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12月は恋の季節
しおりを挟むクリスマスまであと五日。学校中が浮足立っている今日この頃。
「なーおきっ!帰ろうぜ!」
「あ、圭一郎。今日お前んち行ってもいい?」
「もちろん。早く行こっ!」
二人で歩いて校門を出ようとした時、「野田先輩!」と圭一郎が呼び止められた。
振り返ると赤い顔をした女の子・・・。
・・・またかよ。
圭一郎は心配そうに俺を見るから「行ってこい」と背中を押した。
「絶対にすぐ戻ってくるから!必ず待ってて。一人でどっか行くなよ!」
「大丈夫だよ。この前約束したろ?待ってるから行ってこいよ。」
何とも言えない気持ちで二人の背中を見送る。
はぁ~。仕方ないけど、圭一郎は断って戻ってくることも分かってるけど、それでも嫌だなと思ってしまう。せめて俺の全く見てない所でやって欲しい。あと何回こんな気持ちになればいいんだろうな・・・ずっとか・・・。
――――ドカッ
「痛っ!」
ぼーっとしていたから誰かとぶつかってしまった。
「だ、大丈夫ですか?すみません。巻島先輩!」
「ん。ごめん。俺がぼっとしてたから・・・てか俺の名前知ってるの?」
「はい。知ってます。それより怪我はないですか?」
顔を上げると、デカいやつが心配そうに見ていた。
足がちょっと痛かったけど「大丈夫」と言って立ち上がった時、俺が顔を少ししかめたのに気付いたのだろう。
「先輩。足を痛めました?保健室に行きましょう。」
「えっ?いや、これくらい大丈夫だって。」
「いや、駄目です。」
そんなやり取りを数回続けていると後ろから声が掛かる。・・・ごんちゃんだ。
「うちの一年がすまない。どうかしたか?」
「主将。自分が巻島先輩とぶつかってしまって、先輩が足を痛めたので保健室に連れていきます。」
「大丈夫だって!マジで。そんなに痛くねえし。」
「・・・いや、保健室行った方がいいな。俺が連れていく。」
「えー。ごんちゃん俺大丈夫だぜ?」
その後すぐに、ごんちゃんが顧問に呼ばれてしまい、仕方なく後輩君と保健室にいく事になった。
「巻島先輩。失礼します。」
そういうと俺をヒョイッと抱え上げた。まさかの抱っこ!え、恥ずかしい。
「なぁ~俺歩けるけど?おろせよ~。何かイエティに連れ去られてる子供みたいだぜ?」
「はははっ!なんすかそれ!自分イエティすか?」
あ、笑った。
「俺、圭一郎と帰る約束してるんだよ。あそこに俺が居なかったら、あいつ心配するから保健室は行かなくていいよ。」
後輩君の腕に力が入ったのが分かった。
「圭一郎って、野田先輩の事ですか?」
「う、うん。そーだよ。」
「いいじゃないっすか!あの人さっき女子と歩いてましたよ。巻島先輩を待たせて女子の所に行くような人は放っておけばいいじゃないですか!」
ん?え?どうした?いや、さっきってあの告白の子のことだろ。知ってるよ、俺も一緒に居たんだから。後輩君、急にどうしたんだよ。
「自分、先輩の足が本当は保健室なんて行かなくても大丈夫な事分かってます。」
「ん?」
「チャンスだと思いました。」
「チャンス?なんの?」
これはもう、抱っこされてるというよりも抱きしめられているようだ。
「先輩。このまま聞いてください。自分・・・先輩のことが好きです。」
「・・・え?・・・好きって?」
「キスしたり抱きたいと思うような『好き』です。気持ち悪いと思いますか?」
顔を見ると、真剣で真っすぐな目を向けられている。・・・これは本気のやつだ。
「ちょっと。一回離してくれる?」
そういうと素直に離してくれた後輩君と少し距離をとり向かい合う。
「えっと、名前は?」
「近江です。」
「・・・近江君。気持ち悪いなんて思わねえよ。でも俺には好きな人が居るから、近江君の気持ちには応えられないんだ。ごめんね。」
「そう・・・すか。そう・・・すよね。」
「うん。でも好きになってくれてありがとうね。」
「先輩、その人と付き合ってるんですか?」
「うん。そうだよ。」
「じゃあ、あれは本当だったんですね・・・・。」
「ん?あれって?」
「ちょっと前に、うちの主将・・・えっと・・・」
「ごんちゃんのこと?」
「はい。主将が元気がない日があったんです。部のみんなが心配して何があったのか聞いたんです。」
「うん?」
「そしたら・・・巻島先輩の身体中にキ、キスマークがあったって・・・」
ご!ごんちゃん!!!何言っちゃってんの!?
「しかも、キスマークだけじゃなくて・・・歯形が・・・」
ごんちゃーーーーーーーん!!!!
あれだろ?あの時だよな。やっぱり見られてたのか!なんで部活で後輩にまで話してるんだよ。
「あーーー。それは・・・忘れて欲しい。」
「無理っす。でも、先輩。話を聞いてもらって有難うございました。部に戻ります。失礼します。」
「おー。部活がんばれよー!」
はぁー。精神的ダメージが半端ないな、これ。
・・・告白かぁ~。12月ってすげーな。恋の季節だな。
圭一郎は終わったかな。早く顔見たいな。
でもまさか、この出来事が初めてのケンカの原因になるとは思っても無かった。
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