この空の下、君とともに光ある明日へ。

青花美来

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気持ち

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「これは……どういう意味?」


時を同じくして、優恵は不意に直哉から送られてきたメッセージに首を傾げる。


"もしかして、優恵も俺の気持ち知ってんの!?"


(直哉くんの気持ち……? どういうこと?)


直哉が動揺した果てに送ってしまった文言。

当然優恵にその真意を読み取れるわけがなく、それを見てしばし考え込んでいた。

しかし次の瞬間そのメッセージが取り消されて読めなくなり、優恵は瞬きを繰り返す。


「あれ、消された……?」


"ごめん、間違えた! 今のナシ!"


続いて送られてきた言葉にまた考えるけれど、間違えたというのならそうなのだろう。


"なんかよくわかんないけど、わかった"


そう返事をして、スマホを自室のベッドの上に置いて充電器をさした。


「もう夏休みかあ……」


カレンダーを見ると、数日後に終業式が迫っている。

直哉に夏休みも会おうと誘われたけれど、昨日の今日ということもあり、具体的に何か夏休みの予定が決まっているわけではなかった。

しかし、ちょうどよくメッセージも来ていて話し合うには良いタイミング。

ベッドの上に一度置いてしまったけれど、もう一度それを手に持ちパパッと文章を打ち込む。


"直哉くん、夏休みどこか行く?"


そう送った後で、いや、どこか行く?なんてすごい上からだなと思い若干の後悔をする。

しかしそれを消そうにもすでに既読がついており、消すに消せなくなってしまった。


"ごめん言い方間違えた。どこか行きたいところある?"


慌ててそう送り直すと、すぐに直哉から


"今月末にある花火大会とかどう?"


と返事が来た。


「花火大会……」


そう言えば、この四年間一度も観に行ったことがなかった。

一緒に観に行く人がいなかったというのもあるし、龍臣がいないのに行く意味が見出せなかったからだ。


"俺、人混みもあんまり得意じゃなかったから今まで避けてきてて。でも行ってみたいんだ。優恵と行きたい"


そんなことを言われたら、選択肢は一つ。


"うん。私も行きたい。一緒に行こう"


そう、返事をした。


ここ最近、直哉と過ごす時間が多くなったからなのか。

昨日この部屋に直哉がいたからなのか。

今、すごく部屋が広く感じる。

それにほんの少しの寂しさと戸惑いを感じつつ、まだ明るいのに布団に潜り込んで目を閉じる。


「そういえば……私から直哉くんに何か送って誘ったの、初めてかも」


ただ、夏休みをどうするかと送っただけ。

それだけだけど、なんとなくくすぐったい感じがした。




*****


本格的な暑さが息苦しさを感じさせる頃、夏休みがやってきた。


「優恵ちゃん! 夏休みも遊ぼうね! 連絡するから!」

「うん。ありがとう」

「ゆえちー、今度宿題一緒にやろー……」

「うん。わかったよ。早めに終わらせちゃおう」

「ゆえち! ありがとううう」


愛子と栞に手を振り、一人で家まで帰る。
その道中、かなりの暑さで汗が噴き出るようだ。

プリントを入れているファイルをうちわのようにして扇ぎながら、早く帰って冷たいものでも飲もうと急いで家まで向かう。

すると、直哉から


"今から会えない?"


と連絡が来て足を止めた。



待ち合わせに指定されたのは、いつものあのカフェ。

制服のまま中に入ると、直哉はまだ来ていないようだった。

待ち合わせであることを伝えて席に通してもらい、先にアイスティーを注文する。

冷房が効いている店内はまるで天国のように涼しくて、優恵はその冷たい空気を吸おうと深呼吸を繰り返した。

噴き出すかのようだった汗も引き、逆に風邪でも引いてしまいそう。

ちょうど運ばれてきたアイスティーもとてもよく冷えていて、身体の芯から冷やすことができた。


「優恵、ごめん遅くなった」

「直哉くん」


少し待っていると、直哉がやってきた。


「……あれ?もしかして走ってきた?」

「優恵待たせてると思って……あれ、俺……」


頷いてから、自分が走ってきたことに気がついたらしい直哉。

肩が上下するほどに息切れしているところを見るに、それなりに長い距離を走ってきたようだった。


「直哉くん、運動はほとんどしないって言ってたのに。走れるようになったんだね」

「本当だ……。完全に無意識だった……」


優恵を待たせたくない。その一心だったから、全く気が付かなかった。

今まで少しでも鼓動が早くなると発作のトラウマで立ち止まってしまっていたのに。
まさか、そんなことも忘れて走れるようになるだなんて。


「とりあえず何か飲もう、すごい汗だよ」

「あ、うん。……すみません、コーラを一つ」


いつも大体カフェオレなのに、炭酸を飲むのも相当喉が渇いているのだろう。


「私のことなら気にしないで良かったのに」

「いや、そういうわけにはいかないでしょ。俺から誘ったんだから」


すぐに運ばれてきたコーラをぐいっと飲むと、着ているシャツで雑に顔の汗を拭いた。




「それで、急にどうかしたの?」

「来週の花火大会の時間決めようと思って」

「あぁ、そっか。もう来週か」


直哉に言われてスマホのカレンダーを見る。

そういえば来週末は花火大会の日だ。


(でも、時間決めるだけならわざわざ会う必要も無いのに)


「俺行ったことないから良い場所とかよくわかんなくて。もし優恵が知ってたら相談したいなと思ったんだ」


優恵は、直哉が適当な理由をつけて優恵に会いたかっただけだなんて、想像すらしていない。


「そっか。私もしばらく行ってないから最近はよくわからないんだけど……。昔はマンションの屋上で見てたんだ」

「屋上?」

「そう。今は危ないからって立ち入り禁止になっちゃって入れないんだけどね」

「そうなんだ」


小さい頃は龍臣と一緒にマンションの屋上で見ていた優恵は、マップを開いて目ぼしいところを提案する。

話し合いの末、結局打ち上げ会場から近すぎず遠すぎずの場所にある橋の上で見ることになった。

見晴らしが良いため、天気が良ければ少し小さいけど綺麗に見えるだろう。


「多分そこそこ混むと思うけど大丈夫?」

「うん。たまには慣れないとね」

「わかった。じゃあ当日は何かつまめるものと飲み物持って早めに行こうか」

「そうしよう」


時間と場所が決まった頃には飲み物も底をついており、このまま居座るわけにもいかないため帰ることに。


「送るよ」

「いいよ、まだ明るいし」

「……そういう問題じゃないの。ほら、行こう」


直哉が少し強引に優恵の手を取り歩き始める。

急に繋がれた手に、優恵の鼓動はどんどん早くなる。

恥ずかしくてたまらないのに、"どうして手を繋ぐの?"と聞くのは何故かもっと恥ずかしい。

直哉も衝動的に繋いでしまい、その後どうするかを全く考えていなかったことに気が付く。

いつしかお互い無言になってしまい、自分たちの鼓動の音と車の通る音、そしてうるさいくらいの蝉の声だけが辺りに響いていた。


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