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月が輝く夜でした
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夜会から2日が経ちました。
今日の午前中なら我が伯爵家で会えると、私はノーマン様に
連絡致しました。
朝からお天気が良かったので、春のお花を愛でながら話を聞くのも
いいかもと、庭にテーブルを用意して貰いました。
ノーマン様にこちらに来ていただくことを提案されたのは
エドガー様でした。
「お父上にご了解をいただけたらだが、邸で会ったほうがいい。
皆の目が届く所ならあいつも無茶は出来ない。」
私も、ふたりで公園やカフェで会うのは…と思っていました。
お父様にその事をお話しすると、難しいお顔をされながらも
『エドガー殿が承知されているのならいいだろう』と
ご了承してくださったのでした。
ギリアンは会う事自体納得出来ない様子でしたが、やはり彼も
『エドガー様がいいのなら』と言うので、ふたりとも私より
エドガー様の言うことを優先されるのねと、思いました。
ですが、それは決して私を嫌な気持ちにするものではなく、
エドガー様が私の大切な家族に受け入れられているのですから、
とても喜ばしい事です。
明後日の朝早くに、帝国使節団は帰国することになっていました。
私は今日の昼食後王宮に戻り、夜は送別の晩餐会に出席します。
約束の時間を過ぎても、ノーマン様はいらっしゃいません。
あの御方に割ける時間は、今日の午前中しかありませんでした。
(また嘘を吐かれたのかしら?)
予定の空いたこの時間で、私は夜会の始まる前、皇太子殿下から
告げられた3年前の真実を思い返していました。
「俺は君をテストしていたんだ。」
「何のテストですか?」
王女殿下との顔合わせを無事に済ませ、来年の御興入り後は
お側に付かせていただくことに決定しました。
「3人だけのお茶会だよ、君に色々話したね。」
「…」
「結構、きつい話も聞かせた。
本当は君は聞きたくもなかったと知っていたけれど。」
「ご存じでしたか?」
「俺の言葉を聞き逃していないか、その言葉から物事を
考えようとするかを確認していた。
人の話をもらさず聞けるかどうかが、俺の目安だったから。」
魅了や真実の愛や、それを巡るそれぞれの思惑など、
殿下は私に聞かせながら、その反応を確認されていた、
ということなのでしょう。
「俺の目から見て君なら大丈夫だと判断して、母上に
皇太子妃の戦力になるよう育てて欲しいとお願いした。」
王家と皇家、どちらも表には出せない、それを
『たかが伯爵家の娘』にお話になった理由。
それは。メイベル殿下の為。
おひとりで王国からダミアン殿下の元に嫁がれ、皇宮で戦う
王女殿下の為。
「気を悪くしたかな?」
「とんでもございません。
ご信頼をいただけたという事と受け取らせて
いただきました。」
当時、エドガー様からは
『殿下が気に入られたから』と漠然とした応えを聞いて
おりましたが、どこか納得出来ていませんでした。
殿下の赤い瞳は、それだけではない御方である事を知らせて
いました。
「女性の世界は、俺やエドガーも手出し出来ない。
君なら大丈夫だと母上も言っている。
メイベルをしっかり支えてくれ。」
「謹んでお請け致します。」
私は殿下に、最上級のカーテシーを披露しました。
◇◇◇
「おはよう、ロティ。
あいつは来ていない?」
私の頬にくちづけを落としながら、エドガー様は尋ねられました。
我が家での昼食を約束していました。
ノーマン様の事を心配して、早めに来てくださったのでしょう。
エドガー様が向かいの席に座られました。
目の前のティーカップは伏せられています。
「あいつが来たら、席は外すよ。」
「来られても時間切れです。
帰っていただきます。」
「せっかく貰ったチャンスだったのに、馬鹿だな。」
いつもはノーマン様に対して辛辣な印象でしたのに。
今日のエドガー様の口調は、優しい感じを受けました。
私はお砂糖の数をお聞きしながら、尋ねました。
「こちらでのお仕事は全部お済みになりましたの?」
口に含んだ紅茶を飲み下してから、エドガー様は答えられました。
「昨夜は予定していたよりは時間がかかってしまったけれど、
全て完了したよ。」
「お疲れ様でした。
では王宮に戻る前に寄りたい所がありますの。
お付き合いしてくださいますか?」
「君のお望みのままに。」
エドガー様は頷かれ、微笑んでくださいました。
「ロティ、君の方は?
