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「でも茅ヶ崎、確か言ってなかったか?もう恋愛なんてどうでもいいとか、早く籍入れないととか、いい相手いないかとか」
「そうそう、言ってた言ってた。それで確か──」
酔って気が大きくなってきたのか、二人の声はだんだん大きくなっていって、聞き取れるようになってきた。
しかし。
恋愛なんてどうでもいい?
早く籍を入れないと?
いい相手がいないか?
にわかに信じ難い言葉の羅列に、思わず振り返りたくなる気持ちをグッと我慢する。
「しずく……」
もちろん由紀乃にも聞こえており、心配そうに私を見つめてくる視線を感じる。
しかしそれに目を合わせられなくて下を向いた。
「しずく……やっぱりもう帰ろう?」
「……由紀乃」
ね?と微笑む由紀乃に頷いてから立ちあがろうとするものの、上手く足に力が入らなくて少しもたつく。
そうしている間に、今度は私の話が聞こえてきた。
「あの子……茅ヶ崎の彼女ね、そんな都合良さそうな女には見えなかったんだけどなあ」
「ふーん。どんな感じの子?」
「すーごい美人。やっぱ顔の良い男には顔の良い女が寄ってくるんだなって思わせてくれるレベル」
「マジかよ。アイツやべぇな」
「だろ?でもそれだけじゃなくて。……天然……って言うわけでもなくて。なんつーか……そう、庇護欲煽られるって言うのかな?"俺がしっかり守ってやんなきゃ"みたいな。
見た目しっかりしてそうなんだけど抜けてるって言うか、隙が多かったんだよな」
「あぁー……いいねそういうの」
「な。だから茅ヶ崎がそんな子を選ぶとかちょっと意外だったんだよな」
「まぁ、あんなこと言ってたやつが選ぶタイプじゃあないよな。もっとさっぱりしてて都合良く適当に結婚してくれる女選ぶと思ってた。まぁでもアイツ相手なら無理矢理結婚迫る女もいそうだな。そんな感じなんじゃねぇの?」
「いや、俺も最初はそう思ったんだけど、でもあの感じだとむしろ茅ヶ崎の方が────」
もう、それ以上聞いていられなくて。
「しずく……?」
気が付いたら、
「……ごめん由紀乃……これでお会計しといて」
そう言って立ち上がって財布からお金を出して、テーブルに置いた。
「しずく!?」
そのまま逃げるように走り出し、由紀乃が私を呼ぶ声が店内に響きわたる。
「……え?」
山田さんの焦ったような声が聞こえたような気もするけれど、それに視線を向ける余裕も無い。
今は、一刻も早くこの場から離れたい。
由紀乃に悪いことしてしまった。あとで謝らないと。
居酒屋を飛び出した私は、電車に飛び乗って、最寄駅から走って自宅へ帰りそのままベッドに潜り込んだ。
「……冬馬……」
冬馬の声が聞きたい。
何馬鹿なこと言ってんだって。そんなの嘘に決まってるだろって。そう言ってほしい。
震える手でスマートフォンを出して冬馬に電話をかけるものの、虚しくコール音が響くだけで冬馬は出ない。
あんな言葉、信じる必要無い。冬馬の言葉に嘘は無い。それなのに。
どうしてこんなに、不安になるのだろう。
どうしてこんなに、虚しくなるのだろう。
私って、都合のいい女だったのかな。
売れ残りで、簡単に結婚してくれそうな女だと思われてたのかな。
本当は高校時代の私の気持ちも知っていて、それで落とすために好きって言ってくれただけだったのかな。
あの約束自体、私をからかったものだったのかな。
そんなわけないのに。冬馬はそんなこと言ってないのに。本気だって、からかってなんかないって。そう言ってくれたのに。
あのキスも、甘い時間も。全部本当だったのに。
冬馬の言葉に嘘なんて無いのに。わかってるのに。
自分に自信が無いからか頭の中がざわざわする。
「とーまぁぁ……」
どうしてこんなに、涙が出てくるのだろう。
「そうそう、言ってた言ってた。それで確か──」
酔って気が大きくなってきたのか、二人の声はだんだん大きくなっていって、聞き取れるようになってきた。
しかし。
恋愛なんてどうでもいい?
