51 / 51
51:あなたの瞳に映るのは(最終話)
捜索をする騎士団に発見をされたトルデリーゼは暫くは床の住人となった。歩けるまでに回復したトルデリーゼに1つの知らせがもたらされた。
王太子であったアルフォンスは亡くなり葬儀も終わった事を告げられたのだ。
4階からの階段を引きずられるように降りた事で挫いただけでなく骨が折れていたため、治療を受け痛み止めを処方されて夢現の中で聞いたような鐘の音はアルフォンスの弔いの鐘の音だった事を悟った。
「もっと早くに知らせるか悩んだ」
ディートヘルムは俯いて呟くように告げた。
順当であればディートヘルムが王太子となり国王になる。
トルデリーゼはそれでいいと思えた。
トルデリーゼが選ぶわけでもないし、アルフォンスの死を喜ぶわけでもない。到底夫は思えない所業の数々だったが、最期を思えば憎む気にもなれない。
どうせなら死ぬまで虚構な夫婦を続け、年齢的に先に逝くアルフォンスの死に際に「これからは自由にさせて貰う」と言ってやりたかった。
しかし、最期を思えばアルフォンスは自分と同じように愛を返して欲しくて不器用だったのかも知れないとも思えた。
そうはいっても部屋の向こう側に覗き部屋があった事は驚きよりも失望を感じたが。
過去に窓から姿を見て愛を望んだバレリオを思う自分と同じでバレリオも気味悪いと思っていたのだろうかとも考えた。
「君は被害者だ。だから何の罪もなければ咎もない」
「だからなんでしょう?」
「私の…いや、違うな。一緒に…と言うのも違うな」
ブツブツと呟くディートヘルムだったが、もう一つの葬儀を密葬で終えた国王夫妻が訪れたとの知らせに席を立った。もう一つの葬儀とはジュリアスの密葬である。
表向きは病死と発表をされたが、どうあってもアルフォンスを殺めた事はなかった事には出来ない。
だが、アルフォンスの死によりトルデリーゼが自由になったのは事実だ。
隠しておきたい王家の恥部。それも闇に葬る事が出来るのだ。
ディートヘルムはそれで幕引きとはしなかった。
そうしようと当初は隠ぺいする声が多かった。だがディートヘルムは押し切った。
隣国の皇太子を伴ってやって来たトルデリーゼの姉、リディアはそれを聞いて大きく頷いた。
トルデリーゼを自由にしようと奔走したディートヘルムを知るリディアは敢えて「王族に妹はもう渡せない」と告げた。ディートヘルムの心の内の読んだかのようなリディアの言葉にディートヘルムは苦笑するしかなかった。
「あら、まだ伝えていないの?」
王妃の言葉にディートヘルムは鼻の頭を指で掻いた。
「ならば私から伝えるしかなさそうだな。本当に子育ては難しいものだ。なぁ?」
国王は王妃を見やったが、王妃は「誰に似たのだか」と顔を反らせた。
「いえ、これは私が伝えるべき事ですから、私が話します」
カドリア王国にやって来た隣国の皇太子を交えての話。カドリア王国は王家だけでなく議会も招集し一つの大きな決定を下した。
王制を完全に廃し、民主化すると決定をしたのだ。
しばらくは内乱などの紛争が起きたり、他国の侵略がないか隣国の皇太子が先頭に立ち管理をする。貴族制も廃止をする為、全ての民が平等の立場となるのだ。
懸念される武闘派については隣国の監視の元、炙り出しが行われる。
アルフォンスもそれが全てではなかったが、彼らに踊らされたのも事実。生きていれば踊ったふりをしてやったとでもいうかも知れない。
「ジュリアスは一足先に隣国に出立した」
「えっ?毒は…いえ、病死では?」
