんですかね。前に勤めてた公爵家よりよっぽど手の込んだ対策してますよ」
下男の話を全面的に信用した訳ではないが、屋根や壁の補修はさせているし必要な材料も修復する箇所に見合ったものを選ばせているので厚さのある合板が高価であるのは間違いない。
(って事は、くそっ!ここに来た時から金はたんまり持ってたんじゃねぇかよ!さらに増やしたんならこっちに分け前寄越すのも当たり前だろ)
持参金を使ったかも?なんていう考えはロバートには微塵も浮かばなかった。
金は人を狂わせる。
腐りはしないが、あり過ぎると防犯も必要だし金の匂いに群がってくる羽虫も多い。
しかし現在のロバートのように今、突発的な事があって現金が必要なのに手持ちがない、自由に動かせる金が無いとなると目先の事しか考えられなくなるのだ。
正面からは無理そうだと考えたロバートはステールス伯爵家に先触れを送り、ステールス伯爵を屋敷に招いてそこにティニャを呼ぶ方法を考えた。
「先触れを出さないと!!」
急ぎ部屋に戻り、先触れを書くロバートに暇を持て余したアリッサが後ろからじゃれついて来た。
「ロバートぉ。暇ぁ。お買い物に行こうよぉ」
「離れてくれないか」
「やだぁ。昨日もドキドキしたのに全然慰めてくれないしっ!怒ってるんだから!」
「勝手に怒ってろ」
「酷ぉい!ホントに怒ってるんだからね?ちょっとくらい優しくしてくれても許してあげないんだから!」
「五月蝿いな!喋るなよ。息が臭いんだよ」
アリッサは驚いて手で口を覆ったが、今までそんな事は誰にも言われた事が無い。
バシバシとロバートの背を叩いていて、肩越しにロバートが書いている先触れを覗き込んだ。
「手紙?誰に書いてるの?」
「誰だっていいだろう!なんでいちいちお前に教えなきゃいけないんだよ」
「そんな言い方ないでしょう?」
言い合いになりアリッサは書きかけの先触れをぐしゃっと手で掴んだ。
「何するんだ!」言葉と同時に振り上げられたロバートの手を見て頭を庇い、しゃがんだ。
「わ、悪い。女を殴る趣味はないんだ」
そう言って新しい紙を取り出してまたペンを走らせるロバートの背中を見たが、アリッサは嫌な感じがした。気になって掴んだ紙の皴を伸ばし、書いている文字を読むが何と書いてあるのか全く分からない。
判るのは自分の名前、アリッサに共通するアルファベット、そして見慣れた文字だ。
アリッサはクワっと目を見開いた。
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