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第26話 そっちの心配?
ペーパーナイフを手にロバートの部屋を飛び出して行ったアリッサは玄関ホールから客間のあったスペースを分断する壁に走ってきた勢いのままに体当たりをしたのだが…。
ドンッ!「ノギャッ!」
不意に尻尾を踏まれた猫の方がまだ驚きと痛みを感じる声を出すのにアリッサの声は何とも情けない声で、びくともしない壁にあっさりと跳ね返されて毛足の長い絨毯を仰向けになって滑って行った。
ペーパーナイフは絨毯に刺さるとアリッサが滑る勢いのままに刃先を削りながら絨毯を切り裂いていく。
うまい具合に真っすぐに裂けたのは絨毯を敷く前に木の板と板の間に刺さったためである。
「あぁぁ!!絨毯がぁ!!」
真っ先に駆けつけてきたのは玄関扉の窓ガラスを清掃していた下男。
「なんてことを!途中が裂けたらここに足を引っかけて転ぶじゃないか!おまけに砂とか虫とか、アンタみたいなクズが入り込むから掃除が大変なんだよ!」
下男は給料は据え置きならぬ減額をされているが、元々下男、下女の行う仕事で得られる給金は少ないのでサクターマ伯爵家で一番減らされた金額が少なかった。
毎朝屋台でホットドッグと果実水を買って朝食にしていたが2、3日果実水無しにすればいいだけの減額なので、大した痛手もなく、日頃から屋根だったり壁だったり薪割りの仕事をしていたけれど、ちらりと見える窓や床の隅っこ。「あそこももうちょっと手を入れればいいのに」と思っていたただの掃除好きだったので掃除の仕事が出来るようになって喜んだ変わり者である。
「ちょっと!!痛たたた…床の心配より私の心配しなさいよ!」
「何言ってるんだ!あんたなんかより毎日皆に踏まれる絨毯の方が大事に決まってるだろう!」
「なっ!!もう一度言ってみなさいよ!」
「言わせてもらうがな!お前は人に踏まれる絨毯の気持ちになった事があるのか?雨の降る日は濡れた足、砂の舞う日は毛足に砂が纏わりつき、誰にも感謝されることなく日々踏みつけられている絨毯の気持ちを考えたことがあるのかぁーっ!」
下男は涙まで流しながらアリッサに絨毯の気持ちになってみろと叫んだ。
(コイツ、頭、イカれてるの?)
更には遅れてやって来たロバートまで裂けた絨毯を見て「嘘だろ」と絶望した顔になっている。
「ロバート!転んだの!痛いのよ!」
ロバートはアリッサをちらっと見ただけで「自業自得だ」と小さく言葉を発し絨毯の切れ目を手で撫でる下男の元に駆け寄った。
「直りそうか?」
「旦那様…絨毯は絨毯職人が1枚1枚手作りをしますので直しに出せば治らない事もありませんが、この絨毯は年代物。直せる職人がいるかどうかから問い合わせをせねばなりませんし、昨今毛足の長い絨毯は生産されていないので同じようになるかも判りません。でも放っておくと裂けめの端と端からボロボロになって行きますよ」
ロバートは困ったなと顎に手を当てて考える。
せめて裂けた場所が壁際であればと思うが玄関ホールの壁際から1.5mほどから3mくらい中央に向かって裂けている。
オマケに玄関扉に向かって裂けているなら玄関から入ってきて足を引っかける事も無いだろうが90度の角度を持っているので知らない者は足を引っかけて転んでしまう。
来客があった時、玄関があるのにティニャのように掃き出し窓を出入り口に使う事も出来ない。なんせ馬車が停まるのは玄関扉を開けた先のアプローチなので、馬車を降りた客の目の前に玄関扉があるのに「こっちです」と窓まで案内をせねばならなくなる。
ティニャは「間借りをしている」と客には言っているので、客も庭を歩くこともあって「なら玄関使うのマズイよね」と勝手に思ってくれるがロバートはそうではない。客への扱いが適当と見做されてしまい兼ねない。
更には…下男は直しに出せばと言ったが、直しに出す金はない。
弁償させようにもやったのはアリッサで払えるはずもなく。
どうしたものかと下男と顔を見合わせているとアリッサが叫んだ。
「私の事を心配しなさいよ!」
<< それどころじゃない! >>
更にロバートは「心配しなさいよ!」と叫びながらアリッサが放り投げたペーパーナイフの残骸を見た。
「あぁーっ!!」
這うように駆け寄って両手でペーパーナイフを震えながら持ち上げた。
純金製ではないけれど、金製品であるのは間違いないので数万ルピで買取値がつくのに刃先が削れてしまっているので買取不可と思われる。
