エンディングノート

環流 虹向

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SUPERMARKET

ぐうたら遊戯

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つまんな…。

会話が合わないって時点でもう私の中から恋愛対象としても友愛対象としても除外な人間なんだけど、どうやら話を聞くにこいつはただ高身長の女が好きらしい。

だから私とデートしたってか。

私の一部分を気に入ってくれるのは有難い話だけれど、なんか冷めちゃう。

自分も顔が整ってるから『イケメン』って言われ慣れてるだろうし、そういうの分かんないのかな。

それとも、この人は嬉しいと素直に受け取れる人なのかな。

まあ、この人がどちらにせよ、私は顔や体を褒められたところでなんとも思わないんだよな。

明人「なるくん。この後、どこか行くの?」

私は昨日レシピサイトで見つけた揚げナスのポン酢漬けを作りたくて、起床直後からうずうずしてるんだけど、帰っていい?

成「もう帰りたいの…?」

と、私の一言でそれを察知出来た優秀な成くんはしょぼくれた顔をしながら、ケーキ屋さんのテーブル席でジンジャーエールに二酸化炭素を送る。

明人「成くんは帰りたくないの?雨降ってきちゃってるし、コンビニ近くにないから傘買えないよ?」

私は成くんが来ていた合皮のジャケットで雨をしのいでもらったけど、何もなかった成くんはその下に着ていた真っ白なシャツから少し筋肉質な体を浮かべている。

成「…明人ともう少しいたいです。」

なんで今更敬語…?

