嘘つきのままで結構です

cyaru

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第27話  一世一代の大見栄

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魔導師とは国に仕える者。

エメリーを迎えに来た魔導師によってエメリーの王都帰還を知らされた国王は執務も放り投げてロッカス伯爵家にやってきた。

未だに民衆に対しては何の対応策も打ち出さず、自身の身が大事と使用人たちも帰宅を差し止めて絶対安全圏に身を置く国王にエメリーは心底がっかりした。

しかも言うに事欠いて…。

「城の回りだけでいい。結界を張れないか?昔大聖女が国を覆った結界ようなものだ。そこまで大きくなくていい。城を中心に堀まででいいんだ」

「お断り致します」

「何故だ?国王である私がここまで頭を下げているんだぞ」

――実際は頭下げてないよね、ワードだけだもの――

国王もエメリーには強く出る事が出来ない。臍を曲げて「やりません」と突っぱねられてしまったら出来るのはエメリーしかいないのだから機嫌を取るしかない。

代わりが幾らでもいて、単にその中でエメリーの魔力が大きくて強いのであれば両親や兄を人質にして従わせることも出来るが、唯一となればその手も使えなかった。

そんなアドバンテージもあるからか。
今までなら言ったこともないような言葉が言える気がした。

――うん。大丈夫。みんなで大芝居打ったんだもの。大見栄だって切れるわ――

この期に及んで自己保身しかしない国王に威厳も何も感じない。
エメリーはキっと国王を睨んで前を向いた。


「頼む、褒美に欲しいものは何でもくれてやる。やってくれぬか」

「では先に褒美を頂けますか?」

「おぉ。おぉ。やってくれるか、何が欲しい?ドレスか?宝石か?」


心底どうでもいいと思ったエメリーは思うままに欲しいものを述べた。

「最初にお願いします。退位して蟄居してください」

「は?」

「聞こえませんでしたか?退位して蟄居してくださいと言ったんです。それを確認したら結界でも何でも張りますよ」

何でもと言いながら退位なんてきっと出来ないだろう。
ならこちらも結界なんて張れないけれど出来ない事を言うまでだ。

国王は顔が怒りでカっと赤くなり、つい手を振り上げてしまったが、同時に首筋に冷たい感触を感じた。

「あ‥ぅぅ…」

「貴様、その手はなんだ?そこからどうするつもりだ」

赤い瞳になったクレインが国王の首筋に剣の刃をあてていた。本気で殺る気なのでそのまま引いても押しても首にはさっくりと切れ目が入るだろう。

「さ、最近…逆五十肩で腕がと、と、突然振りあがって…しまうんだ」

「逆五十肩?聞いたことがないな」

ある訳がない。国王が咄嗟に考えた言い訳だ。

「どうするんだ?国王辞めるのか?人生辞めるのか?」

――クレインさん!それどっちもやめるになってる――


国王を護衛していた騎士たちも動けない。1歩動けばクレインは容赦なく剣を引くか押すか。
クレインが纏うオーラは赤で燃えるような温度に見えるのにクレインが発しているのは噴火して流れ出る溶岩ですら凍り付くような殺気だった。

「陛下、今、守らねばならないのは国ですか?民ですか?」

「・・・・」

自分と答えようとしたが、首筋の剣がそれを発してはならないと言っている気がして国王は言葉を飲み込んだ。

「答えられないなんて話になりません」

呆れたエメリーが「ふぅ」小さく溜息を吐くと遅れてロッカス伯爵家に飛び込んできた男がいた。

「待ってくれ…待って…民だ!父上は退位させる。この病を事前に知っていて何の手も打たなかった責任を取らせる。毒杯で楽に逝かせたりはしない。約束する」

「まぁ、王太子殿下ではありませんか」

「緊急だ。挨拶など省略しよう。頼む。民を救ってくれ。その為なら…」

「欲しいものは何でもやる、なんて陛下と同じことを言わないでください。いい加減20年間この国の民であったことを悔いているんですから」

王太子はきょとんとしているがエメリーはもう出国して隣国に住んでいる。
仮住まいと言われればそれまでだが、ロッカス伯爵家からは籍も抜かれているので身分は平民。

平民には貴族のような戸籍はないので比較的自由に諸国を行き来できるし住まう事も出来る。ただ、金があれば。の話だが。

金がなければ移動する事も出来ないし、住まいを構える事も出来ない。仕事をしようにも宿無しなど誰も雇ってはくれないのだ。

旅人の護衛をしていた頃のクレインのように根無し草で動くしかない。

「教会に連絡をしてください。王都の各所にある教会の塔から魔力をだします。私の力はそんなに大きくはないんです。その場所、その場所を覆う力しかありませんし、陛下が仰っていたような結界ではありません。力を使う事で全快はするでしょうが、新たに病原菌が入ってくれば感染します。そうならないような施策を講じてください」

何度も呼ばれるのは勘弁してほしいからと付け加えそうになったがそこはエメリーも言葉を控えた。

「約束する。今すぐに実行をする」

「解りました。では私もすぐに取り掛かります」

手打ちになったのを確認してクレインは国王を解放し、背中をおして王太子の方に突き飛ばした。

不敬だと言われても構わない。
クレインの大事はエメリーだけで後の事は鼻をかんだ後の紙よりも価値がない。


「誰か、こいつを牢に。城の王妃の間にいる女も縛り上げて放り込んでおいてくれ」

王太子が兵士に命じると膝がガクガクになった国王を兵士が連行していった。

――肩じゃなくて膝にきてたのかしら――

国王がいなくなり王太子は肩で息をした。
そしてエメリーに「では頼む」と言いかけた時、また乱入者が飛び込んできた。

「エメリー!!」


エメリーの目が細くなる。ついでに王太子の目も細くなる。クレインだけがより強い殺気を放った。

飛び込んできたのはカイルだった。
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