自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村編

第99話 森を散策

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 夜明けと共に起き出した従魔たちに起こされ、ご飯を食べたあとは森へ向かう準備をする。久しぶりに全員で行動するからね~、従魔たちがはしゃいでいるのだ。
 日本でいう季節は、そろそろ九月の半ば。こっちに来たのが六月くらいだから、だいたい三か月は経ったってことか。早いなあ。
 感傷に浸ったところでどうにかなるでもなし、装備を整えて家を出ると、村の門に向かう。途中にあった畑で既に作業をしている人がいたから、従魔たちを連れて森に行ってくると話し、ヘラルドに伝言を頼んだ。

「わかった。もしキノコがあったら頼む。いろいろ出てるだろうからな」
「はいよー」

 キノコ採取を頼まれたので頷き、門から出る。さっそくノンがはりきって、竹籠を持って跳ねている。
 この世界のキノコは、冬以外はだいたい採れるという。季節によって生えているキノコが違うから、味も食感も楽しめるのだ。その例外がシイタケ。
 今まで採取してきたキノコはしめじに似た形や味のものが多かったが、この季節のものはどんなものが採れるんだろう? 湖の近くにあったキノコは、ヒラタケに近い形と色をいていた。
 まだ小さかったから採取をしなかったけれど、数日でどれくらいの大きさになるのか、気になるところ。シイタケも見つかるだろうか? 見つかったら天日干しにして、出汁の元にしたいね。
 で、今回は村から東のほうへと行って、軽くぐるっと回ってみるつもり。どんなものがあるかと歩き始めると、さっそくノンが薬草を見つけた。赤紫蘇に似た形と色を持つ、魔力草だ。
 魔力草は別の薬草と混ぜることで魔力回復ポーション――MPポーションを作ることができるのだが、単体では全く意味をなさない、単なる赤い植物なのだ。場合によっては布や糸の染色材料として使われる。
 だからこそ、梅干しを漬けるのに最適だったってわけ。
 女性たちと雑談をしている時、レベッカが欲しいと言っていたことを思い出したので採取する。種もあったので、それもお土産として持って行こう。
 根っこを残しておけばまた伸びる薬草なので、地面から2センチほどの茎を残し、半分だけ採取して立ち上がる。いくら群生しているからといって全部採ることはしないのが、薬草やハーブを採取するうえでの鉄則だ。
 種があればもう少し多めに採取したうえで種も半分ほど持って帰ることはするが、ギルドでの依頼で来たわけじゃないからね。必要な分しか採らない。
 魔力草は麻袋に、種は即席で作った斑模様の瓶に入れると、ポーチにしまう。少し歩くとキングブラックボアにかち合ったので、刀で一閃、首を落とした。そしてすぐに解体する。
 キングと名が付くだけあって体がデカいからね~。大人のゾウくらいはあるんだぜ? 私たちだけでは食べきれないかもしれないが、今回は村人全員で来ているわけじゃないから、貯蔵庫にしまおう。
 綺麗な牡丹色の肉だから、牡丹鍋にしてもいいかも。うん、冬の間に食べるのが楽しみだ。
 解体した場所の近くに、キノコが生えていた。これを食べようとしていたのか。
 生えていたのは、エリンギのような形をした茶色いキノコ。エリタケという名前のキノコは歯ごたえがあり、炒めると美味しいという。
 高さは10センチほどで、傘の大きさは直径5センチほどの、キノコとしては大きい部類の種類だ。あまり群生することはないとヘラルドが言っていたことを思い出し、ラッキーだといそいそと採取した。
 菌さえ残っていればまた生えてくるそうなので、これも小さいものは残して全部採取した。それを皮切りに、いろんなキノコが見つかる。
 松茸と同じ香りを放つものやシイタケ、傘が網目状になっているアミタケ。フクロタケに似たそれは、煮込むことで美味しくなるんだとか。
 網目が細かいから、肉を摘めて焼いても美味しそうだ。

<アリサ、この小さいのはなんだ?>
<ノンも知らないのー>
「ノンも知らない植物って珍しいわね。どれ……。ん? んんん!?」

 木の幹に絡まっていた、枯れかかって黄色くなっていた蔦のところに、小さな芋のようなものがくっついている。こ、これはもしや、むかごでは!? 鑑定してみるとむかごと出た!

