一なつの恋

環流 虹向

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朝、目を覚ますと見覚えのない女が2人いた。

俺を挟んで寝ているけれど、おはようの言葉なんかかけてくれない。

俺はベッドから静かに降りてべたついた体のまま、家に帰宅し天から何かを話かけられたけど何も聞こえずそのまま風呂に入り汚れを落とす。

シャワーのぬるま湯が姐さんの温もりを思い出させてきて、俺はシャワーを浴びる中でそのまま涙も流してないものにしようとした。

けれど、どんなに流しても涙はずっと溢れたままで止まってくれない。

流れ出る涙を止めてくれるバルブさえあれば簡単に止まってくれるのに、なんで神さまは人間にバルブをつけてくれないんだろう。

[コンコン…]

と、風呂場の扉が軽く叩かれる。

天「ひぃ兄。夢衣ちゃんからいっぱい電話来てるよ?」

天は少し恐怖を覚えたのか、不安そうに言った。

…そうだった。
今日も夢衣と朝飯の約束をしてんだ。

けど、今夢衣に会ったら俺は夢衣の居心地の良さに甘えてしまってまた昔見たいに戻ってしまう。

誰でもいいから甘えたいけど、また奏たちに迷惑をかけてしまう。

次は本当に俺から誰もいなくなる。
もう誰も俺の側から離れないでほしい。

好きってずっと言うから、大切に思うからいなくならないでしい。

一「…ごめん。体調悪いから行けないって言っておいて。」

天「…ひぃ兄大丈夫?風邪?」

一「…うん。」

天はまた携帯に電話がかかってきた着信を聞きつけて俺の荷物が置いてある部屋に戻っていく。

俺はシャワーを止めて、何も整理出来ていない頭を洗う。

髪を洗うそのシャンプーは全く別物なのに、姐さん家にあるシャンプーの記憶の香りがしてきて俺はまた涙が溢れ出す。

どんなことをしていても姐さんとの思い出をふと思い出して、まともに学校に向かう準備が出来なくて結局奏に連絡して病欠にしてもらった。

俺は好きな人の好意が俺と思ってるものと違った時、もう何も出来なくなってしまう。

夢衣の時もそうなって奏たちとの約束もすっぽかして、学校と夢衣の家の往復しかしてこなかった時期さえある。

今もそうなってしまいそうだから1人になりたい。

明日は…、明日こそは行くから1日だけ俺は俺に浸っていたい。

そうしてないと俺じゃなくなる。
この時だけ1人で好きな人たちとの楽しかった思い出に浸っていないと、もう俺は立ち直れない。

俺はベッドで倒れ込み眠ろうとすると天が持っていた俺の携帯を充電しにきた。

天「ひぃ兄、奏くんが今日の夕方来るって。」

さっき夢衣とは別の誰かと電話していたのは奏だったのか。

一「移したら悪いから奏も天も俺に近づかないでくれ。」

天「…薬、買ってくるよ?」

一「あとで病院行く。」

天「分かった…。」

天は俺にタオルケットをかけて部屋の境にあるしきりを締めて静かに宿題を始め出した。

俺は昼頃にアラームを設定し、泣き疲れて頭痛がする頭を少しだけ休めることにした。

寝てれば何も考えなくて済むから。

この悲しさを紛らわしてくれるのは忘れること、思い出さないこと、考えないことだから。

俺は目を瞑り、暗闇の中に意識を落とした。




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