「表向きはそうしておかねば王家の復興や再興と言って利用される事がある。ジュリアスは隣国で再教育を受けた後は海の向こうの国に渡る。そこからどうするかはジュリアスの人生だ。本人も納得をしてくれた。これは君に渡して欲しいと預かってきた」
ディートヘルムが差し出したのは淡い黄色の布で作った不格好な小物入れだった。
縫い目も荒く、ところどころ縫い目が二重になったり三重になったりしている。糸を引き過ぎて指で伸ばすが布は伸びきらない。
ジュリアスが手ずから縫ったという小物入れを手で包み、トルデリーゼは咽び泣いた。
「貴女がジュリアスの心を救ってくれたの。母親の私に出来なかった事を貴女が代わりにしてくれた。ありがとう。だから受け取ってあげて」
年を取ってから生まれたジュリアスを手放すのは仕方のない事とは言え辛い事だろう。自分と重なるジュリアスに人生を背負わせてしまった気がして涙が止まらなかった。
「父上と母上は…トルデリーゼ嬢の父上と母上がお引き受けくださった。エルドゥ氏の元で役に立つかは判らないが掃除夫と炊事婦として雇ってくれるそうだ。感謝に尽きる」
ディートヘルムの言葉に王妃は「リゼルちゃんに掃除と芋の皮むきを習ってるのよ?」とよく見れば王妃の指先は傷だらけだ。「今からやらないと間に合わないわ」と前向きな言葉が本来の王妃なのだろう。
「私はこの後、父上の退位を受けて即位し、国を終わらせて来る。その時に…いや、その時の私を見ていてくれないだろうか。そして…願わくば、全てが終わった後に君の隣にいる事を許して欲しい」
「え”?」
「その潰れたヒキガエルのような声はやめてくれ。何気に傷つく。言っただろう?君と共になら楽しい人生なんじゃないか。そんな風に考える事があると」
「肝心なところを端折らないでくださいませ。あの時こういいましたわ。【君と共に国を良くしていけたら楽しい人生なんじゃないか。時々そんな風に考える事があるよ】って」
「おっ覚えているなんてズルいじゃないか」
「そうですか?でもこの先は物忘れも酷くなると思うので丁度じゃないかと思いますわ。しっかりと最後を締めくくってくださいませね?」
「あぁ、任せておいてくれ」
それから22日後。ディートヘルムは即位し、事前に議会において満場一致で可決された王制の廃止、国の民主化を発表した。
トルデリーゼはその姿を見届けた後、懐かしいマルス家への帰途についた。
その途中、エルドゥの試験栽培をする地に向かって元国王夫妻の乗った荷馬車が分かれ道でトルデリーゼの馬車が通り過ぎるのを待っていた。
「お嬢様ぁ!おーい!お嬢様ぁ!!」
大きく手を振るリゼルに馬車が停車する。窓を開けてみればリゼルが駆け寄ってきた。
「いないと思ったらそっちの荷馬車に?乗り換えるために待っててくれたのね。お待ちどうさまリゼル」
「お嬢様、何を言ってるんです?私はお屋敷には戻らず新天地ってところに行くんですよ」
元国王夫妻と共に開発中の農地に行くと言うリゼル。
トルデリーゼはその選択を応援した。選ぶのはリゼルであり生きていくのもリゼル。
「リゼル、今までありがとう」
「何を言ってるんです?いっぱいお野菜を持って旦那様と奥様、お嬢様に差し入れしますからね。これでお別れじゃないですよっ!じゃ、お嬢様。行ってきますね!」
リゼルは荷馬車に駆けていくとピョンと飛び乗り、荷台に立ってまた手を振った。
その足元に馬車酔いをした元国王とリゼルが飛び乗った事で手にした芋が地面に落ちたと叫ぶ元王妃がいた。
☆~☆
「今日も穏かね~やっぱり実家は最高♡」
ソファで寛ぐリディアは大きく背凭れに背を預けながら背伸びをした。