「むかごというの。小さな芋よ。この茎の下にはもっと大きな芋があると思うわ」
<ほんと⁉ ノンは見てみたい!>
<あたしも!>
「じゃあ、リコ。手伝ってね」
<おう! どうすればいい?>
「この茎の下にある周囲の土を柔らかくしてほしいの」

 自然薯――山芋の形か大和芋の形かはわからないけれど、長いことを想定してリコに掘りやすくしてもらう。畑のように柔らかくしてもらったあとで掘ろうと思ったら、リコが察して芋の周りの土を掘り出し、引っ張りやすくしてくれた。

「ありがとう、リコ。よ……っと。うん、立派だね!」
<<<<おお~!>>>>

 引っ張り出してみると、山芋の類のようだ。長さは1メートルはあるから、かなり立派な部類に入る。
 キラキラとした目をして山芋を見る従魔たちに、生活魔法の水を使って土を落とすと、スーパーで見たことがあるベージュ色と細かい根っこが見えた。
 うん、立派な山芋だ。

<アリサ、どうやって食べるの?>
「そうね……すり下ろしてご飯にかけて食べるもよし、短冊に切ってそのまま食べるもよし。海苔を巻いて揚げてもいいし、スープの中に入れてもいいわね」
<オレは今日、それを食べてみたい!>
「わかったわ、ピオ。晩ご飯で食べましょうか」
<やったー!>

 羽を広げて万歳をするピオ。滅多なことではこういった行動をしない子なだけに、とっても珍しい光景だ。よしよしとピオを落ち着かせるように頭を撫で、リコに土を元に戻してもらうと、山芋をアイテムボックスにしまう。
 地上に落ちているむかごは来年以降掘りにこれるよそのままにし、茎にくっついていたものだけを採取した。同じ木にもうふたつ蔓が絡まっていたからその下も掘りだしてもらい、それもアイテムボックスにしまう。
 新たな食材として一応報告しておくか。ただ、人によってはアレルギー反応として手が痒くなったりするだろうから、そこはしっかりと注意しておかないとね。
 私は大丈夫だけれど、もしかしたら、種族的にダメな場合もあるだろうし。そこはノンに立ち会ってもらって、食べられるか検証してもらおう。ノンを立ち会わせるのは、魔法でアレルギーを除去してもらうためだ。
 ある種の状態異常だからね、アレルギー反応って。どのポーションを使って治せばいいのかわからない場合もあるだろうし。
 万能薬ってあるんだろうか? そこはレベッカに聞いてみよう。市販されているのを見たことがないしね。
 まあ、私の場合はノンがいるから、必要ないともいうが。ポーションを買おうとすると、とっても悲しそうな顔と目をするんだよ、ノンが。だから、自分でポーションを作ることはあっても、今まで買ったことはない。
 それはともかく、山芋を採取したあとはまた移動する。キノコを採ったりボアやベアと戦闘しつつ南のほうへと向かうと、こっちにも山芋があった。
 移動途中にも結構あったからね~。むかごと一緒に何本か掘ったけれど、全部を採ったわけじゃない。
 もし村人が気に入ったならどんな植物か教えないといけないし。緑の手を持ってる私がいるから食糧難になることはないだろうけれど、いざという時のための食料として、教えておけば助かるばずだ。
 そんなわけで全部は採っていない。
 結界を張って休憩していると、ブラックロック鳥が上空から襲ってきた。だが、ピオとエバが結界に雷を這わせていたからか、結界にぶち当たったと同時に感電死したブラックロック鳥は、何が起きたかわからずに死んだんだろうなあ……。
 乾いた笑いをしつつ解体し、麻袋に入れてからポーチに入れる。骨も持ったから、時間のある時に出汁を取ろう。
 紅茶を飲んでいる時、キングブラックボアにも襲われたが結界はびくともせず、感電死したのには唖然としたが。さすが一直線に突っ込んでくる魔物だよね。
 休憩を終えたあとは採取しながら西へと向かい、ある程度の場所を把握しておく。もちろん、ウーメの実やジューソの実があった場所にはマップにピンをつけたし、山芋が群生していた場所にもピンを打ってある。
 戦闘したり採取したからなのか従魔たちは終始ご機嫌で、村へと向かう帰り道もずっと楽しそうにしていた。それでも全員警戒を怠ることはなく、魔物に襲われればすぐに対処している。
 なんだかんだと大量になった山芋とキノコ、魔物の肉をどうやって処理しようかと頭を悩ませつつ、帰路についた。

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