エンディングノート

環流 虹向

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ANNIVERSARY

てばなし準備

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お祭り後、お風呂で汗を流して信之を待ちながら洗濯物を畳んでいると非通知から電話がかかってきた。

私はいつも非通知に出る習慣がなかったので無視をしたら留守電が残されていたので聞いてみると、莉音の声で2分後にかける電話に絶対出ろと入っていた。

私はあと少しで帰ってくるはずの信之を頼りにして、またかかってきた非通知に出る。

明人「なに?」

莉音『付き合お。』

私はその一言で電話を切るとまたかかっきたので拒否ボタンを押すけれど、何度もかかってくるのでもう一度だけ出ることにした。

明人「なに?」

莉音『デートしよ。』

明人「やだよ。妥協で成くんいないと無理。」

なんなの?

今更デートしたいって言ってくるの腹立つ。

莉音『えー…。あっ♡いいよー♡』

と、莉音は何かを思いついたのか、嬉しそうな声でそう言った。

明人「やっぱりやだ。忙しいし、今日も無理して休みにしたし。」

莉音『それは嘘だろ。元は彼氏誘ってたんだし、俺にはまだ秋と冬がある。』

…そんな長いことまだ会わないといけないの?

だるい、だるい、だるすぎる。

なんで今頃になって私をかまいだしたのかと思ったら、お見合いしたくないって理由で私だったらわがまま放題出来るから連れて行こうとしてるんだよね?

昔のことがなかったら莉音との将来をちゃんと考えることもあったんだろうけど、ああいうことされたら考える時間さえ惜しいって思うよ。

明人「時間が合えばになるよ。それがいつになるか分からないし、来年になるかも。」

莉音『来年なら空き日多いってこと?』

明人「違う。来年の方が忙しい。」

莉音『どういうことー。』

こっちが聞きてぇよ。

なんでこんなに拒否ってるのに一度も引かねぇんだよ。

莉音『とりあえず、またカフェで会ったら日程決めよ。じゃあねー。』

と、莉音はいつも通り自分中心で話を進めて電話を終えた。

…MGRには行きたいけど、しばらくはなしかな。

私が朝ごはんに飢えることを確信していると、鍵が刺さる音が聞こえて軋む扉が開いた。

信之「ただいまー。」

仕事から帰ってきた信之はいつも通り私にただいまを言って靴も揃えず、1番に私の頬にキスにしてくれた。

明人「おかえり。」

信之「もうお風呂入ったんだね。俺も入っちゃおっかな。」

明人「うん。そのあとごはん食べて花火ね。」

信之「うん。サッと入ってくる。」

そう言って朝にいつも準備しておく部屋着を取って信之はお風呂に向かった。

私は信之とすぐにごはんを食べれるようにお祭りで買った焼きそばとたこ焼きを温めてテーブルの上に並べていると、信之はすぐにお風呂から上がってきた。

明人「温めたよ。」

信之「ありがとう。祭り、楽しかった?」

と、何も知らない信之はいつもの定位置に座ったので私もすぐに座る。

明人「お祭りは良かったけど、連れ人が嫌だった。」

信之「そっか。嫌なことされた?」

…成くんから聞いてないのかな。

護衛係だったのに、ちゃんと役目果たせなかったから伝えてないのかも。

明人「…莉音に水あめ取られてキスされた。」

信之「ごめん…。」

信之は少し歪む私の顔を見ると申し訳なさそうな顔をして、キスの上塗りをしてくれるようにうがい薬の舌で私の口の中を殺菌してくれる。

信之「祭りを楽しんでほしかっただけなのに…。本当にごめん。」

明人「いいよ。けど、来年は一緒に行こ?やっぱり信之がいないと楽しくない。」

信之「うん。行こう。ちゃんと休み調節するね。」

明人「ありがとう。来年が楽しみだなぁ。」

私はしっかりと来年の約束を取り付けて、信之と将来の約束をした。

けど、これをあと4回繰り返したら信之は『いいよ。』って言ってくれなくなるのかな。

そのときは今の信之が私と一緒にいたいと思ってる気持ちよりも、もっとそう思ってもらえるように頑張らなきゃ。

だからずっと夏祭りも、クリスマスも、お正月も、誕生日も、何回も同じ日が繰り返しても信之が私と一緒にいたいと思えるような人になろう。

私はその日から毎日明日の約束をして、信之との時間を増やしていくことにした。


…………
夜・たこ焼き 焼きそば

信之と一緒にいられる時間が私の幸せ。
それをちゃんと分かってもらおう。
おやすみ、信之・明人
…………


環流 虹向/エンディングノート
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