彼と話せた?」
エドガー様が仰った彼と言うのは、ギリアンの事です。
今回の帰国の個人的な目的は、ギリアンに謝罪する事でした。
◇◇◇
私はギリアンに謝りたかったのです。
『貴方の夢を奪ってごめんなさい』と。
ギリアンの夢は薬師となり、実家から独立する事。
それなのにエドガー様に嫁ぐ私の代わりに、ガルテン伯爵家と
養子縁組してくれました。
ガルテン領を治めながら薬師になる事は無理です。
ひとり娘なのに、自分の我を通してしまった事がとても心苦しくて。
昨日の夕食後話せるのは今しかないと、私室へ戻ろうとしたギリアンに
声をかけました。
すると、彼は遊戯室で話しましょうと、メイドに蜂蜜入りの紅茶を
運ぶよう頼んでくれました。
謝罪する私にギリアンは小さく手を振りました。
「とんでもない。
ガルテンを継げて、私の夢は前進したのです。」
「貴方の夢は薬師になる事でしょう?」
「一薬師では叶えられなかった事が伯爵になる事で叶うのです。
伯爵家が持つ金と人脈です。」
金と人脈。
ギリアンの口から彼には似合わない言葉が出たので、私は驚きました。
「ガルテンには、他領には存在しない薬草が自生している事を
ご存知ですか?
それも多種類の薬草ですよ!」
ギリアンは珍しくにっこりとしました。
その笑顔は、いつも大人びた微笑みしかしない彼が初めて見せる
ものでした。
「ごめんなさい。
領地内の事はある程度勉強したのだけれど、植物には疎くて。」
「謝らないでください。
私が薬師に興味を持ったのは、そのガルテンにしか群生していない
薬草を知った事からです!」
ガルテンの薬草?
私の脳裏に、以前エドガー様から聞いたお話が浮かびました。
「小さな頃から、私はガルテン領に呼んでいただいても、
スカーレットや義姉上と一緒に遊ぶのは苦手だった。
それでよく1人で、館の森や庭を散策していたんです。」
こんなにニコニコして話してくれるギリアンは初めてです。
上機嫌なギリアンの話によると。
いつもの様に森へ行ったら、初めて見る虫がいて足を刺されて
しまったそうです。
みるみる間に、傷口が熱を持って腫れてきて、動けなくなった
ところを、館の庭師が発見してくれて。
『その虫でしたら、これを飲んでみてください』と、渡されて飲んだ
煎じ薬は苦くてたまらなかったけれど暫くすると、熱や腫れも沈静化
したそうです。
『昔からこのガルテンでは、怪我や病気を草で治すのですよ』
誇らしげな庭師にそう言われて、それ以降こちらの領に遊びに来ると
庭師を捕まえて、色々教えて貰ったりしていたのだとか。
そういえば昔から彼はいつも庭で庭師と話し込んでいました。
「民間療法と言われている治療です。
領内のそれぞれの家に昔から口頭でのみ伝わっていて、
煎じたり、すり潰して布に塗り傷口に貼ったりします。」
「私そんな治療受けた覚えがないのだけれど。」
「医師や薬師に診てもらうのは、高額ですからね。
領民にはなかなか…。」
一度は自分が、と思っていたのに私は知りませんでした。
「勿論、義父上はそれをご存知ですが、商売にする気は
なかったらしくて。」
(お父様がご存じのお茶、これって…!)
