詰んでる不遇悪役令嬢は電波少女になり、どうにか死亡フラグを回避したい

礼瀬

文字の大きさ
12 / 39

新たな教育係

しおりを挟む
目が覚めると、今度はちゃんとベッドの上にいた。フラメウが椅子に座ってベッドに突っ伏しているのが見える。傷の手当てがされてるから、おそらくフラメウがしてくれたのだろう。

「んん……、あ、お嬢様。おはようございます」

ぎこちない笑顔でいつも通り挨拶をくれる。フラメウは、何か言いたげにしながら、また口を閉じていた。

「もうそろそろ時間ね、準備してくれる?」

今日から新しい教育係が王宮に来るはず。王妃も来ると言っていたのだから、体調はともかく遅刻するわけにはいかない。フラメウもそれは分かっているのか、すぐに準備をしてくれた。キャシーが呼びに来て、キャシーと王宮に行く。部屋に向かうと、おばあちゃんと呼ぶのがよさそうな老婆がいた。

「侯爵令嬢であられる、ティア様ですね。私は、ディーダ・カロンと申します。ディーダとお呼びください。この後王妃様がいらっしゃいますので、王妃様に挨拶をしたのち、お嬢様の今の状態を確認するために、問題をいくらか解いてもらった後に、所作や魔法の実演をしていただきます」

とりあえず、普段ボロボロになっても大丈夫なように着替えさせているような服はない、流石に王妃様の前でたくさん叩かれることはなさそうだとホッと息を吐いた。少しして王妃がやってきて挨拶が終わった後、問題紙が手渡される。

やべぇ、半分以上わかんない。解きながら、分からない問題の多さに手が震えてくる。ミュリーだったら、こんなに間違えたらいったい何回叩くのか。後半はミミズが張ったような文字を書くだけで精いっぱいだった。

「お、終わりました……」

紙を渡すて、じっと顔色を窺う。真剣な様子で髪を見ているけど、顔をしかめたりする様子はなさそうなのにホッとした。立ち振る舞いや所作についても言われた通りを行う、途中で何度か止められて注意点を言われることもあったけど、鞭が飛んでくることはなかった。

「立ち振る舞いの確認はここまでで良いでしょう、次は魔法ですね」

ディーダが杖を取り出すと、体の震えがおさまらなくなった。やっぱり魔法ということはまた、痛い思いをするのだろうかと頭が真っ白になる。

「落ち着いて、杖を見るのが怖いのですね? 見なくても良いのですよ。お嬢様が魔法を試されるための的を出すだけです。お茶でも飲まれてください」

見なくていいと言われても、もしも急に攻撃されたら? 構えていなかったら余計に痛そうで、杖にくぎ付けになった目が離れなかった。

「キャシーでしたね、お嬢様を部屋の外に連れ出して御上げなさい、その間に的を用意いたしましょう」

そういわれると呼ばれるまで、部屋の外に出された。再度呼ばれると、藁人形のような的が置かれていて、ディーダの手に杖はなかった。

「大丈夫です、もう杖は持っていませんよ。魔法を使うことはできそうですか」

目線に気がついたのか、ディーダは両手を見せながら魔法を使えるか聞いてきたので、頷き的の前に立つ。少し深呼吸をして気持ちを落ち着けようとしたが、魔法をイメージするとまた頭が真っ白になり、冷や汗が止まらなくなった。だんだんと息苦しくなっていく。あぁ、でも魔法を使えなかったら、どんなに罰を受けるだろう。何かしないとと、イメージが不十分なまま魔力を込めたら、自分の意思に反した量の多さが杖に流れ込むのを感じた。

「な……なにこれ……」

自分の持った杖が禍々しく光っている、そのまま魔力が放出されると、一気に藁人形が爆発を起こした。一度で止まらない、何度も何度も。

「お嬢様、杖を手放してください!」

ディーダの叫ぶ声がして、慌てて杖を床に捨てると魔力の放出が止まった。

「魔力の暴走でございます。魔法を使うときは、気持ちを落ち着けて、決して慌ててはいけませんよ。さぁさぁ、そんな悲壮な顔をなさらないで。誰も怪我をしておりませんし、お嬢様くらいの年頃で魔力を暴走させてしまうことはよくあるものなのですよ」

諭すようにゆっくりというと、落ち着けるように背中が撫でられる。じんわりと、なにかの熱が体にしみこむように感じると、バクバクとしていた心臓が少しづつ静かになっていった。

「お嬢様、問題用紙についてですが、よくできておいででしたよ。いくらか苦手分野は見て取れましたが、分野によっては、同い年の子供が解くには難しい問題も解かれていました。立ち振る舞いについても、日々の努力がうかがえます。魔法については、ゆっくりとしていきましょう。メファールまでまだ少しは時間がありますから、焦らなくて大丈夫ですよ。王妃様、今日確認したところ、大きな問題は見当たりません。ですが、過度な緊張や、杖に対する恐怖心など、精神面が心配でございます。しばらくの間、ゆっくりとしたペースで学ばせてもよろしいでしょうか」

及第点ぐらいには思ってくれたのだろうか。王妃様はずっと険しい顔をしてこちらを見ているから、もしかしたら、ディーダにとって及第点でも、王妃様からしたら、悪印象を植え付けたかもしれない。そもそも、やんごとなき人の前で魔力の暴走って、普通に罰せられてもおかしくないようなことじゃなかろうか。

「学園に入るまでに、どうにかなるのであれば、問題ありません。ティアに合わせておやりなさい。確か、ティアには家庭教師もいましたね」
「私が大丈夫と思うまで、できれば、家庭教師もやめていただきたいです。この怯え方は、尋常ではないように思うのです」
「ディーダがそういうのであれば、私から、侯爵に家庭教師をとらないようにいっておきましょう。私はディーダと話があります。ティアはもう帰りなさい」

どうやら、咎められず、家庭教師もいなくなる結果になったみたい。ディーダが、王妃の前だけで演技をしているわけでなければいいけど。そんなことを思いながら、屋敷へ帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。 好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。 本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。 妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。 *乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。 *乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...