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Re:FRAIL
おやすみ信之
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映画館で爆睡かましちゃったよ…。
せっかく、ハマったドラマが映画化されたものを見に行ったのにもったいないことしたな…。
けど、信之の肉じゃがが無事に出来たからOK。
私は成くんに貸してもらった密閉タッパーに肉じゃがを詰めて、成くんの車で家まで送ってもらう。
成「また映画見に行こ。大画面であれは見るべき。」
と、成くんは今日で100万回言った言葉をまた私に言ってきた。
明人「分かったって。それ以外の話ないの?」
成「んー…、ちゅーしたい。」
何言ってんだ。
あの時は2人して寝相が悪かったって話で終わったじゃん。
ぶり返すのやめてほしい。
明人「だめ。信之が怒るもん。」
成「怒んないよ。」
明人「怒るから。前、怒られたからダメなの。」
私はしつこい成くんに飽き飽きしながら家に送ってもらい、玄関前まで肉じゃがを運んでもらった。
明人「ありがとう。鍋に残ってるの食べてね。」
成「うん。全部食べる。」
明人「はーい。おやすみ。」
成「うん。」
私は玄関の扉を開けてちょっと重い肉じゃがのタッパーを下駄箱上に預け、部屋を暖めに真っすぐコタツがる部屋に行き、照明をつけた。
すると、そこにはコタツもベットもカーテンも信之の全てがなくなっていて、残されていたのは私の名前と用途が信之の字で書かれた6個のダンボールとマフラーが巻き直され紙切れを持っているクマの助兵衛だけ。
私はその部屋の明かりで見えていなかったキッチンを見ると冷蔵庫も炊飯器も昨日の夜洗い上げて自然乾燥させていたあのお皿さえなくなってることに気がつく。
私はまだ信之の匂いがあるマフラーで目の前が歪んでしまわないように涙を拭き取りながら助兵衛が持っている紙切れの中身を見る。
『ひとりになります。元気でね。』
と、その手紙に描かれたいつも流れるような字を書く信之の字が少し歪んでることに気がつき、私は床に倒れ泣き崩れていると軋む扉が開く音がした。
明人「…信之?」
私は重い体を上げて後ろを振り返ると、帰ったはずの成くんがいた。
成「1人にさせない約束だから。」
明人「ぜんぶ、しってたの…?」
成「ごめんね。」
明人「…きらいだからっ、いなくなって。」
成「約束したからいなくならないよ。」
明人「…だれに。」
成「信之さん。」
私は成くんから1番聞きたくなかった名前を言われて誰の代わりにもなれない助兵衛に抱きつき、顔を埋める。
やっと前の信之が戻ってきたって思ったのに。
これからも信之と一緒にいられる未来、少し見えてたのに。
なんで今、いなくなっちゃうの…。
そう思っていると背後からぎゅっと少し力強く抱きしめられた。
…これが信之だったら嬉し泣きなのに。
どうして成くんなの。
信之がいいのに、なんで信之はひとりがいいの。
成「俺はずっと明人と一緒にいるから。」
成くんじゃない。
信之にそう言って欲しいの。
明人「…信之、どこにいるの。」
成「俺にもMGRの人たちにも言わないで行っちゃった。」
なんで…?
あんなに楽しく過ごしてたのに、みんな友達じゃなくてただ知り合いなの…?