玄関の方で甥っ子、姪っ子の声がする。今日はお泊りなので大はしゃぎである。
「ただいま~ひゃぁ…流石にカルガモの引っ越しの苦労は馬鹿にできんなぁ」
先ほどまでジャスミンとカエラもやって来て揃った4姉妹に妻の5人の女性陣から逃げるように孫6人と散歩から帰ってきたマルス子爵は足がガクガクしていた。
膝小僧を手のひらで撫でながら、マルス子爵はトルデリーゼに玄関先に帽子を落としたようだから取って来てほしいと頼んだ。
「そんなのお父様が行きなさいよ~ルディは私と忙しいのぉ」
「いいわ。帽子ね。取って来るわ。門道?」
「門道だったかなぁ…じゃれつかれた時だったからなぁ」
トルデリーゼは日傘を差し出す侍女に「いらない」と言って玄関を開けた。
木漏れ日が降り注ぐ中、キョロキョロと帽子を探しながら歩いていくと1人の男性が目に映った。
「探し物はこれですか?お嬢様?」
指でクルクルと回しながら立っていたのはディートヘルムだった。
「まさか、本当に来たの?なんだか‥‥粘着されてる気分だわ」
「粘着か。そうだなまぁ‥‥そうかも知れない。兄弟だからな。集大成だと思ってくれ」
「嫌よ。変態兄弟3人も面倒なんて見られないわ。で?何か御用?」
「つれないな。私は至ってノーマルだ。誤解してないか?」
「はい、帽子ありがとう。お帰りはあちらよ?」
「おいっ!俺がどれほどの…」
「だって、一介の子爵令嬢如きが口出し出来るような案件ではなさそうですもの。ふふっ」
「それも覚えてたのか!あぁーッ!もう!忘れてくれっ!頼むから!」
ディートヘルムはその場に蹲り、顔の前で指を組み祈る姿勢を取った。
トルデリーゼはディートヘルムの頭に父の帽子をちょこんと乗せ、向かいにしゃがみ込んだ。
「はぐらかされないよう一気に言う!結婚してくれ!誰も、誰も君の瞳には映したくない!君の瞳に映るのは私だけであってほしい」
ディートヘルムの瞳をジィィッと間近で見つめるトルデリーゼは微笑んだ。
「あら?でもあなたの瞳に映るのはわたくしだわ。そこに映る私の瞳…やっぱりわたくし!【誰も】にならないわね?残念でした~」
トルデリーゼの頬を手で覆い、ムニュっと押しながらディートヘルムは不意にアルフォンスもこうやってトルデリーゼに翻弄されていたんだろうかと思案した。
が、今度は自分の頬を抓られた痛みを感じた。
「まずは友人ね?集大成だというのなら今度こそ約束は守ってもらうわ」
「残念。私はそんな出来ない約束はしない男なんだ」
ディートヘルムはトルデリーゼの手を握り、ペニチュアの花を一輪差し出した。
「やだ、それ、ウチの庭に咲いてた花でしょう?もう!勝手に千切らないで!」
「すまない。働いて稼いだらもっといい花を贈る」
「まぁ!それじゃうちの庭の花は貧相だと言うの?!失礼ね」
Fin
☆~☆
ド変態が多く出没する恐ろしく長い話にお付き合い頂きありがとうございました。<(_ _)>
最後は兄弟で胸の内に秘めようと思っていたディートヘルムの恋が実るか実らないか。
踏みつけてもまた花を付けるタンポポのようでありますようにヾ(@⌒ー⌒@)ノ
王太子であったアルフォンスは亡くなり葬儀も終わった事を告げられたのだ。
4階からの階段を引きずられるように降りた事で挫いただけでなく骨が折れていたため、治療を受け痛み止めを処方されて夢現の中で聞いたような鐘の音はアルフォンスの弔いの鐘の音だった事を悟った。
「もっと早くに知らせるか悩んだ」
ディートヘルムは俯いて呟くように告げた。
順当であればディートヘルムが王太子となり国王になる。