この事に間違いないと思いました。
「その煎じた薬は、例えば気鬱の病に効いたりするのかしら?」
「気鬱の病に、ですか?」
急に前のめりになった私に、ギリアンが驚いていました。
「気鬱の病の原因は様々だ、と聞いております。
環境の変化や人間関係等、外的要因から睡眠不足、食欲不振…
煎じ薬で効果があったのなら、睡眠不足の改善ではないでしょうか。」
「確かに睡眠は大事ね。
けれど、それだけで気鬱が解消される?」
「患者のおかれていた状況やどの薬草を使われたのかが、
わからないので、何とも断言は出来ませんが、
充分睡眠が取れれば、精神的に安定して蓄積された疲労は
回復するだろうと思います。
就寝前のお茶として飲むことで、手足の冷え等にも効く
でしょうね。」
「…」
「義姉上、続きを話しても?」
「ご、ごめんなさい、貴方はその薬草を使って?」
「そうです。
資金と時間はかかります。
簡単な道のりではありません。
ですが、将来的にその投資は何倍にも成って還って来ます。」
「…」
「自然に群生している植物の環境を整え、供給量を安定させます。
研究者を集め、資金提供します。
彼らは資金を止められる心配をする必要はなく、成果を
急がされる事もない。
安全な薬を開発し、伯爵家で販売ルートを開拓します。
安価で平民にも手に入る薬です。
義兄上にもご協力を取り付けました。
義父上には年間試算表を見せて、ご了承いただきました。」
スカーレットの旦那様のヒューバート様の家門はお医者様の家系です。
お父様も了承されていると、聞いて安心しました。
ギリアンが語る夢は、彼だけの夢物語でなくなる、私は確信しました。
「明日、エドガー様にこの話をしてもいいかしら?」
勿論、と義弟が頷いてくれました。
「私、蜂蜜入りの紅茶が大好きなの。」
「子供の頃から知っています…。」
そう言いながら、ギリアンは遊戯室の大きな窓を開きました。
少し肌寒い春の夜風が庭から花の香りを運んできました。
星は見えませんでしたが、月が輝く夜でした。
今日の午前中なら我が伯爵家で会えると、私はノーマン様に
連絡致しました。
朝からお天気が良かったので、春のお花を愛でながら話を聞くのも
いいかもと、庭にテーブルを用意して貰いました。
ノーマン様にこちらに来ていただくことを提案されたのは
エドガー様でした。
「お父上にご了解をいただけたらだが、邸で会ったほうがいい。
皆の目が届く所ならあいつも無茶は出来ない。」
私も、ふたりで公園やカフェで会うのは…と思っていました。
お父様にその事をお話しすると、難しいお顔をされながらも
『エドガー殿が承知されているのならいいだろう』と
ご了承してくださったのでした。
ギリアンは会う事自体納得出来ない様子でしたが、やはり彼も
『エドガー様がいいのなら』と言うので、ふたりとも私より
エドガー様の言うことを優先されるのねと、思いました。
ですが、それは決して私を嫌な気持ちにするものではなく、
エドガー様が私の大切な家族に受け入れられているのですから、
とても喜ばしい事です。
明後日の朝早くに、帝国使節団は帰国することになっていました。
私は今日の昼食後王宮に戻り、夜は送別の晩餐会に出席します。
約束の時間を過ぎても、ノーマン様はいらっしゃいません。
あの御方に割ける時間は、今日の午前中しかありませんでした。
(また嘘を吐かれたのかしら?)
