透明人間

野良

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透明人間5

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尚人side 

 その夜、俺は珍しく絋海ひろうみをこちらから呼んだ。エリカのことで、相談に乗ってもらいたかったからだ。


「エリカは寝てるか?」リビングに戻った俺に、紘海が言った。

「ああ」

「話って何なんだよ」

「…タバコ吸いたいから、ベランダに出てもいいか?」ふたりでベランダに出てから、タバコに火をつけた。「エリカの…学校のことなんだけど」

 俺は、エリカが初めて学校へ行って、帰ってきた時の話をした。

 「どう生きていったらわからない」と言って泣いた、彼女の様子を。


「多分さ…ずっと他人と関わっていなくて、あいつはまだ幼稚園児みたいなものなんだよ。おまけに愛情も足りないときてる」俺はタバコの煙を吐き出した。「それなのに、いきなり中学校にやって…後悔した」

「まあな。それだけ何もわからなかったら、行くのも嫌になるよな」

「…このまま学校に行かせずに、俺が一生面倒見るのが一番なのかな」

「それはお前にとって一番、だろ。エリカのためにはならない」

「…わかってるって。やっぱり生きる、ってことは嫌でも人間と関わらないといけないってことだからな。エリカもこのままじゃ生きにくいだろうし…俺も、いつどうなるか解らないし」

「子持ちになって、一気に老けたな」

 茶化し始めた紘海を睨んで、俺は言った。「…お前に頼みたいのはそこなんだよ。なるべくでいいから、ここに来てエリカと話してやってくれないか?家で仕事してるから、時間も融通がきくだろ?」紘海はデザイン関係の仕事をしていた。

「話だけでいいのか?」

「…勉強も教えてもらえると助かるけど」

「…わかった。けど、あまり期待すんなよ」紘海はタバコに火をつけて、煙を吐き出してから言った。「けど、いいのか?お前の留守中にエリカに会っても」

「…仕方ないだろ。頼れるの、お前しかいないし」

「…持つべきものは友達だねえ」

「自分で言うな」

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