トルデリーゼはそれでいいと思えた。
トルデリーゼが選ぶわけでもないし、アルフォンスの死を喜ぶわけでもない。到底夫は思えない所業の数々だったが、最期を思えば憎む気にもなれない。
どうせなら死ぬまで虚構な夫婦を続け、年齢的に先に逝くアルフォンスの死に際に「これからは自由にさせて貰う」と言ってやりたかった。
しかし、最期を思えばアルフォンスは自分と同じように愛を返して欲しくて不器用だったのかも知れないとも思えた。
そうはいっても部屋の向こう側に覗き部屋があった事は驚きよりも失望を感じたが。
過去に窓から姿を見て愛を望んだバレリオを思う自分と同じでバレリオも気味悪いと思っていたのだろうかとも考えた。
「君は被害者だ。だから何の罪もなければ咎もない」
「だからなんでしょう?」
「私の…いや、違うな。一緒に…と言うのも違うな」
ブツブツと呟くディートヘルムだったが、もう一つの葬儀を密葬で終えた国王夫妻が訪れたとの知らせに席を立った。もう一つの葬儀とはジュリアスの密葬である。
表向きは病死と発表をされたが、どうあってもアルフォンスを殺めた事はなかった事には出来ない。
だが、アルフォンスの死によりトルデリーゼが自由になったのは事実だ。
隠しておきたい王家の恥部。それも闇に葬る事が出来るのだ。
ディートヘルムはそれで幕引きとはしなかった。
そうしようと当初は隠ぺいする声が多かった。だがディートヘルムは押し切った。
隣国の皇太子を伴ってやって来たトルデリーゼの姉、リディアはそれを聞いて大きく頷いた。
トルデリーゼを自由にしようと奔走したディートヘルムを知るリディアは敢えて「王族に妹はもう渡せない」と告げた。ディートヘルムの心の内の読んだかのようなリディアの言葉にディートヘルムは苦笑するしかなかった。
「あら、まだ伝えていないの?」
王妃の言葉にディートヘルムは鼻の頭を指で掻いた。
「ならば私から伝えるしかなさそうだな。本当に子育ては難しいものだ。なぁ?」
国王は王妃を見やったが、王妃は「誰に似たのだか」と顔を反らせた。
「いえ、これは私が伝えるべき事ですから、私が話します」
カドリア王国にやって来た隣国の皇太子を交えての話。カドリア王国は王家だけでなく議会も招集し一つの大きな決定を下した。
王制を完全に廃し、民主化すると決定をしたのだ。
しばらくは内乱などの紛争が起きたり、他国の侵略がないか隣国の皇太子が先頭に立ち管理をする。貴族制も廃止をする為、全ての民が平等の立場となるのだ。
懸念される武闘派については隣国の監視の元、炙り出しが行われる。
アルフォンスもそれが全てではなかったが、彼らに踊らされたのも事実。生きていれば踊ったふりをしてやったとでもいうかも知れない。
「ジュリアスは一足先に隣国に出立した」
「えっ?毒は…いえ、病死では?」
「表向きはそうしておかねば王家の復興や再興と言って利用される事がある。ジュリアスは隣国で再教育を受けた後は海の向こうの国に渡る。そこからどうするかはジュリアスの人生だ。本人も納得をしてくれた。これは君に渡して欲しいと預かってきた」
ディートヘルムが差し出したのは淡い黄色の布で作った不格好な小物入れだった。
縫い目も荒く、ところどころ縫い目が二重になったり三重になったりしている。糸を引き過ぎて指で伸ばすが布は伸びきらない。
ジュリアスが手ずから縫ったという小物入れを手で包み、トルデリーゼは咽び泣いた。
「貴女がジュリアスの心を救ってくれたの。母親の私に出来なかった事を貴女が代わりにしてくれた。ありがとう。だから受け取ってあげて」