明人「あいたい…っ、信之がいい。」
成「俺がいるよ。大丈夫。」
大丈夫なんかじゃないよ。
成くんに温めてもらってるのに体が震えて心臓と頭が痛いのは成くんじゃなくて、信之じゃないとだめって体と心が叫んでるからだよ。
成「…俺はいなくならないから。大丈夫。」
私は求めてる声とは違う声で何度も欲しかった言葉を言われ、1人になりたくてもさせてくれない成くんが1番嫌いになり、そのまま信之のマフラーで信之を感じながらこの夢を覚めさせるためにどこにもない現実へ起きようと何度も眠りについた。
環流 虹向/エンディングノート
せっかく、ハマったドラマが映画化されたものを見に行ったのにもったいないことしたな…。
けど、信之の肉じゃがが無事に出来たからOK。
私は成くんに貸してもらった密閉タッパーに肉じゃがを詰めて、成くんの車で家まで送ってもらう。
成「また映画見に行こ。大画面であれは見るべき。」
と、成くんは今日で100万回言った言葉をまた私に言ってきた。
明人「分かったって。それ以外の話ないの?」
成「んー…、ちゅーしたい。」
何言ってんだ。
あの時は2人して寝相が悪かったって話で終わったじゃん。
ぶり返すのやめてほしい。
明人「だめ。信之が怒るもん。」
成「怒んないよ。」
明人「怒るから。前、怒られたからダメなの。」
私はしつこい成くんに飽き飽きしながら家に送ってもらい、玄関前まで肉じゃがを運んでもらった。
明人「ありがとう。鍋に残ってるの食べてね。」
成「うん。全部食べる。」
明人「はーい。おやすみ。」
成「うん。」
私は玄関の扉を開けてちょっと重い肉じゃがのタッパーを下駄箱上に預け、部屋を暖めに真っすぐコタツがる部屋に行き、照明をつけた。
すると、そこにはコタツもベットもカーテンも信之の全てがなくなっていて、残されていたのは私の名前と用途が信之の字で書かれた6個のダンボールとマフラーが巻き直され紙切れを持っているクマの助兵衛だけ。
私はその部屋の明かりで見えていなかったキッチンを見ると冷蔵庫も炊飯器も昨日の夜洗い上げて自然乾燥させていたあのお皿さえなくなってることに気がつく。
私はまだ信之の匂いがあるマフラーで目の前が歪んでしまわないように涙を拭き取りながら助兵衛が持っている紙切れの中身を見る。
『ひとりになります。元気でね。』
と、その手紙に描かれたいつも流れるような字を書く信之の字が少し歪んでることに気がつき、私は床に倒れ泣き崩れていると軋む扉が開く音がした。
明人「…信之?」
私は重い体を上げて後ろを振り返ると、帰ったはずの成くんがいた。
成「1人にさせない約束だから。」
明人「ぜんぶ、しってたの…?」
成「ごめんね。」
明人「…きらいだからっ、いなくなって。」
成「約束したからいなくならないよ。」
明人「…だれに。」
成「信之さん。」
私は成くんから1番聞きたくなかった名前を言われて誰の代わりにもなれない助兵衛に抱きつき、顔を埋める。
やっと前の信之が戻ってきたって思ったのに。
これからも信之と一緒にいられる未来、少し見えてたのに。
なんで今、いなくなっちゃうの…。
そう思っていると背後からぎゅっと少し力強く抱きしめられた。
…これが信之だったら嬉し泣きなのに。
どうして成くんなの。
信之がいいのに、なんで信之はひとりがいいの。
成「俺はずっと明人と一緒にいるから。」
成くんじゃない。
信之にそう言って欲しいの。
明人「…信之、どこにいるの。」
成「俺にもMGRの人たちにも言わないで行っちゃった。」
なんで…?
あんなに楽しく過ごしてたのに、みんな友達じゃなくてただ知り合いなの…?
明人「あいたい…っ、信之がいい。」
成「俺がいるよ。大丈夫。」
大丈夫なんかじゃないよ。
成くんに温めてもらってるのに体が震えて心臓と頭が痛いのは成くんじゃなくて、信之じゃないとだめって体と心が叫んでるからだよ。
成「…俺はいなくならないから。大丈夫。」
私は求めてる声とは違う声で何度も欲しかった言葉を言われ、1人になりたくてもさせてくれない成くんが1番嫌いになり、そのまま信之のマフラーで信之を感じながらこの夢を覚めさせるためにどこにもない現実へ起きようと何度も眠りについた。
環流 虹向/エンディングノート
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