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圭一郎の回想 自覚と覚悟と目覚め
しおりを挟む体育祭の日以来、直樹は昼休みに俺の背中にもたれて昼寝をするのが習慣になった。
その日も背中にもたれかかった直樹を見て、友也たちが俺らのことを夫婦だの飼い主と猫だのイジりだして騒いでいた。話の流れが下ネタになっていった。でも、そんなのはいつもの事だし楽しく話していたのだが・・・。
直樹が俺の耳元で
「圭くん。優しくしてね。」
なんて、もの凄く色っぽい声で囁いてきた。
一瞬にしてバクバクと心臓が打ちだし、俺の下に組み敷かれよがっている直樹の姿を想像してしまい勃ちそうになった。
慌ててトイレに駆け込んだ。そして一発抜いてしまった。
出した後、大きな罪悪感と恐怖が襲ってきた。だって相手は男で、しかも友達だ。
その夜は、昼の欲情を否定したくて、女で抜こうとエロ動画を漁った。
けれど自分のを扱きながら画面を見ていたはずなのに、いつの間にか目を瞑り直樹の姿を思い浮かべる。あの白い肌、おんぶした時の体温、頬に触れた唇の感触、体育で着替える時に無防備に晒される華奢な上半身、そして色っぽい声。
俺の中にある『直樹コレクション』を全て引っ張り出し、想像の世界で直樹を抱き続けた。時には激しく、でも壊さないように優しく。
気が付いた時には、部屋のティッシュは空になっていた。
もうダメだ。俺は直樹に欲情する。好きになってしまった。
自分の気持ちに気が付くと同時に、その気持ちが怖くなった。
自分が男を好きになるなんて考えてもいなかったし、何よりこのまま直樹の傍にいると、いつか取り返しのつかない間違いを起こしてしまうんじゃないだろうか。
直樹は友達だ。男だ。俺は今まで女を好きだったじゃないか。男を好きになるなんてあり得ないだろ。この気持ちは勘違いかもしれない。
自覚した気持ちと、そんなはずないという葛藤と恐怖で心がどうにかなりそうだった。
そうだ!最近は近くに居過ぎたんだ。物理的に距離を置けば気持ちも落ち着くかもしれない。勘違いだったってなるかもしれない。
そう思い、次の日から休み時間は女子と過ごすようになった。
女子と過ごすのもそれなりに楽しかった。何も考えずに過ごせる。頭の片隅では教室の様子が気になってはいたものの、なるべく見ないように目の前の相手に集中するように過ごした。
何日も離れて過ごすようになると、やはり直樹への気持ちは薄れてきたように感じて、やっぱりあの時の感情は勘違いで一時的なものだったと安心した。俺は男が好きなわけでも、友達である直樹の事が好きな訳でもなかったんだ。凄く安心した。
その日は、三年の先輩に誘われて中庭で過ごしていた。
そういえば、ここから教室が見えるんだよな。
俺が居ない時、四人がどんな風に過ごしているのか気になって教室に目をやると、直樹が友也の背中に抱きついて、友也の顔が真っ赤に染まっている姿が見えた。
その姿が目に入って、状況を理解すると一瞬で頭に血が上った。
なんで友也に抱きついてるんだよ。俺の背中が好きなんじゃなかったのかよ。誰でもいいのかよ。そんな風に俺に抱きついてきた事なんてなかったろ?何で友也には抱きついてるんだよ。
俺以外の男に触られるなよ。俺じゃダメなのかよ。友也も何顔を赤くしてるんだよ。何気軽に直樹に触ってるんだよ!
――――俺から直樹を取らないでよ!
気付いた時には、先輩を放ったらかして教室に向かって走り出していた。
・・・俺ってバカだよな。直樹への気持ちが勘違いだなんて。それこそ勘違いだった。好きな気持ちが薄れたなんて、思い違いだったわ。ただ見ないようにしてただけだった。
今まで気持ちに無理に蓋をしていた分、反動で溢れかえってしまった。
あーーーー。
もう無理は止めよう。疲れた。
認めるしかない。その方が楽だ。
俺は、本気で直樹に恋をしている。
もう誰にキモイって思われてもいいや。
直樹と離れるくらいなら。
直樹と一緒に居れるなら。
俺の人生ヤバくなってもいいや。
自分の気持ちを受け止めて認めると、心が軽くなった。
単純な俺は、好きなら直樹の側にいればいいと思った。友達という立場を利用して好きなだけ側に居よう。
そう決めて、俺はまたみんなで過ごすようになった。
でも、決して本当の気持ちは知られてはいけない。誰にも悟られないように細心の注意を払う。
昼に背中にもたれてくる直樹が可愛い。
寝てるときに「んん・・・」と声を漏らす直樹が可愛い。
「危ないよ。」と適当な理由をつけて腕を前に誘導すると素直に従って抱き着いてくる直樹が愛おしい。
女の子に呼ばれて席を離れる俺を上目遣いで見てくる直樹に心が跳ねる。
まるで嫉妬しているみたいじゃないか!
お前も俺のことを好きなんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
絶対あり得ないけど。
直樹をとことん甘やかしたくなる。何でもしてあげたくなる。ずっと触れていたい。撫でまわしていたい。
気持ちを認めた瞬間から、直樹への愛が止まらなくなった。
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