22 / 39
手放せない
しおりを挟む
授業を終わらせて、王子との茶会に行く。王子は座って待っていたようで、来たのを見るとニコニコと笑っている。
「よかった、もうすっかり元気そうですね。あ、ネックレスも付けてくれているのですね、ティア嬢を守りたくて作ったのです、できるだけつけてくれたらうれしいです」
普段使いにするのはどうやら正解だったらしい。とてもうれしそうだ。ただこのネックレスの宝石の色、殿下の目の色と同じなのがどうにも気恥ずかしい。とはいえ、着けておいた方がいいのは間違いないだろう。
「ありがとうございます、殿下がいろいろと研究してくださっていると聞きました。ですが、お忘れなきよう殿下、私は最強の魔法使いでしてよ。私を守りたいと仰られる前に、御身を一番に考えてくださいませ」
この人、王子のくせに守られようと行動していない気がするのだ。別に他人事といえばそうなのだけど、王子という立場にいる以上は、あっさりと死んだら国が大混乱になりそうである。王子はほかにいない。王子が死んだら、継承権が一番高いのは王弟になるのだろうか。まぁ、その前に死んだ時点で次をこさえていきそうな気もする。
「では、私のことと、ティア嬢のことを一番に考えます。それなら問題ありませんね」
にこやかにはっきりと言われてしまった。そうですか、私のことも一番に考えますか。かあぁっと顔に熱がたまるのを感じる。あぁもう、ドン引きさせる予定だったのに腹正しいなぁ。手放したくないって思っちゃうんだから。
「殿下、一つだけお願いがあるのです」
手放したくないのならば、手放せないのならば。
「もしも、私が処刑されるようなことになったときには、できるだけ苦しまない方法になるように進言してくださいませ。痛いのは嫌なのです」
ヒロインを守るために、ヒロインを苦しめた制裁をするために、ありとあらゆる苦痛を与えて殺す。あれはゲーム越しだけれどとても恐ろしかった。せめて、それぐらいはお願いしても許されるだろう。
「処刑となると、よほどの罪を犯さない限り処刑されることはありませんよ。ティア嬢、なにかするおつもりなのですか?」
「いいえ、全くございませんわ」
「それなら、気にする必要はないでしょう」
まぁ、記憶の片隅にぐらい置いてくれていたらいいか。あまり言い過ぎても不自然だろう、王子もどことなく不安そうにこちらを見ている気がする。にっこりと笑顔を作っておいた。
「そうですわね、大きな戦いの後で少々不安定なっていたようですわ。呪の力は心さえかき乱してしまうのです」
殿下の目は不安げなままだったが、それ以上追求をする気はないようだ。
「そうですか。あ、そろそろ母との茶会の時間でしたね、また今度話しましょう」
いつの間にかそんな時間になっていたようだ。礼をとり場所を移動する。ちなみに王子との茶会の時に出てきた、紅茶とクッキーの量はかなり控えめだった。王妃が大量に用意しないかぎり、お腹がタポタポになるような事態にはならないだろう。扉を開けられ、部屋に入り礼をとると、あまり間を置かずに座るように言われた。よし、紅茶とケーキの量は控えめ! 思わず一番に机の上を確認してしまって、慌てて王妃に意識を向けなおす。
「ふふっ、大丈夫よ。流石に食べれないような量を用意したりしないわ」
机を真っ先に確認したの、しっかりとばれていたらしい、笑っているから気分は害していないようだ。
「無理を言って悪かったわ。どうしても早くお礼を言いたかったのよ。シャルを守ってくれてありがとう」
「と、とんでもありません」
最近はこんなことばかりで、ほんとにむず痒いような、落ち着かない心地になりつつ返事を返す。
「そういわないで頂戴。あの子の母親としては本当に、いくら感謝してもし足りないぐらいなのだから。陛下からは、雷と呪を纏いし守護者の称号を……」
「げほげほっ」
思わずむせたわ!! 急な中二ワードに紅茶をふきださなかった私を褒めてほしいぐらいだ。
「だ、大丈夫?」
「はい」
「そ、そぅ? あ、続きを言うわね。陛下から称号が与えられ、シャルからはそのネックレスが渡されているけど、私からはまだ何も渡していなかったわね。何か欲しいものはあるかしら」
ゲーム! と前世なら間髪入れずに答えているところである。残念ながらこの世界にゲームなんて物は存在していない。ぱっと思いつくようなものがないのでそう答える。
「あら、そぅ? 何かあればそれを用意しようと思ったのだけれど。あ、じゃあこれをあげるわ」
スッと王妃の頭についていた飾りを一つ取り、私の頭に着けてにっこりと笑った。これもこれでけっこうな値段になりそうだ。金を纏って歩いているような感覚、庶民の私には落ち着かないのだけど、ニコニコしている王妃にそんなこと言えるはずもない。何より今はこれでも侯爵令嬢である。感覚はともかく肩書だけは庶民ではない。
「ありがとうございます。大切に致しますわ」
「えぇ、そうして頂戴。そういえば、ディーダとはうまくいっているかしら」
教育係については、いろいろと王妃が気を揉んでくれているおかげで、ミュリーから変わって平和な授業になった。
「えぇ、ディーダの授業はとても楽しいです。ありがとうございます」
「とても頑張っているようね、授業の様子はディーダから聞いているわ。大変だと思うけれど、シャルの婚約者はあなたであってほしいと思っているの、頑張って頂戴」
どうやら、婚約者の立場は王妃公認のものになったようです。
「よかった、もうすっかり元気そうですね。あ、ネックレスも付けてくれているのですね、ティア嬢を守りたくて作ったのです、できるだけつけてくれたらうれしいです」
普段使いにするのはどうやら正解だったらしい。とてもうれしそうだ。ただこのネックレスの宝石の色、殿下の目の色と同じなのがどうにも気恥ずかしい。とはいえ、着けておいた方がいいのは間違いないだろう。
