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20 リデル
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前日、用事を思い出したと急に帰ってしまったエラは、約束通りに午前中に顔を出してくれた。
それも本邸に勤める女性2人を連れて、大小4つの箱を携えて。
その女性達も、何やら荷物を抱えていて。
その内の1人がエラの母なので、リデルは驚かされたが、デイブも同様に慌てていたので、父にも何も事前連絡はなかったのだろう。
「エラ、皆さん、ごめんなさい。
来てくだったのに申し訳ありませんが、わたし、そろそろ……」
せっかく来てくれたのに申し訳なくて、リデルは3人に謝った。
そろそろ出ないと、シェリーとの約束の時間に間に合わない。
今日は結婚式日和で、お天気も良くて暖かいので、教会までゆっくり歩いて行くつもりだった。
「あぁ、大丈夫。
リデルのお化粧と着付けは、家でするからって、ちゃんとオドネルさんに連絡してるから。
リデルは早めに行かなくていい」
そう言うエラは、いつオドネルさんに会ったのだろう。
それにお化粧と着付けを家で、と言うけれど、ドレスはまだシェリーが持っているはず。
「母さんは髪のセットとお化粧担当。
で、こちらのレイカさんは、ドレスをフィッティングしてくれるから。
リデルはおとなしく、お任せして?」
リデルのために来てくれた2人への挨拶もそこそこに、デイヴは別の部屋へ追いやられ、リデルは下着姿にさせられた。
長椅子の上には1つ目の大きな箱が置かれ、その中にラベンダー色が見えたリデルは傍らに立つエラに確認した。
「もしかして、昨日あれからドレスを取りに行ってくれたの?」
「まあね。
わたしのリデルがあのクズふたりを見返す手伝いを、シェリーに譲るわけがない」
「……あ、ありがと」
『わたしのリデルが』なんて、父にもクラークにも言われたことが無くて、リデルは照れた。
小さな声でエラに御礼を言いながら、パタパタと片手で顔を扇ぐリデルを、優しい目で見ていたエルザと同僚のレイカは、頷き合った。
「時間がないわ、始めましょう。
リデルはこの手の靴は初めてでしょう?
馴染ませたいから、今から履いてね。
それと、この家で1番大きな鏡はどこにあるの?
先ずは髪とお化粧をするわね。
それが完了してから着付けよ」
これからの流れをテキパキと告げながら、エルザはリデルがこれ迄履いたことも無い華奢な靴を箱から出して履かせ。
ドレスの下から薄手のガウンを取り出して、リデルに着せ掛けた。
半身を映すサイズの鏡が、この家では1番大きなものだ。
リデルがそれを運んで来れば、後の3人が自然光が入る窓際にテーブルを移動させていた。
リデルが渡した鏡は、壁側に向かって倒すように斜めに立てかけられ、その前にエルザが持参した化粧品と道具を並べたら、テーブルは簡易化粧台に変身した。
これで準備が終わり、リデルは椅子に座る前に、丁寧に3人に頭を下げた。
「どうぞよろしくお願い致します」
◇◇◇
それからどれくらいの時間が経っただろう。
貴族のご令嬢って、お茶会や夜会に出る時は、毎回こんなに大変なの……と。
自分のために、ここまで手間を掛けてくれている人達に気付かれぬよう、リデルはそっと息を吐いた。
それでも、確実に自分が美しく磨かれているのは実感出来て、彼女の心を躍らせた。
エルザによる髪のセットとお化粧が終わり、レイカ担当のフィッティングが始まる前に、お花摘みと水分は取ったが、それ以降は何もせずに、ドレスを着付けて貰い。
指示されるままに、あちらを向き、こちらを向き、立つ、座る、腕を上げて上体を伸ばす、など。
そんな動きを繰り返して、つままれ、縫い直されて。
あらゆる角度から着付け具合を、周囲を囲んだ3人から何度も確認されて。
「はい。お疲れさま」と仕上がりに満足そうなレイカに声をかけられて、ここまでの工程が終了した。
その時間と労力をかけたリデルの姿は、ようやく入室を許された父の
「え、え、リデルが、お前……それ……」と口ごもった反応が、普段のデイヴを知る本邸勤務の彼女達に笑われたことで、それまで鏡をちゃんと見れていなかったリデルにも知ることが出来た。
その笑いと、やり遂げた達成感が落ち着いた頃。
エラが小さな箱をリデルに差し出した。
「最後の仕上げは、これを髪に飾るの」
ドレスだけではなく、靴もコートもエラは借りてきてくれた。
エルザの手で複雑にピンで止められ綺麗に結い上げられた髪は、それだけで充分だったのに、髪飾りまで。
どこまでエラは、わたしに……と泣きそうになりながら、それを受け取れば。
それは伯爵家本邸にしか咲かない白いビオラ。
決して、使用人のエルザやエラが主に黙って勝手に持ち出すことは許されない。
リデルは唇を噛んで、その花弁にそっと触れた。
この白い花に触れるのは、何年ぶりだろう。
……わたしの隣に居て、似合うと言って、髪に挿してくれた彼は。
「それはね、表立っては渡せないひとからのリデルへのプレゼント。
