自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村編

第96話 湖の主

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 アップルパイやクッキーを作ったりして三時ごろまでレベッカたちと過ごした。店があるからと今日来れなかったイサベルとエビータの分を渡してほしいとお願いし、彼女たちの分をお土産として包む。
 クッキーは男性たちでも食べられるようジンジャークッキーにしたり、ナッツを練り込んだものを作って人数分に分けた。レベッカたちが配ってくれるというのでお願いしてある。
 石窯については自分たちで石を用意するというので、準備ができたら教えてくれるそうだ。その石窯でパンを焼いてみたいらしい。
 で、明日はイサベルもエビータも店が休みだからと、レベッカの家で料理教室をひらくことに。中には男性も料理をする人がいるから、その人たちを入れるとかなりの人数になってしまうのだ。
 うちでもいいけれど、さすがにそんな大人数が座れる場所はないし、拡張してもいいが元に戻すのも面倒。ということで、レベッカの家でやることになった。
 あそこなら宴会場があるし、その関係でキッチンがかなり広いしね。いざとなったら外でやればいいと、レベッカたちが笑っていたくらいだ。
 今回作るのはフライパンでできるパンと大量に作られたじゃがいも、油を使った料理、ミショの実を使った料理。油に関してはボアの脂身を取っといてもらっているから、それを溶かして使うつもりだ。
 いざとなったら米を錬成して、米油にしてもいいかも。売っているとはいえ、人数が多いから足りないんだよ。ごま油もいいけれど、数が少ないからちょっと勿体ないし。
 菜の花があれば菜種油も作れそうだね。椿はどうだったかなあ……? 北を散策した時にはなかった。
 やっぱり一度は森を散策してみたい。
 で、レベッカたちが帰ったあとは残ったお菓子をリュミエールのところにお供えしたり、庭の手入れをしたり。リコ以外の従魔たちは森に行くと言って、この場にはいなかった。

「リコ、この土を柔らかくしてくれる?」
<おう>

 リコは畑仕事がしたいと残ってくれている。なので、冬野菜の種や苗を植えるつもりなのだ。
 柔らかくしてもらった土に腐葉土と石灰を撒き、またかき混ぜてもらう。そのついでに畝まで作ってくれたリコは、気遣いのできるイケメンであ~る。
 お礼に撫でまわし、一列ずつ種を蒔いては水を撒き、苗を植えていく。
 今回撒いた種や苗は白菜とほうれん草、芽キャベツと小松菜、ネギとごぼう、ナスだ。芽キャベツはダンジョンで見つけたもので、きちんと育つのか実験の意味でも苗として植えた。
 もしこれが成功したら、村でも育てることができるからね~。そうなれば村にとって食材が増えるし、売れる野菜ができるんだから、いいことずくめだ。
 山にも何か食材がないかなあ? 村の住人たちはキノコや野草は知っているみたいだけれど、筍は知らないみたいだし。まあ時期じゃないから、もしかしたら全部食べたあとかもしれない。
 他にも、山芋のようなものがあればいいんだが……。料理教室が終わったら、山を散策してみよう。
 いろいろと予定を立てつつ作業を終えると、従魔たちが帰ってきた。

「おかえり。何が採れたの?」
<ノンはキノコー。あと、栗とクルミ、薬草ー>
<あたしはエンペラーホーンディアよ!>
<オレはシーサーペントを採ってきた!>
「待てい! 最後! 何よ、シーサーペントって! どこで採ってきたの?」
<湖の奥。真ん中にいたぞ?>
「あちゃー……」

 湖まで行ってきたのか、ピオは。つか、なんでシーサーペントが湖にいるんだよ! 海の魔物じゃないんかーい!
 これはヘラルドに報告しないとまずいかも。シーサーペントが湖にいるとなると、生態系が崩れる可能性があるから。
 頭が痛いと思いつつ、どのみちエンペラーホーンディアも私たちだけだと食べきれない可能性があるので、住人に分けることになるだろうし……と内心で溜息をつき、従魔たちを連れてヘラルドの家へといく。

村長むらおさー、いるー?」

 外から声をかけると、庭のほうから歩いてきた。どうやら庭の手入れをいていたようだ。

「おや、アリサ。今日はレベッカに付き合っていただいてありがとう。どうしました?」
「私も楽しかったからいいの。えっと……報告が」
「報告?」
「ええ。ピオが湖でシーサーペントを狩ってきたらしくて」
「はぁっ!?」

 そりゃあ驚くよねぇ……私も驚いたし。ヘラルドに出してと言われたピオは、通りにデーンとシーサーペントを出す。
 その数三体で、一体は20メートル、残りは30メートルくらいはある、かなり大きな個体だった。

「これは……。小さいのはメスのようですね」
「このサイズでメス……」
「ええ。他にもいましたか?」
<これで全部だ>
「これで全部だと言っているわ」
「そうですか」

