単純な俺たちのありふれた恋の話

みーくん

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応援できるか否かの境界線

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 一月ももうすぐ終わりを告げようとしている今日、圭一郎の委員会が終わるのを一人教室で待っている。



「あれ?まっきー?」



 声を掛けてきたのは、クラスの女の子の今井 咲いまい さきちゃんだ。この子は俺の事を『まっきー』と呼んでいる。



「あれ?咲ちゃん。どーした?忘れ物?」

「そ。筆箱忘れた。まっきー何してんの?」

「圭一郎待ってる。」

「まっきーと野田君って、本当に仲良しだよね。」

「うん・・・羨ましいだろ?」

「ははっ!何それ。別に羨ましくないし!あっでも。」

「ん?でも何?」



「ねえ、まっきー。ちょっと相談いい?」

「ん?何?」



 なーんか嫌な予感がする。まさか・・・



「私さ、好きな人が居るんだ。」



 ほら、やっぱり。・・・勘弁してくれ。応援なんて出来ない。



「そんなん俺に言っていいわけ?」

「まっきーなら大丈夫。信頼してるし!」

「ふーん・・・・で??相談って?」





「私さ・・・友也くんの事が好きなんだよね。」





 そっちか!!!焦ったわ!!良かった、圭一郎じゃなくて!

それなら応援出来るよ!いくらでも応援するよ!!



「友也くんって、今彼女いる?」

「いや、居ないよ。」

「好きな人は?」

「うーん。本当はどうか分からないけど、俺達に言ってこないって事はいないんじゃないかな。」



 友也は常に「彼女ほし―」って言ってるし、好きな人が出来ると直ぐに報告してくるヤツだ。今は何も聞いてないから、おそらく居ないのだろう。



「そっか・・・。でも、好きな人いないって事は、私の事も何とも思ってないってことだよね。」

「んーーー。そうかもしれないけど、今から好きにさせることはできるんじゃね?」

「うーん。でもどうすればいいかな。」



どうすれば・・・か。友也のタイプって、そう言えば聞いたことないな。



「友也がどんな子を好きなのか、俺も詳しくは知らねーけど・・・取り敢えず、積極的に話しかけてみれば?・・・あいつ今流行ってるあの漫画にハマってるぞ。何だっけ・・・ほら。」

「あー。『サラマンダーの進撃』?」

「そうそう、それ!」

「それなら私も読んでる。」

「おっ。共通点見つけたな!」



 その時、教室のドアが勢いよく開き怖い顔の圭一郎が大股で近づいてきて、俺の腕を引っ張った。



「直樹。今井さんと楽しそうに何話してるの?」



 あ、こいつ勘違いして嫉妬してるな。



「野田君。ごめん!私が相談にのってもらってたの。」

「今井さんごめん。直樹を返してもらっていい?」

「おいおい、圭一郎。少し落ち着け。」

「野田君って、まっきーの彼氏みたーい。」

「そうだよ。」



「「え?」」



おい、圭一郎。冷静になれ!何を言っているんだ。咲ちゃんが固まってるじゃないか!



「俺、直樹のこと好きだから。直樹を返してもらうね。」



「えーっと・・・圭一郎?・・・ちょーっと落ち着いてみようか?」

「・・・あ。ごめん。俺言っちゃった。」

「う・・・ん。言っちゃったな。誤魔化せない程度に。」



「えっ!?二人って・・・そうなの?そういう関係なの?」

「咲ちゃん。ごめんね。キモイかもしれないけど・・・内緒にしてて。」

「まっきー大丈夫。私、キモイなんて思ってないよ。ビックリしただけ。」

「うん。」

「本当、ビックリしただけだからね。心配しないで!」

「うん。ごめんね。」

「まっきーが謝る必要ないでしょ!私、まっきーの事、本当に友達だと思ってるからね。」

「うん。ありがとう!」

「絶対に言わないから、その代わりに応援しててね!私の事!!」

「そんなの、そんな条件無くても応援するし!」



「今井さん、ありがとう。ごめんね。」

「いいよ。私さ、友也君のことが好きなんだ。それでまっきーに相談してたの。」

「えっ!!友也か!!そうか、いいね。応援する。」

「うん。ありがとー!」



「じゃあ、咲ちゃん。俺ら帰るわ。明日から積極的に攻めろよ!」

「了解!頑張る!!じゃあね!!」



 友也に春が訪れる日も、そう遠くはないのかもしれないな。





 俺たちは、途中のコンビニで買った肉まんを半分こして食べながら帰っている。



「なあ、圭一郎。さっきのは流石にマズいぞ。」

「そうだな。ごめん。」

「相手が咲ちゃんで良かったな。」

「うん。」



「俺さ、圭一郎が嫉妬してくれるの嫌じゃないんだ。」

「え?そうなの?」

「うん。それだけ俺の事を思ってくれてる証拠みたいなもんだから。」

「直樹の事が好きすぎて暴走する。」

「うん。でもさ、せめて高校だけでも平和にすごしたいじゃん?」

「そうだな。」



「でもさ。俺も圭一郎のこと好きだし誰にも取られたくないから、気持ちの中ではバレるならバレても良いとは・・・思ってるよ。」



 圭一郎は俺の言った言葉に、凄く嬉しそうな笑顔を見せた。



 そうなんだよ。俺だって本当は皆に『圭一郎は俺のだ』と大声で叫びたいんだ。

でも、圭一郎と一緒に高校生活を満喫したいから我慢してるんだよ。



「肉まん、半分じゃ足りなかったな。」

「圭一郎が半分こしたいなんて乙女みたいなこと言うからだろ。」

「だって、直樹とやりたい事リストの一つだったんだよ。」

「何だよそのリスト・・・・今度見せてみろよ!!」

「えっ嫌だよ。恥ずかしいだろ。」





「全部、叶えてやるよ。」





「なおきぃぃぃぃ!」



「うわっ!外で抱きつくな!!」



 圭一郎の願いは何だって叶えてやりたいよ。些細な事でも。



 これからも圭一郎と変わらず過ごしていけることと、咲ちゃんの恋が実る事を願いながら帰った町並みは、バレンタイン色に染まり始めていた。


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