あの可惜夜が繋げてくれた

環流 虹向

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かんざし

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[ユサユサ]

ん…?なんか体ゆすられている?

目を開けると陽馬さんが半身起こして私の肩をゆすっていた。

陽馬「仕事行ってくるね。」

朝も明けきらない薄暗い時間。
いつもこんな早くから仕事しているんだ。

陽馬「…私と付き合ってくれないか?」

私は見送ろうと思って体を起こそうとしている時に突然陽馬さんにそう言われた。

ユキ「え?」

陽馬「私と付き合ってください。」

朝日が差していない寝ぼけていた頭に一気に朝がやって来た気がした。

ユキ「はい…!」

嬉しすぎてそれしか言葉が出なかった。

陽馬さんは私がそう答えると、いつも以上に優しい笑顔でにこにこと笑っていた。

陽馬さんのような素敵な人に好かれた自分は幸せ者だなと思う。

あの夜吹雪の中、家路を急いでいなければ出会うことはなかったんじゃないのかな。

この時初めて運命に感謝した。

けれど、その運命を憎む時が来るなんてその時は思いもしなかった。





付き合ってから一年近く経ち、仕事が長引かなければ毎日のように陽馬さんに会っていた。

また今年も雪が降り積もる時期になった。
出会ってから今までとても早かったな。

これからも一緒にいられたらいいな。

今日は水炊き。
冬にはこれが一番温まる気がする。

もう少ししたら陽馬さんが家に着く頃だ。

グツグツと水炊きを煮込みながらご飯を炊く。

忙しいけど陽馬さんと一緒にいられる時間を、もっと楽しむための準備と考えればなんでもやる気が出る。

「ただいま。」

玄関を開くと、陽馬さんが仕事から帰ってきた。

仕事終わりなのに陽馬さんはいつも笑顔でいてくれて本当に心が温まる。

ユキ「おかえり。ご飯出来てるよ。」

陽馬「おっ、水炊きだ。体冷えていたから嬉しい。」

陽馬さんは外着から部屋着に着替えて、茶碗など準備してくれる。

「「いただきます。」」

今日仕事であった出来事などたわいもない話をしていく。

そんな陽馬さんは本が好きでこの1年間、読み書きが出来ない私に少しずつ教えてくれたり、本の内容を教えてくれたり、一人でいたら出来ない経験をたくさんさせてくれた。

本当に感謝してもしきれない。

二人してご飯を食べ終えて私がいつも通り寝る準備をしてると、陽馬さんが話があるという。

なんだろうと準備もそこそこに陽馬さんがいる囲炉裏の前に座る。

ユキ「どうしたの?」

なにか相談があるのか、いつも笑顔の陽馬さんの顔が強ばっている。

…どうしよう。
別れ話かもしれない。
別れるのは、嫌だ。

陽馬「ユキ…、私と結婚…してくれませんか。」

けっこん…?

陽馬「ずっと思ってたんだ。出会って一緒にごはんを食べた時、とても幸せだなと感じた。
ユキとずっと同じ家で、同じご飯を食べ、同じ布団で寝る。一生この繰り返しでも私はユキといられるだけで心が落ち着く。
だからずっと一緒に生きてほしい。」

陽馬さんは胸元から綺麗な色紙で包まれた手の平で収まるの包みを出してきた。

陽馬「これ開けてみて。」

私は包みを受け取りのりをぺりぺりと丁寧にはがすと、その中には銀色のとても輝いていて雪のように儚くて綺麗な色合いのかんざしが入っていた。

陽馬「もし私のそばでずっといてくれるなら、これを受け取ってほしい。」

陽馬さんが私と同じ考えであったことにまずとても嬉しかった。

それに、私といるだけで心が落ち着くだなんて…。

優しくて、真っすぐで、誠実な陽馬さん。
これを断る人なんているのだろうか。

ユキ「私もずっと一緒にいたいと思ってた。これからもよろしくお願いします。」

嬉しくて溢れ出そうな涙をこらえながら、陽馬さんの目を見て想いを伝える。

私がそう伝えると陽馬さんは急に立ち上がり、私を潰しそうな勢いでぎゅーっと抱きしめ、

「ありがとう。これからもよろしくな。」

と言ってくれた。

しばらくの間、この言葉と二人の体温を感じるために抱き合っていた。

陽馬さんの温かさ、鼓動が聴こえてくる。

私は幸せ者だなぁ…。

ゆっくりと体が離れ、二人して顔を見合わせる。

今日は私と陽馬さんが初めて唇を逢わせた日。
想い人同士で触れ合うことがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。

そしてその日、陽馬さんと体を重ねた。

すごく幸せすぎて夢なのではと錯覚するほど。

これからいつまでも陽馬さんといられる。
年をとっても陽馬さんの笑顔が見れる。
そう考えるだけで心がとても暖かくなる。

陽馬「今日は色々頑張りすぎて疲れてしまった。なんだかすごく眠い。」

眠そうな顔だったけれど、陽馬さんはずっと笑顔を絶やさなかった。
一つの布団に二人で包まり、初めて抱き合いながら眠りにつくことにした。

陽馬「おやすみ。」

ユキ「おやすみなさい。」

明日からも一緒にいられる安心感。
ただただ幸せに包まれながら、私は眠りに入った。
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