 ノンの声は村人にも聞こえるが、他の従魔たちの声は私にしか聞こえない。だから通訳してみた。
 つか、なんでノンの声はみんなに聞こえるんだろう? やっぱり神獣だからかな。そのあたりはわからないけれど、間違ってない気がする。
 おっと、今はそれは重要じゃないんだよ、シーサーペントのことだ。ピオから聞いた話をヘラルドに伝えると、腕を組んで目を閉じ、なにやら考えている。

「オスが二体に、メスが一体。恐らく、メスを取り合っていたか、これから取り合うところだったのでしょう。どこから来たのか気になるところではありますが、子を産む前でよかったです」
「そうね。ピオ、他にはいた?」
<いなかった。あの三体だけで、元々メスとオスが絡み合っていたところにもう一体が来たんだ>
「え、そうなの?」
<ああ。あのクラスのシーサーペントが暴れると他の魚たちも鳥たちも迷惑になるから、さっさと雷を落として倒した>
「そう……」

 首を傾げたヘラルドにピオが語ったことを話すと、「横恋慕ですか」と呆れた声を出した。だよねー!

「いずれにせよ、湖の生態系や下流に被害が及ばないうちに討伐できたことは僥倖です。あとで皇帝陛下に手紙を出しておきましょう」

 よく知らせてくれましたというヘラルドに、曖昧に笑って誤魔化す。さすがに黙っていていい案件じゃないからね。
 つかね、サラッと皇帝に手紙を出すって言ったぞ、サラッと。きっとお友達なんだろうなあ……と、遠い目になった。
 その後は村人を全員呼び寄せ、私が解体して肉を全員に配る。残った分は貯蔵庫行きだ。
 鱗や皮、牙や魔石は、一部は証拠として皇帝に提出し、残りは自分たちの武器や防具に使うという。それでも余った場合はディエゴに売りつけるそうだ。
 で、ついでにエンペラーホーンディアも解体して、肉は全員に、角と魔石、皮はハビエルが買い取ってくれた。角はいい採取ナイフになるんだそうだ。
 ……角がナイフ……。確かに硬い角だったし、ちょっと削って角度をつければ、ナイフがたくさんできそうな薄さの角だしね。異世界って不思議。
 捕って来たからと、シーサーペントについては私たちには住人たちの三倍もの肉をもらい、エンペラーホーンディアはみんなに配ったあとの残りは私たちがもらった。冒険者たちの分については、シーサーペントの分は渡すけれど、エンペラーホーンディアは渡さないと、みんなしてにっこり笑っていたっけ。
 その笑みは非常に怖かったとだけ言っておこう。
 今日も宴会になるかと思えばそんなことはなく、それぞれが持ち帰って貯蔵庫にしまっておくという。宴会になると食べきってしまって勿体ないから、食べるのを楽しみにとっておくんだって。
 全員に配り終えたら解散。私たちも家に戻ってきた。

<<<<アリサ、シーサーペントを食べてみたい!>>>>
「わかった」

 やっぱり従魔たちは食べたかったのか。どんな肉質なんだろうと少しだけ切って焼いてみると、なんとも言い難い食感に驚く。
 魚のような、肉のような、そんな食感だ。
 だったらシンプルにステーキと、煮物にしてみるかと根菜類を使って煮物にし、ステーキは塩コショウにすり下ろした玉ねぎとニンニクを使った醤油ベースのソースにしてみた。味が淡泊だったからね~、香味野菜で香りづけしてみた形だ。
 他にも、付け合わせで粉ふき芋とほうれん草のバターソテーにツナサラダ、卵スープを用意。とろみはつけていないから、熱くて飲めないということはないだろう。
 冬になったらとろみのついた中華風の卵スープもいいね。
 ご飯を食べたあとで蔵の確認。今のところまだカビは生えていない。どれくらいで生えるんだっけ? 時間はたっぷりあるんだから、毎日様子を見ておこう。
 お風呂に入ってから明日持って行く材料と調味料を用意。料理酒でお酢が作れないかと実験したらできてしまったので、両手と両膝をついて項垂れたよね……。
 これだったら米からお酢ができるんじゃ……とやってみたら、しっかりできた。
 くそう! 米が手に入った時点で錬成すればよかった!
 ついでに純米酒も作ってしまえと錬成し、味見をするとしっかりできていた。ただ、日本の米とは違うからなのか、すっごく美味しいというわけじゃないのが残念だ。
 このあたりは住人たちが知っているかなあ? もしくはハビエルか。ドワーフだもんな、ハビエルは。知らなくても、なんとかして酒を造りそうだ。
 初物だからとリュミエール像の前にも置き、おかずも少しずつ置いておく。
 気に入っていれるといいなと思いつつ手を合わせ、従魔たちを引き連れて眠った。

 翌朝、起きてみると花以外のものが綺麗になくなっていた。きっとリュミエールが食べたんだなと胸を撫で下ろし、朝食も供えて祈るとご飯を食べ、ヘラルドの家へと向かった。

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