詰んでる不遇悪役令嬢は電波少女になり、どうにか死亡フラグを回避したい

礼瀬

文字の大きさ
21 / 39

昔話

しおりを挟む
結局、上機嫌な母親がひたすら話すものだから、食事が終わったのはずいぶん後になり、あまり休めなかった。今日から、王宮での勉強が再開するというのに。はぁ、とため息を吐く。

「今日は、お勉強が終わった後、殿下とお茶をして、そのあと王妃とお茶会をすることになります」
「お腹たぽたぽにならない? それ」

アントラの言葉に、ひくっと顔をひきつらせた。流石に出されたものに手を出さないわけにもいかないし、どっちのお茶会でも飲んだり食べたりすることだろう。何故、同じ日に二回も茶会に行くのか。というか、一回にまとめてやろうと思わなかったのだろうか。されたらされたで、王子の前の中二病演技を王妃が目撃することになってしまうのだが。

「流石にその辺りは、配慮してくださると思いますよ」

馬車の中では、ひたすらにアントラが話しかけてくる。おかげでキャシーたちは口をはさむ暇もなさそうだった。仕事中にずっと喋っているのはどうかと思うが、少なくとも護衛として機能していることに間違いないだろう。おかげで絡まれることがめっきり減った。

王宮につくと、ディーダがホッとしたような様子で迎えた。

「元気な顔を見ることが出来て安心致しました。顔色も良いですね、お嬢様が運ばれた時はとても顔色が悪かったのでございます」

どうやら、意識がない間の様子を見ていた一人らしい。目が覚めたのを聞いていても、実際に見ないと安心できなかったのだろう。

「それから、あまり気分はよろしくないでしょうが、こちらをどうぞ。ネックレスはございますが、試作段階でございます。流石に杖を持っていないのはよろしくないと存じます」

そういうと、杖を布で包んでいる状態で渡してきた。急に杖が視界に入らないように配慮してくれたのだろう。キャシーにもらった杖は砂になったし、フラメウにもらった杖もはじき飛んだあと返ってきていない。杖が好きなわけじゃないが、フラメウがわざわざ渡してくれたものを失くしてしまったことだけは少しひっかかっている。

「そういえば、殿下の話によると、お嬢様は杖がない状態で魔法を使われたとか。詳しく聞かせていただいてよろしいですか」

魔法の書物にも、授業で習った内容も、杖が必要だとあった。ようは魔力を通したりためたりしやすいものを媒介する物が必要がなのだ、人体だけでそれらはうまくいかないらしく、杖が媒介するのにちょうど良いものらしい。ネックレスも作られているが、それもおそらく魔力を媒介しやすいように工夫をしているのだろう。

そうなると、何も使わずに魔法を使ったあの状況はかなり異質なものになるのかもしれない。素直に離しても大丈夫なのだろうかと思わず様子を窺ってしまう。

「魔法は杖を使うもの。それが常識でございます。ですので、襲撃者も杖を弾いて無力化を図ったのでしょう。ですが、杖が無くても魔法が使えるとなれば、そのあと身を守ることが出来ます。お嬢様は殿下の婚約者なのですから、使える力であるならば鍛えたほうが良いと思われます」

じっと、真摯に瞳をのぞき込みながらそう言った。ディーダなりに、私のことを考えてくれた結果らしい。

「光の粒子が見えたのです、ただ祈る様に声がしました。どうやったのかはっきりと覚えていないのです、ただ手に沢山光が集まってきて。でも、もぅ光は見えません」

何がどうなって、あんな現象が起きたのか自分でも説明がつかない。ただ、ディーダはそれを聞いて何か思い当たることがあったのか、じっと考え込んでいる様子だ。少しして、口を開く。

「その昔、魔法使いの数は今より少なかったのですが、その頃の魔法使いは、杖を必要とせず、ただ祈れば魔法が発動できたようで。その魔法使いたちは、大地に宿る魔力を見ることが出来る不思議な目を持っていたそうでございます。大地に宿る魔力は意思を持っており、その不思議な目を持って大地に呼びかけ、願うことで、大地は願いを聞き入れ魔法を起こしていたそうです。そして、大地に宿る魔力の意思に反することをした場合、大地は怒るといわれているのです。実際は、もう少し長いのですが、そんな感じの昔話がございます、魔法を悪用してはならない、母なる大地に感謝せよという意味で書かれていたものなのですが」

つまり、あの光の粒子は、昔の魔法使いが見ていた、大地に宿る魔力だとでもいうのだろうか。

「確かにその話では杖が使われていませんね。でも、どうして光の粒子はすぐに見えなくなってしまったのでしょう。物語では、それを見るためには特別な目が必要とありますけれど。そんな特別な目がついたり取れたりするものなのかしら」
「私にはこれ以上のことは分かりません、ただ、そこまで特別な力になると、どう鍛えるのがよろしいかもわかりませんね」

光の粒子が見えたら、また別なのかもしれないが、流石に見えてもいないような現状では、その力を鍛えるよりも、普通に魔法の腕をあげるほうがいいだろう。何もわからずやるのは、非常に効率が悪すぎる。勉強しないといけないことは魔法だけではないのだから、流石にそこまで時間を割くことはできない。ディーダもそれが分かっているのか、少し残念そうにしながら、授業にうつっていった。

最近では、国の歴史やら、過去の事件なんかを勉強するようになってきたので、座って書いたりすることも多いが、前ほど緊張することも無くなってきていた。相変わらず勉強自体が好きなわけではないのだが、流石に鞭でバシバシ覚えさせられていた頃に比べると天国のようだ。

「お嬢様はよく話を聞いて下さるので、教えがいがあります。以前ほど怯えている様子もございませんね」

授業が終わると、そう言ってきた。流石にここまでくるとディーダが虐待まがいなことをしないぐらいの信用はしているので、怯える必要もない。そういえば教育係が変わった日以降、ミュリーの姿も見ていない。そのことも安心する要因になっているのかもしれない。

でも、こういうのってフラグだったりしない? 思わずあたりをきょろきょろ見回してしまう。

「どうかなさいましたか?」

とりあえずミュリーが出てくる様子もなくホッと息を吐いた。

「いえ、ミュリーのことを思い出していて」
「ご安心ください、教育係が変更になった後、ミュリーと殿下がお話されたのですが、そのときに殿下のお怒りに触れて、王宮に出入りすることが禁止されています」

初耳なのですが!? いったい、どんな会話をしたのか非常に気になる。私の知らないところで動き回りすぎじゃなかろうか王子は。純粋と思っていたけれど、ゲームの通りしっかりと腹黒のようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。 好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。 本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。 妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。 *乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。 *乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...