早く籍を入れないと?
いい相手がいないか?
にわかに信じ難い言葉の羅列に、思わず振り返りたくなる気持ちをグッと我慢する。
「しずく……」
もちろん由紀乃にも聞こえており、心配そうに私を見つめてくる視線を感じる。
しかしそれに目を合わせられなくて下を向いた。
「しずく……やっぱりもう帰ろう?」
「……由紀乃」
ね?と微笑む由紀乃に頷いてから立ちあがろうとするものの、上手く足に力が入らなくて少しもたつく。
そうしている間に、今度は私の話が聞こえてきた。
「あの子……茅ヶ崎の彼女ね、そんな都合良さそうな女には見えなかったんだけどなあ」
「ふーん。どんな感じの子?」
「すーごい美人。やっぱ顔の良い男には顔の良い女が寄ってくるんだなって思わせてくれるレベル」
「マジかよ。アイツやべぇな」
「だろ?でもそれだけじゃなくて。……天然……って言うわけでもなくて。なんつーか……そう、庇護欲煽られるって言うのかな?"俺がしっかり守ってやんなきゃ"みたいな。
見た目しっかりしてそうなんだけど抜けてるって言うか、隙が多かったんだよな」
「あぁー……いいねそういうの」
「な。だから茅ヶ崎がそんな子を選ぶとかちょっと意外だったんだよな」
「まぁ、あんなこと言ってたやつが選ぶタイプじゃあないよな。もっとさっぱりしてて都合良く適当に結婚してくれる女選ぶと思ってた。まぁでもアイツ相手なら無理矢理結婚迫る女もいそうだな。そんな感じなんじゃねぇの?」
「いや、俺も最初はそう思ったんだけど、でもあの感じだとむしろ茅ヶ崎の方が────」
もう、それ以上聞いていられなくて。
「しずく……?」
気が付いたら、
「……ごめん由紀乃……これでお会計しといて」
そう言って立ち上がって財布からお金を出して、テーブルに置いた。
「しずく!?」
そのまま逃げるように走り出し、由紀乃が私を呼ぶ声が店内に響きわたる。
「……え?」
山田さんの焦ったような声が聞こえたような気もするけれど、それに視線を向ける余裕も無い。
今は、一刻も早くこの場から離れたい。
由紀乃に悪いことしてしまった。あとで謝らないと。
居酒屋を飛び出した私は、電車に飛び乗って、最寄駅から走って自宅へ帰りそのままベッドに潜り込んだ。
「……冬馬……」
冬馬の声が聞きたい。
何馬鹿なこと言ってんだって。そんなの嘘に決まってるだろって。そう言ってほしい。
震える手でスマートフォンを出して冬馬に電話をかけるものの、虚しくコール音が響くだけで冬馬は出ない。
あんな言葉、信じる必要無い。冬馬の言葉に嘘は無い。それなのに。
どうしてこんなに、不安になるのだろう。
どうしてこんなに、虚しくなるのだろう。
私って、都合のいい女だったのかな。
売れ残りで、簡単に結婚してくれそうな女だと思われてたのかな。
本当は高校時代の私の気持ちも知っていて、それで落とすために好きって言ってくれただけだったのかな。
あの約束自体、私をからかったものだったのかな。
そんなわけないのに。冬馬はそんなこと言ってないのに。本気だって、からかってなんかないって。そう言ってくれたのに。
あのキスも、甘い時間も。全部本当だったのに。
冬馬の言葉に嘘なんて無いのに。わかってるのに。
自分に自信が無いからか頭の中がざわざわする。
「とーまぁぁ……」
どうしてこんなに、涙が出てくるのだろう。
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