単純な俺たちのありふれた恋の話

みーくん

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おまけの生徒会副会長くん

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 僕は嫌いな奴がいる。



――――巻島 直樹



 こいつの事が嫌いだ。

 会長の心を掴んで離さない巻島直樹が嫌いだ。



 会長は僕の憧れの存在だ。会長という人間を尊敬している。

そんな会長が巻島直樹の事を話すたびに、僕の心はどす黒い感情で埋め尽くされる。



 あいつは会長に気にかけてもらうような奴ではないはずだ。

確かに、顔は可愛いかもしれない。しかし、成績だって真ん中より少し上程度だ。髪の毛は茶色いしピアスもしている。友達に囲まれてヘラヘラしている。僕にはそんな笑顔を向けないくせに。



 そんなチャラチャラしている奴が何故、会長に気に入られているんだ。



 本当に、イライラする。

登校時、廊下、休み時間、下校時・・・

僕の視界に入り込んでくる巻島直樹が嫌いだ。



 あれは11月頃だったか・・・放課後の校内見回りをしている時、いつも使われていない空き教室から男子生徒の声がしたのでそっと覗いてみた。そこには、巻島直樹ともう一人の姿があった。

僕は思わず聞き耳を立てた。どうせ碌な話をしていないのだろう。なにかあったら会長に言いつけてやろうと思ったんだ。



 驚いたことに、もう一人の男子生徒が巻島直樹に告白をしていた。僕は衝撃を受けた。しかも、巻島直樹は驚くほどに誠実に相手を気遣いながら返事をしていた。もっとチャラチャラした奴かと思っていたのに・・・



 僕はイライラした。もっと最低な奴であって欲しかった。

 そんなんじゃ、会長の心から消えてくれないじゃないか。



 それから何日も経ったある日、僕がポスターを掲示板に貼っていると巻島直樹が歩いてきた。

あいつの事は嫌いだから、遠くからでもわかる。声だけでもわかってしまう。

本当にイライラする。



 後ろを通り過ぎる巻島直樹が僕の背中にぶつかった。その拍子に、僕は画鋲で指を刺してしまったんだ。それを見た巻島直樹は、



「うわっ!ごめん!!あっ血が出てる!保健室行こう!」



と言って、僕の怪我をしていない方の手を握り歩き出した。



 イライラする。こんな怪我なんて放っておけば治るんだ。僕の手を握らないでくれ。そんな心配そうに見ないでくれ!イライラしすぎて心臓が痛いんだ。



―――僕はお前のことが嫌いなんだ。



 その日の生徒会室でも、会長は巻島直樹の事を話していた。友達思いで誰にでも優しい奴だと言っている時の会長は、とても優しい顔をしている。



 会長にそんな表情をさせるあいつが嫌いだ。

あいつが優しい事はもう知っているが、会長の口からは聞きたくない。

僕の指を手当してくれたあいつの優しさが僕だけのものではないことも知っている。

誰にでも優しい。

イライラする。



 会長に思い切って、巻島直樹の事が恋愛的に好きなのかを聞いてみた。



「いや、違うよ。友達としてすごく好きなんだよ。俺、彼女いるしね。」



 その言葉に酷く安心した。

会長は、ただ友達として巻島直樹を好きだったんだ。

恋愛感情で好きな訳ではなかった。

これで、とられなくて済む。



あいつが皆に向ける笑顔が嫌いだ。

誰にでも手を差し伸べる優しさが嫌いだ。

いつも隣にいる野田圭一郎が嫌いだ。

僕の名前すら知らないあいつが嫌いだ。



僕の心に棲みついて離れない



巻島直樹が大嫌いだ。


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