……受け取ってあげてくれる?」
リデルは黙って頷き、鏡の前に座り。
エルザが髪にその花を、細心の注意を払って丁寧に挿し込んでくれるのを待った。
それも本邸に勤める女性2人を連れて、大小4つの箱を携えて。
その女性達も、何やら荷物を抱えていて。
その内の1人がエラの母なので、リデルは驚かされたが、デイブも同様に慌てていたので、父にも何も事前連絡はなかったのだろう。
「エラ、皆さん、ごめんなさい。
来てくだったのに申し訳ありませんが、わたし、そろそろ……」
せっかく来てくれたのに申し訳なくて、リデルは3人に謝った。
そろそろ出ないと、シェリーとの約束の時間に間に合わない。
今日は結婚式日和で、お天気も良くて暖かいので、教会までゆっくり歩いて行くつもりだった。
「あぁ、大丈夫。
リデルのお化粧と着付けは、家でするからって、ちゃんとオドネルさんに連絡してるから。
リデルは早めに行かなくていい」
そう言うエラは、いつオドネルさんに会ったのだろう。
それにお化粧と着付けを家で、と言うけれど、ドレスはまだシェリーが持っているはず。
「母さんは髪のセットとお化粧担当。
で、こちらのレイカさんは、ドレスをフィッティングしてくれるから。
リデルはおとなしく、お任せして?」
リデルのために来てくれた2人への挨拶もそこそこに、デイヴは別の部屋へ追いやられ、リデルは下着姿にさせられた。
長椅子の上には1つ目の大きな箱が置かれ、その中にラベンダー色が見えたリデルは傍らに立つエラに確認した。
「もしかして、昨日あれからドレスを取りに行ってくれたの?」
「まあね。
わたしのリデルがあのクズふたりを見返す手伝いを、シェリーに譲るわけがない」
「……あ、ありがと」
『わたしのリデルが』なんて、父にもクラークにも言われたことが無くて、リデルは照れた。
小さな声でエラに御礼を言いながら、パタパタと片手で顔を扇ぐリデルを、優しい目で見ていたエルザと同僚のレイカは、頷き合った。
「時間がないわ、始めましょう。
リデルはこの手の靴は初めてでしょう?
馴染ませたいから、今から履いてね。
それと、この家で1番大きな鏡はどこにあるの?
先ずは髪とお化粧をするわね。
それが完了してから着付けよ」
これからの流れをテキパキと告げながら、エルザはリデルがこれ迄履いたことも無い華奢な靴を箱から出して履かせ。
ドレスの下から薄手のガウンを取り出して、リデルに着せ掛けた。
半身を映すサイズの鏡が、この家では1番大きなものだ。
リデルがそれを運んで来れば、後の3人が自然光が入る窓際にテーブルを移動させていた。
リデルが渡した鏡は、壁側に向かって倒すように斜めに立てかけられ、その前にエルザが持参した化粧品と道具を並べたら、テーブルは簡易化粧台に変身した。
これで準備が終わり、リデルは椅子に座る前に、丁寧に3人に頭を下げた。
「どうぞよろしくお願い致します」
◇◇◇
それからどれくらいの時間が経っただろう。
貴族のご令嬢って、お茶会や夜会に出る時は、毎回こんなに大変なの……と。
自分のために、ここまで手間を掛けてくれている人達に気付かれぬよう、リデルはそっと息を吐いた。
それでも、確実に自分が美しく磨かれているのは実感出来て、彼女の心を躍らせた。
エルザによる髪のセットとお化粧が終わり、レイカ担当のフィッティングが始まる前に、お花摘みと水分は取ったが、それ以降は何もせずに、ドレスを着付けて貰い。
指示されるままに、あちらを向き、こちらを向き、立つ、座る、腕を上げて上体を伸ばす、など。
そんな動きを繰り返して、つままれ、縫い直されて。
あらゆる角度から着付け具合を、周囲を囲んだ3人から何度も確認されて。
「はい。お疲れさま」と仕上がりに満足そうなレイカに声をかけられて、ここまでの工程が終了した。
その時間と労力をかけたリデルの姿は、ようやく入室を許された父の
「え、え、リデルが、お前……それ……」と口ごもった反応が、普段のデイヴを知る本邸勤務の彼女達に笑われたことで、それまで鏡をちゃんと見れていなかったリデルにも知ることが出来た。
その笑いと、やり遂げた達成感が落ち着いた頃。
エラが小さな箱をリデルに差し出した。
「最後の仕上げは、これを髪に飾るの」
ドレスだけではなく、靴もコートもエラは借りてきてくれた。
エルザの手で複雑にピンで止められ綺麗に結い上げられた髪は、それだけで充分だったのに、髪飾りまで。
どこまでエラは、わたしに……と泣きそうになりながら、それを受け取れば。
それは伯爵家本邸にしか咲かない白いビオラ。
決して、使用人のエルザやエラが主に黙って勝手に持ち出すことは許されない。
リデルは唇を噛んで、その花弁にそっと触れた。
この白い花に触れるのは、何年ぶりだろう。
……わたしの隣に居て、似合うと言って、髪に挿してくれた彼は。
「それはね、表立っては渡せないひとからのリデルへのプレゼント。
……受け取ってあげてくれる?」
リデルは黙って頷き、鏡の前に座り。
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