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第55話 2人の秘密
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「さぁ。余興は終わった。これからが本番だ」
エレーナとショーン、そしてブーレ伯爵一家が部屋の外に出された後、王太子は集まった王族、高位貴族に声を掛けた。
手招きをされて席に戻ったダリウスとアリアは王太子の隣に立った。
「遂に!遂にだ!気を揉んでいたエストス侯爵が妻を迎える。知っての通り王家はエストス侯爵家には返せない借りがある。それは未来永劫に渡っての事だ。エストス侯爵家なくして現在の安定した情勢はあり得なかった。異例の事だが、王家の代表として2人の幸せを願い、この場をもうけさせてもらった。皆も祝福して欲しい」
その場にいる全員が微笑み、拍手で賛同の意を示す。
王太子に背を押されたダリウスは相変わらずの無表情で言葉を繋いだ。
「若輩者の私たちのために集まって頂き感謝を致します。私の妻、アリアは子爵家です。そして職業婦人でもある。私はそれを誇りに思っている。古い物を古いものとしてではなく当時のままに蘇らせる修復。それは品を所有する人の思い出も蘇らせる。更には修復する事で未来に受け継ぐ宝を残す仕事でもある。こんな素晴らしい女性を妻に迎えられるのは最上の喜びです。皆さんの前で私は誓う。私は生涯唯一無二、アリアを愛し抜くと。証人になって下さいますか」
先ほどよりも大きな拍手が沸き上がったが、どよめいたのは次の瞬間。ダリウスがアリアを見て微笑んだ時だった。
「お前…ホントに笑えるんだ?」
王太子は呟いたが、ダリウスはアリアを見つめたまま。
そしてダリウスはその場に片膝をついた。
「アリア。一緒に幸せになりたい。妻になってくれますか」
「はい」
またもや拍手が沸き上がったが、立ち上がり抱きしめるダリウスの耳たぶをクイっとアリアは引っ張った。
「こういうのは2人きりの時が良かったのに!」
「これは予行練習だ」
「は?」
その後は和やかに晩餐会が開かれたが、アリアは美味しそうな料理を前にカトラリーを動かすだけで何も食べられない。ギューギューに締めあがっているのはウェストだけでなく胸元もだ。
小さな1欠片も飲み込んでも胃には到達できない。
「うぅぅ…食べたいのに。持ち帰り出来ないかしら」
「同じものを作らせる。それにこんな場は今日が最初で最後だ」
「そうなの?もう出なくていいの?」
「あぁ。他の男にアリーを見られるのはもう沢山だ」
小さな声で会話をしていると向かいにいた公爵夫人が「少しいいかしら?」アリアを呼んだ。
「はい」
誘われるままに席を立ち、バルコニーに出るとギュッと手を握られた。
「ど、どうされたんです?」
「修復師なのよね?お願いしたいものがあるの」
「は、はぁ。なんでしょう」
「夫には言わないで。これなの」
公爵夫人がバッグから取り出したのは古びた紙。
広げてみると絵姿だった。
「恥ずかしいんだけど…夫なの。10代だった頃に釣書に添えられてて…一目惚れして婚約を受けたの。でもこんなにボロボロになってしまって…修復できるかしら」
「大丈夫ですよ。虫食いで穴が開いた部分には少し手を入れますが宜しいですか?」
「えぇ。直るなら」
「そうですね。修復をした後は額に入れてみてはどうでしょう。桐で額を作ります。裏板も。桐は虫を寄せ付けないですので長持ちさせたい書類や衣類を保管するのに持ってこいなのです。日の当たる場所で見たいと思いますが、出来るだけ日陰になる部分で。そうすれば日焼けの進行も遅くなると思います」
アリアがなかなか戻ってこない事に業を煮やしたダリウスが「商談か?」割り入ってきた。
「お願いね?ね?」
「はい。お任せください」
公爵夫人は「オホホホ」奇妙な笑いを残して去って行った。
「なんだったんだ?」
「絵姿を修復して欲しいって。ご主人さんの若い頃なんですって」
「え?あの夫婦…冷え切ってるって言うか夫人は高飛車で公爵の事なんか…」
「外から見るのとは違うのよ。ダリウスだって他の人には笑ったりしないでしょう?それよりも‥まだ帰れないの?」
「帰るか?」
「うん。もう帰りたい」
「よし!直ぐに帰ろう!」
ダリウスは何を期待しているのか「もう帰ります!」と大声で告げると会場はシーンとなった後、生暖かい視線と「早く帰れ!」「頑張れよ!」応援の声があちこちから飛んだ。
ダリウスは帰りの馬車で「苦しいよぅ」もう限界に近いアリアのコルセットの紐を解こうと試行錯誤をするも、「どうやって着せた?」ドレスの脱がし方が判らず右往左往。
屋敷にやっと帰り着いたアリアはメイドたちの手によって解放されたが、呼吸が出来る悦びと共に血流が良くなった事でどっと疲れが押し寄せ、湯の中で寝てしまった。
翌朝起きた時、隣でダリウスが微笑んでいたが純潔のまま。
「えへへ…ごめんなさい。寝入っちゃった」