予定の空いたこの時間で、私は夜会の始まる前、皇太子殿下から
告げられた3年前の真実を思い返していました。
「俺は君をテストしていたんだ。」
「何のテストですか?」
王女殿下との顔合わせを無事に済ませ、来年の御興入り後は
お側に付かせていただくことに決定しました。
「3人だけのお茶会だよ、君に色々話したね。」
「…」
「結構、きつい話も聞かせた。
本当は君は聞きたくもなかったと知っていたけれど。」
「ご存じでしたか?」
「俺の言葉を聞き逃していないか、その言葉から物事を
考えようとするかを確認していた。
人の話をもらさず聞けるかどうかが、俺の目安だったから。」
魅了や真実の愛や、それを巡るそれぞれの思惑など、
殿下は私に聞かせながら、その反応を確認されていた、
ということなのでしょう。
「俺の目から見て君なら大丈夫だと判断して、母上に
皇太子妃の戦力になるよう育てて欲しいとお願いした。」
王家と皇家、どちらも表には出せない、それを
『たかが伯爵家の娘』にお話になった理由。
それは。メイベル殿下の為。
おひとりで王国からダミアン殿下の元に嫁がれ、皇宮で戦う
王女殿下の為。
「気を悪くしたかな?」
「とんでもございません。
ご信頼をいただけたという事と受け取らせて
いただきました。」
当時、エドガー様からは
『殿下が気に入られたから』と漠然とした応えを聞いて
おりましたが、どこか納得出来ていませんでした。
殿下の赤い瞳は、それだけではない御方である事を知らせて
いました。
「女性の世界は、俺やエドガーも手出し出来ない。
君なら大丈夫だと母上も言っている。
メイベルをしっかり支えてくれ。」
「謹んでお請け致します。」
私は殿下に、最上級のカーテシーを披露しました。
◇◇◇
「おはよう、ロティ。
あいつは来ていない?」
私の頬にくちづけを落としながら、エドガー様は尋ねられました。
我が家での昼食を約束していました。
ノーマン様の事を心配して、早めに来てくださったのでしょう。
エドガー様が向かいの席に座られました。
目の前のティーカップは伏せられています。
「あいつが来たら、席は外すよ。」
「来られても時間切れです。
帰っていただきます。」
「せっかく貰ったチャンスだったのに、馬鹿だな。」
いつもはノーマン様に対して辛辣な印象でしたのに。
今日のエドガー様の口調は、優しい感じを受けました。
私はお砂糖の数をお聞きしながら、尋ねました。
「こちらでのお仕事は全部お済みになりましたの?」
口に含んだ紅茶を飲み下してから、エドガー様は答えられました。
「昨夜は予定していたよりは時間がかかってしまったけれど、
全て完了したよ。」
「お疲れ様でした。
では王宮に戻る前に寄りたい所がありますの。
お付き合いしてくださいますか?」
「君のお望みのままに。」
エドガー様は頷かれ、微笑んでくださいました。
「ロティ、君の方は?
彼と話せた?」
エドガー様が仰った彼と言うのは、ギリアンの事です。
今回の帰国の個人的な目的は、ギリアンに謝罪する事でした。
◇◇◇
私はギリアンに謝りたかったのです。
『貴方の夢を奪ってごめんなさい』と。
ギリアンの夢は薬師となり、実家から独立する事。
それなのにエドガー様に嫁ぐ私の代わりに、ガルテン伯爵家と
養子縁組してくれました。
ガルテン領を治めながら薬師になる事は無理です。
ひとり娘なのに、自分の我を通してしまった事がとても心苦しくて。
昨日の夕食後話せるのは今しかないと、私室へ戻ろうとしたギリアンに
声をかけました。
すると、彼は遊戯室で話しましょうと、メイドに蜂蜜入りの紅茶を
運ぶよう頼んでくれました。
謝罪する私にギリアンは小さく手を振りました。
「とんでもない。
ガルテンを継げて、私の夢は前進したのです。」
「貴方の夢は薬師になる事でしょう?」
「一薬師では叶えられなかった事が伯爵になる事で叶うのです。
伯爵家が持つ金と人脈です。」
金と人脈。
ギリアンの口から彼には似合わない言葉が出たので、私は驚きました。
「ガルテンには、他領には存在しない薬草が自生している事を
ご存知ですか?