年を取ってから生まれたジュリアスを手放すのは仕方のない事とは言え辛い事だろう。自分と重なるジュリアスに人生を背負わせてしまった気がして涙が止まらなかった。
「父上と母上は…トルデリーゼ嬢の父上と母上がお引き受けくださった。エルドゥ氏の元で役に立つかは判らないが掃除夫と炊事婦として雇ってくれるそうだ。感謝に尽きる」
ディートヘルムの言葉に王妃は「リゼルちゃんに掃除と芋の皮むきを習ってるのよ?」とよく見れば王妃の指先は傷だらけだ。「今からやらないと間に合わないわ」と前向きな言葉が本来の王妃なのだろう。
「私はこの後、父上の退位を受けて即位し、国を終わらせて来る。その時に…いや、その時の私を見ていてくれないだろうか。そして…願わくば、全てが終わった後に君の隣にいる事を許して欲しい」
「え”?」
「その潰れたヒキガエルのような声はやめてくれ。何気に傷つく。言っただろう?君と共になら楽しい人生なんじゃないか。そんな風に考える事があると」
「肝心なところを端折らないでくださいませ。あの時こういいましたわ。【君と共に国を良くしていけたら楽しい人生なんじゃないか。時々そんな風に考える事があるよ】って」
「おっ覚えているなんてズルいじゃないか」
「そうですか?でもこの先は物忘れも酷くなると思うので丁度じゃないかと思いますわ。しっかりと最後を締めくくってくださいませね?」
「あぁ、任せておいてくれ」
それから22日後。ディートヘルムは即位し、事前に議会において満場一致で可決された王制の廃止、国の民主化を発表した。
トルデリーゼはその姿を見届けた後、懐かしいマルス家への帰途についた。
その途中、エルドゥの試験栽培をする地に向かって元国王夫妻の乗った荷馬車が分かれ道でトルデリーゼの馬車が通り過ぎるのを待っていた。
「お嬢様ぁ!おーい!お嬢様ぁ!!」
大きく手を振るリゼルに馬車が停車する。窓を開けてみればリゼルが駆け寄ってきた。
「いないと思ったらそっちの荷馬車に?乗り換えるために待っててくれたのね。お待ちどうさまリゼル」
「お嬢様、何を言ってるんです?私はお屋敷には戻らず新天地ってところに行くんですよ」
元国王夫妻と共に開発中の農地に行くと言うリゼル。
トルデリーゼはその選択を応援した。選ぶのはリゼルであり生きていくのもリゼル。
「リゼル、今までありがとう」
「何を言ってるんです?いっぱいお野菜を持って旦那様と奥様、お嬢様に差し入れしますからね。これでお別れじゃないですよっ!じゃ、お嬢様。行ってきますね!」
リゼルは荷馬車に駆けていくとピョンと飛び乗り、荷台に立ってまた手を振った。
その足元に馬車酔いをした元国王とリゼルが飛び乗った事で手にした芋が地面に落ちたと叫ぶ元王妃がいた。
☆~☆
「今日も穏かね~やっぱり実家は最高♡」
ソファで寛ぐリディアは大きく背凭れに背を預けながら背伸びをした。
玄関の方で甥っ子、姪っ子の声がする。今日はお泊りなので大はしゃぎである。
「ただいま~ひゃぁ…流石にカルガモの引っ越しの苦労は馬鹿にできんなぁ」
先ほどまでジャスミンとカエラもやって来て揃った4姉妹に妻の5人の女性陣から逃げるように孫6人と散歩から帰ってきたマルス子爵は足がガクガクしていた。
膝小僧を手のひらで撫でながら、マルス子爵はトルデリーゼに玄関先に帽子を落としたようだから取って来てほしいと頼んだ。
「そんなのお父様が行きなさいよ~ルディは私と忙しいのぉ」
「いいわ。帽子ね。取って来るわ。門道?」
「門道だったかなぁ…じゃれつかれた時だったからなぁ」
