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第10話 住む世界が違う
馬車に乗り込むとアリアはエストス侯爵と向かい合わせになった。
腕を組み、足も組んで大人の色気を醸し出すエストス侯爵の腹筋につい目が向いてしまうのは許して欲しい。シャツと上着に隠されたバッキバキの秘密を知ってしまうと想像をしてしまうのが乙女の性なのだから。
「ところで屋敷に住まうのだ。以後は私の事を公の場以外ではダリウスと呼んでくれ」
「で、出来ません!呼び捨てなんて無理です!」
「決まりだ」
「で、でも皆さん侯爵様の事を旦那様って…」
「さっきまで君は客人だった。客人の前では呼び方を変えているんだ」
――マジでぇ?いきなり切替なんて無理ぃ――
使用人たちは誰が客なのかわかるかも知れないが、アリアは新参者。
客なのか客でないのかなんて区別が出来るわけがない。
「それから…決まりではないんだがお婆様が五月蝿い。君用に服を幾つか揃えておくので自由に着てほしい」
「服?!まさかと思いますが衣食住全てを完備してくださるんですか?」
「使用人にも制服の他に月に3着まで家族の分と合わせて仕立てている。君だけ何もしないなんて特別扱いは出来ない」
――ありがたいけど…なんか怖いわ――
侯爵家ともなればそんなものなのかと考えてみるが答えが出るはずもない。
月に3着でなくて3年で1着でもいいのになと思いつつ、ちらっとダリウスを見ると目を閉じていた。どうあっても色気がムンムンでアリアは酔いそうになる。
「あのぅ…侯爵さ――」
「ダリウス」
「ダっ…ダリウス様」
「ダリウス」
――呼び捨ては無理だってば!!――
「呼び捨ては無理です。せめて…さん、とか…」
「ならダリさんでいい」
――余計に無理ぃぃ!!――
「ほ、本当に皆さん、呼び捨て…なんですよね?」
「あぁ(多分)」
「では失礼をして…ダリウス…」
「なんだ」
「服は…月に3着は多いです」
「なら気が向いた時に頼むと良い。週に1回仕立て屋が来ている」
――週に1回?やっぱり違うわぁーー
住む世界が違うというのはこういう事を言うのだろう。
高位貴族の家で働くことはそれだけで社会的信用にもなると言うがこういう事も込みなのだろうなとアリアは出来るだけ迷惑にならないように息を潜めて修復の間だけ厄介になろうと決めた。
馬車がアリアの家、ポルメ子爵家に到着をすると先に出た従者の知らせで家主が門の前で手を揉みながら待っていた。
「私は家主と話をするから先に荷物を纏めていてくれ」
「はい。お手数をお掛けします」
「こちらが無理を言ったんだ。謝罪をするのはこちらだ」
ダリウスが馬車を降りるとアリアだけを乗せた馬車は奥に進んだ。エストス侯爵家ほど広い土地ではないけれど薬剤を開発していた事もあってアリアの父親は広い土地を借りていた。
侯爵家の本宅を見た後だと、今まで住んでいたアリアの家のなんと見すぼらしい事か。
馬車を降り、荷馬車に乗り込んできた侯爵家の使用人たちに家具は備え付けである事、私物は家具以外だと伝えると木箱を手に使用人たちは次々に家の中に入って行った。
アリアは工房にしていた小屋に入り、数人の使用人と共に客から預かっている品を丁寧に布で包み、工房で使っていた工具を纏めて木箱に収納し始めた。
「このドレスはどうされます?」
使用人の1人が染み抜きもほぼ終わったエレーナのドレスを持ち上げた。
何も知らなければいつものように友人価格と言いながらも無償でエレーナに引き渡していただろう。
裏切りを知った今、捨ててやろうかと思ったがドレスも預かり品に変わりはない。
侯爵家で洗浄し乾かしてエレーナの家に届ければいいか。そう思い指示をしようとした時、声がした。
「何してるんだ!」
声の主はショーン。
