6 / 58
第06話 スペシャルサンクスッ!
「うぇっぷ‥‥もう食べられない…胃袋だけじゃなくお腹の皮1枚向こうがパンパンの食糧庫のよう感じだわ」
エストス侯爵家の食事は半端ない。
アリアの出した結論である。
20歳を超えて明らかに1日で消化できそうにない量を1食で食べてしまった。
太るのは良いのだがアリアには問題があった。
着る服が無くなってしまう事だ。
物を大事に修復しながら着まわしているアリアの服は10年以上愛用している。身長が伸びれば継ぎ足し、肩回りが少しキツくなれば糸を解いて布を足す。そのままだと継ぎ接ぎだらけの襤褸に見えてしまうがそこは修復師の腕の見せ所。
染み抜きが出来るという事は染色も出来るので服に使っている布の色合いを合わせてリメイクをして行くのである。
しかし現在の状態はウェストがパンパン。動くと口から逆流しそうになってしまう。
明らかに食べ過ぎだが、エストス侯爵家で食事をご馳走になるのも多分最初で最後。これも思い出になると満腹のさらに上をいく腹をアリアは撫でた。
歩いて帰ればカロリー消費にもなるだろう。
――大股と小股を混ぜて歩かなきゃ!――
「さぁ、帰らなきゃ」
「え?お帰りですか?大奥様からアリアさんは当面侯爵家で住まうと聞いてますけど?」
――どうして?本人が知らないのに?何時決まった?――
エストス侯爵家には熱を出してしまい、保護してくれたことに恩返しはせねばならない。アリアは茶器修復の代金を相殺し、その上で後日菓子折りなどを持って改めて礼を言おうと思っていたが、暫くここに住まうなんて初耳だ。
それ以前に先代夫人には依頼が何かも問うていない。
「あのぅ…先代夫人様にご挨拶…」
「大奥様は昼食の後はお昼寝の時間になっております」
「起きられるのは‥‥?」
「夕刻でしょうか。夕食の時間には会えますよ」
――食べるんだ?あれだけ食べて昼寝した後で夕食食べるんだ?――
もしかすると高位貴族になるとお腹の中の消化能力は一般的な消化能力を遥かに超えているのかも知れない。そう思わざるを得ない食事量である。
想像するだけで現在満腹を超えているアリアは戻してしまいそうだ。
「大奥様のご依頼でしたら旦那様が知っているはずですよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。元々は旦那様がどうしようかと困っていたのを大奥様がアリア様に依頼されてみてはどうかと仰ってて」
「ふむ…では侯爵様に取り次ぎいただけますか?」
「畏まりました。ですが‥‥」
――何?何?なんなのぉ?侯爵様も昼寝とか言わないでよ?――
「旦那様は食後の筋トレの最中かと。いつも食べる量が多いんだと愚痴ってらっしゃいますから。旦那様も30を超えて食べ過ぎてしまうと下腹が気になると仰ってて」
――おぃいっ!どの口がそんな事を言うのよ!――
中年太りを気にするくらいなら22歳のうら若き乙女の食べ過ぎにも気を配れ!そんな事を思いつつも筋トレが終われば案内をしてくれるというのでアリアは無駄な抵抗と思いつつ庭を散歩して時間を潰した。
1時間後、侍女が「筋トレ終わったようです」と呼びに来たのでアリアは早速依頼を聞きとるためにエストス侯爵の部屋に向かった。
だが何度ノックをしても部屋の中から返事が聞こえてこない。代わりにバタバタと部屋の中を忙しなく走り回る音が聞こえた。
「またですか!もう!旦那様はこれだから!」
なんだろうと思えば筋トレの後はクールダウンをするそうで、侍女は「無視です」と言い扉を思いっきり開けた。
「あ…」
「どうしたんだ?」
クールダウンはこういう事なのか。
扉を開けた向こう、上半身が裸のエストス侯爵とアリアの目が合う。
しかし、エストス侯爵の表情は変わらない。
変わったのはアリアの表情だけだった。
――うわぁ。腹筋がバッキバキじゃないの♡――
エストス侯爵の年齢は31歳と侍女から聞いたが、ここまで鍛え上げている31歳。
――ご褒美です。眼福です。垂涎ものです。スペシャルサンクスッ!――
エストス侯爵家の食事は半端ない。
アリアの出した結論である。
20歳を超えて明らかに1日で消化できそうにない量を1食で食べてしまった。
太るのは良いのだがアリアには問題があった。
着る服が無くなってしまう事だ。
物を大事に修復しながら着まわしているアリアの服は10年以上愛用している。身長が伸びれば継ぎ足し、肩回りが少しキツくなれば糸を解いて布を足す。そのままだと継ぎ接ぎだらけの襤褸に見えてしまうがそこは修復師の腕の見せ所。
染み抜きが出来るという事は染色も出来るので服に使っている布の色合いを合わせてリメイクをして行くのである。
しかし現在の状態はウェストがパンパン。動くと口から逆流しそうになってしまう。
明らかに食べ過ぎだが、エストス侯爵家で食事をご馳走になるのも多分最初で最後。これも思い出になると満腹のさらに上をいく腹をアリアは撫でた。
歩いて帰ればカロリー消費にもなるだろう。
――大股と小股を混ぜて歩かなきゃ!――
「さぁ、帰らなきゃ」
「え?お帰りですか?大奥様からアリアさんは当面侯爵家で住まうと聞いてますけど?」
――どうして?本人が知らないのに?何時決まった?――
エストス侯爵家には熱を出してしまい、保護してくれたことに恩返しはせねばならない。アリアは茶器修復の代金を相殺し、その上で後日菓子折りなどを持って改めて礼を言おうと思っていたが、暫くここに住まうなんて初耳だ。
それ以前に先代夫人には依頼が何かも問うていない。
「あのぅ…先代夫人様にご挨拶…」
「大奥様は昼食の後はお昼寝の時間になっております」
「起きられるのは‥‥?」
「夕刻でしょうか。夕食の時間には会えますよ」
――食べるんだ?あれだけ食べて昼寝した後で夕食食べるんだ?――
