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多数の目撃者
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良く晴れた日の昼下がり。ゲーテ侯爵家のシャルロッテは持っている沢山の服の中でも特にお気に入りのワンピースを着て婚約者エドワードの住むルフザ公爵家を訪れた。
玄関先でエドワードの母である公爵夫人が出迎えてくれる。
あと数か月もすればこの公爵家に嫁いでくるシャルロッテは公爵夫人のお気に入りでもある。
叔母に連れられて行った【詩を朗読する会】の茶会で公爵夫人の詠んだ詩にいたく感動してしまったシャルロッテははしたなくも大粒の涙を堪えきれず溢してしまった。
押し寄せる感動になかなか興奮も冷めやらず、涙が止まる頃には茶会がお開きになるほどだった。
この事があって公爵夫人はシャルロッテを実の娘のように可愛がった。
13歳だったシャルロッテは以降も【詩を朗読する会】に度々参加し19歳となった今は正規の会員として自分よりも倍ほどの年齢の夫人達からも可愛がられている。
その中には王妹で現在は侯爵家に嫁いだパルメーラ夫人や、先の王妃、その実妹なども含まれている。先月の茶会ではシャルロッテのウェディングドレスのデザインの事で肝心の詩はどこへやらの話で終始盛り上がっていた。
と、いうのも公爵夫人は是非にと息子と結婚をしてほしいとゲーテ侯爵家に婚約を申し込んできたのは5年前の事である。本来ならシャルロッテが20歳になるのを待って結婚の運びだったのを前倒ししたのだ。
エドワードはシャルロッテよりも2歳年上で公爵家では次男の立場である。
しかし、次期公爵と世間では認知されており学園でも、学園を卒業後も父の公爵について執務を行っている。
長男は同居をしているが、6歳の頃の不運な事故により足が不自由で使用人の介助なしには動き回る事に問題があった。
淡いクリーム色の髪を揺らせて丁寧な挨拶をすると公爵夫人は首を傾げた。
今日はシャルロッテが訪問する予定はなく、それどころかエドワードと街歩きをすると予定をしていた日である。取り敢えずと通されたサロンでエドワードより1歳上の兄、ラファエルが手を振る。
「エドワード様はお出かけをされております」
程なくして念のため部屋を確認に行った執事がサロンに戻ってきた。
「日を間違ったと言う事はなさそうね」
そういう公爵夫人にシャルロッテは申し訳なさそうに頭を下げる。
「お約束の時間になっても来られないので何かあったのかと…入れ違いになったのでしょうか」
だが、シャルロッテの言葉に執事が少しだけ異論を唱えた。
「坊ちゃまは本日お出かけの予定はなかったはずです」
「まぁ、やはりわたくしの聞き間違いだったのですわ。申し訳ございません」
恥じらって少し頬を染めてまた頭を下げるシャルロッテにならばラファエルと庭でも見て帰ればよいと公爵夫人が提案をした。
「あら、ですがエドワード様のお兄様と言えど2人と言うのは…」
「そうね、うっかりしていたわ。屋敷の庭だとは言っても何処でどんな噂になるやもしれませんからね。やはりシャルは細かいところをよく注意しているわ」
「ならば母上も一緒ならいいだろう。ドメス、車椅子を用意してくれるか?」
「畏まりました」
執事が用意してきた車椅子に腰を下ろしたラファエルは「行こうか」と声を掛ける。
従者たちがシャルロッテと夫人に大きめの日傘をさしかけ車いすを執事が押す。
その後ろを今を見頃に咲き誇る百合園が目の前にある別邸のテラスで茶でもと侍女たちも飲み物や菓子を持って付いてくる。さながらどこかに出かける御一行様ほどの人数になった。
ラファエルを気遣い、途中にある夫人がよく手を入れているミニバラの垣根を超えてゆっくり木陰を進み、パッと明るくなると目の前に別邸が現れる。
シャルロッテがふと見上げると別邸のテラスに続くサロンの窓が開いてカーテンがたなびいていた。
