愛用の剣を修復したら氷点下の溺愛が始まった

cyaru

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第12話  気概の違い

続いてアリアはエレーナを見た。
ドレスは洗って乾かし、皴を伸ばして返そうと思ったが、顔を見て気が変わった。今までの分も代金を一切受け取っていない。もういいやとそのまま返す事にした。

「シミは抜いて置いたわ。後は洗って乾かせばいいから今、返すわね」
「そ、そんな…」
「私が持って行っても良いのよ?でも今まで代金も受け取ってないでしょう?金融商会に伝票見られたらドレスは私の物って誤解されちゃうわ。そうなれば借金のカタに取られちゃうから…エレーナも困るでしょう?」

エレーナのドレスは他にもあるだろう。そうでなかったら熱を出し家を空けた1日でエレーナは困ったはず。本当に必要なのなら今ここで喚いている筈なのだ。

――あれは私を騙していた芝居なんて口が裂けても言えないわよね――

エレーナもショーンも下手をすれば結婚詐欺罪に該当する可能性もあるので計画を口する事は出来ないとアリアは踏んでカマを掛けたのだ。

ここまで言えば周囲にいる使用人たちが借金取りの手下に見えて来たのかエレーナは愛想笑いを始めた。借金取りなのなら知り合いだと思われたら回収人が来る可能性もある。

エレーナは出口をちらちらと見てアリアに小さく「用事があるの。帰るわね」と呟いたがアリアはまだ逃がさない。言い難い事もアリアの口から「以後の付き合いはしない」と引導を渡すつもりで告げてやらねばならないからである。


「それと。これからは借金塗れになるから付き合いは控えておくわ。うっかり私に食事でも奢ってしまって貴方達にまで借金取りが回ってしまったら悪いもの」

アリアはそう言いながら使用人からエレーナのドレスを受け取り、エレーナに持たせた。

「わ、私…帰るわね。アリア、元気でね」
「えぇ。エレーナも元気でね。街で見かけても声を掛けないようにするからエレーナもそうして。エレーナからも取り立てできると思われたら困るでしょう?」
「そ、そうね。忠告ありがと」
「ショーンもね。もう知り合いでもないわ」

そう言うとショーンはクワっと目を見開いたが声は出なかった。
ショーンも借金取りの怖さは知っている。年に1回払うと言っても借金取りは取れる所から回収するのが基本。結婚を前提にして付き合っているとなればフッタ伯爵家にも取り立てが来る可能性もある。

よろっとよろめいたショーンにアリアは棚に置いた小箱を思い出し、ショーンから離れると棚の小箱を手に取った。

「返すわね。未使用だし売るなり好きにして」
「アリア‥‥」
「その日が来るまでと思って嵌めずにいたの。今となってはそうして良かったと思っているわ」

買い取りに持ち込んでも値がつくがどうかも判らない安物。
以前はそれでもよかったのだ。アリアは価格ではなく気持ちだと思っていた。
その気持ちすらなかった指輪なんていらない。

アリアは指輪の入った小箱をショーンの手に握らせた。
ショーンの目に動揺があるのはアリアの金ありきでエレーナとの婚姻が後ろにあるからに他ならない。

アリアの金が手に入らない、むしろアリアといる事で借金を被る可能性があるとなればエレーナとの結婚話は吹き飛ぶに違いない。

金も稼ぐ術もない、家は傾いているそんな男をエレーナの父が姻戚関係になるのを認めるわけがない。

――ふん。次男坊で家を出なきゃいけない身でヒモにもなり損ねたんだから。ざまぁだわ――

周囲の使用人たちも空気を読んだのか言葉を発せず、ショーンを品定めするように頭の天辺からつま先まで視線を走らせるとショーンは口をハクハクさせて小刻みに震え始めた。

「アリ‥‥アリア、本当に投資を?」

一縷の望みに賭けるようにショーンは震える手でアリアの手を握った。
アリアが「本当よ」と答えようとした時、出入り口から声がした。

「お前が代わりに肩代わりしてくれるのか?家は何処だ?」

声の主はダリウス。ショーンは肩だけでなく足が地面から浮いた。
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