詰んでる不遇悪役令嬢は電波少女になり、どうにか死亡フラグを回避したい

礼瀬

文字の大きさ
32 / 39

書庫の鍵

しおりを挟む
屋敷に戻るまでの間、母親はずっと不機嫌だった。帰ったらどうなることかと思ったけれど、何事もなく部屋に戻らされ、ほっと息を吐く。

「お嬢様、貴女様に触れさせないと大口をたたいたのに、この始末です。申し訳ございません」

部屋に戻り私が椅子に座るなり、アントラが跪いた。

「三人を庇いながら一人で二人なぎ倒せという方が無茶です、それに、だれも死にませんでした。感謝しています、アントラ」

三人庇いながら、一人でどうにかできたほうがびっくりだ。あの状態で全員生還できただけで十分すごいことだろう。それに、誰か死んでいたなら、巻き込んでしまった罪悪感でとんでもないことになりそうだ。重傷を負わせてしまったことに変わりはないけれど、だれも死ななかったことがいくらか心の救いになっていた。立つように伝えると、申し訳なさそうにしつつもアントラは立ち上がり、普段のように控えていた。

「お嬢様、ご無事で何よりでした」

フラメウにぎゅっと抱きしめられる。母親に抱きしめられたときのような冷え冷えとしたような感覚ではなく、ほんの少しだけ息を付けるようなそんな気持ちになった。

「さぁ、お嬢様、お疲れでしょう? 今日は早めにお休みくださいませ」

紅茶を飲みながらゆっくり過ごした後、早めに寝るように言われた。頭がぼんやりして、疲れているのが分かるため素直にうなずき布団にもぐって目を閉じる。

“数少ない味方には迷惑をかけてまでどうして生きているのですか?”

ほんとうにどうしてだろう?

“あなたなんて産まなきゃ良かった”

あぁ、こっちは前世の母親か。別に仲直りはしたんだけど。今世の母親にも同じことを思われていることだろう、どこまでいっても私は望まれないのか。かわるがわる、いろんな人の顔が出てきては罵倒してくる。耳をふさぐことも目を閉じることも出来ない。

「お嬢様!!」

体をゆすられて目を覚ました、気が付いたら外が明るい。あぁ、夢だったんだ、とても気分が悪い夢を見た。

「旦那様がお呼びです。着替えたら参りましょう」

母親から呼び出されなかったと思ったら、珍しく父親からの呼び出しみたい、いったい何の用事だろうかと思いながら服を着替え、アントラとフラメウを連れて父親の部屋に入る。糸目の物静かな雰囲気の見知らぬ女性が部屋の中にいた。

「来たか。体は問題ないようだな。あぁ、部屋にいる人物について、先に紹介しておこう。ジェインがいなくなったから、その代わりの護衛だ」

心底要らない。また、嫌な護衛じゃなきゃいいけどなんて思いながら、流石に要らないとは言えないので相槌を返しておく。

「レティ・ハーモットと申しますわ、よろしくお願い致します、お嬢様」

にっこりと笑って挨拶をいうと、アントラと同じように部屋の端に控えた。

「誕生日会の騒ぎで少なからず名に傷がついた。幸い、王族からの覚えがめでたいので、殿下の婚約者から降ろされるようなことはないだろうが、他家からの手出しにあったり、今回のような騒ぎがまた起こる可能性もないとは言えない。本来であれば、家を継がないお前に見せるつもりはなかったのだが、他家に婚約者の立場が奪われるようでは困る。そこで、書庫の閲覧許可を与える、より勉学に励むように」

そういって、書庫の鍵を手渡された。もしかして、エテが言っていた珍しい魔法の書物がある書庫だろうか。というか、本当にこの人、名声のことしか頭にないのだろうが。娘が大けがした翌日にいうことがこれなのだから溜息を吐きたくなる。用事はもう終わったようなので、早々に部屋を退出して自室に帰る。

「お嬢様」

自室に入り、扉を閉じた瞬間にずずっと、レティが私の目の前に立つ。それをみて、フラメウが警戒したように私の側に来た。レティは、私をじっとみながら手をだした。

「今日は殿下が城でお会いになるそうですよ! そこでですねっ、こんなリボンをつけられたりしませんか? あ、こんなアクセサリーはいかがでしょう♪ こんなかわいらしい姿にアクセサリーをつけたらどれだけ映える事でしょう、もうそ……、想像しただけで私はっ、あぁ、どれだけ楽しみにしていたか、おわかりになりますかお嬢様!! さぁ、いますぐおめかししましょう、この時のために私、たくさん用意したのです!!! 私、とても幸せですわっ」

手にはフリフリなリボンがあった、それだけでは足りないと思ったのか、いったん手を引っ込めると、次々とアクセサリーを出し始める。あ、警戒心たっぷりだったフラメウがずっこけた。怖い顔をして、アントラが近づいてくる。

「レティ! お嬢様が驚いているでしょう、貴女の勢いでお嬢様に接してはいけないとあれほど、あ、ちなみにそちらのラベンダーのブレスレットがとてもよくお似合いだと思います」

おまえは、レティを止めに来たのか、この事態をさらに混沌とさせにきたのかどっちだ! あぁ、なんか頭が痛くなってきたなんて思い、頭を押さえつつ口をひらく。

「あの、レティ? あいさつした時と印象が違うのですけれど?」

物静かな雰囲気というのを訂正させてもらおう。実にうるさ……、騒がしい。いや、ジェインのようなのが来るよりましなんだけど。

「旦那様の前でしたから、我慢していたのです。我慢していた私に、お嬢様を飾り立てる褒美をくださいませっ」

ずずいっとレティが、にじり寄ってくる。その勢いに思わず後ずさると、怒りを込めた表情をしたフラメウが、私とレティの間に立った。

「レティ、さっきから黙って聞いていればあなた……。お嬢様を飾り付けるのは私の仕事です!!!」

私がずっこけることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。 好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。 本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。 妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。 *乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。 *乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...