それも多種類の薬草ですよ!」
ギリアンは珍しくにっこりとしました。
その笑顔は、いつも大人びた微笑みしかしない彼が初めて見せる
ものでした。
「ごめんなさい。
領地内の事はある程度勉強したのだけれど、植物には疎くて。」
「謝らないでください。
私が薬師に興味を持ったのは、そのガルテンにしか群生していない
薬草を知った事からです!」
ガルテンの薬草?
私の脳裏に、以前エドガー様から聞いたお話が浮かびました。
「小さな頃から、私はガルテン領に呼んでいただいても、
スカーレットや義姉上と一緒に遊ぶのは苦手だった。
それでよく1人で、館の森や庭を散策していたんです。」
こんなにニコニコして話してくれるギリアンは初めてです。
上機嫌なギリアンの話によると。
いつもの様に森へ行ったら、初めて見る虫がいて足を刺されて
しまったそうです。
みるみる間に、傷口が熱を持って腫れてきて、動けなくなった
ところを、館の庭師が発見してくれて。
『その虫でしたら、これを飲んでみてください』と、渡されて飲んだ
煎じ薬は苦くてたまらなかったけれど暫くすると、熱や腫れも沈静化
したそうです。
『昔からこのガルテンでは、怪我や病気を草で治すのですよ』
誇らしげな庭師にそう言われて、それ以降こちらの領に遊びに来ると
庭師を捕まえて、色々教えて貰ったりしていたのだとか。
そういえば昔から彼はいつも庭で庭師と話し込んでいました。
「民間療法と言われている治療です。
領内のそれぞれの家に昔から口頭でのみ伝わっていて、
煎じたり、すり潰して布に塗り傷口に貼ったりします。」
「私そんな治療受けた覚えがないのだけれど。」
「医師や薬師に診てもらうのは、高額ですからね。
領民にはなかなか…。」
一度は自分が、と思っていたのに私は知りませんでした。
「勿論、義父上はそれをご存知ですが、商売にする気は
なかったらしくて。」
(お父様がご存じのお茶、これって…!)
この事に間違いないと思いました。
「その煎じた薬は、例えば気鬱の病に効いたりするのかしら?」
「気鬱の病に、ですか?」
急に前のめりになった私に、ギリアンが驚いていました。
「気鬱の病の原因は様々だ、と聞いております。
環境の変化や人間関係等、外的要因から睡眠不足、食欲不振…
煎じ薬で効果があったのなら、睡眠不足の改善ではないでしょうか。」
「確かに睡眠は大事ね。
けれど、それだけで気鬱が解消される?」
「患者のおかれていた状況やどの薬草を使われたのかが、
わからないので、何とも断言は出来ませんが、
充分睡眠が取れれば、精神的に安定して蓄積された疲労は
回復するだろうと思います。
就寝前のお茶として飲むことで、手足の冷え等にも効く
でしょうね。」
「…」
「義姉上、続きを話しても?」
「ご、ごめんなさい、貴方はその薬草を使って?」
「そうです。
資金と時間はかかります。
簡単な道のりではありません。
ですが、将来的にその投資は何倍にも成って還って来ます。」
「…」
「自然に群生している植物の環境を整え、供給量を安定させます。
研究者を集め、資金提供します。
彼らは資金を止められる心配をする必要はなく、成果を
急がされる事もない。
安全な薬を開発し、伯爵家で販売ルートを開拓します。
安価で平民にも手に入る薬です。
義兄上にもご協力を取り付けました。
義父上には年間試算表を見せて、ご了承いただきました。」
スカーレットの旦那様のヒューバート様の家門はお医者様の家系です。
お父様も了承されていると、聞いて安心しました。
ギリアンが語る夢は、彼だけの夢物語でなくなる、私は確信しました。
「明日、エドガー様にこの話をしてもいいかしら?」
勿論、と義弟が頷いてくれました。
「私、蜂蜜入りの紅茶が大好きなの。」
「子供の頃から知っています…。」
そう言いながら、ギリアンは遊戯室の大きな窓を開きました。
少し肌寒い春の夜風が庭から花の香りを運んできました。
星は見えませんでしたが、月が輝く夜でした。
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