てんしとおコタ

環流 虹向

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僕は生地や必要な手芸用品を買い揃えてから瑠愛さん主催のクリスマスパーティーに来たけれど、どこの視界も刺激的過ぎて日向になんでもと言った代償に僕の熱狂的ファンで日向のお兄さんの彼女さんである音己ねこさんの肩もみをするけれど、たまに漏れる吐息が艶っぽ過ぎて気持ちが持っていかれそうになる。

そんな葛藤をしていると、僕が音己さんの肩もみをしていることに気づいたお兄さんの日向 一ひゅうが ひとさんがこっちにやってきて音己さんの隣に座った。

一「音己ねぇ、なんでこいつに肩揉まれてるの?」

音己「天がやれって命令してた。」

と、音己さんはクリスマスの妖精みたいな真っ赤なドレスで肩と腰と脚を出している日向を指して喧嘩逃れをする。

一「あーなるほど。好感度アップのためか。」

琥太郎「…そんなとこです。」

音己「ん?天のこと好きなの?」

音己さんはまさかの事を言い出し、僕は心の中で焦っていると一さんは吹き出し笑いをした。

一「丸わかりじゃん。気づいてなかった?」

琥太郎「違います。」

音己「紀信くんはどんな子がタイプなの?」

と、ずっと僕を芸名で呼んでくれる音己さんは後ろにいる僕の脚を肘掛にすると体をもたれさせるようにして僕の腹に背中を預け、顔逆さまにしたまま上にある僕の顔をまっすぐ見てくる。

琥太郎「…なんでも頑張る人。」

音己「うんうん。あとは?」

琥太郎「絶対諦めない人。かっこいいと思う。」

音己「へー。可愛いんじゃないんだ?」

琥太郎「可愛いのは照れやすいところとか…、簡単に笑わない所とか…。」

一「具体的すぎる。絶対好きな奴はいるだろ。」

一さんは少し拗ねた顔をしながら音己さんの太ももを枕にして音己さんの胸の向こうから僕を見上げてくる。

琥太郎「いたとしても僕は無理です。」

一「なにが無理?」

琥太郎「…告白とか。」

僕は目で日向を写しそうになったのを寸前で止めて、音己さんの首元にあるピンクのネックレスをじっと見る。

一「おい。俺の彼女だから無駄だぞ。」

と、一さんは何かを勘違いしたらしく体を起こし、音己さんを自分の胸に抱き寄せた。

琥太郎「分かってます。別の人ですよ。」

音己「え?いるんだ?」

琥太郎「あ…。」

僕は自分で墓穴を掘ってしまい、興味津々で輝いている目で僕を追い詰めてくるバカップルから逃げ出してオープンキッチンで作業していた瑠愛さんの元へ走った。

琥太郎「な、ななっ、なにか手伝うことありますか。」

瑠愛「んー…?じゃあ、ちゅーの時間くださーい。」

琥太郎「え?」

僕は意味の分からないことを言う瑠愛さんに驚いていると、奥から出てきた悠さんがおたまを持ったままこちらに来て、しゃがんで作業している瑠愛さんに上下反転キスをするとまた火元がある鍋の前に戻っていった。

瑠愛「天ちゃんとはどう?」

琥太郎「え!?…いや、なにも。」

瑠愛「ん?なになに?なにあったの♡」

と、瑠愛さんはジャンプするように立ち上がると、僕を抱いたまま雪でも降るのかと思うくらい寒いベランダに出て2人の時間を作ってくれた。

瑠愛「衣装のことは天ちゃんも琥太くんのせいって思ってないよ。ちゃんと説明したんでしょ?」

琥太郎「…したけど、一度しか作れない物を壊してしまったキッカケを作ったのは僕なので僕のせいです。」

瑠愛「けど、天ちゃんはもうそんなこと考えずにひたすらに作ってくれてる。だから俺たちが天ちゃんの夢を叶えるためにも頑張ろうよ。大賞取って琥太くんも天ちゃんもやりたいことを出来る環境に飛び出そうよ。」

そう言ってくれた瑠愛さんは僕を温めるように抱きしめて今日の朝にめちゃくちゃされた自分の夢を修復するために心の破片をホウキで集めてくれる。

瑠愛「琥太くんのお父さんがそんなことする人だとは思わなかったけど、自分の子どものことは1番に考えてる人っていうのはちゃんと覚えてる。今は年末年始の特番で忙しくてきっと疲れちゃってるだけだよ。」

…そうならいいけど、年末年始は365日ある間の10日程度しかなくていつも疲れているお父さんの小言は毎日のようにある。

だからきっと疲れてるわけじゃなくて、本当に自分の理想を自分の子どもに押し付けたいだけなんだと思ってしまう。

琥太郎「…疲れてるお父さんと会いたくないので、撮影してる間だけここに泊めてくれませんか。」

僕は衣装もPCも心も壊したお父さんにしばらく一緒にいたくなくて、そう瑠愛さんにお願いしてみる。

瑠愛「いいよ。一緒に年越しジャンプしようね。」

そう言ってくれる瑠愛さんが僕のお父さんだったらいいのにと思ってしまったけれど、それは1番の夢物語で叶いっこない願いなので僕は自分の吐く白い息と一緒に空気に溶けさせてその思いを消した。


環流 虹向/てんしとおコタ
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