もしかすると高位貴族になるとお腹の中の消化能力は一般的な消化能力を遥かに超えているのかも知れない。そう思わざるを得ない食事量である。
想像するだけで現在満腹を超えているアリアは戻してしまいそうだ。
「大奥様のご依頼でしたら旦那様が知っているはずですよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。元々は旦那様がどうしようかと困っていたのを大奥様がアリア様に依頼されてみてはどうかと仰ってて」
「ふむ…では侯爵様に取り次ぎいただけますか?」
「畏まりました。ですが‥‥」
――何?何?なんなのぉ?侯爵様も昼寝とか言わないでよ?――
「旦那様は食後の筋トレの最中かと。いつも食べる量が多いんだと愚痴ってらっしゃいますから。旦那様も30を超えて食べ過ぎてしまうと下腹が気になると仰ってて」
――おぃいっ!どの口がそんな事を言うのよ!――
中年太りを気にするくらいなら22歳のうら若き乙女の食べ過ぎにも気を配れ!そんな事を思いつつも筋トレが終われば案内をしてくれるというのでアリアは無駄な抵抗と思いつつ庭を散歩して時間を潰した。
1時間後、侍女が「筋トレ終わったようです」と呼びに来たのでアリアは早速依頼を聞きとるためにエストス侯爵の部屋に向かった。
だが何度ノックをしても部屋の中から返事が聞こえてこない。代わりにバタバタと部屋の中を忙しなく走り回る音が聞こえた。
「またですか!もう!旦那様はこれだから!」
なんだろうと思えば筋トレの後はクールダウンをするそうで、侍女は「無視です」と言い扉を思いっきり開けた。
「あ…」
「どうしたんだ?」
クールダウンはこういう事なのか。
扉を開けた向こう、上半身が裸のエストス侯爵とアリアの目が合う。
しかし、エストス侯爵の表情は変わらない。
変わったのはアリアの表情だけだった。
――うわぁ。腹筋がバッキバキじゃないの♡――
エストス侯爵の年齢は31歳と侍女から聞いたが、ここまで鍛え上げている31歳。
――ご褒美です。眼福です。垂涎ものです。スペシャルサンクスッ!――
あなたにおすすめの小説
【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。
夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。
真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。
そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。
数量は合っている。
だが、なぜか中身の重量だけが減っている。
違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。
そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。
しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。
それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。
「では、正式な監査をお願いいたします」
やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり――
隠されていた不正はすべて暴かれる。
そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。
これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、
“正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました
チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。
そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。
そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。
彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。
ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。
それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
婚約破棄されたら兄のように慕っていた家庭教師に本気で口説かれはじめました
鳥花風星
恋愛
「他に一生涯かけて幸せにしたい人ができた。申し訳ないがローズ、君との婚約を取りやめさせてほしい」
十歳の頃に君のことが気に入ったからと一方的に婚約をせがまれたローズは、学園生活を送っていたとある日その婚約者であるケイロンに突然婚約解消を言い渡される。
悲しみに暮れるローズだったが、幼い頃から魔法の家庭教師をしてくれている兄のような存在のベルギアから猛烈アプローチが始まった!?
「ずっと諦めていたけれど、婚約解消になったならもう遠慮はしないよ。今は俺のことを兄のように思っているかもしれないしケイロンのことで頭がいっぱいかもしれないけれど、そんなこと忘れてしまうくらい君を大切にするし幸せにする」
ローズを一途に思い続けるベルギアの熱い思いが溢れたハッピーエンドな物語。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。