そしてショーンの後ろにはエレーナがいた。
腕を組み、足も組んで大人の色気を醸し出すエストス侯爵の腹筋につい目が向いてしまうのは許して欲しい。シャツと上着に隠されたバッキバキの秘密を知ってしまうと想像をしてしまうのが乙女の性なのだから。
「ところで屋敷に住まうのだ。以後は私の事を公の場以外ではダリウスと呼んでくれ」
「で、出来ません!呼び捨てなんて無理です!」
「決まりだ」
「で、でも皆さん侯爵様の事を旦那様って…」
「さっきまで君は客人だった。客人の前では呼び方を変えているんだ」
――マジでぇ?いきなり切替なんて無理ぃ――
使用人たちは誰が客なのかわかるかも知れないが、アリアは新参者。
客なのか客でないのかなんて区別が出来るわけがない。
「それから…決まりではないんだがお婆様が五月蝿い。君用に服を幾つか揃えておくので自由に着てほしい」
「服?!まさかと思いますが衣食住全てを完備してくださるんですか?」
「使用人にも制服の他に月に3着まで家族の分と合わせて仕立てている。君だけ何もしないなんて特別扱いは出来ない」
――ありがたいけど…なんか怖いわ――
侯爵家ともなればそんなものなのかと考えてみるが答えが出るはずもない。
月に3着でなくて3年で1着でもいいのになと思いつつ、ちらっとダリウスを見ると目を閉じていた。どうあっても色気がムンムンでアリアは酔いそうになる。
「あのぅ…侯爵さ――」
「ダリウス」
「ダっ…ダリウス様」
「ダリウス」
――呼び捨ては無理だってば!!――
「呼び捨ては無理です。せめて…さん、とか…」
「ならダリさんでいい」
――余計に無理ぃぃ!!――
「ほ、本当に皆さん、呼び捨て…なんですよね?」
「あぁ(多分)」
「では失礼をして…ダリウス…」
「なんだ」
「服は…月に3着は多いです」
「なら気が向いた時に頼むと良い。週に1回仕立て屋が来ている」
――週に1回?やっぱり違うわぁーー
住む世界が違うというのはこういう事を言うのだろう。
高位貴族の家で働くことはそれだけで社会的信用にもなると言うがこういう事も込みなのだろうなとアリアは出来るだけ迷惑にならないように息を潜めて修復の間だけ厄介になろうと決めた。
馬車がアリアの家、ポルメ子爵家に到着をすると先に出た従者の知らせで家主が門の前で手を揉みながら待っていた。
「私は家主と話をするから先に荷物を纏めていてくれ」
「はい。お手数をお掛けします」
「こちらが無理を言ったんだ。謝罪をするのはこちらだ」
ダリウスが馬車を降りるとアリアだけを乗せた馬車は奥に進んだ。エストス侯爵家ほど広い土地ではないけれど薬剤を開発していた事もあってアリアの父親は広い土地を借りていた。
侯爵家の本宅を見た後だと、今まで住んでいたアリアの家のなんと見すぼらしい事か。
馬車を降り、荷馬車に乗り込んできた侯爵家の使用人たちに家具は備え付けである事、私物は家具以外だと伝えると木箱を手に使用人たちは次々に家の中に入って行った。
アリアは工房にしていた小屋に入り、数人の使用人と共に客から預かっている品を丁寧に布で包み、工房で使っていた工具を纏めて木箱に収納し始めた。
「このドレスはどうされます?」
使用人の1人が染み抜きもほぼ終わったエレーナのドレスを持ち上げた。
何も知らなければいつものように友人価格と言いながらも無償でエレーナに引き渡していただろう。
裏切りを知った今、捨ててやろうかと思ったがドレスも預かり品に変わりはない。
侯爵家で洗浄し乾かしてエレーナの家に届ければいいか。そう思い指示をしようとした時、声がした。
「何してるんだ!」
声の主はショーン。
そしてショーンの後ろにはエレーナがいた。
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