自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

文字の大きさ
44 / 190
ハンデル自由都市国編

第60話 迷宮都市ラビラント 7

 五日かけて最下層近くの二十九階まで来た。目の前にはボスへと続く扉が開いている。
 いや~、ここまでたくさんのドロップアイテムを集めたよ。あとぶっとい木材も。
 リコが張り切っちゃって、予定よりもめっちゃ多い三百本になってしまった……。まあ、いっか。どこかで欲しいって人が出てくるかもしれないし……なんて、楽観的になっている。
 まあ、家だけじゃなくてベッドも作り直すつもりだし、他にも箪笥をはじめとした家具に、テーブルや椅子を作るつもりでいるし。ヒノキのように香りがいい樹木だから、お風呂を作ってもいいかも。
 できるかどうかはともかく、夢が広がるってもんだ。
 そんなことを考えて二十九階を歩く。些か魔物が多い気がするが、討伐する冒険者が少ないことも原因なんだろう。マップを見る限り、この階層は私たちを含めて五組しかいないしね。
 五キロ四方のダンジョンとはいえ、それでも広い。全部がてんでバラバラな方向に行っているんだから、ほとんど遭遇しないし。
 そうこうするうちに下に下りる階段を見つけてしまったので、一回休憩する。

「もうじきボスだけど、どうする? もう一泊ダンジョンに泊まる?」
<たくさん薬草を集めたから、ノンは満足なのー>
<俺も満足だ>
<あたしもたくさん戦えて満足したわ>
<オレも>
「なら、休憩したらボスを倒して地上に戻ろう」
<<<<はーい>>>>

 元気よく返事した従魔たちと一緒に休憩を終わらせ、三十階層へと下りる。今までで一番魔素が濃い。さすがはラスボスといったところか。
 準備を整え、全員でボス部屋の扉をくぐると、すぐに背後で扉が閉まる音がした。そして光が集まり、そこにボスが現れる。

「アースドラゴンかあ……」
<楽勝なのー>
<さっさと倒そうよ>
<そうね>
<俺はギリギリ、かな>
「ははは……」

 ノンにとったら楽勝だよねー!
 てなわけで、まずは私が槍で足を切りつけ、リコ、ピオ、エバの順で魔法を放つ。最後は弱点でもあるノンの風魔法により、呆気なく撃沈したアースドラゴンは、ドロップを落として消えた。
 ドロップはドラゴンの茶色い皮と肉、茶色の魔石と骨、鱗と牙と爪。どれも有用なものばかりだし、肉の部類では最上級だ。
 それをウエストポーチにしまってから宝箱を開けると、中身はアースドラゴンの皮を使った防具だった。うーん、必要ないなあ……。リュミエールにもらった防具のほうが性能がいいし。
 よし、ギルドに売ろう。そうしよう。
 宝箱も回収し終えると、扉が開く。先の扉のほうを見ると、魔法陣が光っていた。あれが帰還の魔法陣か。
 また戦いたいという従魔たちに苦笑しつつも頷いてもう一度入ると、今度はレッドドラゴンが出た。おや? ここのボスはランダムなの?
 これは検証してみるかとさっさと倒すことに。もちろん、みんなの魔法が有効で、あっという間に終わったけどね!
 ドロップも肉と赤い皮、赤い魔石と骨、牙と爪と鱗だった。皮はわかるけれど、魔石の色も違うとは思わなかった。もしかして、彼らの属性に関係している……?
 ランダムなのか確かめたいと言うと、みんながOKしてくれた。なのでまた出入りして中に入ると、今度はブルードラゴンが。もちろんドロップは同じで、皮と魔石が青だった。
 そして四回目はグリーンドラゴン。五回目はホワイト、六回目はブラック。七回目はアースだったので、この六体のランダムのようだ。
 色からするに、四元素と光と闇ってことなのかな。通常は紫がかった赤い魔石が出るから、もしかしたらドラゴンのような強い魔物は、そういった魔法の色が出るのかもしれない。
 調べてもいいけれど、これは私の役目じゃないからね~。調べないよ。
 だけど、属性があるものであれば、いろいろ使えるんでないかい?
 もし、他にも機会があったら、集めてみよう。
 検証も終えたので、さっさと地上に行くことにした。だが。

「……なんで下に行く階段があるの?」

 ここは三十階層だと聞いているし、冒険者もそう言っていた。それに、さっきは帰還の魔法陣しかなかった。なのに、階段がある。もしかして、全色のドラゴンを倒したから、ダンジョンマスターへと続く階段が出現した、とか?
 疑問に思いつつも、慎重に階段を下る。すると、鎖に繋がれた木があった。