明人「成くん明日から仕事でしょ?風邪引いたらダメじゃん。」

成「明人といられるなら風邪引く価値はあるよ。」

自分の体もっと大切にしろよ。

付き合ってもない女に仕事が出来る自分の体を捧げるな。

明人「ないよ。成くんが今日の雨で風邪引いたら次のデートなしね。」

私は無理矢理承諾させられた来週のデートをなんとかして断りたいし、さっさとスーパーで買い物したくて目の前の成くんから離れる方法を見つけようと模索する。

成「じゃあシャワー浴びていい?」

明人「いいよ。」

なんだ、家が近いのか。

送ったら傘を借りて帰ろうと考えた私は成くんのジャケットで雨から守られ視界を奪われたまま、ただついていくと地面がコンクリートからタイルの床に変わった。

成「とうちゃーく。」

そう言って成くんは雨が染み込み始めたジャケットを私からはがすと、目の前に現れたのはラブホテルの玄関前だった。

明人「なんで?」

成「え?だからシャワー浴びたいんだって。」

明人「1人でどうぞ。」

成「ここ、1人で入れないもん。」

明人「1人で入れるところにすればいいじゃん。」

成「えー…?なんで?」

は?
こっちがなんでなんだけど。

明人「…私、ホテルのゴム嫌い。」

成「俺、持って来てるよ。」

明人「…分かった。」

根気負けした私は後3時間、成くんといることにした。

成「一緒に入ろうよ。明人も足びちょ濡れでしょ?」

明人「髪の毛濡らしたくないから持ってくれる?」

成「うん!いいよー♡」

アメニティがある程度揃っているまあまあいいホテルなのは私の中で女としての最低限のプライド。

その場に一直線で入ってくれた成くんはOne Night候補急浮上。

しかも、自分のゴムを持ってるのはき。

そのチリツモで少し気分が上がった私とびしょ濡れの成くんは雨で濡れてしまった服を脱ぎ、若干熱い気もするけど休憩中に少しでも服を乾かすために暖房をつけた。

成「明人って本当綺麗だね。」

明人「ありがとう。」

成「俺が体洗っていい?」

明人「髪の毛持ってくれるんじゃないの?」

成「片手で持っとくし、俺のこと洗ってくれる時も持っとく。」

…だる。
触りたいだけかよ。

そんなんだったらだらだらデートしないで、一直線
にホテル入ってくれた方が時短になっていいんだよな。

ちょっと面倒くさくなってきた私は成くんに3ヶ月美容院に行けていないロングの重い髪を持ってもらい、体を洗わせる。

そんな成くんの手つきはやっぱり自称高学歴イケメンってことはあって童貞感はない。

そのぐらいがちょうどいいよな。

だるいと思ってデートしつつ、雨の神さまの計らいでホテルに連れ込まれたけど、一応デートということで巻いてきたカールは落としたくない。

今こうやって言うこと聞いてくれて、ある程度女のことを分かっていて、石鹸付きの手で粘膜を触れてこないOne Night男子き。

成「んっ♡明人の体可愛いっ。」

明人「成くん、鍛えてるんだね。ジム?」

まだ成くんが私の体を触れる中、私は成くんの首元からそっとたんぽぽの綿毛を洗うように優しく触れて雨を洗い落とす。

成「ううん。家トレでこうなれた。」

それはそれですごいな。

成くんのストイックさにちょっと見直した私は成くんが体をシャワーで洗い流そうとしたのを止め、成くんをバスタブの縁に座らせて私がベッドで楽をするためにここで1度頑張ることにした。

成「…え?明人、ベッド行こうよ。」

明人「私、お風呂でするの好きだから1回ね。」

私は成くんが腰を浮かせてバスタブに落とさないようにまずは腕で軽く固定しながら、背中も洗う。

明人「私の弱いとこ、片手で頑張って探してみて。成くんが触れる範囲にあるよ。」

私は成くんの胸板にメレンゲを広げながら、キスをして成くんの興奮材料を探す。

すると成くんは目の前にある私のぷっちんクリームプリンを無視して、私の腰下にある最近筋トレで熟し始めたジャム入りマシュマロを全力でこね出してパンを作り出そうとしてきた。

この人は触られるより、触るらしい。

私はキスもそこそこに成くんのサイズ感が全く可愛くないチョコペンをいじりだすと、成くんは自分の腰を軽く動かして空描きし始めた。

成「明人っていつもこうなの…?」

明人「いつも?」

成「彼氏とか、俺みたいのとか。」

明人「ううん。1人の時に泡とシャワーで。」

私がそう言うと成くんのチョコペンは熱々なのに、チョコが出そうもないくらいカチカチになってしまった。

明人「私のここにシャワー当ててもいいよ。」

私は成くんから1度手を離し、シャワーを当ててほしい場所に軽くヘッドを当ててから成くんの片手に持たせ、じんわりと湧き湯温泉を楽しむ。

成「もう少し強くなくていいの…?」

と、成くんはその水圧に疑問を持ったらしく、シャワーを床に置いて水圧を強めようとするのを私はとっさに止めて、成くんのメレンゲだらけの体にシャワーを浴びさせて泡を流す。

明人「今からだよ。」

私は自分の手でシャワーを持ち、しっかりとメレンゲが洗い落とせたことを確認してから確実に綺麗になったチョコペンを咥えて、トリュフチョコ2つに湧き湯を当てながらチョコが溶け出てくるのを待つ。

すると成くんはずっと持っていた私の髪と一緒に頭を掴んで少し前後に動かし始めた。

いつもこうなるけど、成くんはちょっと早いな。

まあ、さっさとやって揚げナス作ろ。

私はチョコにしては塩っ気がきつめなチョコペンのペン先の詰まりを取るように舌でチョコの流動を促していると、突然成くんに両手で強く頭を押さえ付けられてげろまずの塩飴を口の中に出された。

成「…やば。口に出してごめん。」

と、成くんはなぜか罪悪感を私に見せた。

明人「成くん、食べる?」

成「え?」

私は成くんの口に入れ込むフリをしてキスする寸前に目の前で飲み込み、口の中に無いことをいつも通り見せると成くんは私の髪を持つのも忘れて抱きついてきた。

成「明人、付き合お。好き。」

…何がよくて好きかまず言えよ。

というより、私はお前を好きじゃない。
まずは私を好きにさせてから告白してこい。

明人「ちょっと…、考えていい?」

成「…うん!次は俺が頑張るから!」

そう言って成くんは私と自分の残りのメレンゲを流して、いつも通りと思われる自分の流れを始めた。

私はその流れに任せて軽くリラクゼーションを受けた後、雨上がりの駅前で成くんとお別れする。

成「次なに食べたい?」

明人「んー…、美味しいチョコ食べたい。」

成「ごはん系じゃなくていいの?」

明人「チョコが美味しいワイン屋さんでゆっくり呑みたいな。」

成「…分かった!来週までに見つけとく。」

明人「うん。よろしく。」

私は久しぶりに呑み友が出来たので今日は家で酒盛りすることに決めた。


…………
朝・睡眠
昼・天ぷら 美味し!
間・げろまず塩飴

飲み友ゲット。雨の神さまありがとう。
…………


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