「ありがとうございます、殿下がいろいろと研究してくださっていると聞きました。ですが、お忘れなきよう殿下、私は最強の魔法使いでしてよ。私を守りたいと仰られる前に、御身を一番に考えてくださいませ」
この人、王子のくせに守られようと行動していない気がするのだ。別に他人事といえばそうなのだけど、王子という立場にいる以上は、あっさりと死んだら国が大混乱になりそうである。王子はほかにいない。王子が死んだら、継承権が一番高いのは王弟になるのだろうか。まぁ、その前に死んだ時点で次をこさえていきそうな気もする。
「では、私のことと、ティア嬢のことを一番に考えます。それなら問題ありませんね」
にこやかにはっきりと言われてしまった。そうですか、私のことも一番に考えますか。かあぁっと顔に熱がたまるのを感じる。あぁもう、ドン引きさせる予定だったのに腹正しいなぁ。手放したくないって思っちゃうんだから。
「殿下、一つだけお願いがあるのです」
手放したくないのならば、手放せないのならば。
「もしも、私が処刑されるようなことになったときには、できるだけ苦しまない方法になるように進言してくださいませ。痛いのは嫌なのです」
ヒロインを守るために、ヒロインを苦しめた制裁をするために、ありとあらゆる苦痛を与えて殺す。あれはゲーム越しだけれどとても恐ろしかった。せめて、それぐらいはお願いしても許されるだろう。
「処刑となると、よほどの罪を犯さない限り処刑されることはありませんよ。ティア嬢、なにかするおつもりなのですか?」
「いいえ、全くございませんわ」
「それなら、気にする必要はないでしょう」
まぁ、記憶の片隅にぐらい置いてくれていたらいいか。あまり言い過ぎても不自然だろう、王子もどことなく不安そうにこちらを見ている気がする。にっこりと笑顔を作っておいた。
「そうですわね、大きな戦いの後で少々不安定なっていたようですわ。呪の力は心さえかき乱してしまうのです」
殿下の目は不安げなままだったが、それ以上追求をする気はないようだ。
「そうですか。あ、そろそろ母との茶会の時間でしたね、また今度話しましょう」
いつの間にかそんな時間になっていたようだ。礼をとり場所を移動する。ちなみに王子との茶会の時に出てきた、紅茶とクッキーの量はかなり控えめだった。王妃が大量に用意しないかぎり、お腹がタポタポになるような事態にはならないだろう。扉を開けられ、部屋に入り礼をとると、あまり間を置かずに座るように言われた。よし、紅茶とケーキの量は控えめ! 思わず一番に机の上を確認してしまって、慌てて王妃に意識を向けなおす。
「ふふっ、大丈夫よ。流石に食べれないような量を用意したりしないわ」
机を真っ先に確認したの、しっかりとばれていたらしい、笑っているから気分は害していないようだ。
「無理を言って悪かったわ。どうしても早くお礼を言いたかったのよ。シャルを守ってくれてありがとう」
「と、とんでもありません」
最近はこんなことばかりで、ほんとにむず痒いような、落ち着かない心地になりつつ返事を返す。
「そういわないで頂戴。あの子の母親としては本当に、いくら感謝してもし足りないぐらいなのだから。陛下からは、雷と呪を纏いし守護者の称号を……」
「げほげほっ」
思わずむせたわ!! 急な中二ワードに紅茶をふきださなかった私を褒めてほしいぐらいだ。
「だ、大丈夫?」
「はい」
「そ、そぅ? あ、続きを言うわね。陛下から称号が与えられ、シャルからはそのネックレスが渡されているけど、私からはまだ何も渡していなかったわね。何か欲しいものはあるかしら」
ゲーム! と前世なら間髪入れずに答えているところである。残念ながらこの世界にゲームなんて物は存在していない。ぱっと思いつくようなものがないのでそう答える。
「あら、そぅ? 何かあればそれを用意しようと思ったのだけれど。あ、じゃあこれをあげるわ」
スッと王妃の頭についていた飾りを一つ取り、私の頭に着けてにっこりと笑った。これもこれでけっこうな値段になりそうだ。金を纏って歩いているような感覚、庶民の私には落ち着かないのだけど、ニコニコしている王妃にそんなこと言えるはずもない。何より今はこれでも侯爵令嬢である。感覚はともかく肩書だけは庶民ではない。
「ありがとうございます。大切に致しますわ」
「えぇ、そうして頂戴。そういえば、ディーダとはうまくいっているかしら」
教育係については、いろいろと王妃が気を揉んでくれているおかげで、ミュリーから変わって平和な授業になった。
「えぇ、ディーダの授業はとても楽しいです。ありがとうございます」
「とても頑張っているようね、授業の様子はディーダから聞いているわ。大変だと思うけれど、シャルの婚約者はあなたであってほしいと思っているの、頑張って頂戴」
どうやら、婚約者の立場は王妃公認のものになったようです。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります
ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。
好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。
本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。
妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。
*乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。
*乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる