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第四話 コバルトブルーのピアス
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「あ、ま……せんぱ、そこ、……」
「どこ?……ここ、弱い?」
股間に顔を埋めて俺に奉仕していたその人は、亀頭の括れ付近にこびり付いた恥垢を俺に見せ付ける様にしてべろりと綺麗に舐めとると、尿道に向けて割って入っている裏筋を舌先でひっきりなしにあやし、竿の根本を扱きながら、潤んだ上目遣いで俺を見上げた。そんなばっちい物を口にするなんて信じられない、とがつんと頭を殴打されんばかりの衝撃の後、くわんくわんと頭が揺さ振られたけれど、自分の見慣れたワンルームに漂う淫猥な空気と、憧れ続けてきた先輩の開花された色気に圧倒され、言葉を無くして只管に頷くしかなかった。
安物のベッドの下にはさっきまで一緒に飲んでいた発泡酒の空き缶が転がっていて、テーブルの上には骨だけ残されたチキンの空き箱と、バイト先で売り上げに貢献したボルシチのカップと、二人で作ったポテトサラダが少量だけ無地の皿の上に食べ残されていた。未来先輩も、ポテトサラダには林檎を入れない派らしく、小さな共通点を見つけた俺は、少しだけ浮き足立った。こんな小さな喜びを積み重ねていくこれからを、どんな気持ちで受け止めていけばいいのか、正直まだ全然分からない。
「だめ、ですよ、やっぱり。俺達、付き合って、ないし……こんなの」
「クリスマス当日に、友達との約束蹴ってきた僕みたいな薄情者に、まだそんな話するの?……ふふ、本当に酷いやつ」
「なんで……笑うの」
俺のジーンズのジッパーを慣れた手付きで下げて、安酒の匂いぷんぷんさせながら、ねっとりしたキスを仕掛けて。突然の流れに目を白黒させて、前にも後にも動けずにキスを受け入れるのに必死な俺を、そのままベッドに押し倒して。キスだけでビンビンになっちゃった恥ずかしい俺のちんこに、妖しく目を光らせながらむしゃぶりついて。バイト終わりですぐに飲み始めたから、シャワーだってまだなのに。全然気にしてないみたいに。汚いよ、辞めてよ、恥ずかしい。匂いとか、汚れとか、なんで気にしないの。変態だったんだ、先輩。知らなかった、凄いショックだ。なのになんで、俺こんなに、興奮してるの。嬉しいとか思っちゃうの。分かんないよ、分かんない。涙出てきた。頭ぐちゃぐちゃで、意味分かんなくて。意味分かんないくらい、気持ち良い。だけど、悲しい。
あなた、なんでこんなに、慣れてるの。
「ん、……あ、ぁ、……駄目、でる、ほんとに、でる、から……」
「かわい……ねぇ、顔に掛ける?それとも口が良い?……好きにして良いよ」
どこの馬鈴薯としたの。その、クリスマス当日に蹴ったっていう友達?あなた、そいつに仕込まれたの?だから、こんなにエロい人になっちゃったの?太陽みたいに笑う、日焼けが似合う、明るくて、優しくて、一緒にいるだけで楽しくて、胸がドキドキした、純粋をそのまま形にした様なあなたは、どこにいるの。綺麗で、ぴかぴかしてて、だから触れなくて、俺の聖域で。ねぇ、あの時付けてたピアスは、今どこにあるの。相棒みたいに、いつも付けてた、あなたのシンボル。あれは、どこに。
「……ッ、みらい、先輩……顔、かけた…ぃ」
「うん、いーっぱい、かけて」
「ぁ、あ゛、……ンッ……っは、ぁっ……」
俺は、あなたのピアスになりたかった。あなたの輝きの一部になれれば、それだけで良かった。コバルトブルー。空の、海の、色。それに溺れて、溶けてみたかった。
「ごめん、そんなに、嫌だった?……泣かないで、康介。もうしないから、ね?」
「ふ、ぅ……ぅ、ばか……せんぱいの、ばか」
「うん。ごめんね。僕が悪かった。もうしないから、許して」
謝るくらいならしなければいい。だけど、謝るような事を俺にするあなたは、愛おしい。甘えてるみたいで、必死に見えて、胸が苦しい。追われている恋愛の充足感。なのに、心の中に余裕は全く無い。当たり前だ。歴史がそれをさせてくれない。俺達には、歴史がある。純然たる時間の蓄積がある。だから、戸惑う。
「なんで、なんで俺なんですか?他にいっぱいいるじゃないですか。なんで、俺に構うの。昔から、あなたの周りには、沢山人がいて。だから、その人達と一緒にいればいいのに、俺ばっかり、いつも」
ピアスになりたい、あなたの。
俺は、あなたを、貫通したい。
あなたの身体に一生残る、傷跡になりたい。
それが、混じり気の無い、本心でした。
「そんなの、好きになるしかない。なるしか、ないんだ……」
「うん、好きでいて。ずっと、ずっと……僕だけを好きでいて」
クリスマスケーキは、バタークリームケーキでいい。苺はジャムでいい。ポテトサラダに林檎が入っていても、文句も言わずに食べてやる。
だから、プレゼントは、この人がいい。お願いだから、この人にして下さい。俺なんかの手に入っても、絶対に輝きが失われないこの人を、どうか俺に、約束して下さい。
「鼻水、眼鏡に引っ付いてる。かわいい」
「あ、ま……せんぱ、そこ、……」
「どこ?……ここ、弱い?」
股間に顔を埋めて俺に奉仕していたその人は、亀頭の括れ付近にこびり付いた恥垢を俺に見せ付ける様にしてべろりと綺麗に舐めとると、尿道に向けて割って入っている裏筋を舌先でひっきりなしにあやし、竿の根本を扱きながら、潤んだ上目遣いで俺を見上げた。そんなばっちい物を口にするなんて信じられない、とがつんと頭を殴打されんばかりの衝撃の後、くわんくわんと頭が揺さ振られたけれど、自分の見慣れたワンルームに漂う淫猥な空気と、憧れ続けてきた先輩の開花された色気に圧倒され、言葉を無くして只管に頷くしかなかった。
安物のベッドの下にはさっきまで一緒に飲んでいた発泡酒の空き缶が転がっていて、テーブルの上には骨だけ残されたチキンの空き箱と、バイト先で売り上げに貢献したボルシチのカップと、二人で作ったポテトサラダが少量だけ無地の皿の上に食べ残されていた。未来先輩も、ポテトサラダには林檎を入れない派らしく、小さな共通点を見つけた俺は、少しだけ浮き足立った。こんな小さな喜びを積み重ねていくこれからを、どんな気持ちで受け止めていけばいいのか、正直まだ全然分からない。
「だめ、ですよ、やっぱり。俺達、付き合って、ないし……こんなの」
「クリスマス当日に、友達との約束蹴ってきた僕みたいな薄情者に、まだそんな話するの?……ふふ、本当に酷いやつ」
「なんで……笑うの」
俺のジーンズのジッパーを慣れた手付きで下げて、安酒の匂いぷんぷんさせながら、ねっとりしたキスを仕掛けて。突然の流れに目を白黒させて、前にも後にも動けずにキスを受け入れるのに必死な俺を、そのままベッドに押し倒して。キスだけでビンビンになっちゃった恥ずかしい俺のちんこに、妖しく目を光らせながらむしゃぶりついて。バイト終わりですぐに飲み始めたから、シャワーだってまだなのに。全然気にしてないみたいに。汚いよ、辞めてよ、恥ずかしい。匂いとか、汚れとか、なんで気にしないの。変態だったんだ、先輩。知らなかった、凄いショックだ。なのになんで、俺こんなに、興奮してるの。嬉しいとか思っちゃうの。分かんないよ、分かんない。涙出てきた。頭ぐちゃぐちゃで、意味分かんなくて。意味分かんないくらい、気持ち良い。だけど、悲しい。
あなた、なんでこんなに、慣れてるの。
「ん、……あ、ぁ、……駄目、でる、ほんとに、でる、から……」
「かわい……ねぇ、顔に掛ける?それとも口が良い?……好きにして良いよ」
どこの馬鈴薯としたの。その、クリスマス当日に蹴ったっていう友達?あなた、そいつに仕込まれたの?だから、こんなにエロい人になっちゃったの?太陽みたいに笑う、日焼けが似合う、明るくて、優しくて、一緒にいるだけで楽しくて、胸がドキドキした、純粋をそのまま形にした様なあなたは、どこにいるの。綺麗で、ぴかぴかしてて、だから触れなくて、俺の聖域で。ねぇ、あの時付けてたピアスは、今どこにあるの。相棒みたいに、いつも付けてた、あなたのシンボル。あれは、どこに。
「……ッ、みらい、先輩……顔、かけた…ぃ」
「うん、いーっぱい、かけて」
「ぁ、あ゛、……ンッ……っは、ぁっ……」
俺は、あなたのピアスになりたかった。あなたの輝きの一部になれれば、それだけで良かった。コバルトブルー。空の、海の、色。それに溺れて、溶けてみたかった。
「ごめん、そんなに、嫌だった?……泣かないで、康介。もうしないから、ね?」
「ふ、ぅ……ぅ、ばか……せんぱいの、ばか」
「うん。ごめんね。僕が悪かった。もうしないから、許して」
謝るくらいならしなければいい。だけど、謝るような事を俺にするあなたは、愛おしい。甘えてるみたいで、必死に見えて、胸が苦しい。追われている恋愛の充足感。なのに、心の中に余裕は全く無い。当たり前だ。歴史がそれをさせてくれない。俺達には、歴史がある。純然たる時間の蓄積がある。だから、戸惑う。
「なんで、なんで俺なんですか?他にいっぱいいるじゃないですか。なんで、俺に構うの。昔から、あなたの周りには、沢山人がいて。だから、その人達と一緒にいればいいのに、俺ばっかり、いつも」
ピアスになりたい、あなたの。
俺は、あなたを、貫通したい。
あなたの身体に一生残る、傷跡になりたい。
それが、混じり気の無い、本心でした。
「そんなの、好きになるしかない。なるしか、ないんだ……」
「うん、好きでいて。ずっと、ずっと……僕だけを好きでいて」
クリスマスケーキは、バタークリームケーキでいい。苺はジャムでいい。ポテトサラダに林檎が入っていても、文句も言わずに食べてやる。
だから、プレゼントは、この人がいい。お願いだから、この人にして下さい。俺なんかの手に入っても、絶対に輝きが失われないこの人を、どうか俺に、約束して下さい。
「鼻水、眼鏡に引っ付いてる。かわいい」
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