ロバートはわなわなと怒りに震えた。
ドンッ!「ノギャッ!」
不意に尻尾を踏まれた猫の方がまだ驚きと痛みを感じる声を出すのにアリッサの声は何とも情けない声で、びくともしない壁にあっさりと跳ね返されて毛足の長い絨毯を仰向けになって滑って行った。
ペーパーナイフは絨毯に刺さるとアリッサが滑る勢いのままに刃先を削りながら絨毯を切り裂いていく。
うまい具合に真っすぐに裂けたのは絨毯を敷く前に木の板と板の間に刺さったためである。
「あぁぁ!!絨毯がぁ!!」
真っ先に駆けつけてきたのは玄関扉の窓ガラスを清掃していた下男。
「なんてことを!途中が裂けたらここに足を引っかけて転ぶじゃないか!おまけに砂とか虫とか、アンタみたいなクズが入り込むから掃除が大変なんだよ!」
下男は給料は据え置きならぬ減額をされているが、元々下男、下女の行う仕事で得られる給金は少ないのでサクターマ伯爵家で一番減らされた金額が少なかった。
毎朝屋台でホットドッグと果実水を買って朝食にしていたが2、3日果実水無しにすればいいだけの減額なので、大した痛手もなく、日頃から屋根だったり壁だったり薪割りの仕事をしていたけれど、ちらりと見える窓や床の隅っこ。「あそこももうちょっと手を入れればいいのに」と思っていたただの掃除好きだったので掃除の仕事が出来るようになって喜んだ変わり者である。
「ちょっと!!痛たたた…床の心配より私の心配しなさいよ!」
「何言ってるんだ!あんたなんかより毎日皆に踏まれる絨毯の方が大事に決まってるだろう!」
「なっ!!もう一度言ってみなさいよ!」
「言わせてもらうがな!お前は人に踏まれる絨毯の気持ちになった事があるのか?雨の降る日は濡れた足、砂の舞う日は毛足に砂が纏わりつき、誰にも感謝されることなく日々踏みつけられている絨毯の気持ちを考えたことがあるのかぁーっ!」
下男は涙まで流しながらアリッサに絨毯の気持ちになってみろと叫んだ。
(コイツ、頭、イカれてるの?)
更には遅れてやって来たロバートまで裂けた絨毯を見て「嘘だろ」と絶望した顔になっている。
「ロバート!転んだの!痛いのよ!」
ロバートはアリッサをちらっと見ただけで「自業自得だ」と小さく言葉を発し絨毯の切れ目を手で撫でる下男の元に駆け寄った。
「直りそうか?」
「旦那様…絨毯は絨毯職人が1枚1枚手作りをしますので直しに出せば治らない事もありませんが、この絨毯は年代物。直せる職人がいるかどうかから問い合わせをせねばなりませんし、昨今毛足の長い絨毯は生産されていないので同じようになるかも判りません。でも放っておくと裂けめの端と端からボロボロになって行きますよ」
ロバートは困ったなと顎に手を当てて考える。
せめて裂けた場所が壁際であればと思うが玄関ホールの壁際から1.5mほどから3mくらい中央に向かって裂けている。
オマケに玄関扉に向かって裂けているなら玄関から入ってきて足を引っかける事も無いだろうが90度の角度を持っているので知らない者は足を引っかけて転んでしまう。
来客があった時、玄関があるのにティニャのように掃き出し窓を出入り口に使う事も出来ない。なんせ馬車が停まるのは玄関扉を開けた先のアプローチなので、馬車を降りた客の目の前に玄関扉があるのに「こっちです」と窓まで案内をせねばならなくなる。
ティニャは「間借りをしている」と客には言っているので、客も庭を歩くこともあって「なら玄関使うのマズイよね」と勝手に思ってくれるがロバートはそうではない。客への扱いが適当と見做されてしまい兼ねない。
更には…下男は直しに出せばと言ったが、直しに出す金はない。
弁償させようにもやったのはアリッサで払えるはずもなく。
どうしたものかと下男と顔を見合わせているとアリッサが叫んだ。
「私の事を心配しなさいよ!」
<< それどころじゃない! >>
更にロバートは「心配しなさいよ!」と叫びながらアリッサが放り投げたペーパーナイフの残骸を見た。
「あぁーっ!!」
這うように駆け寄って両手でペーパーナイフを震えながら持ち上げた。
純金製ではないけれど、金製品であるのは間違いないので数万ルピで買取値がつくのに刃先が削れてしまっているので買取不可と思われる。
ロバートはわなわなと怒りに震えた。
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