単純な俺たちのありふれた恋の話

みーくん

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気持ちは疑わないでよ

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「直樹!」



 告白から帰ってきた圭一郎は、すごく不機嫌な顔をしている。



「圭一郎?どうしたんだ?何かあったのか?」



・・・・。



 帰るぞと言って俺の顔を振り返ることもせずに歩きだす。

訳が分からない俺は後ろを歩き無言で圭一郎の家に向かった。



 部屋に入っても、無言で怖い顔をしている圭一郎に、もう一度疑問を投げかける。



「なあ、圭一郎。なんかあったのか?」

「なんかあったのはお前だろ?一年の奴に抱きしめられてたんだって?」



 あー。さっきの事か。別に抱きしめられてたわけじゃねえよ。



「ちがう。」

「何が違うんだよ。見てたやつがいるんだよ。」



 圭一郎に誤解して欲しくなくて、ぶつかって足を痛めたと思われ保健室に連れていかれそうになった事も、その流れで後輩に告白された事も全て話した。



「は?結局は告白されてんじゃねーか。それで直樹は嬉しかったの?」

「・・・は?嬉しいわけねえだろ。俺にはお前が居るんだから。」

「直樹ってさ、隙がありすぎるよね。」

「隙ってなんだよ。」

「聡ってやつの時だってそうだよ。お前本当はあいつの気持ちに気付いてたんじゃねーの?」

「は?!何だよそれ!」

「そうやってさ、ニコニコしてさ、無駄に愛想振り撒いてるから色んな奴に好かれるんだよ。それとも好かれたいからニコニコしてんのか?」



――――は?こいつ何言ってんだ?意味わかんねえよ。



「俺が笑わなければ満足なのかよ。」

「そんな事言ってねーよ。無駄に愛想振り撒くなって言ってんだよ。俺だけじゃ満足できねえのかよ。」

「圭一郎・・・お前意味わかんねえぞ。マジで何言ってんの?」



「直樹・・・お前、本当に俺の事好きなの?」



――――あ。ダメだ。俺の気持ちまで疑われたら・・・



 今は離れるべきだ。お互いに冷静になる時間が必要だ。怒りを通り越して悲しい。



「圭一郎。俺もお前が告白をされる度に心臓がギュッてなるよ。・・・もう何回、そんな思いをしたと思ってる?でも、お前の気持ちを疑ったことは無かったよ。



・・・今日は帰るわ。」



 部屋を出る前に、これだけは言っておこう。







「俺、圭一郎のこと、本当に大好きだよ。誰よりも大切だよ。」







 ドアを閉めて一人で家に帰った。





 世間はクリスマス気分で浮かれてんのに、どうしてこうなったかな。



 これが初めてのケンカだな・・・付き合う前からケンカなんてした事なかったからな。



 自分の部屋に入ると、どっと疲れが襲ってきた。



 携帯を取り出し確認すると、メッセージが二件。だけど圭一郎じゃない。

一件は親から。父親の会社の上司に誘われて旅行にいくから二日間家を空けるらしい。

仕事はどーしたよ!

そしてもう一件は兄ちゃんから。親が居ないのを良い事に、友達の家に泊まりに行くらしい。

姉ちゃんは既に結婚して家にはいないから、今日はこの家に俺一人だ。



 俺も、ケンカさえしていなければ圭一郎と一緒に居れたのにな。



 本当は今すぐにでも、圭一郎の家にもう一度行って仲直りしたい。こんなモヤモヤした気持ちに長い間耐えられる自信がない。



 でも、圭一郎の怒りがどうやったら収まるのか、正直分からない。だから、一人で考えるしかない。



 リビングに行くと、親からの置手紙とお金が置いてあった。

とりあえず、夜飯を買いにコンビニでも行くか。それから考えよう。



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