「十分寝たか?」
「たーっぷり寝ましたよ?」
「じゃぁ始めようか」
「な、何を?!」
何が始まったか。夕食を過ぎても部屋から出てこない2人の秘密である。
エレーナとショーン、そしてブーレ伯爵一家が部屋の外に出された後、王太子は集まった王族、高位貴族に声を掛けた。
手招きをされて席に戻ったダリウスとアリアは王太子の隣に立った。
「遂に!遂にだ!気を揉んでいたエストス侯爵が妻を迎える。知っての通り王家はエストス侯爵家には返せない借りがある。それは未来永劫に渡っての事だ。エストス侯爵家なくして現在の安定した情勢はあり得なかった。異例の事だが、王家の代表として2人の幸せを願い、この場をもうけさせてもらった。皆も祝福して欲しい」
その場にいる全員が微笑み、拍手で賛同の意を示す。
王太子に背を押されたダリウスは相変わらずの無表情で言葉を繋いだ。
「若輩者の私たちのために集まって頂き感謝を致します。私の妻、アリアは子爵家です。そして職業婦人でもある。私はそれを誇りに思っている。古い物を古いものとしてではなく当時のままに蘇らせる修復。それは品を所有する人の思い出も蘇らせる。更には修復する事で未来に受け継ぐ宝を残す仕事でもある。こんな素晴らしい女性を妻に迎えられるのは最上の喜びです。皆さんの前で私は誓う。私は生涯唯一無二、アリアを愛し抜くと。証人になって下さいますか」
先ほどよりも大きな拍手が沸き上がったが、どよめいたのは次の瞬間。ダリウスがアリアを見て微笑んだ時だった。
「お前…ホントに笑えるんだ?」
王太子は呟いたが、ダリウスはアリアを見つめたまま。
そしてダリウスはその場に片膝をついた。
「アリア。一緒に幸せになりたい。妻になってくれますか」
「はい」
またもや拍手が沸き上がったが、立ち上がり抱きしめるダリウスの耳たぶをクイっとアリアは引っ張った。
「こういうのは2人きりの時が良かったのに!」
「これは予行練習だ」
「は?」
その後は和やかに晩餐会が開かれたが、アリアは美味しそうな料理を前にカトラリーを動かすだけで何も食べられない。ギューギューに締めあがっているのはウェストだけでなく胸元もだ。
小さな1欠片も飲み込んでも胃には到達できない。
「うぅぅ…食べたいのに。持ち帰り出来ないかしら」
「同じものを作らせる。それにこんな場は今日が最初で最後だ」
「そうなの?もう出なくていいの?」
「あぁ。他の男にアリーを見られるのはもう沢山だ」
小さな声で会話をしていると向かいにいた公爵夫人が「少しいいかしら?」アリアを呼んだ。
「はい」
誘われるままに席を立ち、バルコニーに出るとギュッと手を握られた。
「ど、どうされたんです?」
「修復師なのよね?お願いしたいものがあるの」
「は、はぁ。なんでしょう」
「夫には言わないで。これなの」
公爵夫人がバッグから取り出したのは古びた紙。
広げてみると絵姿だった。
「恥ずかしいんだけど…夫なの。10代だった頃に釣書に添えられてて…一目惚れして婚約を受けたの。でもこんなにボロボロになってしまって…修復できるかしら」
「大丈夫ですよ。虫食いで穴が開いた部分には少し手を入れますが宜しいですか?」
「えぇ。直るなら」
「そうですね。修復をした後は額に入れてみてはどうでしょう。桐で額を作ります。裏板も。桐は虫を寄せ付けないですので長持ちさせたい書類や衣類を保管するのに持ってこいなのです。日の当たる場所で見たいと思いますが、出来るだけ日陰になる部分で。そうすれば日焼けの進行も遅くなると思います」
アリアがなかなか戻ってこない事に業を煮やしたダリウスが「商談か?」割り入ってきた。
「お願いね?ね?」
「はい。お任せください」
公爵夫人は「オホホホ」奇妙な笑いを残して去って行った。
「なんだったんだ?」
「絵姿を修復して欲しいって。ご主人さんの若い頃なんですって」
「え?あの夫婦…冷え切ってるって言うか夫人は高飛車で公爵の事なんか…」
「外から見るのとは違うのよ。ダリウスだって他の人には笑ったりしないでしょう?それよりも‥まだ帰れないの?」
「帰るか?」
「うん。もう帰りたい」
「よし!直ぐに帰ろう!」
ダリウスは何を期待しているのか「もう帰ります!」と大声で告げると会場はシーンとなった後、生暖かい視線と「早く帰れ!」「頑張れよ!」応援の声があちこちから飛んだ。
ダリウスは帰りの馬車で「苦しいよぅ」もう限界に近いアリアのコルセットの紐を解こうと試行錯誤をするも、「どうやって着せた?」ドレスの脱がし方が判らず右往左往。
屋敷にやっと帰り着いたアリアはメイドたちの手によって解放されたが、呼吸が出来る悦びと共に血流が良くなった事でどっと疲れが押し寄せ、湯の中で寝てしまった。
翌朝起きた時、隣でダリウスが微笑んでいたが純潔のまま。
「えへへ…ごめんなさい。寝入っちゃった」
「十分寝たか?」
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