トルデリーゼは日傘を差し出す侍女に「いらない」と言って玄関を開けた。
木漏れ日が降り注ぐ中、キョロキョロと帽子を探しながら歩いていくと1人の男性が目に映った。
「探し物はこれですか?お嬢様?」
指でクルクルと回しながら立っていたのはディートヘルムだった。
「まさか、本当に来たの?なんだか‥‥粘着されてる気分だわ」
「粘着か。そうだなまぁ‥‥そうかも知れない。兄弟だからな。集大成だと思ってくれ」
「嫌よ。変態兄弟3人も面倒なんて見られないわ。で?何か御用?」
「つれないな。私は至ってノーマルだ。誤解してないか?」
「はい、帽子ありがとう。お帰りはあちらよ?」
「おいっ!俺がどれほどの…」
「だって、一介の子爵令嬢如きが口出し出来るような案件ではなさそうですもの。ふふっ」
「それも覚えてたのか!あぁーッ!もう!忘れてくれっ!頼むから!」
ディートヘルムはその場に蹲り、顔の前で指を組み祈る姿勢を取った。
トルデリーゼはディートヘルムの頭に父の帽子をちょこんと乗せ、向かいにしゃがみ込んだ。
「はぐらかされないよう一気に言う!結婚してくれ!誰も、誰も君の瞳には映したくない!君の瞳に映るのは私だけであってほしい」
ディートヘルムの瞳をジィィッと間近で見つめるトルデリーゼは微笑んだ。
「あら?でもあなたの瞳に映るのはわたくしだわ。そこに映る私の瞳…やっぱりわたくし!【誰も】にならないわね?残念でした~」
トルデリーゼの頬を手で覆い、ムニュっと押しながらディートヘルムは不意にアルフォンスもこうやってトルデリーゼに翻弄されていたんだろうかと思案した。
が、今度は自分の頬を抓られた痛みを感じた。
「まずは友人ね?集大成だというのなら今度こそ約束は守ってもらうわ」
「残念。私はそんな出来ない約束はしない男なんだ」
ディートヘルムはトルデリーゼの手を握り、ペニチュアの花を一輪差し出した。
「やだ、それ、ウチの庭に咲いてた花でしょう?もう!勝手に千切らないで!」
「すまない。働いて稼いだらもっといい花を贈る」
「まぁ!それじゃうちの庭の花は貧相だと言うの?!失礼ね」
Fin
☆~☆
ド変態が多く出没する恐ろしく長い話にお付き合い頂きありがとうございました。<(_ _)>
最後は兄弟で胸の内に秘めようと思っていたディートヘルムの恋が実るか実らないか。
踏みつけてもまた花を付けるタンポポのようでありますようにヾ(@⌒ー⌒@)ノ
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(169件)
あなたにおすすめの小説
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
久々に読み返したらマルス子爵の引導の話で「釈迦に説法」ってあったけどフッって思った
この世界に釈迦が居たのかって
コメントありがとうございます。<(_ _)>
確かに(笑)
どっちが正解?っとなると正解が無い??有るんだろうけどそれ?ってなっちゃうんですよねぇ。
異世界なのにこちらの現実と同じような学園や学院なんてシステムだとか…
コルセットとかってのもこっちの世界のものなのに同じ物は同じ用途であるんだ?とか異世界でも馬車ってあるんだーとかキリが無くなっちゃいます(*^-^*)
まぁ、そこは内容紹介にも書かせてもらっておりますがよく言えば伝わりやすい比喩で、悪く言えば「ご都合主義」でしょうか(;^ω^)
完結おめでとうございます🎉
いつも楽しいお話しをありがとうございます!