「あら?窓が開いているようですわ」
「本当だわ。誰か先に準備にやったの?」
「いいえ、そのようなこ・・」
ラファエルの車椅子を押す執事が夫人に答えた言葉が終わらないうちに大声が聞こえてくる。
「アァッァ!…クっ‥‥イッ…」
その声に誰もが顔を見合わせた。
執事が目で従者に指示を出し、荷物を置いた侍女、そして「失礼いたします」とシャルロッテの日傘を持っていた従者が別邸に向けて走り出す。
シャルロッテも夫人と小走りになり、夫人の日傘を持った従者が慌てて歩調に合わせる。
ラファエルの車椅子を押していた執事も前輪を少し浮かせて早めに走らせた。
先に到着した侍女と従者がサロンの中を凝視したまま立っている。
何事かと遅れてついたシャルロッテと夫人、従者も思わずその場に立ち尽くした。
サロンの中で生まれたままの姿になり、繋がった2人が大きな食卓テーブルの上にいたのだ。
エドワードの腰に跨るように上半身を激しく揺すっている女性。
2人は房ごとに興じるあまり見られている事に気がついていないようだった。
「何をしてるんだっ!」
声をあげたのは車椅子に座るラファエルだった。
その声に動きを止めて、ゆっくりと振り返る女性。遅れて上半身を起こすエドワード。
女性は男爵令嬢のエリザベスだった。
最も見られてはいけない者に見られてしまったエドワードはエリザベスを突き飛ばしサロンの奥に逃げいていく。エリザベスは突き飛ばされた衝撃でテーブルから落ち、皆の方に大股を広げて倒れ込んだ。
夕刻近くになり、慌てて男爵夫妻が公爵邸を訪れる。少し遅れてシャルロッテの両親も到着。
エドワードの父、ルフザ公爵も王宮から取り急ぎ屋敷に戻ってきた。
エドワードとエリザベスはシーツを巻き付けただけでその下に衣類を着用する事を公爵夫人は許さなかった。
別邸のサロンで情事の真っ最中に見つかり、そのまま本邸のサロンに座らされている。
勿論、ソファや椅子ではなく床に、である。
言い訳をしようにも、母である夫人、兄のラファエルに見られてしまい言葉を発する許しは出ない。
怒りに任せて飛び掛かる勢いもつけた父のルフザ公爵にまともに顔面を殴られたエドワードは壁際まで転がった。
玄関先でエドワードの母である公爵夫人が出迎えてくれる。
あと数か月もすればこの公爵家に嫁いでくるシャルロッテは公爵夫人のお気に入りでもある。
叔母に連れられて行った【詩を朗読する会】の茶会で公爵夫人の詠んだ詩にいたく感動してしまったシャルロッテははしたなくも大粒の涙を堪えきれず溢してしまった。
押し寄せる感動になかなか興奮も冷めやらず、涙が止まる頃には茶会がお開きになるほどだった。
この事があって公爵夫人はシャルロッテを実の娘のように可愛がった。
13歳だったシャルロッテは以降も【詩を朗読する会】に度々参加し19歳となった今は正規の会員として自分よりも倍ほどの年齢の夫人達からも可愛がられている。
その中には王妹で現在は侯爵家に嫁いだパルメーラ夫人や、先の王妃、その実妹なども含まれている。先月の茶会ではシャルロッテのウェディングドレスのデザインの事で肝心の詩はどこへやらの話で終始盛り上がっていた。
と、いうのも公爵夫人は是非にと息子と結婚をしてほしいとゲーテ侯爵家に婚約を申し込んできたのは5年前の事である。本来ならシャルロッテが20歳になるのを待って結婚の運びだったのを前倒ししたのだ。
エドワードはシャルロッテよりも2歳年上で公爵家では次男の立場である。
しかし、次期公爵と世間では認知されており学園でも、学園を卒業後も父の公爵について執務を行っている。
長男は同居をしているが、6歳の頃の不運な事故により足が不自由で使用人の介助なしには動き回る事に問題があった。
淡いクリーム色の髪を揺らせて丁寧な挨拶をすると公爵夫人は首を傾げた。
今日はシャルロッテが訪問する予定はなく、それどころかエドワードと街歩きをすると予定をしていた日である。取り敢えずと通されたサロンでエドワードより1歳上の兄、ラファエルが手を振る。
「エドワード様はお出かけをされております」
程なくして念のため部屋を確認に行った執事がサロンに戻ってきた。
「日を間違ったと言う事はなさそうね」
そういう公爵夫人にシャルロッテは申し訳なさそうに頭を下げる。
「お約束の時間になっても来られないので何かあったのかと…入れ違いになったのでしょうか」
だが、シャルロッテの言葉に執事が少しだけ異論を唱えた。
「坊ちゃまは本日お出かけの予定はなかったはずです」
「まぁ、やはりわたくしの聞き間違いだったのですわ。申し訳ございません」
恥じらって少し頬を染めてまた頭を下げるシャルロッテにならばラファエルと庭でも見て帰ればよいと公爵夫人が提案をした。
「あら、ですがエドワード様のお兄様と言えど2人と言うのは…」
「そうね、うっかりしていたわ。屋敷の庭だとは言っても何処でどんな噂になるやもしれませんからね。やはりシャルは細かいところをよく注意しているわ」
「ならば母上も一緒ならいいだろう。ドメス、車椅子を用意してくれるか?」
「畏まりました」
執事が用意してきた車椅子に腰を下ろしたラファエルは「行こうか」と声を掛ける。
従者たちがシャルロッテと夫人に大きめの日傘をさしかけ車いすを執事が押す。
その後ろを今を見頃に咲き誇る百合園が目の前にある別邸のテラスで茶でもと侍女たちも飲み物や菓子を持って付いてくる。さながらどこかに出かける御一行様ほどの人数になった。
ラファエルを気遣い、途中にある夫人がよく手を入れているミニバラの垣根を超えてゆっくり木陰を進み、パッと明るくなると目の前に別邸が現れる。
シャルロッテがふと見上げると別邸のテラスに続くサロンの窓が開いてカーテンがたなびいていた。
「あら?窓が開いているようですわ」
「本当だわ。誰か先に準備にやったの?」
「いいえ、そのようなこ・・」
ラファエルの車椅子を押す執事が夫人に答えた言葉が終わらないうちに大声が聞こえてくる。
「アァッァ!…クっ‥‥イッ…」
その声に誰もが顔を見合わせた。
執事が目で従者に指示を出し、荷物を置いた侍女、そして「失礼いたします」とシャルロッテの日傘を持っていた従者が別邸に向けて走り出す。
シャルロッテも夫人と小走りになり、夫人の日傘を持った従者が慌てて歩調に合わせる。
ラファエルの車椅子を押していた執事も前輪を少し浮かせて早めに走らせた。
先に到着した侍女と従者がサロンの中を凝視したまま立っている。
何事かと遅れてついたシャルロッテと夫人、従者も思わずその場に立ち尽くした。
サロンの中で生まれたままの姿になり、繋がった2人が大きな食卓テーブルの上にいたのだ。
エドワードの腰に跨るように上半身を激しく揺すっている女性。
2人は房ごとに興じるあまり見られている事に気がついていないようだった。
「何をしてるんだっ!」
声をあげたのは車椅子に座るラファエルだった。
その声に動きを止めて、ゆっくりと振り返る女性。遅れて上半身を起こすエドワード。
女性は男爵令嬢のエリザベスだった。
最も見られてはいけない者に見られてしまったエドワードはエリザベスを突き飛ばしサロンの奥に逃げいていく。エリザベスは突き飛ばされた衝撃でテーブルから落ち、皆の方に大股を広げて倒れ込んだ。
夕刻近くになり、慌てて男爵夫妻が公爵邸を訪れる。少し遅れてシャルロッテの両親も到着。
エドワードの父、ルフザ公爵も王宮から取り急ぎ屋敷に戻ってきた。
エドワードとエリザベスはシーツを巻き付けただけでその下に衣類を着用する事を公爵夫人は許さなかった。
別邸のサロンで情事の真っ最中に見つかり、そのまま本邸のサロンに座らされている。
勿論、ソファや椅子ではなく床に、である。
言い訳をしようにも、母である夫人、兄のラファエルに見られてしまい言葉を発する許しは出ない。
怒りに任せて飛び掛かる勢いもつけた父のルフザ公爵にまともに顔面を殴られたエドワードは壁際まで転がった。
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