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やっと気付いたかも
しおりを挟むまっすぐな眼差しで俺を見下ろす圭一郎。
「俺、そいつの気持ちが何となく理解できる気がするよ。」
「え?」
「多分さ、焦ったんだよ。二年になってクラスが離れて新しい友達が増えただけじゃなくて彼女までできたんだよ。」
「でも、だからって別れさせるとか、急にキスするとか…」
「うん。もちろん、やり方は全然だめだよ。間違ってる。・・・でもね。そんな事をしてでも引き離してしまいたいほどに直樹の事を好きになってしまったんじゃないかな。」
クラスが離れて、彼女が出来たって報告をした時に寂しそうな顔をしていたのは、ただ単純に友達と離れて寂しいからだと思ってたけど、それは半分正解で半分間違ってたって事か。
あーあれか。圭一郎が急に女子と昼に過ごすようになって寂しく感じたのと同じなのか。あんな感じか。・・・いや、違うか。だって圭一郎は友達だもんな。でも、今までだってそんな事は沢山あったのに今回は心臓がギュッてなるくらい寂しかったな。
あれ、なんで圭一郎の事を考えてるんだ。今の問題は聡だ。
「どうした?直樹。」
「あ、いや。ちょっと待って頭を整理してるから。」
確かにこいつの事は何となく特別に感じてる。かと言って他の友達がこいつに劣るわけではない。皆大切な友達だ。こいつには俺の弱い部分を見せたから何となく特別に思ってるのかもしれない。だってあんな泣いたところを見せたら、俺の中に隠すものなんてもう無いもんな。でもだからって、順一達に弱みを見られたくない訳でもないしな。
―――この気持ちって本当、何なんだろうな。
「直樹・・・・そんなに見つめないで・・・」
あ、やべ。見すぎた。
「そういえば、聡の気持ちが分かるってことは、圭一郎も今はそんな恋をしてるのか?本気なんだろ?今の好きな人には。」
圭一郎も苦しい恋をすることがあるんだな。それだけ本気なのか。
本当、羨ましいな。って違うか。今は聡の事を考えないといけないんだ。本当になんで圭一郎の事を考えてるんだよ俺。
「直樹は・・・その相手が誰なのか知りたい?」
知りたいか?いや、知りたくないか?知ったところで何もしてやれないし。
「ん・・・知りたくない?・・・かな。いや、知りたいか?」
「ふふっ。何それ。」
「だって皆に言わなかったって事は言いたくないんだろ?無理に言わなくてもいいよ。」
「俺、直樹に言ってもいいと思ってる。と言うか知っておいて欲しいと今思った。」
「ははっ。何だそれ。」
へらへら笑いながら圭一郎を見ると、俺に向けられているのは今までに見たことの無いような熱の籠った瞳だった。
もの凄い色気を放ちながら真っ直ぐに俺を見ている。
瞬間、心臓が握り潰されたかと思った。
俺はこんな圭一郎を知らない。何故か目が離せない。ちょっと待って。心臓がギュッてなる。やばい息が出来ない。なにその色気。なんか吸い込まれそう。
―――あ。好きかも。
「直樹。俺が好きなのはお前なんだ。」
その言葉が合図だったかのように、唇が重なった。
最初は触れるだけのキスを何度も・・・
「直樹。好きだ。俺のものになってよ。」
耳元で囁かれた甘い言葉が腰に響く。
何?こいつ俺のことが好きって言った?いつもの冗談か?
俺もこいつが好きだって思ってしまった。は?俺って圭一郎のこと好きだったの?
俺たち今キスしてるよな?結構ガッツリしちゃってるよな?
でも嫌じゃない。なんなら嬉しくも感じてる。それはこいつのことが好きだからか?
今まで考えた事の無かった展開に気持ちも思考も追いつかなくて、心臓が爆発するんじゃないかと思うくらいに高鳴っていく。
「あっ・・・。」
酸素が足りないような気がして口を薄く開けると、そこへ圭一郎の熱い舌が侵入して口内を犯していく。歯列を確かめるようになぞられ、上顎をこすられ絡みつく舌が気持ちよくてたまらない。
やべぇ・・・超きもちー。
「けぇいちろぉ・・・もっとして・・・。」
あ。
恥ずっ!俺なんて言った今。めっちゃ恥ずかしい。ヤバッ!
離れた唇が寂しく感じて考えるよりも言葉が先に出てしまった。しかも自分の声か?と思う程に甘ったるい声が出てしまった。羞恥で一瞬にして顔に熱が集まるのが分かったから急いで両手で顔を覆った。
「今の!無し!無しにして!」
「直樹。まじで可愛い。顔が真っ赤。はぁ~可愛すぎる。」
そんな圭一郎の言葉に益々赤くなる。あまりの恥ずかしさに顔を背けようとしたけど、圭一郎に阻止され、再び深い深いキスを受ける羽目になった。
気持ちよくて幸せで、思考もストップしてるし、只々圭一郎を感じる事しかできなくなった。
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