変態ほいほいリーゼちゃんお疲れ様でした(^_^;)
特殊部隊の中で唯一普通なディートヘルム。。
是非とも女神と結ばれますように☆
(変態が開花したら逃げてリーゼちゃん💦)
ひっそり地道なディートヘルムに兎と亀の競走が頭に浮かびました(笑)
お忙しい日々のようですが、休養も取り入れご自愛くださいね🍀
コメントありがとうございます。<(_ _)>
いつもだなんて…いつもだなんて(*ノωノ)もぅ~お姉さんったらぁ♡
こちらこそ読んで頂いて本当に有難いです。ありがとうございます<(_ _)>
驚きの変態ホイホイでございました~\(^0^)/
ジュリアスは育ち方で全然違ったのかも知れないんですけども、学問だけじゃなく周りからの影響を多く吸収する時期に「自分って必要なのかな」って立場に置かれるのと、ジュリアスも4回目の人生を過ごしているので過去の3回の記憶と合わせて、それまでになかった4回目の人生ではトルデリーゼとの出会いで傾倒していくんですが‥‥。
鏡って不思議で自分の顔が映っているはずなんですけども、合わせ鏡みたいに鏡に映った自分の瞳に映る鏡に映った自分。。っていう無限ループのような中で壊れていく感じですかねぇ。
壊れていきながら、助けてと言う自分の言葉をトルデリーゼの言葉に置き換えて自分に自分で暗示をかけていくって言う(*^-^*)
ディートヘルム。奥手な感じですが兄と弟と違い「待て」と「引け」が出来るんです。
廻りを見て動くからこそ、時間もかかるんですが年齢も年齢ですし…梅昆布茶友達くらいになるまで我慢するかな~どうかな~(≧◇≦)
体調と本業についてもお心遣いありがとうございます(*^-^*)
どうしても本業とか優先になっちゃうので、この週は行けるかなっと具合を見ながらになっちゃうんですけども、こうしてコメントを頂けることが次回への投稿もですが、本業をこなす上でも癒しと馬力になっております、ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
まだまだ寒さもある時期ですし、そろそろ雨も多くなるので気圧も乱高下します。
無理をせず、体調に御留意をされてお過ごしくださいませ。
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>
ゾワゾワ場面が終わってから読もうと思っていたら、沢山のお気に入りに紛れて お話が 行方不明になってしまい、あれ??なんて思っていたのですが、そう言えば検索機能と言う便利なものが有ったと 思い出し 検索して やっと読破出来ました。
いやはや こんな展開になるとは 思いもよらず。。
家族を人質にされて しんどかったでしょうね。読んでいても苦しかったです。
これから アラフォーとアラサーの二人が どうなるのか、大人の関わりという感じで良いですね。
かなりヘビーな展開でしたが、希望が持てる終わり方で良かったです。
未完だと 閉塞を起こしそうでしたので、完結して良かったです。
お忙しくていらしたのに、有難うございました。
コメントありがとうございます。<(_ _)>
ワシもお気に入り機能の使い方が判ってからはいれまくりで(;^_^A
トップページにドバドバ―っとあるんですけども、読破できずに「まだあと4話もあるぅぅ♡」っと仕事の合間の息抜きにしておりますよ~\(^▽^)/
検索までして頂いたとは!ありがとうございますヾ(@⌒ー⌒@)ノウレシー
最後まで誰にも家族が人質にされていた事は言わないトルデリーゼ。
人生を4回目ですので、5回目があった時にアルフォンスに記憶がある事を考えたらとても言えません(笑)
キャラを作ったワシとしてはトルデリーゼのやり直し人生は4回目で終わり!っと考えていますが、キャラの気持ちになった時に「もし次があったら」と考えるかな~と思いまして(;^ω^)
年齢的にはトルデリーゼはまだ20代なので若いんですがディートヘルムはもう30代も後半なので晩婚も晩婚。ですけれども他の2人の兄弟とは違って相手がどうなのかと考えるタイプでもありますし、先ずは周りを固めてという性格ですので、縁側で並んで茶を啜るような年齢になったとしてもそこで思いが通じ合えればいいかなって考える人だと思ってもらえるかな~とか(;^_^A
何話かは本業が今回のような短期(2週間くらいの激務)ではなく月を跨いだ時があって止まっちゃったのはあるんですよ。(今は完結してます)
それでも待っててくれていた方がいらっしゃって、本当に嬉しくて有難くて(*^-^*)
なので、投稿をしたら完結、次の話が出る時はコメントも返信が終わっている状態にしようと心がけておりますよ(*^-^*)
3月は1つしかおそらく出せないかなと思いつつ、数話(5話くらい)で完結するようなのも出せるかな~っと2つの話を現在タイピング中です(*^-^*)
次回はストレス‥‥たまらない…たまら‥‥いや判らないな(笑)
早ければ明日か明後日には出せるかなと思いますのでまた楽しんで頂けると嬉しいです(*^-^*)
今回もラストまでお付き合いいただきありがとうございました。<(_ _)>