「……なんで木が鎖に繋がれてんの?」
「え……? あ! あの! 助けてください!」
「は?」

 え? 木が、喋った⁉

「ボ、ボク、樹人っていう種族なんです。薬草を採りに来たのに、ここのダンジョンマスターに掴まってしまって……」
「そのダンマスはどこにいるの?」
「貴女から見て、右のところに隠し扉があります。さらにその奥に扉があって、そこにいます。そこにはダンジョンコアもありますから」
「そう……。悪いけど、ちょっとそのままでいてね」
「は、はい」

 木から発せられた声は、男の子の声。つか、樹人なんて初めて聞いたんだけど⁉
 ノンが反応していないから悪い人? ではないとは思うが、私が信用できない。なので、ダンマスを倒すまでそのままにさせてもらうことに。
 言われた通り右に行き、マップと並行して隠し扉のスイッチを探す。

「これ、かな?」

 明らかに不自然な形の小さな壁があるそれを押してみると中に押し込まれ、壁の一部が下に下りていく。完全に開くとカンテラを出し、そっと中を覗いてみた。
 奥には骸骨が腕を組んで眠っており、その奥に扉がある。あの扉がダンジョンコアがあるんだろう。マップにもそう表示されているし、奥に赤い点がふたつ。
 なら、この骸骨はなに? よくわからんが、とりあえず骸骨を捕まえますか。
 ロープを出して縛り上げると、いきなり骸骨が動き出した。

「な、なんだ⁉」
「はい、捕まえた。きみがダンマスでいいのかな?」
「違う! けど……や、やっとここから出られるーーー‼」
「<<<<はぁ⁉>>>>」

 声だけで泣く骸骨に、こっちが呆気にとられる。一体何なんだ⁉
 とにかく落ち着かせてから樹人がいるところまで戻ると、隠し扉が元にもどり、すっかり壁になる。暴れないというのでロープを外し、樹人も助けた。

「ボクは樹人のヤミンです」
「お、俺はリッチのヤナです」
「ヤミンとヤナね。で、どうしてここにいるの?」
「「ダンマスに囚われてました」」
「……ヤナがダンマスじゃないの?」
「違います!」

 おやあ? どういうこと?
 どっちも木と骨がむき出しになっているからと、町で買った布でローブを錬成し、二人? に着せる。それで落ち着いたらしく、どうしてここにいるのか話してくれた。
 二人は仲のいい友人同士で、村の人たちのために薬草を採りに来た。けれど、珍しい種族だからとダンマスに捕まり、ここにずっと囚われていたという。
 ヤナがなんとか抜け出してダンマスを倒そうとしたが、ダンマスがいる部屋に辿り着くどころか、あの部屋に閉じ込められてしまったんだとか。

「何をやっているの……。抜け出せたなら、どうしてヤミンと一緒に逃げなかったの?」
「ボクたちの装備を奪われたままなんです」
「だからそれを取り返そうとして……」
「そう……。どんな装備だった? 特殊なもの?」
「いいえ。一般的な杖だけです」
「ローブも取られたけど、その場でいきなり消えちゃったし……」
「そう……」

 杖なのか。ということは、魔法を主体にしてるのかな? そう聞くと、二人揃って頷く。

「装備は私がなんとかしてあげるから、ここから出ましょう。その前にダンマスを倒しておきますか」
「「え?」」
「コアはともかく、ダンマスを倒せば、しばらくは大丈夫なんでしょ?」
「そ、そうです」
「それに、ダンマスに囚われているんだったら、そいつを倒さないと、二人はダンジョンから出れないんじゃないの?」
「「あ」」

 やっぱりかーい!
 ダンジョンマスターに囚われたということは、何かしらの制約みたいなものがあるはずだ。外に出るにしても、きっと出られない。
 試してみると言ってヤナが階段を上ろうとしたが、壁があるかのようにドンとぶつかり、上がることができなかった。

「やっぱりね。きっと、逃げられないような魔法をかけられているのよ」
<そうだね。そういう魔法をかけられてるよー>
「「あ、にゃんすら様!」」
「ノン、その魔法を解くことはできる?」
<ノンでも無理なの。ダンジョンマスターが使う魔法と、外の魔法は違うから>
「そう。なら、やっぱりダンマスを倒してから出ましょう」
「「ありがとうございます!」」

 ガバっと音がしそうなほど腰を曲げ、お礼を言う二人。装備はダンマスを倒してからしっかりと作るからと話し、一緒に行動する。ことにした。

感想 2,851

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?